アサルトリリィTarnished ELDEN   作:イロマス

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日に日に文字数が増えて行ってる気がする。あーでもないこーでもないと決しては追加しての繰り返し、結果としてコンパクトに纏めました。如何かな?

6月30日加筆を加えました。


実戦形式模擬戦/長たる苦悩

 

「広いな、この本の数はレアルカリアとまでは行かずとも目を見張る」

 

 

 百合ヶ丘の案内を続ける中、立ち寄った図書館の中を褪せ人は興味深そうに散策する。

 気まぐれに本を手に取りパラパラと読む。余りに速く読むもので梨璃達は本当に内容を理解しているのか疑問に思う。だが安心して欲しい、褪せ人は数多のルーンを取り込み、今では知力は常人を遥かに超えている(知力99)、数百ページがなんのその、内容どころかさらにその深くまで理解しきっている。

 

 

「面白いな、何度も言うが狭間の地には無い本ばかりで退屈しない。………何冊か貰ってもいいか?」

「「ダメですよ!」に決まってるでしょう!?」

「………そうか」

「図書館では静かに!」

「「「すみません」」」

「………全く」

 

 

 司書の人に怒られた褪せ人と梨璃、楓は揃って頭を下げる。それは見事に寸分の狂いも中、綺麗な謝罪だったと言う。しかし怒られる中、後でこっそり取りに行こう、皆に悟られないよう静かに褪せ人は決心した。

 ゾワリ、図書館を出る際にまるで冷気を伴った剣を首筋に当てられるような嫌な冷たい予感が褪せ人を襲った。振り返ればこちらをジッと見つめる司書の姿が………。

 成る程、どこの世界であっても知識を求める者に降りかかるは災難。過去、知識を追い求め、結果としてその身を滅ぼした先人(ギデオン)に中指を立てながら礼を言う。

 しかし二度とこの図書館に来れないわけでは無いのだ、何の因果か己の知らぬ世界に来れたのなら名一杯時間を使おう。

 また来るとだけジェスチャーで伝え、四人はまた施設を周り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここがリリィがCHARMの訓練をする所ですわ。外には射撃訓練場もありますけれど。今日は誰も居ないようですわね」

「ふむ…………凄まじいな」

 

 

 四方を壁に囲まれた訓練場。その中心へと移動した褪せ人はしばらく立ち尽くすとポツリ、そんなことを溢した。

 歴戦、百戦錬磨、そんな言葉では到底足りえない程に戦場へ身を置き続けた褪せ人は一目見た瞬間に、この訓練場で行われたリリィの戦闘風景を容易に想像した。

 一対一で、時には二体一で、きっとこの百合ヶ丘に在学する生徒の数の闘いがここであったのだろう、そして並々ならぬ思いがあったのだろう。

 

 

「貴公ら、少し手合わせを願いたい」

 

 

 しばらくの逡巡の後、決心した褪せ人は振り返るなり三人へとそう伝える。

 咬月との話はこの世界の現状、ヒュージと人類の戦力差、リリィという存在、大まかに言えばこの三つである。ハッキリ言って褪せ人からすればこの世界の人類の現状など知ったことでは無い。今褪せ人の興味を掻き立てるのはヒュージという存在とリリィの力であった。

 百合ヶ丘を案内される中で出会った数々のリリィ、一目見るたびに燻り続けていた闘争欲が刺激され、けれど学生かつ世界を守る貴重な存在だと自分に言い聞かせて一々抑えるのに苦労していた。

 がしかし、リリィが訓練として戦うこの訓練場に足を踏み入れた瞬間、褪せ人のヤル気スイッチは完全に入ってしまった。

 ここならば合法的に戦えるではないか、まるで目の前の玩具を前にした純粋な子供の様に褪せ人の心は湧き立っていた。

 

 

「訓練場は無断では使ってはいけないんです!許可がないと………それにリリィの役目はヒュージと戦う事。この訓練場だって自分を高めたり、ヒュージを想定した模擬戦とかで………」

「尚更私が適任だな、貴公らも見ただろう?私の戦いを」

 

 

 言葉に詰まる梨璃の脳裏には数刻前の褪せ人の戦いぶりが甦る。まるで彗星と見紛うほどに美しく、そして暗く恐ろしい蒼の奔流。単独でヒュージの群れに突っ込むなり全身から黄金の衝撃波を放ち、その手からは人一人など容易く飲み込むほどの巨大な火球。

