ts転生者、脳を灼く   作:Y.Y@TSスキー

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26話 崩壊する池袋支部

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

 

荒い息を吐く。

 

 

 

戦闘が始まってからどれくらい経っただろうか、絶え間ないモンスターとの命のやり取りに、田村は肉体と精神を大きく摩耗させていた。

 

 

 

「何時まで出てくるのよ…」

 

 

 

数えるのも億劫な程の数…。外にもチラホラと漏れていて、その対応に出た探索者も多くこの場には50人ほどしか居ない。

 

 

 

加えて戦闘不能で徐々に減る戦力。

 

 

 

最前線である支部はもう、半ば瓦解していた。

 

 

 

ガァァア!

 

 

 

「マズッ…!」

 

 

 

一瞬の思考の間、抜けて来た猿型モンスターが脇から飛びかかる。咄嗟に槍の頬杖を突き出すが間に合わない!やられる!

 

 

 

「ファイアランス!!」

 

 

 

田村がそう思った直後だった。声と共に猿を白熱したレーザーが貫き、その胸部を大きく消失させた。

 

 

 

腰を抜かし、へたり込む。

 

 

 

「そこの!!大丈夫か!!」

 

 

 

「あなたは確か…」

 

 

 

「クラン【赤き牙】のリーダーの峰村みねむらだ、ウチの斎藤がいつも世話になってる」

 

 

 

差し出される手。その手を借りて立ち上がる。赤き牙…本拠地は新宿で、在籍する24人のメンバー全てが魔術師な事でも有名なクランだ。

 

 

 

「田村です…助かりました」

 

 

 

「気にするな、当たり前の事しただけだ…っと!」

 

 

 

杖を構え、ビームを田村の後ろに放つ峰村。それはこちらに迫っていた蜂型モンスターを貫いた。

 

 

 

「だー!くそっ!新人勧誘に来たらダンジョンブレイクかよ…厄ネタ掴まされたもんだ」

 

 

 

「勧誘…ですか?」

 

 

 

「あぁ、なんかダンジョンスレの掲示板で見たんだが、須藤スイッチ入れた奴がいるんだろ?魔術師かもって聞いたから出張ったんだよ」

 

 

 

「あー…」

 

 

 

絶対柚希の事だと田村は思った。

 

 

 

「お?心当たりある感じ?教えてよ」

 

 

 

「個人情報ですので、答えられません」

 

 

 

「命の恩人に冷たいなぁ…まぁそれは後できっちり話すとして…」

 

 

 

田村が立て直すのを待ってから峯村が背を向ける。

 

 

 

「このままじゃ持たねぇぞ、これは」

 

 

 

視線の先には今も戦う探索者達の姿。

 

 

 

傷だらけで武器を振るう者、その後ろから魔法で援護する魔術師、負傷した者を治癒するヒーラー。彼らの殆どに濃い疲労が伺える。

 

 

 

「倒しても倒しても出てきやがるし、おまけにレベルも高い…援軍の見込みはあるのか?」

 

 

 

「本部と国には緊急の連絡を入れてあります…おそらくあと1時間もすれば来てくれるかと」

 

 

 

「1時間か…こっちも知り合いのクランに連絡は入れてあるが、早くても30分はかかる…」

 

 

 

話しながらも魔法を放つ峯村。背を向けている為表情は分からないが、声音からは苦悩が伺えた。

 

 

 

「…一旦前線を下げるしかねぇ…」

 

 

 

「そんな!それでは外にモンスターが!」

 

 

 

「既に何体も抜けてる…もうこうなっちまったらしょうがねぇだろ、建物ん中で乱戦やってこれ以上戦力削ったらそれこそ…ん?」

 

 

 

話しながら峰村は異変に気づく。

 

魔力感知のスキルが空気に走る魔力を察知したからだ。

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

そう思った直後。

 

 

 

ォォォオオオオ!!

 

 

 

ダンジョン方面の通路から信じられない程魔力の乗った咆哮が響き渡った。

 

 

 

「うぉ!!」

 

 

 

思わず身が竦む。辺りの探索者の何人かも当てられたのか膝をつく。

 

 

 

ズシン……ズシン…

 

 

 

原始的本能による静寂、一瞬の間。

 

 

 

その中で妙に響く奥からの足音。…くそ!不味い!内包する魔力…それを魔術師故に感じ取った峰村は杖を握る手に力を込めると

 

 

 

「ソーラーレイ!!!」

 

 

 

「峰村さん!?」

 

 

 

即座に通路に向かって今放てる最大の魔術を放った 。

 

 

 

先程の比では無い白熱した閃光。峰村の残存魔力のほぼ全てが込められ、超速で放たれたそれはモンスターを巻き込みながら通路の先へ吸い込まれて爆ぜる。

 

 

 

ドゴォオオオンッ!!

 

 

 

建物が揺れる。

 

 

 

辺りの壁や天井が砕け散り、爆風が砂嵐と共に吹き荒れる。

 

 

 

「うぅ…」

 

 

 

モクモクと立ち込める砂煙。とんでもない威力…確実にレベルは70を超えている。斜線上にいたものは一溜りも無いだろう。

 

 

 

「……」

 

 

 

厳しい視線を通路へ向ける峰村、そして探索者達。モンスターも威嚇しつつ動きを止めている。

 

 

 

「峰村さん…なぜあんな威力の魔術を…建物が倒壊したら私達も…」

 

 

 

「……やっぱ無理か」

 

 

 

田村の言葉を無視し、峰村が呟く。

 

 

 

晴れていく砂埃…その奥。

 

 

 

ズシン……ズシン……

 

 

 

再度響く音と共に現れたのは

 

 

 

グォォオオオオッ!!!

 

 

 

青い肌をした、6本の腕を持つ巨人だった。

 

 

 

「嘘!!ヘカトンケイル!?」

 

 

 

思わず声を上げる田村。

 

協会職員は職務上、モンスターに詳しい。ヘカトンケイルは50層にいるボスモンスターで、レベル70超えの探索者4人の強さと同等の評価。

 

 

 

だがこれはおかしい…

 

 

 

何せ50層は50層でもヘカトンケイルは…

 

 

 

沖縄、那覇ダンジョンのボスモンスターだから

 

 

 

 

「縺ェ…薙□繧810溘蜑…」

 

 

 

ヘカトンケイルが何かを口にし、ニタリと牙を向き出しにする。その視線の先には…

 

 

 

峰村がいた。

 

 

 

「はは!…あいつからは逃げれそうにねぇな…斎藤の野郎、なんで今日に限って池袋に居ねぇんだよ…」

 

 

 

思わず愚痴が出る。

 

魔力は雀の涙、おまけに周囲はモンスターだらけのバッドコンディション、逃げる事も出来ない。

 

 

 

年貢の納め時だな…腹くくるか。

 

 

 

「うぉぉぉぉお!!」

 

 

 

峰村は恐怖を押し殺す様に咆哮し

 

 

 

ヘカトンケイルへと突っ込んだ。

 

 

 

 

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