女の敵のわるーい先生シリーズ   作:ブルアカ二次創作@本拠地はpixiv

5 / 14
デロ甘回です。多分。
違うんですよ。当初は、自信を持って一般性癖だと言えるものに仕上がるはずだったんだ。気が付いたらこうなっていたんだ。頭がどうにかなりそうだった。というかこの先生性癖終わりすぎだろ。

あ、次回で最終回です。


いっぱい洗脳されて仕込まれた幼いおばか人格のナギちゃんをキスと首輪で意地悪に溺愛するわるーい先生

 

 

 

 

 

 夢でした。

 空も地も何もかも全部が黒く塗られ、輪郭は白で縁取られた世界でした。

 私自身の色はいつも通りのようです。

 私は自分の部屋に、奇妙なねじれた形のドアを見つけました。何故か、身体が勝手にドアを開け、先へ進んでいきます。

 階段でした。地下へと続いているのでしょうか?

 体が勝手に、事務的に降りていきます。

 だんだん、全てが不揃いになります。

 段差の高さ、黒い照明の明るさ、壁中の奇妙な渦巻き模様……全てが無秩序にばらばらになっていくのでした。

 やがて、最下層までたどり着きます。

 また、ねじれたドアがありました。

 開くと……。

 真っ黒い沼、でした。

 プールです。プールの中に、真っ黒いよどんだ泥水の溜まりがあります。

 ……だれかが、沼の中から呼んでいます。

 私に近しい大切な人が。

 ひとっ跳びで、飛び込みました。服や靴や翼が汚れるのも構わず。

 水深は胸ぐらいの高さでした。

 ざぶざぶ進むほどに、声ははっきり聞こえるようになりました。

 

「……ナギちゃん。ナギちゃん……」

 

 ミカさんの声。

 姿が見えないということは、溺れている?

 私は手を沼の中に突っ込みました。

 細い腕。私の幼馴染の腕。

 しっかりと掴み、引き上げます。

「……」

「……」

 お互い黙って見つめ合います。

 彼女は、確かに私の幼馴染でした。しかし……。

 目は、あの日のミカさんでした。瞳はドーナツの形です。

 その疲弊しきった顔には、深い深い悲しみが宿っていました。

「……ナギちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに、自分自身までゴミ箱へ捨てに来たの?」

 疲れ切った笑いを見せ、彼女は吐き捨てました。

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「あっ……」

 ……先生の、膝枕。

 起き抜けの思考は、それでした。

「おはようナギサ。一時間、ぐっすりだったね?」

 そうです、そうでした……。

『ナギサがくたくたの時にやったって何の意味もないから、とりあえずお休みね。おいで。』

 ……先生はそう言い、公務で疲れ切っていた私を膝枕で休ませてくれたのでした。

「君の寝顔、待ち受けにしてもいい?」

 私の写真を見せてきます。……撮られてました。

「……いい、です、よ」

「ふふ、ありがとう。まあもしも待ち受けを見られたら大問題だから、できないけどね。はは」

「……そうですか」

 頭が、ぽわぽわしています。

 

「ナギサ。私が先生辞めたら、嬉しい?」

 