 リリィにはレアスキルと呼ばれるものがある。リリィの持つ力──マギと呼ばれる力によって発現した人智を逸した能力。それがレアスキル。サブスキルと呼ばれるレアスキルに満たない能力もあるが、褪せ人の力は余りにもレアスキルの範疇を超えていた。

 

 

「それとも、もしや怖気たのかな。いや、仕方あるまいよ、人の子には少々荷が重いか───」

「私がやるわ」

 

 

 褪せ人の言葉を遮るように、今まで黙っていた夢結が前に出る。その手には既に得物が握られており、戦闘態勢に入っていた。

 ダメ元で三人を挑発してみたが、まさか大目玉が釣れるとは僥倖である。

 

 

「お姉さま!?」

「安心したまえ、これはあくまで模擬戦だ。死ぬことはおろか、目も当てられん惨状にはなるまい───」

 

 

 梨璃の静止を聞かずに夢結と褪せ人は中央へ行く。今日は良き日だ、これもしろがね人(劣等種)を常日頃から狩り続けてきた賜物か、腰に手を当て思いに耽る刹那、夢結の姿が消える。

 姿勢は地面と並行、極限まで空気抵抗を減らした姿勢とリリィの脚力は褪せ人に警戒の姿勢を取らせなかった。

 いつもの夢結には決して無い明らかな不意打ち。驚く二人など意に返さず顔の横に構えられた銃剣──ブリューナクは勢いを殺すことなく褪せ人の胸に向かって放たれる。

 対する褪せ人は未だ無手、どころか構える様子すらない。不審に思う夢結であったが、だからと言ってここで止める事はできない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一層力が込められたCHARMは速度を増し、褪せ人の鎧へと突き刺さる────と予想して0.00何秒か、褪せ人の左腕がブレた。

 

 

「───筋が良い、力も強く、今出せる最善手を理解し、動けるその判断力や良し。が、動きが分かりやすい」

 

 

 寸前で止める筈だった。本気でやるとは言えこれは模擬、実戦ではないし相手はヒュージではない。

 しかし放たれた突きは、褪せ人の左腕に装着された小盾によって軌道を逸らされていた。

 

 

「パリィ………てっきり体勢を崩せるかと思いきや、逸らすことしか出来んとはな。全く摩訶不思議、リリィの膂力は弾きを捩じ伏せるか」

「…………っ」

 

 

 突然の悪寒に距離を取ろうとする夢結だったが、身を動かすよりも先に褪せ人の手に握られた黄銅の短剣が首に添えられていた。

 

 

「左腕の感覚が無い………肩が外れたか」

 

 

 半歩下がった褪せ人は左肩の調子を確かめるなり、強引にその肩をはめた。

 骨と骨の擦れる音に梨璃と楓の引く声が聞こえる。

 

 

「………死んでた訳ね、私は」

「さあな、模擬戦だから結果はこうなったわけで、もし実戦であったならまた結果は違っただろうな。…………少なくとも、両者無事では無かっただろう」

「もしこのまま私が攻撃を続けるなら、その違う結果が分かるのかしら」

「貴公が続ける気ならやっても良い………試してみるか?模擬の()()()を」

 

 

 褪せ人の纏う圧が一層厚みを増す。人の身でありながら異常とも言える程の圧は、夢結にヒュージの頂点、アルトラ級を想起させた。

 それ程までの力の差、壁の大きさにCHARMを握る力が強くなる。このただならぬ雰囲気に流石に止めるべきと判断した梨璃が二人に割って入ろうとする、その瞬間。

 この場に似つかわしくない、活発な少女の声が二人の間から聞こえてきた。

 

 

「はいストップだ。これ以上は訓練の域を超えてるって、夢結も落ち着け。えーっと」

「褪せ人だ」

「………?褪せ人もそれ以上はダメだぞ」

 

 

 視界を下げれば、そこには梨璃達と同じ制服を来た小柄な少女が居た。

 一体いつの間に居たのか、割って入る瞬間を察知できなかった。

 

 

「梅、一体いつの間に」

「何か嫌な予感がしたから来てみたんだ。まったく、無断で訓練場を使うのもそうだけどやり過ぎはもっとダメだぞ!」

 

 

