「じゃあいくよ!っらぁ!」
こちらに切りかかってくる男、とりあえず剣の腹に魔力込めた掌底を当ててブチ折る。
「…えっ?……はぁ!?」
いきなり獲物が無くなったからか動揺してるね、でもそれ隙ありすぎな。俺はそのまま流れるように拳の連打。
「ぐはっ……がふっ!」
あん?手加減はしてるけど思ったより強かったか?防具が粉々に吹き飛んだわ。身体ボロボロだけど大丈夫そ? まぁいっか!かまわず殴ろ。
「ちょっ……まっ…ひぃ!すいません!すんません!」
っと思ったけど身体を守るように丸まって蹲る男。立てよ、殴れねぇだろ。無理やり胸ぐら掴んで立たせる。
「……」
「…はぁ…はぁ…ヒッ!」
目線が合う。あー…ダメだ、完全に戦意を喪失してるわ。恐怖、それとただただ弱者が助かりたい時の媚びへつらう表情。
いや、止めてくれよ…
なんか俺が悪いみたいじゃん……はぁ…。男から手を離しため息をつく。
「うぅ…ごほっ…」
「行方不明者、1000人でしたっけ?」
「…うぅ…」
「答えなさい」
蹲る男の背中を踏む。
「ぅぐっ!……はい、そうです…」
「このままではあなたはその1人になります」
「あ…えっ…?やだ!死にたくなっ…たすっ!助けてくださいっ!」
足にしがみつく。ええぃ!JKの御御足に触るな!キショいな。蹴り飛ばす。
「たすっ…たすけて…」
「助かりたいですか?」
「はいっ!…はい!死にたくっ…死にたくない!」
「いいでしょう」
俺は微笑んだ。
えーと…これをこうして…?
あ?これ違うボタンだ…録画じゃねぇわ…これか?よし!
俺は唯一無事だったヘルメットを床に置き、パンイチで正座する男に向けた。
「では自己紹介をどうぞ」
「あ…相沢圭介(けいすけ)です…えと、職業は探索者で…ほ、他の探索者の方に襲いかかった犯罪者で…ぶ、ブタ野郎です」
ピッ!
「はい、いいですよ」
カメラを止めてメモリを抜く。
俺はこの男、相沢命を助ける条件として
俺にしようとした事を逆にやらせろ
昨日黒い球体を見かけた場所まで案内しろ
あと探索者として知っておいた方が良い事を教えろ
この3つを飲ませた。
最初は普通に殺そうとは思ったんだけどね。なんか情けなさすぎて…モンスターの情報も手に入るなら欲しい。
「ではこの保存データは貰っていきます、いいですね?」
「はい…」
「では立ちなさい、早く昨日の場所までいきますよ」
「はい…あっ、その前に服だけ…」
「獣に服は必要ありません、早くしないと斬りますよ」
「うわぁ!まって!まって!」
チャキッ…夜桜の鯉口を切って鳴らすと服を抱えて立ち上がる、はよしろ。
「あいてっ!…なんで蹴るんですっ!」
ケツを蹴り飛ばし前を歩かせる。なんか見てきたので睨んだら瞬時に目を逸らした。
「いいですか相沢、あなたは豚です…私の命令や、やる事に文句は許されません、分かりましたね?」
「……はい」
よろしい。んじゃあ歩きながら色々聞いていこうかな。
「では豚、質問をしていきますので進みながら答えなさい…先程私にタグを見せたのはなぜなのです?」
「あぁ、タグ見せの事ですね?あれは言わば探索者同士の牽制みたいなものです」
「牽制?」
「はい、俺はこの色帯だけどお前はどうなんだよっていう…無駄な争いを避ける為の行為で…同色以上ならやり合うリスク減らせますから、探索者として活動そこそこあるやつならみんな知ってます」
あー…なるほど?つまり。
「…豚が私に襲いかかって来たのはタグ見せを知らない初心者、もしくは知っていても見せて牽制にならない鉄だと思ったからですか?」
「まぁその…言いにくいですが…はい」
申し訳なさそうな顔をする豚(相澤)
「済んだ話なので追求はしませんが…次私に不利益があったら許しませんからね」
「いやもうそれは…今骨見に染みてますんで大丈夫です…というかあの、なんてお呼びしたら?」
ん?あぁ、名前名乗ってなかったわ。
「橘柚希です、豚に名前で呼ばれるのは抵抗があるので苗字で呼んでください」
「あ…はい橘さんですね、ありがとうございます…んで橘さん…その、タグの方見せて貰ったりとか出来ませんかね?」
「なぜです?」
「いや、すごい気になってしまって…タグ見せも知らないのにあの強さだから、なんかチグハグに感じてしまって」
「……まぁいいでしょう」
振り向いた豚、相沢に黒のタグを見せる。
「えぇ!?黒タグ!?そりゃ勝てない訳ですよ、協専じゃないですか!え?なんでタグ見せ知らなかったんです!?」
「最近探索者になりましたので」
「協専探索者って最近なって直ぐなれるもんなんですか?……あ、ここ曲がります」
そしてモンスターを倒しつつ色々聞きながら豚の案内に従って進んでいると。
「もうあと5分もあれば着きますよ」
「よくやりました…では走れば1分で着きま…ん?止まりなさい豚」
「え?はい」
気配察知がモンスターの気配を捉えた。
ただ捉え方が少し変だな…
まるで何も無いとこからいきなり出てきたみたいな…そんな感じ。実際反応は俺らが通ってきた道だ。
「ここで待っていなさい」
「えぇ!?いや自分武器ないからモンスター出たらどうすれば!?」
言い残し、気配の元まで駆けて戻る。
なんかとやかく言っていたが無視だ、どうでもいい…出たら勝手に死ね。
そうして気配の元にたどり着いた俺が見たのは
「動画の黒い球……」
それも
「……2つ?」
不規則にふよふよと漂っていた。