池袋ダンジョン2層
ゲートをくぐった後、順調にモンスターを蹴散らしながら進んで1時間程探索し3層のゲートを発見した。のだが……。
「うーん…」
なんだろ、2層に誰もいない件について。
俺の予想ではあの黒い球追って争奪戦が起きてる筈だったんだが、そもそも人がいない。マジで誰にも会ってない…ダンジョン自体は24時間入れるしもう討伐したんかな?
いやでもそうだとしたらなんで支部混んでるんだよって話になる。俺ならさっさと帰る。
…まぁいいか、昼には分かるって田村さんも言ってたからな。帰りに聞こ。
「さて…」
思考タイム。
ここまで2時間弱、思ったより進みがいい。次へのゲートも見つけてるしここらを2、30分調べて見ても良いだろう。まだいるかも知れないし狩られた後だとしても1匹だけとは限らない。望みは薄いけどね!
「行きましょうか…」
来た道とは別の通路を進んでいく。今更だけど意識は変わったのに口調とか変わんないのってなんでだろうな、擬態が楽だから色々助かるけどね。
歩いてると1層よりはモンスターに出会う。けど何も考えず雑に本能で動いて殺していく。
気分はゲームとかのオート戦闘機能。そんな感じ。
橘ダンジョンの奥の方とか行くともうね、環境に適応、こうならないと生き残れない。考える暇とか無いしいつ何が出てくるか分からないから。
少し話すと橘ダンジョン最初の鬼門(と俺が呼んでる)15層から20層にはチワワみたいな野犬がよく出る。
こいつは的は小さいしめちゃくちゃ早いし急所ガンガンヒットアンドアウェイで狙ってくる害悪モンスターなのね?
そんなのが気配察知すり抜けて1番嫌なタイミングで集団で襲ってくる。
あれは地獄だった…今もたまに夢で見る。
「……あら?」
そんなどうでもいい事を考えていると少し先の通路で気配を感じた。ただモンスターっぽくは無い。探索者かな?
一応隠密と抜き足を使って近づいていくと…
「はぁぁあい!今のとこね!昨日のやつはァ!見つかってないですね!」
「……」
なんか聞いた事ある声が聞こえた。石壁の角を曲がり姿を確認する。
スター○ォーズのザコ敵みたいな防具に武器は剣、頭には装着型カメラのついたヘルメット。…あれだ、昨日の動画の探索者だ。
「なんでぇ…まぁ〜そうですねぇ!あれです!!こっからはぁ先に進みつつね!見つけたら戦ってみたいと思いまぁ〜す!」
そう言って背を向けたまま歩いていく。
なんだろうな…聞いてるとすっげぇムカつくわこのテンション…でもいい奴に会えたな。俺は隠密を解除し声をかけた。
「すいません」
「うわぁ!!びっくりしたぁ!」
振り返ってビビり散らかしてて草
男で歳は…20くらいかな?ごめんな、ちょっと話聞くだけだから。
「驚かしてすいません、少しお話を聞きたいのですがよろしいですか?」
「え…?あぁ、いいですよ」
普通に喋れんじゃねぇか…普段からそうしろよ。
「実は昨日あなたの動画を視聴しま…」
「おぉ!リスナーの人ぉ!?しかも女の子!!困っちゃうなぁ!リア凸とかはNGなんだけど…」
そう言うと上から下を舐めるように見てくる。特に胸、むっちゃチラチラ見てるわ。
きっしょ…まぁでも誤解から解くか。
「いえ…たまたま拝見しただけでファンと言う訳でもありません、話を聞きたいだけです」
「あぁ…そうなんだ…で、聞きたい事ってなに?帰り道?」
途端にテンションだだ下がり。めんどくせぇ性格してるなこいつ。
「違います、昨日の動画のモンスターについてです…2層で見かけたとの事ですがどちらで見かけたかって分かりますか?」
「あぁそれなら……」
言いかけて止まる。そして何かを考えてる顔……なんだ?
「どうかしましたか?」
「ん?あぁ、いやなんかさぁ…ただで教えるのもどうかと思って…君って学生さん?」
「はい、高校に通っておりますがそれが何か?」
「おぉJK…いいね!うん、決めた!じゃあ教える代わりにデートしてよ」
「……はい?」
なに言ってんのこいつ?
「デート1回、それで教える…あと出来れば顔も見てみたいな、目元見た感じだと…かなり可愛い気がするし」
「お断りします」
「いいじゃん、この階層にいる学生さんって事はレベルも高くないでしょ?俺探すのも手伝うし一緒に戦ってあげるからさ」
「私はその条件は飲めませんし必要ありません、教えて頂けそうに無いので失礼致します」
俺は踵を返す。
マジでしくった…同じ様なやつ前世で遊んだ直結厨にいたわ。
その手の奴らは言い方は紳士気取ってるけど相手が自分の要求飲むまで粘着するんだよな。
んで通らないと分かると暴言吐いてくる。
もうなんか萎えた。
いいや、3層行こ。
「え、ちょっ!待ってよ!たかが1回デートするだけだよ?ほら、飯代とか俺出すし」
「……」
フル無視。粘着型はこれが1番いいってはっきり分かんだね。
「ねぇ待って!…チッ………おいっ!待てよ!」
ガッ…
俺の足元に何かを投げる。なんこれ?石?もしかして喧嘩売ってるのかな?(^^)
振り返る。
「……なんの真似ですか?」
「……」
男は俺を見つめながら首元のタグを手で持ち上げて見せる、色は銅。……で?意味わからんのだが。
「……何がしたいのですか?」
俺が訝しげに言うとやつは喜色を浮かべた。
「ははっ!…池袋にいるからそこそこ強いかもと思ったけど……タグ見せ返さないとか…ラッキー…」
「なにを言っているのですか?」
「いや、こっちの話…ねぇ、ダンジョンで低レベルの探索者が年間何人行方不明になるか知ってる?」
あ…ふーん。
「知りません」
「大体1000人、そう言われてる……あぁ、俺はそこまでする気は無いよ?ただ丁度カメラもあるし少し痛めつけてから裸の動画撮らせてもらうだけ…そしたら誰にも言えないだろうしずっと俺のいいなりになるしかないよね?」
うーん、ゴミ野郎で草ァ!
男が肩を回し剣を構える。俺はぼっ立ち。
でも1000人行方不明かぁ…いい事聞いたな。じゃあ今からお前が行方不明になってもいい訳で……
俺も目の前の男同様マスクの下で笑った。