ディストピアの世界で危険な結婚生活を   作:wakawaka

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公安執行部という名のブラックへようこそ

 公安執行部それは警察では介入することが難しい機密性の高い部類の事件を捜査し、極秘裏に逮捕、または抹殺する特殊な組織であり国家の番犬である。

 

 そこに配属されるには余程の適正が必要であり、その訓練も苛烈を極める。その分、給料といった部分は破格だが、命のリスク、下手をすれば国その者に消される可能性も考えれば誰も就きたいとは考えない仕事である。

 

 つまり最低最悪の仕事である。

 

 私、若葉梓は大学卒業後22歳でそんな地獄に放り込まれたのだ。

 

 そこから5年間、私は地獄を生き延び、毎日を鬱病ともに生きてきたが、今日、私の目の前は煉獄が広がった。

 

「・・・先輩。なっちゃん、コウ、隊長、皆。」

 

「誰かのためなんてやってるからこうなるんですよ?」

 

 目の前に広がるは仲間達がいたビルが爆発して倒壊した瓦礫の山だ。周辺では救急車と消防車が何台も到着し大規模な消火活動が行われていた。

 

 私の所属していた第一執行部は私以外全員ビルの崩壊と共に連絡を絶っていた。

 

「そんなのないですよ?うちの仕事量どれだけあると思ってるんですか?これから一人で頑張れってことですか?無理ですよ?。」

 

 私はそんな現場にいて出てきた言葉がこれであった。私はもう狂っているらしい。いや人でなしってことでしょうか?

 

「『誰かのために戦え』って言われてももう、私だけで何が出来るって言うんですか?」

 

 その時、私は隊長の言葉を思い出した

 

『いいか!私達の存在理由は・・・』

 

 それは、理想ごとでありこのディストピアとなってしまったこの国に生きる上では決して口に出してはいけないことだった。だが、隊長はことあるごとに私達にそれでも伝えてきた。私達に受け継いでくれと言わんばかりに。

 

「・・・あああああ!もう!何で!」

 

 私は引き継がなくてはならない。死した先輩の意思を無視することだけはどうしてもできない。それだけは、それだけは屑な自分にしかできないから。

 

 

 

 そして私はAIお見合いに手を出したのだ!

 

 

 

 

 うん。何やってるんだろ?こんなリスキーな職場で、機密性がクソ程高いものを扱ってて、下手をしたら巻き添いで国家に殺されるかもしれない私の夫になりたい奴は居るだろうか?(なお、公安執行部は秘密組織なためお見合いの職場記入欄には警察官と書かれるため夫側は知ることができない。)

 

 いろんな意味で頭が可笑しくなった私はどうやら人肌を、理解者を、一緒に背負ってくれる人を求めたようだった。

 

◆◆◆

 

 

「急げ!情報をかき集めろ!」

 

 このディストピアとも言われる世界であったとしても重要な事柄には人の手が必要だ。

その人選を行うのがこの特別監視官達の役割である。しかし、現在はその場は地獄の戦場となっていた。

 

「しかし、一斉襲撃とは・・・。」

 

「執行部内に裏切り者が入り込むこと自体異例です!」

 

「失ったモノが多すぎるな。」

 

 執行官はエリートの中のエリートだ。育つのにもバカにならないコストが掛かる。それらを失ったことは国家にとって想像以上の痛手だ。

 

「『アストレア』はなんと?」

 

「若葉執行官を課長に昇格させ、彼女を中心とした組織の再生を指示しています。」

 

「無茶な・・・。」

 

 国家防衛自立型AIシステム『アストレア』正義の神の名を付けられたそのAIは政治から民間企業の争いまで、全てを把握しており国家のためにどうするべきかを総合的に判断することができる。その性能によって現在の国家は過去に類を見ない速度で発達している。そのためその判断には絶対遵守が義務づけられている。

 

「6年目の執行官に課長等出来るわけが・・・」

 

「しかし、『アストレア』の判断は第一に優先されます。」

 

「・・・仕方ないか。」

 

 男は事件の資料を手に取った。

 

「執行官の一斉排除、奴らも本気ということか。テロリスト共め!」

 

