バトラー『エラ』の明晰なる事業報告書   作:ALULA

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バトラーエラの明晰なる事業報告書

昼過ぎ、都市。三級事務所『蛟(みずち)事務所』

専門は『バトラー派遣事務所』。都市にある千差万別の事務所の中でも特に珍しい事務所。

 

まず入れば清潔さが目に入り、『都市』とは場違いなほどの軽やかなクラシックの音楽が耳に届き、そして匂いには血と硝煙の匂いが全くしない場所。そんな待合室ともいえるスペースの机の上でコトリ..と紅茶が置かれ、香りが周りにふわっと広がっていき、来客の鼻孔を擽った。

 

そうして出された来客はおずおずと一口、口に含み…

 

「どうぞ、トリニティから取り寄せた逸品です。私が入れさせていただきましたがお口に会いましたか?インタビュアー様。」

「え、えぇ。すみません。少々こういったものには余り縁がなかったものですから味などの比較はできませんが…」

 

そうしてもう一度インタビュアーと呼ばれた少女は紅茶のカップを口に運ぶ。

 

「えぇ、やはり非常に美味しいです。そして代表フィクサー自らインタビューに応じてくれること、実に感謝します。」

 

「いいえ、この事務所の物珍しさは代表である私がもっとも理解しているところですから。それにツヴァイからのご紹介、断るわけにはいきませんでしたから。」

そうして少し強化施術の証でもある眼が少し明るく輝く。

 

「それでは初めまして。蛟事務所代表フィクサー、エラです。どうぞごゆっくりご質問や仕事の様子などを見ていくようにお願いしますね。お嬢様?(マドモアゼル)」

 

そうしてその言葉を日切りとして蛟事務所フィクサー、エラに対するインタビューが始まったのである。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

まず、目の前の女性を見る。自分を見定めるような目と少しの期待。そして自分をお嬢様と呼ばれたことに少しの動揺が見えて透ける。…誰しも女性ならば恥ずかしいが幼いころの夢ともいうべきかがよぎるというか…そんなものが混じった表情をしてる。見慣れた顔で、少しそんな顔を見るといつも少し言い表しがたい感情が浮かんでくる。そう、これが私のルーティーンだ。「一人のフィクサー、エラ」としての仕事の合図。

 

「す、すみません!ちょっと待ってください。何故私をお嬢様と…?」

「いえいえいえ~今回インタビュアー様には今日の私の仕事の付き添いと~お嬢様役の二つを担当していただこうと思いまして。」

 

そうして私は手をたたく。今回はいい仕事のチャンス。逃すわけにはいかないから無理を通すつもりでいかないといけない。

 

「いえ…そこまでしていただかなくとも私はハナ課を通じてツヴァイ課に推薦されてきた身ですし細かいことまで気にしても…本当にインタビューだけでいいんですよ…?」

 

「いえいえ、私の事や更にうちの事務所、そして業種までが拡散されれば、うちも楽になりますからね。お嬢様には手取り足取り、そして最高のおもてなしを受けていただくべきと思ったまでですよ」

 

「は、はぁ…それにしてもお嬢様っていわれるのはむずがゆいというかなんというか…はぁわかりましたよ…では、インタビューを本格的にまず「と、そのまえにぃ~」

 

「は、はい?まだなにかあるんです?」

 

「この契約書に改めてサインをと思いまして」

私に急に話を割り込まれたお嬢様に少し笑顔を浮かべながらそういうと、私は『お嬢様』に一枚の契約書を渡した。

 

「…何か不都合でもありました?それとも協会からのギャラリティが足りなかったとか…」

『お嬢様』はそういいながらも約欣を覗き込む。

 

「あは、そんなわけないですよ。寧ろこれは貴女の身の安全の保証と通過儀礼ってとこですね。いつもこうして契約書を渡すんですよ。そうしてサインした時こそ、本当の意味で私のことを自分のバトラーとして扱えるんですよ?」

 

最近は何やら巣でさえ、フィクサーの失踪事件やら物騒ですしね~とエラは笑いながら話す。

 

「えぇと、約欣としては…フィクサー、エラは今回の仕事におけるサインした者の安全を完全に保証し、サインした者が契約書の効力が有効な間、エラによって肉体的、及びに経済的に損害を負えば必ずニヒル協会から一定の処罰を必ず受けるものとする。これは都市における『タブー』を破ったときを参照とする。そして…」

