首都にある世界連邦の支部で職員が告げた事実は、驚くべきものだった。私達の村には、〝先帝〟種族の人格が宿る〝分離体〟、つまり量子頭脳が隠されていたのだ。連邦軍出動の主目的はそこに
村を営む団体の黒幕は、人類に偽装して地球に入り込んだ〝慈愛の王〟の工作員達だった。本部から連れ出されていた連中だ。〝剣の王〟〝炎の王〟〝啓示の王〟〝慈愛の王〟は四大中枢種族と呼ばれ、それぞれ宇宙艦隊戦、天体攻撃戦、量子情報戦、生物化学戦によって銀河系の統一に貢献し、他の種族から恐れ敬われていた。
〝慈愛の王〟の個体群は、先進技術を使って奇跡や天使を演じながら団体構成員を集め、上級構成員に対しては洗脳や脅迫、時には殺害まで行って組織を運営していた。連邦政府もそれにつき調査を進めていたが、〝先帝〟人格群や村の人々の身柄を押さえられていることもあり、終戦までは摘発に踏み切れなかったそうだ。しかし工作員達の側も、救出作戦時には旧帝国の敗戦を確認しており、士気が低下していた。作戦に対しては初めから、私達を捨て駒にして母星への義理を果たした後で、投降することを決めていたようだ。
そのことを知った私はせめてあの時、走って行って奴等を蹴飛ばしてやれば良かったと思った。もっとも、そんなことをすれば大問題になっていただろう。あっさり返り討ちにあい、あるいは恐ろしい死に方をしていた可能性も高い。衰えたとは言え、四大種族はサタンが用いた神話で四大天使の
不公平だとは思うが、何事にも技術水準の違いが大きく明暗を分けるというのは、人類文明の歴史でもお
事件からしばらく経って、連邦職員の説明は全帝国への放送映像で裏付けられた。〝
代表人格は地球向けの放送で、美しい銀髪と輝く金瞳を持った少女の姿で現れた。量子人格化した種族は威圧的な印象を与えないよう、種族の特徴を反映しつつも、愛らしい少女の姿をした映像体や分離個体を用いることが多い。それでも彼女に関して言えば、やはり銀河系を統一した種族らしく、高い知性と強い意志をうかがわせる、鋭い口調と
私達が学ぶべき教訓も、まさにそこにあると思う。いかに私達が神や悪魔の如き技術力を得ても、初めからそれを使いこなせる資質を備えているわけではない。身に余る力を持てば使い道を誤るし、自分達だけでなく他の人々も高めていかないと、引きずられて滅んでしまう。技術を持ってしまった以上、どうせなるなら私達は〝責任ある神〟をめざして、どこまでも自分達自身の資質や組織を高め、技術利用と利害調整を改善してゆかねばならない……って言うのは、ユヴァル・ノア・ハラリという歴史学者の受け売りなんだけどね(笑)。私も全く、同感だ。
それは決して、神様の言葉にも反しない。〝知恵を持つと神のようになり、善悪を知る〟という教えは、知性によって技術を得ると、経済・社会活動が豊かになる一方、複雑化もするので、何が社会の善悪かを決める政策が必要になるという、文明の本質を語っている。だから私達はその政策を正しく決めるため謙虚に、どこまでも遠い神の高みをめざして、限りなく近づいてゆかねばならない。異星人達はそのことを伝えたに過ぎない、ともいえるんじゃないかな?