 やれやれと言った様子で夢結を窘める少女──吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)は褪せ人の方へ振り向くと。

 

 

「おじさん、アンタも夢結を刺激するなよ?」

「おじさん………。いや、そうだな…………私の身勝手で君達の大切な存在に傷をつける所だった。申し訳ない」

「分かったならオーケーだ」

 

 

 またも夢結と話す梅の後ろ姿を黙って見る褪せ人。突然の乱入から褪せ人の思考は彼女がいかにして己の感知を掻い潜り割って入ったのか、それだけであった。ただの超スピードで来たにしては周囲の風の揺らぎも無く、例えるなら数メートル先からこの場までワープでもして来た、そんな感じだ。

 興味深い。夢結もそうだが、目の前の少女もまた底が見えない。

 

 あぁ、やはりここは良い。未知とはすべからずして人を駆り立てる。

 

 願わくばぜひとも二人と戦ってみたいが、止められた手前大人しく従うしかないだろう。

 褪せ人はとても物分かりがいいのだ。

 

 

「褪せ人さん、どこへ行くんですか?」

「施設案内はこれで仕舞いだろう。ならば私は適当に歩かせてもらう、安心したまえ、この百合ヶ丘の外へは出んよ」

「あっ!ちょっと!………って消えたー!?」

「え?………あの人どこ行きましたの!」

 

 

 まるで霧に溶ける雫のように姿を消した褪せ人に梨璃達は慌てて辺りを探す。生徒会から案内を頼まれたと言うのに肝心の褪せ人が居なくなってしまったらきっと怒られる。

 最悪の未来に顔を青ざめながら声を掛けるも、褪せ人はとっくにこの場から去っており、呼び声は虚しく鉄の壁に吸い込まれていくだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が傾き、温かく朱を帯びた陽光が百合ヶ丘を照らす。

 ヒュージを迎え撃つ為に備えられたこの地形。必然的に海を対面とする百合ヶ丘は、前を向けば自然と太陽が沈む光景が見れる。

 そこは、無数の墓が連なる英霊墓地であった。ここに来た経緯は褪せ人にも分からない。ただ適当に歩いていたらここに居た。………いや、もしくは彼女達に呼ばれたのかも知れぬ。

 数十はゆうに下らない、今の日常は彼女達の犠牲の上で成り立っている。

 墓や慰霊碑などとうに見飽きたものだが、均等かつ墓の一つ一つが丁寧に清潔に保たれ、ある種の美しさを醸し出している。

 

 

「………こんなところに居たのか」

「コウゲツか。まあな、歩いていたらここにいた」

「皆が貴方を探そうと躍起になっておったぞ。途中で抜け出したらしいな」

「抜け出してはいない。案内も終わった所だし、梨璃達の手を煩わす必要はないと思ったからだ」

()()()()()()()()()()

「───ん?今何と言った」

「何でもない、後無断で訓練場を使ったらしいな。そこでリリィと戦ったらしいと」

「すまん、血が滾ってつい」

 

 

 咬月と並んで墓地を歩く中、ふと含みのある言葉を発した咬月に妙な引っ掛かりを感じた。

 常々思っていたが、ここ百合ヶ丘はどうも暗部が深い。この墓場の分皆の抱える闇が大きいと言う事だろう。

 

 

「貴方はこの墓地を見てどう思った」

「どうした藪から棒に」

「百合ヶ丘が建てられたから、ここはヒュージと戦う為の戦闘領域であり、またリリィ達が学生として日常を送る場でもある。しかし、今に至るまで何人ものリリィが散って行った」

「墓場の数が物語っているな」

「これで良いのか、人類を救うという建前で彼女達の青春を失わせても良いのか、と。褪せ人よ、貴方はどう思う」

 

 

 いつのまにか、二人の足は止まっていた。一層赤を増した太陽光が二人を染める。

 咬月の表情は上手く伺えない。数秒、数分かも知れない、長い沈黙が二人の間を支配した。その時、褪せ人が口を開く。

 

 

「私と貴公は今日が初だった筈だが、見ず知らずの人間に心の弱さを見せるのはお門違いだな。ハッキリ言おう、戦って死ぬのは誰の責任でもない、弱いから死ぬ、強ければ生きる。今百合ヶ丘で生きているのはそう言う事だ」