「いえ……ええっ!?」

 一気に目が覚めました。喉がからからに渇いていることを自覚します。 

 先生はおどけて言います。

「ごめーん、なんとなく言ってみた。深い意味はないよ」

「びっくりさせないでください……」

「ははは……黒い服もいいけど、いつもの服装のナギサもやっぱり可愛い」

「うう……」

 変な声が出てしまいます。

 いまだに、可愛い可愛いと褒められることに慣れません。

 『先生の桐藤ナギサ』であれば、結構耐えられるのですが、今はいつもの桐藤ナギサです。

「ナギサ。今日はまだまだ時間があるよ。このまま膝枕しててもいいけど、何かする?」

「……その」

「うん?」

「……今日の先生、少し、変ですよ……?」

 私だって疲れていましたが、先生も、最初に顔を合わせたときから少し、普段と違う様子でした。

 疲労というよりは……張り詰めている、ような。

 今もそうです。どこか物憂げで、緊張している気がします。

「……心配してくれてうれしいよ、ナギサ」

 頭を撫でられました。

 ぞわぞわして……少し、身体が火照ります。

 あの日から、もう何度も、たくさんキスされながら頭を撫でられて、もうすっかり慣らされていました。

 でも……いまだに、ええと、性的なことは、一つもされていません。

 大事にされているのか、それともただイタズラされているだけなのか、よくわかりません。

「ナギサ」

「はい」

「……する?恋人同士がするやつ」

 心を読まれたようです。……にっこりしながら顔を、近づけられます。

「えっ、ええと…」

「ごめんごめん、嘘だよ。生徒とは、する気も起きないよ」

「……そう、なのですか?」

「うん。……してる最中はよくても、終わったら虚しいし」

「…………先生、やはり、どこか変ですよ。いつもはこんなにネガティブな事は言わないはずです……」

「心配ばかりしないの。子どもは夢と前だけ見てなさい」

「こんなことを仕込んでおいて、何を仰るんですか……」

「返す言葉もないな。でもナギサが可愛いから仕方ないよ」

 こんなのきっと嘘です。

 きっと今日だって、誰かに同じようなことを言ったに違いありません。

 なのに……じんじんと、幸せが頭に駆け巡ります。

「まだ君以外にはしてないよ。まだ、ね」

 そしてまた心を読まれました。この人にはどうすれば勝てるのでしょう。

「……先生」

「なに?」

「……いつもの、してもいいですよ」

 

「……嬉しいよ、ナギサ。……私のナギサになってくれる?」

「はい、なります」

 思考が萎んでいきます。

 何度も念入りに掛けられてきた暗示によるものです。

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

「ナギサ、ちゃんと着替えられたね。黒い君もやっぱりいいね」

「はい」

 あたまがぼんやりして、しあわせです。

「羽根のピアス、痛くない?」

「いたくありません」

 いっぱい、みぎのはねにつけられた。じゃらじゃら、かざりがなる。

「ん。ナギサ、私が好き?」

「はい」

「私も、信頼してるよ」

 いつもの、はじまりのあいことば。

「おいで」

「はい」

 ぎゅーをする。おおきなからだ。あたたかいはだ。

 あたまが……おもたくて、ねむいです。

「ナギサ。……今思ったんだけど。私達、少し似てるね」

「ふぇ?」

「ここまで飼い慣らさないと、[[rb:愛 > め]]でることもできないんだから。君も、ヒフミの事を囲って飼おうとしてたでしょ。無理だったけど」

「……ほかのおんなのこのはなし、しないで」

「私のナギサはそんなこと言わないよ?」

 ひくいこえ。

 いや。

「ごめんなさい」

「よしよし、ごめんね」

「ん……すき、これ、なでなですき」

「私の事、好き?」

「すきです。だいすきです」

「そっか」

「せんせいは?」

「……信頼、してるよ」

「ん、ちがうー……ちがうの」

 せんせい、こまってる。わたしのこと、すきじゃないのかな。

 きりふじなぎさのこと、すきじゃないのかな。

「よしよし」

「んんー」

「気になったことは、忘れて?」

「はい、わすれます」

「よろしい。……ねえ、ナギサのベッドで一緒に寝ていい?」

「はい」

「あ、今のナギサに聞いても全肯定に決まってるか……うーん。まあ多分いつものナギサも許してくれるでしょ。お邪魔するね」

 

