桃桜の魔王   作:グレンリアスター

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ヒーロー

 ライスシャワー(ライス)にとってハルウララは大切な友達で、初めての友達。

 トレセン学園に初めて来たときは……ライスは不安だった。

 うまく学園生活を送れるか、友達はちゃんとできるだろうか。

 そんな不安の中にいたライスの前に現れたのは、ウララちゃんだった。

 

「わぁ~可愛いね!君!わたしとお友達になってよ!」

 

 桜のように明るく、笑顔が似合う桃髪のウマ娘。

 学園にいる時はだいたい一緒にいた。

 食事の時も昼休みの時も……ずっと、ずっといたんだ。

 時々、トレーナー(お兄様)ともっと仲良くするにはどうすればいいかとか相談もしたな~。

 あの時が楽しかった。

 だけど……その楽しい時間は長く続かなかった。

 

 ある日からウララちゃんは無表情になったの。

 どうしたのと尋ねても答えてくれない。

 いつもライスはウララちゃんのことを心配した。

 そんなある日。

 雨が降る中、ライスは忘れ物を取りに行くために傘をさして学園に戻った。

 誰もいない学園の中を歩きながらわたしは教室に向かう。

 そんな時、窓からウララちゃんの姿を見つけた。

 気になったライスはウララちゃんの跡を追い、そして……驚愕したよ。

 

 冷たい雨が降る中、トレセン学園のレース場で……ウララちゃんは走っていた。

 口からハァハァと荒い息を漏らし、雨に濡れながら彼女は走っている。

 そして大きく滑って、地面に倒れた。

 

「ウララちゃん!」

 

 放っておくことができず、傘を投げ捨ててライスはウララちゃんのところに向かった。

 

「大丈夫?ウララちゃん」

 

 ライスは手を貸そうとしたけど、ウララちゃんは自分で起き上がり、そして……また走り出す。

 慌ててライスは彼女を止めた。

 だけど……、

 

「止めないで、ライスちゃん」

 

 感情が宿っていない表情でそう言った。

 ライスは全身が凍り付くような寒さを感じたのを覚えている。

 その寒さが雨のものではないとすぐにわかった。

 

「わたしね……止まっちゃいないの。速く走らなくちゃいけないの。だから……止めないで」

 

 そう言い残して、ウララちゃんは走り出した。

 ライスは彼女の背中を見ていることしかできなかったよ。

 

 そして数日後、ウララちゃんは重賞レースに参加し……1着でゴールした。

 ライスはトレーナーと一緒にライスちゃんのレースを見に行ったから分かる。

 あれは……多くの人を不幸にする走りだった。

 圧倒的な速さで他のウマ娘を追い越し、心を壊す走り。

 その走りを見て、ライスは後悔した。

 あの時、ライスはウララちゃんを止めるべきだったと。

 ウララちゃんの走りは血反吐を吐くようなトレーニングをして、手に入れた魔王の走り。

 その走りのおかげで、ウララちゃんは最強にして最凶のウマ娘となった。

 

 だけどね……ウララちゃん。

 ウララちゃんにそんな走りは似合わないよ。

 ライスは知っているんだよ?

 ウララちゃんが似合うのは楽しく走るのだって。

 レースで負けても笑顔を浮かべて、手を振る姿を……ライスは覚えている。

 もし忘れているなら、ライスが思い出させてあげる。

 

 ライスは……魔王であるウララちゃんを止めるために、ヒーローになるよ。




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