アルト・ザ・ダイバー【書籍化】   作:左高例

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掌編7:『アルト・ザ・海は繋がっとるけん』

 

 盆の期間に海へ入ってはいけないことは日本人の常識だ。

 五年以上前は盆だろうが正月だろうが(正月はないか)、海水浴場には頭ハッピーな海水浴客が押し寄せて、真夏の海でチャプチャプ水遊びしている罰当たりな風景がテレビで放送されていた。

 しかし五年前の夏。まさに海水浴シーズンに日本の太平洋沿岸を大津波が洗い流した。津波が発生しますの警報を聞いても呑気に海岸近くで見物していたアホを百人以上飲み込み、海水浴場の殆どは津波による瓦礫と漂着物で壊滅。その後は更に、魔物まで海に出るようになった。

 そんな最中に泳ぎに出るやつは余程のアホである。

 日本の海レジャー文化はアホみたいに後退した。

 

 さて、それでも積極的に泳ぎに出ているのがオレたち冒険者なんだが、ダンジョンは時々レアな……っていうか期間限定の魔物が出現する。

 毎週日曜日の夕方にだけ出現するイソノマグロあたりが有名だが、夜にだけ捕れる、黒い星があって紅白模様で縁起が良い夜鮭なんかもその一種だな。

 

「で、盆の時期にだけ出てくるレアな魔物を探しに行きたいってグレイおっさんの依頼なわけだ」

『なるほど。で、味は?』

「まだ捕獲されたことがない個体だから不明だが、安心してくれ! 見た目はアカマンボウ科に似ている気がするから美味しいはずだ!」

 

 センセイの食欲型な疑問にグレイが答えた。

 ここはダンジョン周縁海域の上。グレイおっさんがレンタルした小型ボートに乗ってオレたちはやってきていた。

 ボートにはオレとセンセイ、グレイと更にもう一人ってかもう一機っていうか、強化アーマーの『トビー』が乗っている。

 トビーは日本が所有している数少ない水中探索型強化アーマーで、大手総合警備会社のフジバヤシ・テック社が開発した忍者型搭乗ロボだ。会社が政府に依頼されて三岳島とダンジョンの調査、日本人冒険者のサポートなどのために活動している。

 

「強化アーマー二人も呼んで豪華探索チームだけどよオッサン。あんたオケアノスで強化アーマー部隊のお友達じゃなかったのかよ」

「うむ……今回の魔物探しは私的なこととされて、社内のゴルゴン小隊を使うのは許可されなかったんだよアルト青年」

「あいつらレア魔物探してんのにな。ケチくせえ。で、トビーはなんで呼んだんだ?」

 

 芝居の後ろにいる黒子めいた覆面をつけた巨漢レスラーみたいな体型をした強化アーマーに乗ったトビーが発言する。

 

「ファファファ。トビーはちゃんと正規の依頼を受ければ仕事をするのです。今回は強化アーマー乗りが必要だったらしいのです」

「盆の時期のダンジョンはクラゲゴーストが大量発生していることがあるからね。アルト青年もヘルメットを貸すから防護しておくといい」

 

 クラゲゴーストはクラゲっぽい魔物で、半透明でふよふよ浮いている一見無害なやつだ。ただし目に見えないぐらいに細くて遠くまで伸ばしている触手についてる刺胞の毒が厄介だ。

 軽度だと寒気、妙な違和感を覚える神経症、疲れなどが出る。

 中度になると若干の幻覚や幻聴と鬱的な精神状態になって恐怖心が出てくる。

 思いっきり刺されまくると上下左右の空間失調、妄想に囚われる、リアルな幻覚、感情の爆発などの症状が現れ、とてもじゃないが活動不能に陥る。

 それが幽霊にでも取り憑かれていたかのようだからクラゲゴーストと名付けられた。

 中には幻覚で、死んだ知人の姿を見て会話をしたというやつまでいるが所詮は幻覚だ。

 微妙に厄介なのが、微発光しているクラゲ本体を見てもサブリミナル的に幻覚でやられる。

 

 これを防ぐにはフルフェイスメットで全身防御するのと、強化アーマー着てりゃあ問題ないわな。物理的に刺されないようにしとくわけだ。メットにはある程度の遮光処理しておく。