 ごろーん、した。

 せんせい、じっとわたしをみてる。たまに、かわいいっていってくれる。

 ずっとみてる。はずかしい。

 きすされるの、たのしみだけど、はずかしい。けど、たのしみ。

「……ねえ、ナギサ」

「はい」

「私は、酷い大人だね。君にとってもひどいことをして、その恐怖でもって君を染めちゃった」

 あたまのおくにおもいでがある。

 みかさん、しあわせそう。せんせいといっしょで、うれしそう。

 わたしはもやもや。ずっとずっと、ゆめでも、もやもや。

「せんせい、むずかしいこといってる」

「ふふ、そうだね。おばかさんのナギサ?」

「おばかじゃないー」

「おばかじゃない人はそうは言わないと思うけどな。……ナギサ。君にキスするね。服の前、開いて?」

「……たくさん、して?」

「だーめ。たくさんすると慣れちゃうから一回だけ」

「けちー!」

「貴族にそう言われるの、なんか不思議だな……」

 せんせいはいつも、むねの、ちょっとうえのところにキスをする。

 わたしはそれで、すいっちがはいる。でも、それいじょう、してくれない。

 ふかーいキスと、なでなでだけ。

 いつも、へんにされて……よる、ひとりでする。

 いつもの、なぎさが。ひとりで……。

「また君の事、ひとつ、縛っちゃうからね。よく集中するんだよ」

 ……んっ。

 ……せんせいのくちびる、あったかい。

 ……からだが、ほてってくる。

「……んうっ、ん」

「よしよし」

 なでられるのだいすき。

「んん、んんー!」

「あはははは、ぬいぐるみが喋ったらこんな声なんだろうな」

「せんせ、せんせい……ん、さわって……した、さわって」

「嫌」

「んん、せつないよ、わたし、せつない……」

「切なくさせるためにやってるの。こうすれば私から離れたくなくなるでしょ?」

「わかんない、わかんない……せんせい、ひどい、ひどい……」

「だめだよ、こら、私の足に擦り付けないの」

「んん、んー、ほしい、ほしい、ほしい!」

「ハグならいいよ?はい」

 あったかい。

 あったかいけど……ぜんぜんたりない。

 からだ、ぶるぶるする。

「ん、せつない、せつないよ……」

「切ないねー。いつか、してもらえる日が来るかもね?まあ少なくとも卒業してからだけど」

「……わたし、しゃあれ、いく。しゃあれのひと、なる……」

「いや進学でしょー、多分。お嬢様だし」

「やー!」

「ははは」

「……せんせい、おねがいー。わたしに、して?してよ……わたし、いいよ……」

「私はよくない。それをしたら、終わっちゃう」

「おわるの?」

「そ。一番幸せなところに行っちゃう」

 あたま、なでなでで、ふわふわする。

 せつないの、おおきくなる。

「わたし、いちばんしあわせ、いきたい」

「私は嫌」

「どうして」

「そこまで行ったら、もう落ちるだけだもん」

 わたし、こんなかおするひと、しってる。

 いっぱい、しってる。

 みかさん、せいあさん、うらわはなこさん。

 ほかにも、たくさん……。

「……せんせい、かわいそう」

「えっ?」

 せんせい、おめめまんまるにしてて、おもしろい。

「……せんせい、しあわせ、きらい?」

「……」

「せんせい、しあわせに、なれないの?ずっと、もう、なれないの……?」

「……えーい」

 せんせい、あたまつかんできた。

 かお、ちかい。

「…………ん、んんんん!?」

 きす。

 じゅぷじゅぷ、おとなってる。

 きすの、ふかいやつ。いままでで、いちばん、はげしい。

 ぞわぞわする。

 せんせいのこと、つよくぎゅっとする。

「ん、ん、ん゛んー!!」

 せんせい、はなしてくれない。

 あたま、おさえられてる。なでなで、ごわごわってされて、ひびいてくる。

 すっごい、つよいちからで……わたし、いまよわよわで、かてない……。

 あたま、しあわせで、のぼってる。

 なにか、あふれだしてる。

 あたまのうらがわから、じわーって、あつい、しあわせ。

 あとちょっと。

 もうあとちょっと……。

 なみだ、でて、きた……。

 

「……っぷはあ、はあ、はあ……」

 

