女の敵のわるーい先生シリーズ   作:ブルアカ二次創作@本拠地はpixiv

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 これまでのあらすじ
 ナギちゃんがわるーい先生に拘束されて深いキスを覚え込まされてしまった!女の敵のわるーい先生に悩殺されちゃだめだ!がんばれ!負けるな!画面の前のみんなもナギサを応援しよう!



わるーい先生がナギちゃんの綺麗な翼をゲヘナ風ピアスでばちばちにして、価値観を改造してあげるお話

「……………………」

 暗い自室で一人、ただただ天井を見上げ続けていました。

 もう十二時を回っています。

 眠くないわけではありません。しかし寝ると……決まって、先生の夢を見てしまうのです。

 淫靡で背徳的な、あの日のことと……。

 その先の、私の空想も。

 

 あの日の十数分に及ぶ深い深いキスによって、小さい頃から模範であるよう教育されてきた私の頭は、すっかり茹であげられてしまいました。不可逆的な堕落の印を刻まれた私はもう、以前の桐藤ナギサには決して戻れないのでしょう。

 茹でた卵が、生卵には戻らないのと同じように。

 

 先生は、私を愛してくれているのでしょうか?

 聞いても、先生は誤魔化すばかりでした。

 好きだとは言ってくれます。好みだとも。そして、……私のことが欲しい、とも。

 ……私には、先生の愛の形がまったく掴めません。

 これはきっと、先生が倒錯した恐ろしい大人だから、というばかりの問題ではありません。だって先生は、少なくとも表向きは完全な紳士です。私たちを救ってくれた、シャーレの先生なのです。例え本性がどうであれ、彼が英雄的な超人であることには何の変わりもないのです。

 問題は、私でした。

 思い返せば……先生も極端な人ですが、私だって随分極端な育てられ方でした。徹底的に汚いものを遠ざけられ、教養を叩き込まれてきた私。

 私は多分、ここでしか生きられません。トリニティの外に一歩出ればもう、世間知らずの無力な少女です。

 

 例え、恋人として普通に先生から愛されたとしても、きっと先生の気持ちは理解できなかったでしょう。

 私がヒフミさんに言っていた愛は、ペットに向けるようなそれでした。思い出して、客観視してみて初めて気付いたことです。

 

 こんなことは考えたことがありませんでした。先生に……壊されて、食べられてしまうまでは。

 

 ちくたく鳴る、時計の音が耳につきます。

 気晴らしにベランダにでも出ようか、と思った時、枕元の携帯電話が鳴りました。

「どなたが、こんな時間に……先生!?」

 すぐに電話に出ました。

 

「こんばんはナギサ」

 声を聞くだけで、一瞬身体にぞくっとした感覚がしました。

「……こんばんは、先生」

「やっぱり起きてたんだね。大丈夫?寝付けてる?」

「……眠れは、します」

 彼は「はっはっは」と笑いました。

「……初めてこういうことしたなら、最初はそんなものだよ。でも寝ないと身体壊しちゃうから、ちゃんと、いい子でお休みね。わかった?」

「……でも、でも……せ、先生のせいですよ!寝たら……あの、感覚が、何度も……」

「していいって言ったの、ナギサじゃない」

「うぅっ……」

 本当に、本当にずるい人です。

 私はもう、逃げられないのに……。

 こうして理不尽なことを言われても、少し幸せに思えてしまうほど、私は変えられてしまったのに。

 もう先生が私に関心を向けてくださるだけで、とろけるように幸せで、どう扱われても嬉しく思ってしまって、そして私はそれを表に出さないように努めます。

 でも、すぐに見透かされて、また、いじめられて……覚え込まされるのです。

 「ふふ、とりあえずモモトークに、自然の音のサウンドファイルを送っておいたよ。多少マシにはなると思うから使ってみて。イヤホンでもいいし、タイマーで切れるようにして普通に流してもいいよ。お好きなように」

「……お気遣い、ありがとうございます」

 先生が私を心配してくれた。

 先生が私を大事に思ってくれた。

 羽がぱたつきます。対面でなくてよかった。きっと、からかわれていたでしょう。

「あ、ナギサ、今羽ぱたぱたさせてるでしょ」

「うっ」

 電話でも同じでした。

「ナギサとはすっかり距離が近くなったからね、音で聞こえるわけじゃないけど、なんとなくわかるよ」

「……いじわる」

「嬉しいくせに」

 ……頬が紅潮します。

 もう、寝付けないかもしれません。

「……ナギサ、いい子で寝るんだよ。わかった?」

「はい」

「素直な子は好きだよ。お休み」

「先生も、お休みなさい」

「あ、私はまだまだ仕事」

「す、すみません」

「いいんだよ、みんなのためだから。おやすみなさーい」

 電話が切られました。

 ……この人は功も罪も大きすぎます。

 いったい、どちら側が本当の先生なのでしょうか。

 両方とも、本当であってほしいです。

 優しい先生が嘘でも、あの先生が私にかけてくれる意地悪な言葉が嘘でも、どちらも嫌でした。

 