 非常に厄介そうな魔物なんだが、一匹二匹だとそこまで毒が重度化するまではいかない。大量発生している中に飛び込むのが危ないだけで。つまり今なんだが。

 グレイが皆に飛び込む合図をする。

 

「さあ行こう! 目標は激レアでセンシティブな魔物『テンノウノツカイ』だ!」

「勅使かよ」

 

 それ殺したら朝敵になったりしねえよな。

 

 

 *******

 

 

 透明度の高い異海に潜るとあちこちにクラゲゴーストが浮遊・発光していて海が薄っすらと妙な色に染まっているみたいになっていた。

 それを餌にするやつも泳いでいる。

 

『アルト。あの亀は食べていいやつか?』

「あれは普通のアオウミガメで、魔物じゃなくて絶滅危惧種だから駄目だな」

『あっちの巨大魚は?』

「ヤリマンボウ。名前はひでえが、これもただの魚だ」

『魔物じゃないのに魔物を食べに来るのか……』

「たくましいよな、案外」

 

 海は繋がっとるけん、割と普通の海棲生物も異海にやってくることがある。魔物ってのは栄養だけはあるやつが多いらしく、雑魚魔物は餌にピッタリなんだそうだ。

 

『ビッグラゲがいる。うっかり巻き込まれないよう先に排除したほうがいいかもしれない』

 

 グレイからの通信が届き、オッサンが手を向けている方を見ると半透明の巨大なクラゲが空間を埋めていた。

 ビッグラゲは巨大なクラゲ型魔物で、どんぐらい巨大かっていうと半径百メートルぐらいある。その体は触れた先から崩れていき、そして崩れたらまたくっつくのでビッグラゲが居る方へ冒険者が進むと普通に体内へ入ってしまう。見た目もほぼ透明だから、体内に入っても若干周囲の海が濁ったかな? ぐらいにしか感じないんだな。

 で、逃げられないぐらい内部に入ったら極細の触手で刺して麻痺らせ、体液を吸ってくる。他の魔物もよく巻き込まれているので注意深く見ればわかる、トラップエリアってところか。

 

『処理してみよう』

 

 センセイが応えて弾代無限のブラスターをビッグラゲの空間に向かって撃ちまくる。

 が、

 

『……効いてない気がする』

「体の透明さでレーザーを透過してるんだろうな」

『ファファファ。ここはトビーに任せるのです』

 

 忍者型強化アーマーは背中に装着していた筒を取り出した。

 

「ヴァルナ社製じゃねえよなそれ。ひょっとして国産水中兵器か?」

『フジバヤシ・テック社は対海賊の警備も請け負っているのです。そこで開発された水中用の装備をトビーは魔物用にテストしているのです。そしてこれは水中用多目的グレネード発射装置【火遁ランチャー】』

「名前が完全に忍者ヒーローノリだな」

『会社の方針なのです』

 

 フジバヤシ・テック社は日本政府関係者へSPも派遣している国内最大手の警備会社で、前身は忍者集団だとか名乗っているが忍者とかいねえだろ会社作る頃には。

 CMなんかでも黒尽くめに覆面と忍者の格好をした警備員が目立つポーズを決めながら警備アピールしている、外人が勘違いして作ったような会社だった。

 それはさておき、トビーは火遁ランチャーをビッグラゲへと構えると三連発で水中用グレネードを投射した。

 それぞれ爆発すると水中が紫色に濁った。

 

『弊社で開発した、異海ヘビの毒にトリカブトや松の実を混ぜて作った毒煙幕なのです。クラゲの体を構成するタンパク質ぐらいなら細胞レベルで溶かしてしまうのです』

「日本の警備会社そんなもん開発して大丈夫なのかよ」

『異海素材は法規制の対象外なのです──現時点では』

「いやトリカブトの方を言ってるんだが」

『トリカブトは普通に園芸店に売っているのです』

 

 マジか。意外にゆるいな。 

 ともあれトビーが使った毒煙幕が広がり、巨大なビッグラゲは徐々に崩壊しつつある。あれなら放置していても大丈夫だろう。オレたちは先へ進むことにした。

 