「裏切りを許した査問官は記憶消去の上、強制解雇。また人員不足になりますね。」

 

「例の裏切り者はどうなった?」

 

「自決しました。」

 

「クソ!」

 

「事件の全貌も首謀者も不明とは、本当に不味いですね。次同じ事起こったら今度は私達のクビが飛びかねない。」

 

「やむを得まい、それで執行部への候補はどうなっている!」

 

「『アストレア』からの草案ではこの者達が上がっています。」

 

「・・・これは。」

 

「はい・・・全員問題ありとしてたらい回しにあっている者たちです。」

 

「こいつらは不味いだろ。若葉執行官は入って6年目の青二才だぞ!こいつらの手綱を握るのはあまりにも・・・。」

 

「ですが、執行部に入れる者達は適正上限られます。」

 

「だがらといってもこいつらは・・・。」

 

「しかし、彼ら以上の適任は居ません!」

 

「分かっている!仕方ない、この者達を連れて来い!すぐに訓練プログラムに放り込む!」

 

「連絡繋がりません!」

 

「何故だ?任務中か?」

 

「いいえ、通勤はしているようです。恐らくデバイスごと電源を落としているのかと・・・。」

 

「勤務中にデバイスの電源を落とす奴がおるか!?」

 

「恐らく、それ故に問題児なのかと・・・。」

 

「どうしてクビになっておらん?」

 

「その・・・優遇処置がされてるようでして。」

 

「な!?」

 

 勤務態度、そして実績両方が伴わなければ彼らは簡単に解雇される。この社会では優秀でない者は不要なのだ。しかし、一部の例外が存在する。それはあまりにも大きな実績を上げた者達だ。その者達は国家に有益と見なされある程度の優遇処置がされるようになる。だが、彼らが常にそうあり続けるかは本人次第なのでそのまま腐っていく者達もそれなりに存在する。

 

「・・・何故『アストレア』はこの者達を?」

 

「仕方あるまい。『ゴッドアイ』を起動!すぐさま全員を探し出せ!」

 

「はっ!!」

 

「・・・これからこいつらを指揮することになるのがこの娘とは。」

 

 男は黙って心の中で色々な意味で黙祷を捧げた。

 

◆◆◆

 

 数日後、ついに新たな第一執行部が組織された。

 

「課長の獅童梓です。よろしくお願いします。」

 

「あれ、課長って若葉執行官では?」

 

 いきなり質問してきたチャラついた男は「南部勇執行官」だ。元はその身体能力と勘の鋭さで多くの犯罪者を見つけ逮捕してきた警察官。しかし、暴力的な行為が多発し現在に至る

 

「つい昨日婚姻届を出したので。名字が変わりました。」

 

「ええ!?早く言って下さいよ。お祝いぐらいしますよ?」

 

 物静かな印象をもったロングな黒髪を下げている女性は「物見静執行官」。態度は良いがその実あらゆる薬物のエキスパートであり薬物犯罪で大きな貢献をした。薬物が好きすぎて自分で試すだけに留まらず何度か周りにも盛った。

 

「課長止めといた方が良いっすよ。こいつ絶対何か盛るんで。」

 

 そう注意する少し人なつっこそうな青年は「渡部凜執行官」。最年少でこの公安にスカウトされた天才。将来を有望されていたが気分屋で事件の解決のスピードもその気になればものの1日でやり遂げる。だが、やる気を出さなければ一切役に立たないゴミ以下になる。(ほとんど役に立たない。)

 

「・・・・そうですか。それで他の3名は?」

 

「知りません。」

 

「知りません♪」

 

「知らないっす!」

 

「はああああああ・・・。」

 

「あ!大きいため息!そんなことしたら幸福が逃げてしまいますよ!」

 

「そうですね。あの、どうしたら他の3人が来るか知ってる方います?」

 

「まあ、クビを切り出せばくるんじゃないですか?」

 

「・・・・・・。」

 

「あ!こいつらと仕事するのかあって顔してる!」

 

 獅童梓の苦労が幕をあけるのだった。




 実は主人公は容姿はそれなりだったが、あまりにも表情が死んでいるため話しかけられることが無かった。(本人は無自覚)
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