雲に覆われた空の下で、わたしはレース場に立っていた。
今日、わたしと戦うのは二人のウマ娘。
キングヘイローとライスシャワーだ。
観客席には多くのウマ娘がいたが、誰も彼女達が勝利するとは思っていない。
「ねぇあの二人……」
「今日の犠牲者か」
誰もが二人を憐れんだ。
わたしもキングちゃんとライスちゃんが勝てるとは思っていない。
勝つのはわたしだよ。
だけど……なんでだろう。
なんでわたしは二人を見て、胸がざわつくんだろう。
「準備はいい?ウララちゃん」
「あなたに敗北する権利をあげるわ」
キングちゃんとライスちゃんは覚悟を宿した表情でわたしを見つめる。
彼女達から感じる威圧感。
だけどわたしは恐れない。
「いいよ……叩き潰してあげるよ」
どんな敵が来ようと、例えそれが友達だった者達でも……わたしは潰す。
「さぁ……始めよう。レースを」
わたしとキングちゃん、ライスちゃんはゲートに入った。
意識を集中させ、スタートを待つ。
数秒後、ゲートが開き、わたし達は走り出した。
前を走るキングちゃんとライスちゃん。
そんな彼女達の後ろを……わたしは走る。
今回のレースは短距離。
わたしが得意なレースで勝負を挑むなんて……舐めているのかな。
「魔王を舐めないでよ。二人とも」
カーブを曲がり、わたしたちは走る走る。
そして最終コースである直進コースになった瞬間、わたしは地面を強く蹴った。
「じゃあね……キングちゃん、ライスちゃん」
わたしは一瞬で二人を追い越した。
これで……私の勝ち。
そう思った。
しかし、
「まだ!」
「終わってないわよ!」
わたしの左右にキングちゃんとライスちゃんが並んだ。
衝撃的なことが起きて、わたしは驚愕する。
う、嘘でしょ!?
全力で走っているんだよわたしは!?
追いつけるはずがない。
今の走りで多くのウマ娘を恐怖させ、絶望させてきた。
なのに……なんで、
二人は笑っているの!?
「どうしたの魔王!まさかライスたちを追い抜いたと思った!?」
「悪いけどこの程度で私達は追い抜けないわ」
「なぜならライスは!」
「なぜなら私は!」
「ヒーローだ!」
「キングよ!」
わたしの隣を必死に走る二人のウマ娘。
彼女達は笑いながら、わたしを追い越そうとする。
だめだ……このままじゃあ負ける!
わたしが敗北を予感した瞬間、自然と思い出す。
白雪トレーナーが悲しんだ顔を。
「くっ!負けられない……負けるわけには、いかないの!!」
ガリッと歯噛みしたわたしはさらに脚に力を入れ、地面を強く蹴る。
両脚が痛くなろうが、息が苦しくなろうがどうでもいい!
わたしは二度と負けるわけにいかないの!
あの人を悲しませるわけにはいかない!
涙を流させるわけにはいかない!!
だから……だから、
「負けられないんだ!!」
わたしは今まで出したことのない速さで走る。
しかしキングちゃんとライスちゃんはすぐにわたしに追いつく。
「うああああああああああああああああああああああああ!!」
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
叫び声を上げながら、ゴールに向かって走るわたしとキングちゃんとライスちゃん。
限界を超えた速度でわたしたちは走る。
そして、わたしよりも速く、キングちゃんとライスちゃんがゴールした。
次の瞬間、観客席から大きな歓声が巻き起こった。
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多くのウマ娘に恐怖と絶望を与え、心を壊してきた最強にして最凶のウマ娘の魔王は、この日―――二人のウマ娘によって倒された。
その二人のウマ娘の名は、キングヘイローとライスシャワー。
将来、一流の王様と最高のヒーローと呼ばれるウマ娘達である。
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