ts転生者、脳を灼く   作:Y.Y@TSスキー

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27話 しにそうやんけ

 

 

「…中々大変な事になっていますね」

 

 

 

走りながら思う。

 

破壊痕がすげぇ事になっとるやん…と。

 

 

 

協会の建物はダンジョンとの関係上、くっそ硬い。なのに通路の真ん中辺りでクレーターが出来上がってる。モンスターがやったのか人がやったのかは知らんけど中々の威力だな。

 

 

 

「橘さん…速いっ…です」

 

 

 

そんな事を考えてると後ろから声がかかる…まーた豚が息切らしながらぶひぶひ言いだした。

 

 

 

「あなたが遅いんですよ…豚」

 

 

 

「そんな、もうヘロヘロなんです…これ以上はキツイですよ」

 

 

 

「ではどうしろと?後ろではモンスターが湧いています、これ以上速度は下げれませんよ?何か方法、あります?」

 

 

 

走るしかねぇんだよ。そんな意味を込めた俺の言葉。

 

だが豚野郎は何を血迷ったのか暫し逡巡した後、モジモジしてこんな事を言い出した。

 

 

 

「あの…また、おんぶして欲しいなって」

 

 

 

「……」

 

 

 

俺は黙って走る速度を上げる。

 

 

 

「橘さぁん!待ってぇ!後ろからモンスター来てるんすよぉ!死んじゃう!」

 

 

 

「死ねばいいじゃないですか」

 

 

 

「1回してくれたんだからいいじゃないですか!」

 

 

 

「……」

 

 

 

はいガン無視確定。死にたくないなら走れ。1回は助けてやったんだからありがたいと思えよまじで。

 

 

 

「橘さぁん!……っ…っ」

 

 

 

どんどん遠くなる声。

 

 

 

奴を置き去りに通路を抜ける。

 

 

 

その先で最初に見たのは……

 

 

 

大量のモンスター、満身創痍の探索者共。

 

そして

 

 

 

 

田村さんに拳を振るう一体の青い巨人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉお!」

 

 

 

「峰村さん!無茶ですっ!」

 

 

 

雄叫びを上げ、突っ込んでいく峰村。

 

田村が叫んだが止まる様子は無い。

 

 

 

杖に魔力の刃を形成し、さらに加速、目標へと肉薄した。

 

 

 

「うらァ!」

 

 

 

振るわれる杖。一方ヘカトンケイルはこの段階でもその場から動かない。ただニヤニヤと1連の動作を眺めている。

 

 

 

舐め腐りやがって!

 

 

 

奥歯を噛み締め、力いっぱいヘカトンケイルの横腹に叩きつけられる魔力の刃。峯村のレベルは77、魔術師とはいえそこらの戦士職程度の身体能力はある。

 

 

 

だが…

 

 

 

刃はヘカトンケイルの肉を斬る事無く、皮一枚の所でピタリと静止した。

 

 

 

「…は?」

 

 

 

想像とかけ離れた手応え。峰村は小さい頃、斧で大木を叩いた時の事を思い出す。

 

 

 

「マジか…ありえねぇ…」

 

 

 

圧縮した魔力。それを最大限に威力の出る大きさで刃としたのだ、魔力量は関係ない。ただ峰村ではダメージを与える事すら出来なかったのだ。

 

 

 

「縺?>繧医%縺?h」

 

 

 

茫然自失とする峰村。ヘカトンケイルは「満足したか?」と言わんばかりに何かを発した後、峰村の手を杖ごと掴み…

 

 

 

ベキッ!…メキメキメキッ!!

 

 

 

人外の膂力で握り潰した。

 

 

 

「ァァァァァアッ!!」

 

 

 

「峰村ぁ!!」

 

 

 

他の探索者達と共に、モンスターと闘っていた金タグ探索者の山本が峯村の叫び声に即座に跳躍、ヘカトンケイルへと剣を振り下ろ…

 

 

 

「繧?j縺セ縺吶?縺?シ!」

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

そうとして直前で止める。握っていた峯村をこちらへ投げ飛ばしてきたからだ。

 

 

 

「クソがっ!」

 

 

 

なんとか峯村を受け止める山本。だが、とても戦闘を続けられる体勢では無い。そしてそれを見逃す程ヘカトンケイルは甘くなかった。

 

 

 

