「豚は下がっていなさい…」
魔力を身体に巡らせる。
魚に足の生えたやつ、デカいトカゲ、ゴブリン?のデカイバージョンみたいなの。
一貫性の無いモンスター達の群れ。通常じゃ考えられない。なにせ階層が変わるまで獣系、水系、亜人系とある程度出てくるものは決まっている。今攻略してきた池袋ダンジョンもあの球以外は、その辺り統一されていた。
キョォォオ!!
甲高い鳴き声。
魚型のモンスターが突っ込んでくるのを皮切りに、モンスター達が動き出す。
「シッ!」
夜桜を縦に一閃、魚モンスを2枚に卸す。
「ハァ!」
次いで横凪ぎに振るい、襲いかかるモンスター3体を胴別れにしてやった。
ただ迫り来る多勢、攻撃を上手く処理しにくいな…。
意識を切り替え、身体操作をし最適解で迫り来るそれらを掃討していく。
(何があったんだ?)
ゲートを超えてこちら側に出てきている。間違いなくダンジョンブレイク。だが理由が分からない。
「ちっ…」
攻撃を交わし切れず、袴と道着がボロ布と化していく。怪我とかないけど、こう多いと正直だるいな…俺ってばタイマン特化なとこあるからな。
「うわぁぁ!」
豚の叫び声。あいつに溢れたモンスターが襲いかかってやがる。くっそ!めんどくせぇ!
「あぁもう!」
夜桜を投擲。やつに群がっていたモンスター共が身体に大穴を空けて骸と化し、なおも勢いが失われない刀はコンクリートを砕いて壁面に突き刺さる。
「ひぃぃ」
そこでビビり散らしてろ!足引っ張んじゃねぇ!
「おりゃあ!」
武器を失ったので即座に格闘に移行。四肢を効率的に使い、倒していく。
5…10…15 増えていく死体の山。
掌底で腹をぶち抜き、蹴りで首をへし折り、掴まれたら柔術で投げ飛ばす。こんな事を繰り返す事3分、辺りは血溜まりと骸の山と化した。
「ふぅ…」
「す、すごい…」
身体に疲れみたいなのは無いんだけど、ストレス溜まるわ囲まれると。神経がすり減るって奴かな。
「豚、壁に刺さっている私の刀を…」
「あ、はい!」
壁から抜き、手渡された夜桜を受け取って拭って鞘に収める。ダンジョンが管理される様になってからダンジョンブレイクが起きた話は聞いた事がない。少なくとも俺が産まれてからは1度もない筈だ。
「橘さん、これ……ダンジョンブレイクですよね?2層の件と関係あるのでしょうか」
「分かりません…とりあえずここを出て聞いてみましょう、薄らと戦闘音が聞こえるのでまだ探索者達もいるはず」
「そうっすね…って!橘さん、モンスターがゲートからまた!」
「チッ!早く離れますよ!」
俺達は急いでその場を後にした。
20分前 池袋支部
「白銀探索者以上は直ぐに戦闘配備を!それ以外の方達は直ちに避難して下さい!!それから事務方は関係各所へ連絡を!」
あの後ダンジョンから戻った田村は須藤の指示通りに報告、今は避難訓練の際の指針を元に行動していた。
「田村さん!ウチは避難終了しました、手伝います」
「助かります、では上の階にいる職員達の避難誘導を……」
「モンスターだ!!本当に来たぞ!」
別の課の職員数名の助勢。
その人達に指示を出そうとしたタイミングで、ダンジョン行き通路を張っていた探索者の1人から声が上がった。
「なっ!もう上がってきたの!?嘘でしょ!?」
田村達がこちらに戻ってきてから1時間も経っていない。それにまだ向こうには須藤さんがいるはずだ、これは流石におかしすぎる!
グォォォオオ!!
通路の奥、サイの様なモンスターが咆哮し、盾を構える探索者達へと突っ込んでいく。
「まずいわ!とにかく非戦闘員は外にっ!」
言い終わる前に盾とツノが衝突し、甲高い音が響き渡る。
「やれ!押し込め!」
「オリャァァア!!」
そして続く戦闘音。それは戦えないものらに恐怖となって伝播した。
「「きゃぁぁぁ」」
「「早く外出ろ!こっちくるぞ!!」」
綺麗に列となって避難していた者達が出口へと一斉に大挙していく。運が悪い事に人が多かったのも相まって、場は瞬時に混沌と成り果てた。
「止まってください!!押さないで!!」
「探索者達が防いでいます!!皆さん落ち着いて下さい!」
避難誘導をしていた職員らの静止の声。だが1度起こった流れは堰を切ったように止まらない。
「くっ、こうなったらもう避難誘導も無理ね……戦えるものは直ぐに戦闘に合流、出入口には絶対に行かせないで!!」
田村は槍を換装、直ぐに戦闘へと合流していった。