アサルトリリィTarnished ELDEN   作:イロマス

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探究バカ×2

 本を捲る音が図書館に響く。文字通りの本の山に埋もれながらも褪せ人は一心不乱に本を読んでいた。

 本の中身は大抵歴史本やヒュージ、リリィやCHARMの専門書ばかりであった。

 

 

「飽きませんねー。流石に頭痛くなってきません?」

「そうは思わないな、知識を蓄える事はなんと面白いものか。CHARMに関して私は尊敬の念を抱いている程だ。今度貴公の工廠にあるCHARMを使わせてくれないか?」

「貴方CHARMが使える程スキラー値足りないかと。見るだけなら問題ないけどねー」

 

 

 向かいの席で暇そうにしている眼鏡を掛けた少女はそう問いかけてくる。彼女は百合ヶ丘の工廠科の生徒、真島百由。

 その類稀なる才能と頭脳を買われ、現行のCHARM含め新世代のCHARM開発に若くして携わる程の才覚者である。

 そんな彼女だが、なぜ平日の授業のある日に褪せ人と一緒にいるのか、それは単に褪せ人の持つ力に興味があるだけ。褪せ人の戦闘記録を一目見た瞬間、心の底から湧き立つマグマのような熱意が百由を突き動かした。月の輝き、黄金の衝撃、体格から放たれるには異常とも呼べる膂力、ヒュージとはまた違った未知に百由は惹かれていた。

 それからというもの、何度かチャンスを伺って接触を試みようとしたが、何故か変なトラブルに見舞われ、今日に至るまで幾寸も触れることが出来なかった。

 

 

「私は驚いている、CHARMの開発、ヒュージの研究、マギに関する論文等………まさかこのような年若い少女が行なっているとはな。全く、この世界の進歩速度は化け物か」

「私からすればその化け物技術を持ってしても全く理解できない貴方の力が一番化け物ですけど」

「よくいう、狭間の地じゃあ私以上なんてザラにいた」

「どんな魔境なんですか、狭間の地」

 

 

 咬月とのやり取りから一週間が経過した。現在までリリィ含め周りの人間には危害や迷惑は加えず大人しくしているが、やはり褪せ人の纏うただならぬ圧はどうしても周りにやんごとなきを悟らせてしまう。

 褪せ人は大して秘守主義では無いために褪せ人がいかなものでどんな存在かは既に学園中に広まっている。

 流石に不死であることやルーンを扱う事、祈祷、魔術が使える事は咬月に口外する事を禁じられている。

 最近百合ヶ丘に住み着いた全身鎧で別世界から来たヤベー奴。それが今の褪せ人に対する評価である。

 しかし、今はいつもの孤牢の鎧は着込んでおらず、全身黒を基調とした百合ヶ丘の制服を着ている。因みに男性用である。女性用でも問題ないと伝えた所、本気かコイツみたいな目をされた。

 わざわざ褪せ人の体躯に合わされて作られた制服はなんともむず痒いものがあった。狭間の地でも常に重く、無骨な鎧ばかりを着ていた為に、軽く柔らかい服はどうも慣れない。リリィはどうも制服を着たまま戦うらしい、一撃が致命傷となりうる状態でよく戦えるものだ。

 彼女らも猛者ということ、つまり………変態(淑女)ということ、スミカ・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ

 

 

「……………何だ、今の記憶は」

「え、何、どうしたんですか?」

「何でもない」

 

 

 どうも最近存在しない記憶がよくフラッシュバックする。劣等種狩りをしていなかった弊害か、それとも狂い火か。

 念の為苔薬を食べておこう。

 

 

「何食べてるんですか?」

「発狂の苔薬だ」

 

 

 訝しむ百由などなんのそので苔を貪る。今そこはかとなく司書からの視線が殺気を帯びた気が。

 あぁ、成る程。後で掃除をしておこう。

 狂いかけた思考をリセットし、今一度読書に励もうと視線を戻す。その時、学園中に警鈴が響く。

 

 

「うっそヒュージ!?えーっと今日は………梨璃の隊が当直だったわね」

「梨璃?アイツに隊があったのか。妙に人と集まって居るなと思ったら」

「レギオンってやつよ。まあ部隊みたいなもの。梨璃がリーダーだから一柳隊」

「梅や楓達もレギオンに所属しているのか?」

「まあねー。ちょっと前なんかレギオン発足して直ぐの戦闘でノインヴェルト戦術なんか成功させちゃったのよ?」

 

 

 ノインヴェルト戦術。9人1組で行われる戦術であり、ヒュージの核から作られた特殊弾頭を使い、自らのマギを込めながら作られたマギスフィアを全員でパスを回してヒュージに撃ち込む戦術、と本には書かれている。アルトラ級など一撃で倒せる程の威力がありながらも、その分CHARMとリリィに対する負担は普通の比ではない。

 やはり滾ってきたな。

 

「ちょっと戦いに……」

「行かせないわよ?」

「……………」

 

 

 さりげなく遮られ、あえなく沈黙する。ここ最近、というか初めてこの世界でヒュージと戦って以降、戦闘に赴こうとすると事あるごとに止まられている。何やら褪せ人の危険性や周囲の被害を考えての事らしく、咬月からしばらく大人しくしてくれと言われている。

 とは言っても流石に何日も飼い殺しにされては戦士として、褪せ人として禁断症状が出そうだ。

 そもそもヒュージ襲来とかいう一大イベントをみすみす見逃す者がいるか?いや居ない。なので隙を見てこの場から離れたいのだが、何か良い案が無いだろうか。

 お互いしばらく見つめ合う中、ふと褪せ人の脳に閃きが訪れた。

 

 

「百由、少し後ろを向いてくれ」

「何ですか、後ろ向いて振り返ったら居なくなってるとかじゃないですよね?」

「やれば分かる」

 

 

 子供騙しのような事をするものだと思いながらも、軽い興味で騙されるのもアリかと後ろを向く。

 しばらく後ろを向いたまま、もういいかと向きを直す。

 

 

「別に何とも変わってないじゃ無いですか」

「…………」

 

 

 てっきりお約束みたいに消えているものかと思ったが、そこにはあいもかわらず本を読む褪せ人の姿があった。

 期待してた分、失望も大きい。しかし、どこか変だ。

 

 

「褪せ人さん?」

「……………」

 

 

 褪せ人は黙ったままだ。どこを見ても変な所はないというのに、妙な違和感を感じていた。その異様な雰囲気に席を立って褪せ人に触れようとした、その時だった。

 突如褪せ人の姿が溶けるように虚空へと消え、褪せ人だったものの残滓が落ちた本に積もる。

 

 

「えっ!?ちょっと褪せ人さんは!?やばいやばいやばいどこ行ったのよー!」

 

 

 百由は知らない事だが、写し身の遺灰と呼ばれるそれは所有者の姿をそっくりそのまま写し出す。そこに更に見えざる姿とクレプス小瓶使って即座に離席。褪せ人が図書館を抜けるまでは写し身がその姿を写す。

 無事?褪せ人が図書館から抜けた為に写し身は役目を終え、褪せ人の元へと帰って行った。

 非常事態に行方を眩ました褪せ人を百由は遂に見つける事は叶わなかった。

 

 

 

 




 これから暫く書き溜めに入ります。次の投稿までしばしお待ちを
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