 あっ……。

「あ、ああ、せんせい、せんせい、きす、して、あとちょっとなの、あとちょっとなの……」

「ナギサ……忘れた?」

「なにがー!!はやく、きす、してよ、せんせえ……」

「よし、忘れたみたいだね。続きはだめー」

「……んんー!んんー!」

「はは、赤ちゃんになっちゃった」

「ひどい、ひどい……せんせい、わるい!ひどい」

「今更ー?私は悪い大人だよ」

「でも、わたし、せんせいすき!」

「……ありがとう。……参ったな。おばかなナギサ、やたらカンが鋭いな……普段は鈍感寄りなのに……」

「せんせえ、つづき、つづきい……」

「いいよー?ほら、これ」

 せんせえ、かばんからなにかだした。

 じゃらじゃら。

 くさり。くびわ。

 わんちゃんのみみも。

「ナギサは私のペットだからね、相応しい装いにしてあげる。はい、首をこちらー」

「はーい」

「いい子だー。ほい、着けて……犬耳も着けてと。よし、ちゃんと髪の色に合ってるな」

 わたしは、よつんばいになる。

「わん、きゅー、くーん、くーん」

 せんせい、げらげらしてる。つぼったのかな。

「や、ごめん、笑っちゃだめだね!……ごめん、なんか板につきすぎてて……ははは」

「わらうなー!」

「そうだね……はははは。ははは……ごほん。ワンちゃん、お名前はー?」

「わん!」

「よしよーし。可愛い可愛い。おばかなわんちゃんかわいいねー」

 わたし、おばかじゃないけど、いまいぬだからしゃべれない……。

「くーん。くーん」

 わたし、ねころがって、おなかをみせる。

 だいすきなごしゅじんさまに。

「……あっ、これはまずい。新しい扉を開いてしまったな。幼児化ペットプレイ、いいな……」

「きゅー、きゅー……ぴい、ぴい」

「鼻を鳴らすのまでカバーしてるんだね……なんか、やるなあ私のナギサ」

「きゅーん……」

「よしよし。えい」

 おなか……ぎゅって、したのほう、おされる。

「……きゅ、きゅーん、ぴいぴい……」

「いつまで犬の真似してられるかなー?……えい、えーい」

「ん、んっ!……きゅん、きゅ、んっ……!!」

 きもちいい。

 びくって、からだがはねる。

「ああまずいな、スイッチ入ってきた……ナギサわんちゃん、可愛いよ。耳も触ってあげる」

 みみ。

 ……あたまのうえのみみ、いじいじされる。

 そっちじゃない。

 そっちじゃ、きもちよくなれない。

「せんせい、ちがう、ちがうの」

「ええー?犬の耳はこっちでしょ?」

「いじわる、いじわるっ……」

「意地悪じゃない人は、高校生にこんな恐ろしいことしませーん」

「きゅん、わん、わんっ……」

「はは、犬の声でおねだりか……どうしよ。普通に……燃えてきたかも」

「きゅん、きゅん……」

 せんせい、ちょっぴり、こわくて……ぎらぎらしためでみてる。

 わたしのことだけ、みてる。ほかのおんなのこのことはわすれて、みてる。

 うれしい、うれしい、うれしいうれしいうれしい。

「ナギサわんちゃんはすごいね。……君は、本当にすごいよ。今の君は、私の一番好きな君じゃないけど。……でも、かわいいなあ。縛りたいな。もっと……逃げられなくしたいなあ」

 したのおなか、なでなでされる。

 びりびり、する。

「……ここに、……私の、仕込んでもいい?ナギサ……」

「きゅ、きゅーん、ぴい、ん、ん、んんっ……」

「……でも君は、私と、それ以外全部だと……私を捨てちゃうんだろうな」

「きゅーっ、きゅーっ……」

「君のことを縛って、誰の手も届かない場所にしまい込みたい。でも……私にそんな度胸は無いや。君の幸せを奪うことはできないよ。きっと私のことを嫌いになるから。……だから、君自身の脳みそを変えてるんだよ、私は……はは、聞いてないよね。忘れてね。触るよ」

 せんせい、わたしの、ひとのみみ、さわってくれた。

 たくさんかいはつされたおみみ、やさしくゆびでぞりぞりしてくる。

 でんきみたいなびりびり。

 しあわせのびりびり。

「……両耳いじりながら、キスしてあげるね?」

 せんせい、わたしにおおいかぶさってきた。

 ……かたく、なってない。

 せんせいの……。

 わたしのこと、やっぱり、すきじゃないのかなあ……?

