女の敵のわるーい先生シリーズ 作:ブルアカ二次創作@本拠地はpixiv
「ナギサ。君は今…………………………」
「見たいものだけを見て、信じたいことだけを信じてるんだと思う」
私は先生の夢ばかりを見ています。
先生が私だけを見てくれる夢。
永遠に私を縛ってくれる夢。
好きだと、伝えてくれる夢。
私以外の全ての生徒は先生に無視される夢。
叶う日は決して来ないのに。
わたしはいま、おにんぎょう。
せんせいに、ごすろりきせられた。
いま、かみにくろいりぼんをいっぱいまかれてる。
せんせい、じょうず。
きっと、たくさんしたことあるんだ。
わたしでなんにんめなのかな。
「……ねえ、可愛いナギサ」
「はい」
「私のこと、好き?」
「だいすきです」
「そうか。……命令するね?私のことを嫌いになってよ」
「いやです」
「ふーん」
「ねえ、私のナギサ」
「はい」
「今日でお別れしよう?」
あたま、いっしゅんまっしろになった。
「え?」
「もうこういうことは卒業。私のナギサはいなくなるの。……前の私たちに戻ろうよ。ね?」
「いや……」
「だーめ。私が決めたの」
「いや!」
「いやいや期かな?」
「せんせい、わたしきらい?」
「信頼してるよ」
「しんらいはしなくていいの!すきなの?」
「ははは……好きそうに見える?」
「わかんない。わかんないー……」
「嫌いだったら、どうする?」
「……それでもわたし、せんせいすき」
「嬉しいな。……なーんて。人間って怖いよね。口じゃどうとでも言えるんだからさ」
「そういうのいや!すきっていって。いってよ……」
「可愛いよ、ナギサ」
「かわいくなくていいー……」
「まあでも、特別ではあるよ?」
「うそつき。うそつき!」
「あれえ?バレたー?もう、おばかのくせにカンは鋭いんだから」
「……おんなのてき!」
「はははは。わかってるじゃないか。なら私から離れなよー、ナギサ」
「やーあ、すきだから、やーあ!」
「ああもう可愛いなあ……どうしてくれようかなあ、もう」
せんせい、わらってる。
つくりわらい。
さいきん、わかってきた。
せんせい、わたしのまえでほんとにわらったこと、ない。
いっかいも。
「……ナギサ。なら私の事、受け入れてくれる?」
「うけいれてる!」
「いいや。これはただ私の性癖に付き合わせてるだけ。これぐらいお金を積めば他にも付き合ってくれる人がいるもの。ナギサにしかできない事じゃない」
「じゃあなに。なにしたらいいの」
「……乗るの?本気?知らないよ?きっとハナコが君にしたことより傷つくよ?」
ほんとにさいていのひと。
うらわはなこさんはきっと、せんせいをしんじて、うちあけたはず。
さいてい。
なのに、なのに……。どうして、きらえないの……。
「ああ、泣かないでよ。……いつものように選んでもらおうかな。どうする?とりあえず聞いてみるかい?」
「……うん」
「わかったよ。まあ君は優しいからそう言ってくれると思ってたけど。じゃあ……荷物を出すからちょっと待ってね」
にもつ?
そういえばきょう、でっかいかばんをもってきてた。
せんせいがかばんをまさぐって、あるばむをとりだした。
うすいぴんくいろ。ぶあつい。
「言っておくけど、刺激が強いからね。……ほら、お膝に乗っていいよ、ナギサ」
「……」
わたしは、すわった。
……はねがなんかじゃまだけど、しかたない。
「では、開く前に……ナギサにもんだーい」
「え?」
「私はどうして、ナギサにこんなことをしているのでしょうか?」
「…………せんせいが、くずだから」
「うーん、期待した答えじゃないけど合ってるな。国語のテストってたまに採点に困るんだよね、こんな風に。……正解は……」
「君が、理想的な人だから」
「え?」
「本当のことだよ」
「うそ」
「ほーんーと。……私と初めて会った時の事、覚えてるよね?」
「……ほしゅうじゅぎょうぶのこと」
「そ。ミカもいたね、そういえば。……君は私に、あの子たちをゴミ箱に捨てることをお願いしてきた」
「……」
「君は酷いことをしたよね。本当に」
「……ごめんなさい」
「責めてないよ。だって私は、
「え」
「あの日、君を一目見た時から、とても
せんせい、おかしい。
だって……かわいいとか、しんらいしてるとか、いわれたけど……すきって、いまはじめていわれた。
「ねえ、ナギサ。人を信じることって、死ぬよりも辛いことだよね」
「……」
「さ。一旦これを開いてみようか?……君の手で」
「……」
「あ、やめてもいいよ?」
「みます」
「そっか。後悔しないでね?」
せんせいのかお、みえないけどわかる。
いま、わらってる。
「……」
こわい。
でも、みないと。
みないと……。
せんせいのこと、ちゃんとみないと。