 

 

「ナギサ、羽根にピアスつけていい?」

 日中のお茶会で、当然切り出されました。やっぱり優しい先生は嘘なのかも、と思いました。

「……ぴ、ぴ、ぴ」

「ピアス。わかる?」

 流石の私でも知ってはいます。

「……だ、だめです!周りにバレてしまうではないですか!」

「ナギサの羽毛はきめ細かいから、ちょっと整えれば穴は誤魔化せるよ。ピアスは私といるときだけつけてほしいんだ」

「……か、体に穴を空けるなんて、そんな」

「私も昔つけたよ?耳に」

 想像すると、なぜか恥ずかしくなってきました。

「……うぅ、その、先生の、しゅ、趣味にお応えしたいのは山々なのですが、さ、流石に抵抗が……」

「今更でしょ、毎晩エッチな夢見てるくせに」

「なんで知ってるんですか!あっ……」

「んんー?」

「〜〜〜!!!!」

 私はロールケーキを掴みました。先生の口にぶち込むために。

 しかし。

「怒っちゃうナギサ、可愛い」

「……………………う、うぅ」

 手が止まります。

 ただ可愛いと言われるだけで、もう何もできなくなってしまうのです。

「……ふふ、可愛いなぁナギサ。写真撮っていい?待ち受けにしたいな」

「……………………うぅ、もう好きにしてください……」

「わーい、じゃピアスもいいんだね?」

「……いやそれはちょっと、その……」

「ナギサ」

 

 先生は立ち上がって、私の頭を撫でました。

 殺人的なオキシトシン(幸せ)が脳を駆け巡ります。

 そして低い声で、私にささやきました。

「ナギサが選んでいいんだよ。私、ナギサに嫌われるのは嫌だから、無理強いは絶対しない。どうする?」

 

 私の頭が、馬鹿になっていきます。

 全部、全部、この人に差し出したくなります。

 もう抗えません。

「……つけます。つけてください」

「いい子だね。はい、ご褒美」

「あっ……」

 ハグをされました。男性の大きな体に、包まれます。

 この世の全部の不満や悪が、死に絶えていくようでした。

 

 

 

 私の部屋で二人、化粧台の鏡に向かいます。

 後ろに立つ先生の手には、ピアサー。そして化粧台のテーブルの上には、かの有名な羽ピアスの図。精巧な羽のイラストには、点が穿たれています。これが、出血のない位置なのです。

「……ナギサの羽根、ほんとに綺麗だよね。このままでもいいけど、ミカとかアズサみたいに飾ってもきっと素敵だと思ってさ」

「ありがとうございます。……しかし、その、これは、これ、は……」

「ん?これ私のチョイスなんだけど、変かな?」

 先生が、ピアサーと逆の手に持つのは……大きなハートの飾りでした。

 ピンクや赤ならまだしも、黒と紫のツートンです。

 ……ゲヘナ生がつけるような色合いです。

「どうして、この色なんですか?」

「ナギサを私の色に染めたいから」

「……先生の、色ですか?」

「うん。今のナギサは真っ白だからね。反対の色が私の色かなって」

「……しかし、その……私は別に、正義実現委員会の皆さんのように、ゲヘナを強く憎んでいるわけではありませんが、それでも少し……」

「あ、やめる?いいよ別に。他の人につけてもらえばいいしね。アズサとか」

 不安感に潰されそうになります。

「……」

「なーんてね。私はナギサ一筋だよ?ふふ」

 先生の目は、笑っていないように見えました。

「…………せん、せい」

「……ねぇ、実際、どう思う?結局どっちだと思う?」

 この間、先生は言いました。アズサさんが、完全に……先生のものに堕ちているのだと。

 ……それが本当なら、私は、私は……。

 

「……えいっ」

「わぁっ!?」

 後ろから突然ハグをされました。

「ほら、深呼吸深呼吸。こうしてくっつくと落ち着くでしょ。ね?ごめんね!言い過ぎた」

「……は、い」

 心が落ち着いて……先生を疑った自分を恥じました。

 しかし先生は、まるで私の心が読めるかのようでした。

「ナギサが私を疑うのは、当然だよ」

「いえ、決して、そんな」

「いいんだよ、わかるから。……だって本当の私のことを、ナギサは何も知らないじゃないか」

「…………」

「わからないものは怖いし、疑って当然!だから、君のその感覚は正常。ね?私はそんなことじゃ怒らないよ。それに、例え私が怒るようなことを君が故意にしたって、全部許してあげるよ。私は大人で、君は子供なんだから」