 

「契約書の効力が有効な期間はこの契約書が書かれた一日後までってことと、フィクサーエラの仕事に同行するものとし、蛟事務所外におけるサインした者以外での実地職務同行時はエラに従うものとするってとこが重要なとこですねぇ。中々ないですよ~うちの、しかも代表を無償で一日。ささ、そのインタビュー内容を書き留めるペンでもよろしいですしここにサインを…」

 

「…こういう契約書には細心の注意を払い、基本は契約事務所を通せって研修でよくいわれたんですけど…わかりました。約欣は問題なさそうですし、そもそも今回の仕事で詐欺みたいにしても評判が下がるだけだし…えぇ、でははい。書かさせていただきますね。」

 

そういいながらも少し困惑してる表情が見て取れるインタビュワーも、ある契約書の内容を見終わった後、すらすらとペンを契約書の上で動かし始めた。

 

そうしてるうちにエラは思考を巡らせ始める。

 

やっぱり。このお嬢様、警戒心が薄いですね。…多分相当新人なのかな?経験が足りてないんでしょうね。ま、こちらとしては都合がいいことこの上ないですしいいんですが…。恐らく一定レベルのフィクサーに対して適当に仕事を斡旋した結果でしょうね。そんな事を思いながらサインする姿を観察し、書かれた契約書(紙切れ)を受け取った。…ふむ、字は綺麗ですね。

 

「それでは色々ありましたが…ごほん、まずは主な担当業種や“ウリ”について教えていただけますか?」

 

「えぇ、ではまず、私共がいる此処、『蛟事務所』はツヴァイ課直属、バトラー派遣業務を主に活動しているんです。基本的にはどのような方にも派遣してますけど、基本は富裕層や一定以上のフィクサーですねぇ。まぁ、たまーに全くそういうのを『わきまえてないお方』もいらっしゃるんですけど」

 

「な、なるほど…そういう方達にはどうされてるので…?」

 

インタビュワーは少し血の気を引きながら恐る恐る尋ねてくるがその答えは残念ながら一つだけ。

 

「いえいえ、こちらも帰っていただくわけにはいきませんし、しっかり働かさせていただきますとも。まぁ~基本は契約事務所を通されていないのでってやつです。後はわかりますよね?」

 

「…」

そう問いかけるとインタビュアーは黙ってしまった。…少しからかいすぎたかなとも思いながらも話を続ける。

 

「後は、そうですね。バトラー派遣事務所の業務内容をざっくりとですが…まぁこれは読んで字の通りです。この事務所のフィクサーを仕事先に派遣してって形ですね。基本バトラーは長期的契約が主なんですが、こちらは細かく契約更新をしながら短期的な業務提携を主に、護衛や料理、掃除、書類整理や見回りその他雑用などなど、業務内容的には多岐にわたります。特にうちは他のバトラー事務所より護衛の信頼性と評価が大きい印象ですねぇ。ありがたい話です」

 

「流石のツヴァイ直属事務所といったところ。確か貴女は元々ツヴァイ課のフィクサーで一部のメンバーを引き抜きながら、この事務所を設立されたと聞いてます。やはりそこも関係してるんですか?」

 

「まぁそうですねぇ…割と一般的な直属事務所の出来方ですね。うちは。」

 

直属事務所は課から独立するフィクサーが設立する事務所だ。基本的に課の向き不向きがそのまま事務所の特色に反映されることが多いのでうちはそんな典型的な例ともいえる。

 

「そんな中でも少し話を戻しますけど、やっぱり裏路地より実は巣の仕事が多いですね。この後にある仕事は巣での仕事になります。そういう時は外出時の護衛であったり、使用人としての業務が主になります。そういう時は基本は護衛要らずの業務なので結構普段は気が楽なんですよ」

 

そんな私の言葉を聞いてインタビュアーは少し考えこむようなそぶりを見せ、口を開いた。

 

「楽…ですか?私含めフィクサーの人達って巣と余り関わりたがらないといった話をよく聞くんですけど…私もそうですし」

「そうですねぇ…確かにそうかもしれませんけど…そもそも巣って何のためにあるとおもいます?」

 

「えっと…すみません。余り感考えたこともありませんでした…高位のフィクサーにたいする褒章だったり競争心を図るため…後はキヴォトスの人達の一部の道楽…でしょうか…」