 

 ******

 

 

 目的は海底遺跡群の下層区画だそうだ。道中に遭遇する雑魚どもはセンセイとトビーがモリモリ片付けていったのでオレ要る?って感じだったが、下層区画なら話はわかる。

 海底から生えている街みたいな遺跡の地下にはまた別の街が広がっているわけだが、さすがに地下だけあって狭い箇所も多々あるし、基本的に暗い。また、魔物も小型が多い。

 

 強化アーマーは強力な武器だが欠点が幾つかある。まず人間よりはデカいので、地下や建物内だと動きが制限されることがある。

次に、全身に付けられたカメラの映像を内部モニターに投影して、手足や武器を動かす操作を機械で行い、それを機体にフィードバックさせるという仕様上どうしても動きが早い魔物相手には一手遅れることがあるのだ。そりゃ生身で直感的に腕を動かして素早い魔物を撃ったほうが早いよな。

 そういうわけで強化アーマーには随伴する冒険者がいたほうがカバーできるわけだ。

 下層区なんかは特にな。

 

 海底遺跡群のあちこちにある、下層区画へ降りる穴から先へ進む。

 外は透明度の高い海水が日光を素通りさせるために明るいのだが、上層部が蓋をしている下層区画は基本的に真っ暗だ。予め用意していたライトを点けて、死角をカバーしながら奥へ向かった。

 

『来るぞアルト青年! ナイフフナの群れだ!』

「なんで海にフナがいるんだよ」

 

 ツッコミを入れつつ散らばって襲ってくるナイフみたいに尖ったフナを銃撃で仕留めていく。

 センセイもブラスターの散弾をばら撒いて牽制し、近づく個体はトビーが鎖鎌型ワイヤードローンブレード『ユリカマ』で切り落としていった。

 

「そしてオッサンは撮影ばっかりかよ!」

『今回は依頼主だからね! 優秀な君たちに任せた! グレイフラッシュ!』

 

 パシャパシャとグレイはナイフフナと戦うオレたちもカメラに収めている。モデル代取るぞ。

 フナの群れを退治して進むと、瓦礫の山があるところに妙な気配を感じた。

 

「センセイ。ああいう瓦礫は魔物が潜んでることあるから避けるか、遠くから撃って確かめてみるといいんだぜ」

『了解した』

 

 センセイのブラスターが瓦礫の山へ幾条も突き刺さると、慌てたように積み重なった瓦礫の隙間からタコの触腕がはみ出てきた。

 瓦礫の幾つかを掴んで盾にしながら暗がりへ逃げていくのは……んーと、なんだっけか?

 思い出さんうちに遠くへ隠れて消えていった。

 

「魔物博士よ。あれなんだっけ?」

『恐らく【北斎タコ】じゃないかな。目つきがいやらしかった。冒険者へとスケベな感じで絡みついてスケベな毒を流し込んでくるタコ』

「冒険者のほとんどは男だろ」

 

 見境ねえな。いや頭足類に人間のオスメスなんて見分けがつかねえのかもしれねえが。

 

『ファファファ。ええ!? エロ系魔物だったのですか!? くっ……なら捕獲していったのに!』

 

 トビーが悔しそうに言い出した。

 

『僕はそもそもエロ系魔物をゲットするために冒険者やっているのです! サキュマスとか! チンタチウオとか! ウマンコ貝とか!』

「ウマンコ貝は魔物じゃなくて普通の食用の貝だろ」

 

 近くにある屋久島の方言でタカラガイの一種のことだ。

 

『というわけで次に見つけたらぜひ譲って欲しいのです。僕を大人にして欲しいのです』

「勝手に頑張っとけ」

 

 トビー(の、中に乗ってるやつ)はとある事情からエロ系魔物を求めているようだが、未解明な怪しげな毒成分を使うのはどうなんだろうな。オレなら勘弁だぜ。

 それからオレたちはグレイオッサンの案内で深い穴を目指した。

 

『実はこの下層区画には更に下に大きな空間があるのが発見されていてね。まだ調査は進んでいないのだが、目的のテンノウノツカイはそこから海面に向かって出ていく性質があるようだ』