ひらくと、せんせいと、しらないおんなのひとがいた。
せんせい、わかい。
……こうこうせいぐらい。
せんせい、しばられてる。
おんなのひとに……いじめられてる。てんじょうからつられたひもに、つかまってる。
いつもわたしにするみたいに。
……せんせい、しあわせそう。
「まあ……この人はね、私の元彼女。結構年上だった」
「え」
「大好きだった。私の家は……まあ暗い話をしても面白くないからさっと言うけど、酷かった」
「……そうなの?」
「うん。私がみんなの先生でいられるのは、そんな家族がいたおかげ。私がどうしていつも、死に物狂いでみんなを助けようとするかこれでわかるよね。みんなの陰に、昔の私が見えるからだよ。私は大人としてみんなを助ける。そうする度、昔の私も救われて、ほんの少しの間、私は楽になれる」
「……」
「あっと、家族は関係なくてね。まあ当時の私は追い詰められてたんだよ。そんな時にこの人と知り合ってさ。私が好みだったみたいで、ペットにされちゃった。休日でも平日でも、ずっとこの人の家に通い詰めた」
「……」
ぞわぞわする。
いやな、ぞわぞわ。
「最高だった。自分の存在意義を他人に握られて、何にも考えずにいられるからね。……もう外したけど、ピアスもたくさんつけられちゃった」
「……あ」
せんせいが、わたしの羽根のピアスをじゃらじゃらしてる。
「私は命令をなんでも聞いた。友達全員と縁を切れ?もちろん。親からお金を盗んで来い?仰せのままに!という感じに、私はこの人なしじゃ生きられなくなった。そして、高校三年生のある日、当然言われたんだ」
先生は、こえをちいさくして、ささやいた。
「……もうお別れだって、ね」
「……そんな」
「わけを聞いたんだ。今でも鮮明に思い出せるよ……」
せんせいは、わたしを抱き上げて、となりにおいた。
わたしの顏を、見て……。
「……こう言ってた。『ずっと、その顔が見たかった』ってね」
さむい。
すごく、こわくて、さむい。
「それからその人は失踪した。はい、私の
せんせいのこえが、とおくにきこえる。
「私は半ば狂っていたんだ。心に空いた穴を、どうにかして埋めようとした。それから必死に、自分磨きを始めた。幸い大学には進めた。ろくに睡眠もとらないで、どうにかして、失ってしまったものを全部取り返そうとした。あの人はもういない。だから代わりが必要だ。では、どうすれば代わってもらえるか?そうだ、人を惹きつければいい。人の心に取り入って、魅了する。そうすればなんでも言うことを聞いてくれるお人形が出来上がる」
「……せんせい?」
「それからは本当に、沢山の人と付き合った。たくさん可愛がって、関心と愛情を注いで。よくいるクズ男みたいに、お金を絞ったり人間関係を絶たせたりもせずに。そうして私に夢中になったら、お願いをするんだ。……私のご主人様になってほしい、ってね」
せんせいは、うっとりしてる。
とおくをみてる。
「でもね。……それじゃ、ダメなんだ」
「……」
「すぐにみんなダメになって、私から離れていくんだ。『あなたは私のことを見てない』って。自分で望んでお人形になったくせに。そうして別れて、別の人と付き合って、別れて、また別の人と付き合って、別れて……私は学んだ。優しくするだけじゃ駄目なんだと。ちゃんと縛ってあげないと」
こわい。
「でもまたダメ。飴と鞭でもダメ。そりゃそうだよね。そもそもの話、そんな関係がまともに成り立つのなら、みんなやってる筈じゃないか!結局はね、人と人は、普通に付き合うのが一番なんだって思い知った。普通にお友達から始めて、普通にデートして、付き合って、いつかは結婚して、子供を作ったりして……あはははは!無理だ!私にはできない。無理。足りないんだ。そんなんじゃ全然足りない。私はもう二度と、普通に幸せにはなれない!……まあそのおかげで、こうしてキヴォトスにやってきて、先生やってるけどね。単純に忙しいから、そういうことを考える暇がなかった。まさか激務に救われるなんてね。それに、みんなのために働くと、みんなが尊敬してくれる。大勢から関心と愛情を注いでもらえる。天職さ。……なのに。なのに……ねえ。私のじゃないナギサ。教えてよ」
先生はとても悲しそうに、子どものように私を見ました。
「……君たちは強い。ヘイローがあって、力持ちで、高校生離れした何かを、みんな持ってる。なのに……君たちはどうして、いつもピンチになるの?どうして君たちを狙う悪いやつらがいるの?……どうして君たちがこんなに多くの責任を背負わされるの?」
「……先生」
「おかしいよ。わからない。もう何もわからない。……そんなときにね。君と……」
先生は笑います。
「もう失われた、あの疑心暗鬼の闇の中のナギサと知り合った」
……嘘だ。
……え?
