ts転生者、脳を灼く   作:Y.Y@TSスキー

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11話 舞踏(武闘ともいう)

 

探索者協会 探索者支援課。

 

 

 

そこで働いている職員達が、先程応接室に通された少女と須藤室長が連れ立って出てくる姿を見てザワついた。

 

 

 

彼らの殆どが探索者としての活動経験がある為に感じたのだ。2人から漏れ出る闘気、これからの戦闘の匂いを。

 

 

 

「おいおいおい、室長スーツパンパンじゃねぇか!やる気だぞ!」

 

 

 

「あの子と闘る気か!?女の子じゃ死ぬぞ!?」

 

 

 

「ヒーラーいるか!?すぐ後追わせろ!!スイッチ入った室長はやばいって……バカ!そんな仕事誰かにやらせろ!人死に出るよかマシだろが!」

 

 

 

訓練場の建物に向かう2人。その後ろを数人の職員が追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練場

 

 

 

 

刀袋から刀を取り出す柚希を観察しながら須藤は上着を脱いで身体を解す。

 

 

 

「すまないね、ギャラリーが増えてしまった」

 

 

 

横目で入口付近にたむろする職員達を見る。

 

 

 

「構いません、ダンスは観客がいた方が盛り上がりますから」

 

 

 

「ははっ、違いない!では拙い踊りで笑われない様にしなければね」

 

 

 

両手をギュッと握る。直後付けていた指輪が輝き、両の腕に蒼く輝く手甲が換装される。

 

 

 

柚希は夜桜を抜いて構える。上段…火の構えだ。

 

 

 

「魔装武器ですか?」

 

 

 

「見るのは初めてかね」

 

 

 

「えぇ…付け加えるなら格闘主体の方も初めてです」

 

 

 

須藤もファイティングポーズで構える。

 

 

 

「素敵なレディの初めてとは光栄だ…始めても?」

 

 

 

「いつでもどうぞ、リードはお任せします」

 

 

 

「先手を譲ってくれるとは余裕だな…だが私は些か情熱的だ、精々足をもつれさせない様に気をつけたまえっ!」

 

 

 

ピシッ!

 

 

 

踏み込んだ地面がひび割れたと同時。放たれたミサイルの如く須藤は突っ込み間合いを詰める。柚希は縦に夜桜を一閃、進路の妨害しつつの牽制を選択。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

ガキィィンッ!

 

 

 

両手をクロスさせ手甲で受け止めた瞬間、衝撃が辺りの空気を振動させた。

 

 

 

バチッ!……バチバチッ!

 

 

 

魔力と魔力の衝突が黒い雷となって周囲に走る。

 

 

 

一瞬の拮抗…だが徐々に須藤は夜桜を押し返しつつある。柚希は刀身を斜めにずらし力を逃がしてからバックステップ、距離を取る。

 

 

 

「……力では敵いませんか」

 

 

 

「勝てると思ったのかね?」

 

 

 

「試してみない事には分からないんですよね…私須藤さんのステータス知りませんから」

 

 

 

柚希は夜桜を鞘に戻し、腰を落として構える。

 

 

 

「ふむ……居合か、付き合おう」

 

 

 

須藤は再度のファイティングポーズ、しかし今度は先程と違い慎重に距離を詰める。

 

 

 

「…………」

 

 

 

「…………」

 

 

 

じりじりと滲みよる。

 

張り詰められた空気、互いの間合いと間合い1歩手前。誘うように触れては離れ、触れては離れを繰り返す……互いの意識の削り合い……先に動いたのは……

 

 

 

柚希だった。

 

 

 

「……はぁ!!」

 

 

 

「焦れたかっ!」

 

 

 

夜桜が鞘走る。だが須藤は間合いから半歩出ており1拍おいてカウンターのストレートを放つ。

 

 

 

完璧なタイミング……瞬きの間に柚希の一刀は空を切り、須藤の拳は柚希のボディを捕らえる。だがそのストレートが柚希に触れる事は無かった。

 

 

 

(なっ!?消えっ!?)

 

 

 

ゾクリ……

 

 

 

直後、自分の首が落ちる幻視を視た。本能に任せ、無理矢理左手を首に差し込む。

 

 

 

ギャリィィィインッ!!

 

 

 

「ぬぅぅぅぅうっ!!」

 

 

 

金属を削る甲高い不快音が鳴る。

 

須藤は後ろへ向かって魔力を込めた全力の蹴りを放つ。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

蹴りは後ろにいた柚希の鳩尾を捉えたが期待した感触とは程遠く、蹴られた方は空中でふわりと一回転して着地した。

 

 

 

「ふむ……瞬歩からの一刀といった所か、危うく死ぬところだった」

 

 

 

「薄皮1枚で止めるつもりでしたが、咄嗟に左手が動いていたので必要ないと判断しました…初見で対応されたのはお爺様以来です」

 

 

 

「ははっ、少々変わった能力を持っていてね、気に入って貰えたかな?」

 

 

 

「えぇ…すごく」

 

 

 

「それは重畳、ではお互い温まってきたしタンゴは止めてジャイブダンスと洒落込もうっ!」

 

 

 

「いい提案かとっ!」

 

 

 

互いに一足飛びで距離を詰め、獲物を奮うインファイト。

 

 

 

十……二十……三十……四十…

 

 

 

閃く剣閃……蒼く輝く手甲の流星。

 

 

 

それらがぶつかり合う度に発生する魔力の雷が互いの衣服と皮膚を焼く。

 

 

 

「ははははは!!楽しいなぁ!!柚希くん!!」

 

 

 

「えぇっ!本当にっ!!」

 

 

 

薄氷の舞台の上で続く剣と拳の応酬。踏み外したら終わりが待っている死の舞踏…柚希と須藤は舞台の上で狂った様に踊り続ける。

 

 

 

「「はぁぁぁぁあ!!」」

 

 

 

互いの咆哮が被り、百を超えた打ち合いの中…重い一撃がお互いを吹き飛ばし距離を生む。

 

 

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

 

無呼吸状態からの急激な酸素の供給に息が乱れる。互いに察していた。次の一撃が終幕になると。

 

 

 

「……」

 

 

 

「……」

 

 

 

全身から立ち上る魔力。それが柚希は夜桜へと、須藤は手甲へと全てが収束。そして踏み出……そうとしたその時。

 

 

 

「「「かっ、確保ーっ!」」」

 

 

 

「え?」

 

 

 

職員さんの悪質タックルが須藤を床に引き倒す。そして息付く間もなく上に乗っかっていく大量の職員さん達。

 

 

 

「なっ!何をするだぁーっ!」

 

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

 

「大人しくお縄につけ室長っ!」

 

 

 

「周り見ろや!あんたやりすぎだ!」

 

 

 

唖然とする柚希。須藤にいい聞かせる職員さんの言葉に周りを見渡すととんでもない事になっていた。

 

戦いの余波でガラスは全損、地面はめくり上がり、石畳は粉砕している。

 

 

 

(とりあえず逃げよ)

 

 

 

そう思って抜き足を使いその場を離れようとしたが肩を女性職員さんに掴まれた。

 

 

 

「あなたはこっちよ」

 

 

 

「あっ…はい」

 

 

 

笑顔で言われたが目が笑ってない。

 

 

 

柚希はそのまま女性職員さんに囲まれ連れていかれた。

 

 

 

 

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