「なんでその魔物は海面に上がるんだ?」

『私の推論だが、肺呼吸なんじゃないかな。定期的に外の空気を必要としているとか。それが盆の時期に重なるのではないだろうか。もしくはこの時期大量発生しているクラゲゴーストが好物で出てくるとか』

「そんな生態で海の底の底で生活すんなよ……」

『だから下層区の更に下──便宜上最下層区とでも呼ぶが、そこには一部空気のあるエリアも存在するのかもしれない。なに、不思議なことではないよ。酸素珊瑚なんて奇妙な珊瑚が異海には生えているのだし、そうでなくとも地球の海というのは植物プランクトンや藻類、珊瑚などで世界中の酸素を3割以上生み出しているとされているのだからね』

「ふーん」

『アルト青年が発見して登録した魔物【イルカ人】も肺呼吸のようだが、恐らく最下層区から出てきたのだろうしね』

「あれ? そんなの見つけたっけ?」

『2巻で見つけたじゃないか』

「ああ。そうだったな。思い出した」

 

 なんか触れてはいけない気がしてオレは納得し話を打ち切った。

 

 最下層区へと繋がる縦穴は暗いこともあって深淵って感じがした。

 迂闊に踏み込むには強化アーマーだと狭く、グレイは穴へと向けて小型の無人探査機(AUV)を投下してリモコン操作し、内部を探る。

 

『ううむ、やはり下に行くに連れて異海の海水に含まれる未知の粒子が濃くなっているな……』

「それが濃いと強力な魔物が生存しやすいんだっけか」

『そうだね。だからEX級の魔物はブルーホール近辺に棲息している……普段はレーダーで映らないのは、ブルーホールの途中にも横穴があって、広い巣を持っているのではないかと言われているが』

 

 異海の海水は熱心に調査されているが、よくわからん粒子が溶け込んでいることはわかっている。この粒子が混ざった海水は光をよく透過するようになり、そんで海棲生物にとって生存しやすい環境になる。

 ぶっちゃけ異海の海にいれば魔物ってのはある程度は食料を食わなくても平気らしい。その粒子の影響かもしれないが。そうでなければ、こんな狭い海域に百メートルを超える化け物が何匹も生存できないわな。まあ、追加で餌や冒険者を食う分には遠慮もしないんだがあいつら。

 トビーは周辺警戒。センセイは寿司の材料を探している。

 オレは視力を活かして無人機のモニターを観察させられていた。撮影した映像見るのに視力関係あるのか?

 ふと画面に違和感。

 

「オッサン、ストップ。ここ拡大鮮明化してくれ」

『ううっ! いいねえ……そんな便利なことできるかと昔は言われていたドラマのセリフなのに、今はAIで画像補正して本当に拡大鮮明化できるんだから……』

「なに懐古趣味みたいな感動してんだ」

 

 グレイがコントローラー(エレコムのやつだった)でライトとカメラを調整すると、モニターの奥にはなにかが映っていた。

 

「これは……人の顔?」

 

 心霊写真か? のっぺりとした男の子の生気無い顔が映ってるんだが? 微妙にホラーだ。

 グレイは小さく叫ぶ。

 

『居た! テンノウノツカイだ!』

「え!? なんだあの顔!?」

『テンノウノツカイは人面魚なんだ。出口に向かっている!』

 

 モニターではどんどん子供の顔がアップになって来た。いや怖いな!

 顔以外の部分はウツボかタチウオみたいな細長くてニョロニョロした魚の胴体をしていて、人面魚っていうか人面蛇にも見える。

 

「出てくるのか!? 撃っていいのか!?」

『撃ったら……ひょっとしたら……呪われる……かも?』

「嫌な情報だけ後出ししてんじゃねえぞ!?」

『あれは正式名称【安徳天皇の遣い】……壇ノ浦で沈んだ安徳天皇の怨念が宿った魔物とも言われている』

「誰に言われてんだ!? それに壇ノ浦は瀬戸内海だろ!?」

『海は繋がっとるけん……』

「それ言いたかっただけだろ!」

 