「縺溘∪縺偵◆縺ェ繧ァァァア!!」

 

 

 

左半身、三本の腕が山本を捉え、直後魔力の乗った衝撃が足、脇腹、肩へと突き抜ける。

 

 

 

「ガハッ…」

 

 

 

 

3つの拳は防具を粉砕しながら、壁へと山本達を超速で叩きつけた。

 

 

 

「…ゴボッ…」

 

 

 

立ち上る砂煙。剣を支えになんとか立ち上がった山本。だが左足は折れ、内蔵もいくつかやられたのか吐血する。

 

 

 

「生き…でるが…みねむら…」

 

 

 

「なん…とかな…助かっ…た」

 

 

 

一緒に受け止めた峯村を見やる。叩きつけられた衝撃か腕はあらぬ方向に曲がり、荒い呼吸を繰り返している。

 

 

 

「そりゃ…よがっ…た…でも…こりゃ」

 

 

 

「おわり…だな…」

 

 

 

チカチカとする視界の中。

 

 

 

目に映るのはこちらへ悠然と近づくヘカトンケイル、そしてモンスターに必死に抗う満身創痍の探索者達の姿。今この場で助けに入れる者はいない。

 

 

 

「蝗帙▽繧馴?吶>縺ォ縺ェ繧…」

 

 

 

2人を見下ろしながら足を上げるヘカトンケイル。最後のあがきも…出来そうにないな。

 

そう覚悟を決めた時、紅い槍がヘカトンケイルに突き立ち、踏み潰そうとした足が止まる。

 

 

 

「やぁぁぁぁあ!」

 

 

 

「縺ェ繧薙□繧。?」

 

 

 

田村だ。彼女は少しでも2人から引き離そうと、必死に突き、横凪ぎ等を繰り出す。無論、ヘカトンケイルにダメージはない。だがうっとおしかったのかハエでも払う様に腕を振る。

 

 

 

「だむら…」

 

 

 

「早く逃げてください!」

 

 

 

「やめどげ…じぬぞ…」

 

 

 

ゴウッ!田村の眼前を腕が通り過ぎる。それでも田村は覚悟のキマった顔でめちゃくちゃに槍を振るう

 

 

 

「お2人以外…くっ!、今金級はいません!私が…ここで死んでもッ!…まだ立て直せる、チャンスがっ!…残ります」

 

 

 

そういう事だった。ただこれは協会職員としての使命感から来るものだけでは無い。戦うものしか分からない想い、そして探索者としての意地が、田村を突き動かしていた。

 

 

 

「わがっだ…感謝する…」

 

 

 

「お前の…事は…忘れない…」

 

 

 

足を引きづりながら、周囲のモンスターに気づかれない様に後退していく2人を田村は微笑みで見送る。

 

 

 

「残業はなしになりそうです…」

 

 

 

槍を振いながら、田村はそう思った。余程うっとおしかったのだろう…ヘカトンケイルが構えたからだ。

 

 

 

「…はは、なんですかこの魔力…」

 

 

 

立ち上るオーラに思わず笑う。絶対に勝てない、それは分かっている…なら最後くらいイタチっぺをかましてやろう。

 

 

 

「はぁぁぁあ!」

 

 

 

田村は全ての魔力を穂先に込めて突きだす。

 

 

 

自分が今放てる最高の一槍

 

 

 

だが2本の腕で、簡単に槍を掴み取られる。

 

 

 

「繧ア繝?ゥエ遒コ!!」

 

 

 

そして山本を吹き飛ばした拳が田村に迫った。

 

 

 

目を瞑る。流れゆく走馬灯、楽しい人生ではなかったけれどもっと生きたかったなぁ…

 

 

 

「お母さん…」

 

 

 

最後に出た言葉がこれか。

 

 

 

受け入れた死を待つ。

 

 

 

1秒…2秒……。

 

 

 

いつまでもやって来ない衝撃。そして

 

 

 

「繧ア繝?ゥエ!!!」

 

 

 

ヘカトンケイルの咆哮。

 

 

 

田村は目を開けて確認する。

 

 

 

そこには……

 

 

 

「田村さん…私はあなたの母親ではありませんよ?」

 

 

 

腕を三本切り落とされ喚き散らすヘカトンケイルと

 

 

 

「柚希ちゃん……」

 

 

 

橘柚希の姿があった。

 

 

 

 

 

 

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