先生は最初から……あの、すべてを間違えていた私しか、見ていなかった?
「運命の人って言葉があるけどさ。一目見てわかったよ。ああ、このナギサって子は私そのものだって。貴族社会のなかで、散々心を潰されて、苦しんで。その挙句、本来生徒会長だったはずのセイアは……と来たものだ。君の心はずたぼろだった。そして心が壊れないように、たった一つの事しか信じなくなった。そう、大切な幼馴染である、ミカのことをね」
「そんな」
「慧眼だったよね!そのミカが裏切者だったんだから!ねえ!私はあの日、これが夢じゃないかって何度も思ったんだよ!?あはは、こんなに……私とそっくり同じ失敗をする人がいるんだな、ってさ!」
「あ……」
「……と、ここまでならよかったんだけど。当然何もかも同じわけがない」
先生は息を一つつきました。
「君には、友だちがいた。運もあった。そして何よりも、君自身だってすごく強かった。だから今もティーパーティーのホスト。……しばらくしてまたお茶会で会った時、本当にがっかりしたよ。あのナギサは、もういなかった。いたのは、ただの等身大の女の子。ちょっと人より寂しがりな、もてなし上手のあまえんぼさん。|みんなと同じように、私に特別な関心を向けてくれる子《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。……誤解しないでね。あのチョコは、本当に美味しかったし嬉しかったよ」
「……」
「だからさ。君を、あの日の君に戻したかったんだよ。ねえ……ナギサ。ああ。そうそう。その顔。心底怯えていて、一つの事しか信じていない君。お帰り。ずっと会いたかったよ」
体が、震えています。
「ね。わかった?今までどうして私が、こんな風に君に近づいたのか。ふふっ、完璧だね。もしも私が今、君のことを裏切ったらどうなるかな?」
「やめて……」
「君、誰だっけ?」
頭を殴られたような衝撃に見舞われます。
猛烈な吐き気に、咳き込みました。
「あはははは、ごめんごめん、泣かないで。うそだよ。こんなに愛おしい君を忘れるわけないじゃないか!これで完成した。わざわざ違う人格まで掘り起こして、ストレスを分散できるようにもしたし、これで……やっと、やっと、私は救われる。君が私を救ってくれる」
「せんせい……」
「ねえナギサ。相互理解ってのは永遠のテーマだよね。君は現場を知らないけれど、あの日のミカとサオリみたいに……おんなじ立場になったことがある同士なら、きっと心は通じ合うんだ。私と君もそう。君は、人の縛り方を知っている。例えばヒフミに手を貸して、その代価として補習授業部のリーダーをやらせた。人を利用するのはお手の物だ。そして、捨てられる怖さもよく知っているね。ミカは君を殺そうとしたんだから。最後に……縛ること、縛られることの無意味さを知っている。ミカが裏切者だとわかっても、そしてミカが脱走しても、君は大切な幼馴染を信じ続けた。君は強い。完璧だ」
「いやだ……」
「無駄だよ?もう私無しじゃ生きていけないでしょ。……あ、関係を捨ててもいいよ?その時は……その時だし。さ、どうする?」
「……」
「ねえ。君は信じることの大切さを学んだ。そうでしょう?なんかこの間またやらかしたってミカから聞いたけど……それでも致命的なやらかしはもうしないと思う。……だからさ、私も信じてよ。あっ、もしかしたらさっきまでの昔話も全部嘘かもね!?あのアルバムも全部AIの写真でさ。……さあ。泣いてないで決めてよ」
「……あ」
首輪を差し出されました。
「私のこと、信じてくれる?君が選んでいいんだよ」
「……」
「信じてほしいな。私もね、普通に人を愛することができないか、たくさん頑張ったんだよ。……それでもだめだったんだよ。セイアのよく言う、第五の古則のように言えば……私の
先生は、いつもみたいに笑います。
「選んでよ」
————ナギサ。一つだけ覚えていて欲しい。君は近々、また選択をすることになる。その時、間違わないでくれ。
————すまない、もう一つあった。……ミカもそうだが、私だって、君の友達だ。
————私のことを忘れないでくれ。いや……私たちのことを忘れないでくれ。それでは。
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