 いつもの……先生の言葉でした。

 この人の精神構造が、私には全く想像できません。

 それで、つい聞いてしまいます。

「……先生は、どちらが本当の……先生なんですか?」

「君が信じたい方を信じればいいよ」

 即答でした。

「……」

 先生はにっこり笑いました。鏡に笑顔が映っています。

 ……私にもわかってきました。私に、選択をさせるときの先生の顔はこれなのだと。

「……でも、一般論としてさ。ナギサが私を信じてくれるなら、信頼で報いたくなっちゃうよね、やっぱり。そうしてくれたら少し、贔屓目に見ちゃうかも……例えばさ?これ、持ってみてよ」

 大口径のハンドガンほどの大きさのピアサーを渡されます。

 そして、左の翼を優しく手に取られ、座る私の膝元へと導かれました。

「……ナギサが自分の手で開けてくれたら、もう、私はナギサのこと、絶対裏切りたくなくなっちゃうなあ」

 めまいがしました。

 先生の声が、反響しているかのようです。

「……あ、あ、あぁ」

 身体が痺れます。

 奇妙で破壊的な快楽と恐れが、稲妻のように身体を這っています。ぞくぞくと全身が震えます。

 先生はあくまで優しく、私の手の平を握りました。

「……ああ、手が冷たくなっちゃってる……ごめんね、君が可愛くて可愛くて、いじめ過ぎちゃった。……次会えるのはまたしばらく先だけど」

 また耳元です。

「……もう今日はやめようか?」

 

 

 

 私はなぜか、笑っていました。

 吹っ切れてしまったのだと思います。私の価値観の大事な回路がとうとう、焼き切れたのです。

 図の通りに、翼の上方の一番外側の点にピアサーをあてがい、ひと思いにトリガーを引きました。

 痛みが走ります。

「……う」

 血こそ出ませんが、想像よりもずっと、痛くて痛くてたまりません。

 しかし、苦痛は長く続きませんでした。

 先生が助けてくださりましたから。

「偉いね。ご褒美だよ」

 先生の、分厚くて大きい身体。

 いつもよりちょっと強い、たくましい抱擁。

 ……抱き締められると、痛みがどうでもよくなりました。

 まるで他人事のようです。むしろ、痛いのが少し、心地良いとさえ思えてきました。

 悪魔である先生に、魔法をかけられたのでしょうか?

 こんなのに、勝てるわけがありません。今までの人生でずっと私が無意識に欲してきた、信頼できる大人からの認知と愛情は、あまりに甘い、万病万痛への特効薬です。

 私は続けて、どんどん翼の上部の骨沿いに穴を開けていきました。

 三つ。四つ。五つ。六つ。七つ。八つ。九つ。

 流石に涙が出ました。それをみた先生は、私の涙を舐め取って、頬に優しいキスをくれました。

 ああ嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい、嬉しい。

 先生が承認してくださるのなら、もっと直接的な自傷行為だってできるかもしれません。幸せすぎて怖いです。

 達成感と快感に身を震わせて、私は、少し、知らない感覚に包まれました。

 思考が停止し、ただ浮かぶような心地に支配されます。

 先生はずっとずっと、頭を撫でてくれました。

 

 

 

 先生曰く、翼を片方だけ変えちゃうのが一番興奮する、とのことでした。

 翼の上辺に沿うように、黒と紫のハートや、デフォルメされた悪魔の角など、どことなくハロウィンチックな飾りが並びます。

 私の好みかはどうでもいいことでした。

 だって先生が、「似合ってる。すっごく、似合ってるよ」と何度も褒めてくれたのですから。それなら私の意思なんて、なんの価値もありません。

 ……幸せです。

 写真も、沢山撮られてしまいました。

 

 

 

 その晩、私は化粧台の鏡に、とても無垢な笑顔で向かっていました。

 なんだかとても頭が冴えています。鏡に映る自分の笑顔は、貴族社会の汚さを知らなかった頃の私の顔でした。六歳ぐらいの私が、そのまま今の私に憑依したかのよう。

 ピアスは外して、先生が持ち帰りました。穴を隠すのは本当に簡単で、生まれつき羽毛がふわふわしていることに初めて感謝しました。

「……ふふっ、ふふふ」

 笑えてきます。

 私は、変わりすぎました。

 なぜだか私はミカさんのことを思いました。あの幼馴染のことが、純粋に面白く思えてきたのです。

 ミカさんは先生が好きで、先生もミカさんにとても気を遣って接しています。壊れ物を扱うかのように。

 でも先生は本当は……女の子にこんなことをする人です。

 そしてミカさんは、それを知らない。

 それが、ただただ面白いのです。

 私はしばらく笑って、すぐにベッドに入り、すんなりと夢に落ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アロナの助けも借りながら、なんとか配信アプリの生放送の機能を動かすことができた。

 何に使うか聞かれたけど、当然ごまかした。

「さーて、次はしっかり鞭をあげないとな……」

 

このシリーズのジャンル

  • ホラー
  • 官能
  • サイコホラー
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