「ナギサ。私を見て?」

「みる、みるっ……せんせい、すきっ……」

「……ずっと見ててね」

 みみ。

 せんせい、こゆびを、りょうほうのおみみにいれてくる。

 のうみそ、いじくられてるみたい。

 しあわせ。しあわせ……。

「せっかくだから撮っちゃうね。いつものナギサに見せてあげる。じゃあ行くよ」

「んん、ん」

 ちゅっ。

 まずは、やさしいきす。

 じらし、なのかもだけど、これ、すき。

「……君とのキス、好きだよ。紅茶の味もするしね、ふふっ……」

 ……せんせいのした、はいってくる。

 みみも、たくさんたくさんいじられる。

 きもちいい。

 しあわせ。みたされる。うれしい。

 ひろがる。

 おと、ひろがってる……せんせいのむねも、とく、とく、っていう。

 わたしのは、ばくばくばく。

 しんおん、かみあわない。

 せんせい、わたし、みてる。めが、みえる。

 わたしも、みる。

 ……みてるのかな。

 いま、わたしのことみてるのかな、せんせい……。

 

 きもちよすぎる。

 あたまが、ふわってしてる。

 いしきがふかーい、しずかなところにある。

 きもちよさと、いしきが、きりはなされてる。

 ぐじゅぐじゅ、したがからむおとは、とおい。

 

 しあわせ……。

 あたたかい、うみのそこにいるみたい……。

 なんだか、みたされてて、しあわせ。

 ずっと、こうならいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギサ。満足した?」

 ナギサは息を荒くして、ぼんやりしている。

 そろそろ、元に戻そうかな。

「ナギサ。命令を聞いて?」

「……んっ。きき、ます」

「よし。これ飲んで」

 飲みかけの市販のペットボトル紅茶(微糖)を鞄から出す。

 このナギサは自力で飲めるものか怪しい。強い性感を感じた直後なのでなおさらだ。

 よって口移しだ。

 唇を奪い、移してやる。

 ナギサはしばらく、もぐもぐとした。

「………………ん゛ん゛ーーーーー!!?」

「おかえり、私のじゃないナギサ!」

「ん゛ん゛、ゴボッ!ぐふ、せ、先生……」

「ごめんねー、また何回も言葉を繰り返して解除するの面倒だからさ」

「うぅ……趣味が、悪いですよ……」

「うん、知ってるよ」

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

「先生、海に行きたくありませんか?」

「海……?」

「そうです」

 ナギサと一緒に居られる残り二十分の間、ティータイムを楽しむことになった。

 作り置きのお菓子を出してくれた。私は昆布茶をオーダーしたが、通らなかった。

「一緒にだよね?……私達、あんまり休めないからなあ」

「そう、ですね……」

「休みが重ねられる機会があれば行きたいね。……どうして急に?」

 ナギサといえばまあ、渚だけども。

「……先生と、普通のお出かけもしてみたいです。僻地なら、人の目も心配ありませんから」

「そうだねぇ……」

 だめだな、と正直思った。

 もう次回には、ナギサとはお別れするつもりだから。

 そうしたら、きっと……そういう感じじゃなくなると思う。

「……ナギサ。不思議なことを話してもいい?」

「何でしょう?」

「前はね?……その、最初の頃は……君にくっついているとき、おかしなことに、とても小さな潮騒が聞こえてたんだ」

「……潮騒というと、海の音、ですよね」

「うん。まあ血流か何かの音がそう聞こえただけなんだろうけどね。最近はもう、聞こえなくなっちゃった」

 

「ねえ、ナギサ」

「はい」

「こんな大人で、ごめんね」

「……い、今更では」

「うん、まあね」

 そういう意味で言ったんじゃないんだけどな。

 

 

 無慈悲に、時間は来た。

 

「……そろそろ帰らなきゃ。ナギサ、またね」

「あっ……先生」

 席を立つと、ナギサに呼び止められた。

 ナギサは伏し目がちに、私に聞く。

「……わ、私の事……好き、ですか?」

 

 

 

「私は……君を、信頼してるよ」

 作り笑いで、そう誤魔化した。

 いつものように。

 

 

このシリーズのジャンル

  • ホラー
  • 官能
  • サイコホラー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。