桃桜の魔王   作:グレンリアスター

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ただのハルウララ

『桃桜の魔王』がキングヘイローとライスシャワーに敗北した。

 それはトレセン学園だけでなく、全国、いや……世界でも大ニュースになったのだ。

 そして魔王をやめ、ただのハルウララになったわたしは教室の扉の前で棒立ちしていた。

 

「……」

 

 扉のドアノブに手を当てて、わたしは……動くことができなかった。

 どうしよう……すっごい入りづらい。

 今まで勝利のために感情とか殺していたから、クラスメイトに冷たくしていたし。

 どうしようどうしよう!

 一発芸して、和ませる?

 いや、驚くだけだよね。

 なら普通に入る?

 いや、違うような気がする。

 とりあえず深呼吸しよう。

 

「スーハー……」

 

 深呼吸して心を落ち着かせたわたしは勇気を出して、扉を開けた。

 すると教室にいたウマ娘達が一斉にわたしに視線を向ける。

 全員、どこか怯えた表情をしていた。

 これは……わたしのせいだ。

 わたしが……魔王がみんなを怯えさせたんだ。

 だからわたしがやらなくちゃいけないのは、

 

「お、おはよう~!」

 

 元気よく挨拶をした。

 するとクラスメイトのみんながポカ~ンと呆然とする。

 

「それと……ごめんなさい!」

 

 わたしはすぐに頭を下げた。

 

「みんなに冷たくしてごめん!怖がらせてごめん!もし……許してくれるなら、またわたしと仲良くしてください!」

 

 わたしが謝った数十秒後、教室に喜びの声が上がった。

 

「ウララちゃんだ!」

「あの時のウララちゃんが帰ってきた!」

「うわ~ん!よかった~!」

 

 わたしは目を見開き、顔を上げる。

 誰もが笑顔を浮かべて、わたしに近付く。

「よかった~!」「帰ってきてくれて嬉しい!」「おかえり!」という言葉が聞こえる。

 わたしは胸が温かくなるのを感じ、泣きそうになった。

 だけど泣くわけにはいかない。

 ここでわたしがやらないといけないこと。

 それは、

 

「ただいま!」

 

 とびっきりの笑顔を見せることだ。

 

<><><><>

 

 それからはわたしはクラスメイトたちと楽しく話した。

 久しぶりに楽しいという感情を感じたのを覚えている。

 感情があるってこんなに嬉しいなんて知らなかったな。

 全ての授業を終えた後、わたしは白雪トレーナーがいるトレーナー室に移動した。

 

「トレーナー!トレーニングを始め…よ……う」

 

 トレーナー室の扉を開けて、中に入ったわたしは驚きのものを目にする。

 白雪トレーナーが高級な白いスーツ姿ではなく、白い体操服姿をしていたのだ。

 

「お、おかえり。ウララさん」

「どうしたの……その服?」

「ウララさんがさ……魔王をやめたからさ。わたしも魔王のトレーナーをやめて、ただのハルウララのトレーナーに戻ろうと思うの」

「トレーナー……」

「この服装……嫌かな?」

 

 わたしは首を左右に振る。

 

「その姿が一番好き!」

「そう言ってもらえて、嬉しい」

 

 白雪トレーナーは恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに微笑んだ。

 

「さて、ウララさん。次のレースに向けて、トレーニングをしよう」

「次のレース?」

「うん。GIレース。魔王は消えて、楽しく走るハルウララが戻ってきたってみんなに教えよう」

「……うん!」

 

 わたしは力強く頷いた。

 次のレースに向けて、頑張るぞ~!

 

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