 

一般的で模範的な回答だなと私は少し頷く。

「えぇ、確かにそうですね。そういう意味合いもあると思いますよ。そうですねぇ…これは私共の業務をやってる上で思うに補足するとしたら…」

 

「馬鹿で間抜けで金づるなお客様を引き込む為と…後は外からこの都市に注目している不穏分子の監視のためにあるのではないかと」

 

インタビュアーの顔が少し引きつった。

「…とんでもないいいようですね…というか不穏分子の監視ですか?態々外から受け入れて中にいれてまでする価値ってあるんです?」

 

「ありますよ。そもそもこの都市の財源ってどこからだと思いますか?」

 

「そりゃあ…防衛室じゃないんですか?我々は一応防衛室から推薦を貰っている扱いなわけですし…」

 

「防衛室も無限の財を持ってるわけではありませんよ。お嬢様。一部の金は出してるかとは思いますがね。だから金が在るところから持ってくるわけです。キヴォトスの生徒以外の生物だったり、後は…一部の裕福な生徒や、安めの家賃を払う分くらいには生活できてる生徒達ですかね」。

 

「後者はまぁまだマシです。基本は危害はないですし…まぁ道理を知ってる方が多いです。…まぁ一部のスケバンやゲヘナ生徒が流れてきたりなんかもするらしいですけど。前者は…」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

蛟事務所インタビュー数時間後、都市『巣』オフィスビルにて、少し人を馬鹿にしたような声色の声が響く。

その場には一人のバトラーと後ろには付き添いとしてのインタビュアー、そして一体のロボットが一体在り、今回の仕事における清算が行われようとしていた。

 

「失礼しますご主人サマ、いえ元ご主人サマというべきでしょうか?今回は契約更新の業務連絡、及びに契約違反を確認致した為契約解除の違約金の要求に参りました。いやはや残念ですよ。こちらとしても良い取引先になるとお思いでしたのですけどねぇ…?カイザーコーポレーションの社員サマ?」

 

ロボットはうろたえ、明らかに古典的なやましいことがあるかのように合成音声を出す。

「な、なんのことか…こちらはただの零細企業、いい仕事先をと思ってこちらの視察にボディーガード兼使用人が雇えると聞いて雇ったまでの…」

 

そんな様子を少し面白そうに見ながらエラは一つ、ナイフを持ち手を振るった。

…ロボットの右腕にそのナイフが突き刺さる。

 

「お、お前…!こんなことをして…」

突き刺さったパーツには電流が走る。そんな様子をしり目にバトラーは口を開いた。

 

「信用第一のこの業界において嘘はいけませんよぉ…元ご主人サマの近辺を我々がしないとお思いでしたか?そんなにプロ意識が無いものだと思われましたか?悲しいですねぇ…そんな元ご主人サマにはお仕置きをしなくてはなりません。現在進行形で我々の元ご主人サマとして礼節を持っていただかなくてはなりませぬ故、私めはただ働きさせられてるんですよぉ…?」

 

そうしてエラは大げさにしくしくといった仕草をしながら嗤う。

 

「そんな悲しく辛い私に感謝してほしいですねぇ…なぜそんなに怒りを向けてるんです?」

 

そんなことを嘯きながらエラはニマニマと目を赤く輝かせ、相対する推定カイザーの社員は怒りをあらわにしているのか、赤いランプと煩いファンの音を部屋に響かせる。

 

「正直な所、今回の仕事は実に単純でした。貴方は前者のパターンに典型的な人です。こちらは誠心誠意仕事をし、そちらはしっかりその仕事の恩恵をうけ、このように清算を受ける。…素晴らしく簡単な道理ですね?」

 

そうしてエラは書類をカイザーの社員に投げ渡す。ナイフに握られていた手にはいつの間にかUSBメモリが握られていた。

 

「これは…俺の取引に関するデータ…?そうか…これを盗み見て…!」

 

「お前らには金も利益も渡したはずだ!まだ足りないというのか…?!お前らフィクサーは契約書や法律を厳守するやつらのはず…こんなことがあればお前らも信用をなくすはずだ…!私達がカイザーの手先だって報道でもする気なのか…それを踏まえてもお前らの看板にはきっと傷が付くぞ!!!」

 

そんな自白めいた言葉を聞き、赤い光は更に輝く。

 