「青春がどうとか人類を救うとか、私にはよく理解できん。別に、誰が死のうが生きようが、私はどうでもいい。私は不死だからな…………コウゲツ、死者を弔う気持ちは素晴らしいが、死を後悔する事は止めろ。後悔すれば、自ずとその身も死に近づく」

 

 

 狭間の地では死とは常に共にあった。死んだは生き返り、死んでは生き返りの繰り返し。元より戦士として戦いに身を置いていた褪せ人からすれば、闘争に身を置く時点で遅かれ早かれ死は免れないと、誰よりも知っていた。

 この世界では死んだらそこで終わり、ここではそれが普通で褪せ人のルールはそれこそイレギュラーなのだろう。

 だが今の咬月の姿はまるで壊れたマリカの様だ。要らぬ使命と意思を背負い、尚進む様は褪せ人の目にはそう映った。

 蹲み、墓を撫でる。石の冷たさと太陽の暖かさを感じる。それは正に生と死を表している様だった。

 ふと、ある男を思い出す。戦士の肉を詰めた、不思議な壺男だった。大きな穴にハマって動けなくなっていたところを助けてやった。

 そこから妙な縁が出来、戦祭りで共に戦い、巨人の住む山峰で巨人を打倒し、最期は…………。

 

 

「………………だが仲間を失う気持ちは、分かる。…………なあコウゲツよ、取引をしよう」

「取引だと。一体どう言うつもりだ」

「いや、取引というには少し違うか。まあいい、内容としては私が狭間の地に戻るまで、貴公の命に従うという物、そしてリリィに対して私から戦いを申し込むことはしない。貴公の言うリリィを想う気持ち、私にはまだ理解が出来んが、力にはなれそうだ」

 

 

 どうする、と差し出された手を咬月はジッと見つめる。その手はまるで不倒の英雄のように大きく力強い手のようで、けれど暗く、死の冷たさを帯びた死神の様で………嫌な予感と何かが変わる、そんな予感が二つ共に咬月の中に生まれる。

 この老人になんと残酷な決断をさせるものだ、暫しの思考の末咬月はフッと微笑を浮かべ、その手を握る。

 

 

「契約成立だな」

「裏があるのではないかと疑ったが、変な詮索は無駄なだけか」

「安心したまえ、与えられた仕事はキチンと熟す。力こそ王の故、エルデの王たる力、存分に発揮してみせよう」

「……………程々に頼むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 日も殆ど落ちた。墓場はいよいよ赤を増した色に染まり、黄昏が墓場と褪せ人を包んでいる。咬月は既に墓場を後にした。

 

 

「ずっと、墓場に来てから視線を感じていた。生者が持つには冷たく、無機質な瞳だ。丁度墓場に来ていた生徒かと思ったが………違うか」

 

 

 褪せ人はある墓石の前に立つ。それはまだ手入れが新しく、花束も置いてある。

 てっきり墓参りに来た生徒かと思いきや、彼女の放つ雰囲気は異常に満ちていた。

 

 

「貴方は、僕が見えるのかい」

「見えなければこの様な反応をしていない。お前はこの墓の本人か?それとも」

 

 

 銀を靡かせながら隣で墓を見続ける少女は、その黄金の瞳を向けながら問いかける。

 褪せ人が咬月と会話をしていた時も、それより前からずっと彼女はここに居た。

 ずっと、彼女は褪せ人の目の前に立っていたのだ。咬月はそれに気づいた素ぶりもない、つまるところそれが意味するのは。

 

 

「死者はその身が滅んでも、その意思は残り、いつしか迷い死に生きる者となる。狭間の地ではよくある事だが………この世界でも見れるとは、しかしまあ何とも混ざり合って奇怪なものよな」

 

 

 墓の前で立つ少女はその言葉に静かに目を伏せる。死とは絶対なものである、黄金律が死を奪い、生を絶対とした為に生と死は狂った。死に生きる者とは、つまり死にきれぬ者。

 だが律無きこの世界で、どうして死者が生きられるだろう。きっと、墓に書かれた名前がこの少女の名前なのだろう。

───川添美鈴。それがこの世界で何のイレギュラーか、死から外れた少女の名前であった。

 




作者はアサルトリリィに置いて推しキャラは高松咬月ですよろしくお願いします。
次話かその次で一柳隊の皆んなを出し切りたい
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