「それはここが巣?だからですかぁ?」

 

「そうだ!巣は絶対の安全圏…いくらお前でも巣の住人にはッ!「それは違いますよ。巣にも当然膨大に例外がありますから。」…は?」

 

そう、当然のこと。巣は「必ず安全でなければならない」そんな当たり前のことに今まで黙って付き添っていたインタビュアーは異を唱えた。そうして続けざまに言葉を続ける。

 

「確かに巣は絶対の安全圏です。基本的に外の方達が暴れたり、テロを行われた場合基本的に即刻フィクサーがどこからともなく鎮圧してくるほどです。ましては『死』なんてもってのほかです。本来は私がこの場でこのフィクサーに向けて武器を向け、鎮圧するべきだと思います。ですがこの場で私が止めに入らない理由は当然例外が存在します。」

まぁ自分(エラ)をこのフィクサーは鎮圧できそうにないだろうなぁと一人心に思いつつ…

 

都市は都市らしくあるための規則。それが無知なものに通告される。

 

「その中でも代表的なものとして…ニヒル協会、及びに防衛室は巣、裏路地での機械種の活動に一切の責任を持たず、安全を保障しない。といったものが存在します。」

 

「はぁ?そんなの…そんなの許されるわけないだろ…!それにそんなの「知らないですかぁ?そりゃ当然ですよ~これ、基本的に周知されてませんし」

 

「基本的にこれを知っているのは一定以上の階級のフィクサーだったり、ハナやウーフィ等の規則に煩い職種、後は私みたいな巣に詳しくなければならないフィクサーのみです。元ご主人サマのような人には伝える必要はありませんからねぇ。お陰で助かりますよ」

 

カイザー社員は憎々しげに呟く

「つまりなんだ…お前らはあれか?私達の身や安全をいつでも害することができて、尚且つそんな状態だから契約も無視して全部うちの情報をすっぱ抜いて私がカイザーの末端だってこともここへの本格的事業の足掛かりの一歩としてきたことも全部お見通しってわけか…?恐ろしい女め…」

そんな様子に少し笑顔を見せ、どこからともなく出したナイフを手で弄びながらその言葉を否定する。

「えぇ、確かにそうですねぇ…ですけど全てがそんなわけではありませんよ?」

 

「…は?」

 

困惑の声が響く中、エラはわざとらしく、探偵の仕草の様に指を一つ上げる

 

「今回の仕事はそもそも…『一か月で契約を更新するかどうかを双方で協議、基本的に決定権は蛟事務所にある事』と『契約期間中、如何なる方法でも害することを行わず、護衛、バトラー業務を遂行しなくてはならない』、そして重要なのは『契約上身分の偽造等の違犯行為や都市の禁忌に背いた時点で即刻契約は無効とし、記載されている違約金を払うこととする』大体この三つが存在し我々を縛り付けていました。今回はこの最後の条項が引っかかったわけですねぇ」

 

―――自身の身分を正確に明かさず書類上はカイザーの職員であることをごまかした。これは明確な契約違反条項に引っかかる

 

「ですけどそれだとちょっとおかしいですねぇ。なぜ我々は貴方を探り、勝手に書類を見て幾つかのデータを盗むことができたのか。これらは明らかに契約違反行為ですから。なんででしょうねぇ…」

そうして本当に悩んだ様な声を出しながら大げさに頭を悩ませたポーズをしながらエラはじっとカイザー社員の方を見る。

 

「そ、そうだ…!お前…お前もこういう風に俺たちだけを糾弾してるがお前も十分その手を汚しているじゃないか…!」

カイザー社員は藁にも縋る思いで縋りついたように叫ぶ。だがすぐに気付いた。気づいてしまった。

 

「お…まえ…まさか、まさかまさか!最初からか!最初から気づいて…!」

 

「えぇ、そうですが?」

――――赤が、強くまた輝いた

 

「えっと…どういうことです?最初からって…もしかして最初から契約違反に気づいてたってことですか?なら最初から違約金を受け取っていれば…」

インタビュアーは素朴で、当然の疑問を持つ。

 

「あら、その答えには既に答えが出ていますよ。お嬢様。――外からの巣の来訪者は基本的に二つ。一つは家を求めた生徒。二つ目は『市場の開拓及び独占。戦力の確保、そして技術を盗みに来た人たち』…言ってしまえば侵略者です」

 

再々にはなってしまいますが、と付け加え

「都市は現在進行形で発展している云わば、『降ってわいた市場』です。更に特異点ともなるとフィクサーでさえ独占しようとする始末。当然外からも狙われます。例えばこの目とかですね。」

そういうと自身の赤く光る強化施術を受けた目を指した。

 

「このパターンの人達はお互いに関係を持つことが多いんですよね。元々持ってたコミュニケーションをした方がパフォーマンスは上がりますから。カイザーみたいな大規模な組織は特にね。…ですけど、こういう問題もあります。それはこういった顧客や取引の情報が奪われたとき。これでかなり侵入者の監視には楽になるでしょうねぇ。昨今、カイザーは警戒されていますし悪いイメージも多い企業ですから。こういう睨みも強くなっているはずですし、その為に今回はペーパーカンパニーまで用意したんでしょうけど。」

 

「だからお前らは最初から契約違反に気づいていながら黙っていたんだな…」

 

「えぇ、契約違反に申告義務はないですからねぇ~ここ一か月私達は貴方の客人としてずぅっとお世話させていただき、更には資料を堂々と頂いたわけです。違犯されているのにこちらが気づいている場合は契約違反となり、契約が即刻解除されるわけですからこちらとしては貴方を幾ら害しても構いませんよね?そういうことですよ。」

「あぁ、後は今日この日にこういったことを決行したのはお嬢様がこられるからです。しっかりこちらも記事にしてくださいね?」

 

そうしていつの間にかカイザー社員を鎖で捕縛し、エラはインタビュアーに笑った。

「あは!」

 

後日、蛟事務所にて

 

「そうして代表は美味しいところを全部持って行って今回の一件を綺麗さっぱりかたずけたわけですね」

そういいながら蛟事務所に所属するフィクサーの一人は新聞を読みながら今回の功労者に声をかけた。

「蛟事務所、フィクサー失踪事件を解決!うちの仕事模様だとかが綺麗さっぱり汚いところを省かれて大々的に一面にまで載っちゃって。いいの?カイザーを今後敵に回しても。」

 

そんな所員の言葉に代表…エラは笑って答える。

「あは、正直な所かまわないと思いますよ。今回の事件で一部の勢力の牽制にもなりましたしね。これで更にもうちょっとクリーンな所から仕事が回ってくるはずですし、鮮烈に紙面にものったので知名度も上がりました。これで等級も上がってくれればいいんですけどね」

 

そんな呑気そうな発言をきいて所員はため息をつく

「はぁ…んな呑気に言いますけど、カイザーって外ではすごく幅を利かせてるんですから…まぁもう私も乗っかるしかないわけですけど。」

 

「えぇ、えぇ。今回の事件でカイザーも尻尾を出しました。まさか裏路地や巣から低位から中位のフィクサーのヘッドハンティングなんて大胆なことをすれば、あの調律者も黙ってないと思いますよ?いやはや正直、顧客リストやフィクサーの取引なんかを調べていて仕事に実際に芋づる式に引っ張れるとは思いもしませんでした。」

 

「ニマニマしながら言っても宛になりませんよ。どーせ貴女、ある程度の目星はついていてその末端から汁を吸おうとしたんでしょ?本当はあんな木っ端な依頼、受ける必要すらなかったんですし。」

 

「それに全部違約金も含めて態々ただ働きしてまでして本来の契約更新日までしっかり働いちゃって…そんなにお金が欲しいんですか?ほんと理解できませんね。」

 

そんな言葉を聞いて、一層目を光らせたエラはこんな事を嘯いた。

「確かにお金は大事ですけど、うちは嘘でも本気で働く信念こそ大事ですから。ささ、紅茶要ります?」

 

そうして彼女は紅茶を断られた後、ペンを走らせる。全ての記録を取るために。全ての功績と自己顕示欲を満たすため。

そうしてめくられたノートにはこう書かれていた

『バトラーエラの明晰なる事業報告書』

これはちょっとナルシストで、ちょっと目立ちたがりで、自己顕示欲を満たしたがる。そんなバトラーの日記を増やしていくお話。

 

—そしてそんな彼女の時節を巡るお話。




偉大なる本家様
https://syosetu.org/novel/322708/

この小説の掲載許可とゴーサインの命令を下されたイワシコさんに感謝を。
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