そうこうしているうちに人面魚はオレらのところへ近づいて来ていた。

 センセイとトビーが武器を構えるが、オレは止めた。

 なんか穴の奥からゾワッとしたやばい感覚があったからだ。直感だが、それに従ってこれまで生きてきた。

 

「待てセンセイ! どう見てもキモい人面魚だから寿司ネタは無しだ! スルーしろスルー!」

『ゲテモノが美味しいという風潮もあるが……』

『人面魚ってエロいのでは?』

「トビーはそのまま死んでいいぞ!」

 

 言い合っているうちにグレイはカメラや動画撮影機材を手早く用意して待ち構えていた。

 来る。肌が粟立つ。

 

〘縺翫∪繧薙%繝シ縺セ繧薙%繝シ縺セ繧薙%縺セ繧薙%繝シ!!〙

 

 文字に表せない異常な音波を伴いながら、大型トラックみてえなデカさのテンノウノツカイが穴から飛び出ていった。

 そんなにデカいだけあって人間の子供に似ている顔面は酷く不気味で悪夢みたいだった。撮影した映像には映らなかったが、全身から怨念めいた赤黒い毒粘液みたいなのを垂れ流しているようにも見える。グレイがパシャパシャ写真撮っていたけど呪われるならあのオッサンだけにして欲しい。

 下層区に出てきたテンノウノツカイは閉ざされた天井のあたりを暫く高速で泳ぎ回り──やがて勢いを付けて天井へと体当たりをした。顔面からぶつかるのって体当たりで合ってるのか?

 どん、と衝撃で周囲に岩の破片などが散らばり、落ちてくる。オレは渡されたカメラの拡大機能を使って天井に張り付いているテンノウノツカイを確認してみると、

 

「うげ! あいつ……天井を食ってるのか!?」

 

 不気味で素朴な人面がもぐもぐと口を動かし、天井を削り取って前へ進んでいた。人間の顔に酷似していたその面は、口が大きく裂けたみたいに人では不可能なぐらい開いて歯をむき出し天井を齧っている。

 もともと上層と下層の間はそう分厚い天井ではなく、一分もすれば穴が空いて強引にテンノウノツカイは穴を広げて上昇していった。

 

『追いかけよう! そして撮影しよう!』

「欲望全開だなこのオッサン」

 

 仕方なくオレたちはテンノウノツカイが空けた穴を通って上へと向かった。ひょっとして上層から下層へ繋がる穴ってこうやって増えていってるのか?

 明るい上層部へ向かうと、海面近くの海域でテンノウノツカイが泳いでいるのが見えた。

 周囲には押し包まんばかりのクラゲゴーストが大量発生している。

 だが、テンノウノツカイはそれを食うでもなく……なんかのんびりクラゲに纏わりつかれながら泳いでいるようにも感じた。

 

「なんだあれ?」

『もしかしたら……テンノウノツカイはクラゲゴーストの毒を摂取しに来たのかもしれない』

『毒を敢えて? そんなことがあるのですか?』

『自然界では珍しいことではないのだよトビー少年。例えばコアラはユーカリの毒を摂取することで行動力を減退させ体力を温存している説がある。フグはテトロドトキシンの含まれた餌を食べると性格が穏やかになり、仲間同士の争いが減る。快楽目的なのか、イルカがフグの一種を好んで食べた後は異常行動を取って遊んでいるという姿も撮影された』

「なんか心なしか、顔がウットリしててキモいなアレ」

 

 クラゲに刺されまくりながら快楽を得ているのだろうか、巨大な人面が穏やかで逆に怖い。

 

『クラゲゴーストは幻覚や夢を見させる毒だからね……平家や安徳天皇の怨念を宿したあの魔物が、幸せな幻覚を見ることで癒やされているのかもしれない……』

 

 それっぽく締めたグレイの言葉を聞きながら、オレたちは遠くへ泳ぎ去っていくテンノウノツカイを見送って今回の仕事を終えた。

 捕まえたり殺さなくても撮影完了だけで成功の契約だからな。

 グレイが出した記事は大層人気だからそのロイヤリティはかなりのものらしい。

 

 

 

 ……余談だが、周縁部までやってきたテンノウノツカイが海面近くを泳いでいたので、船の上からハントしようと試みた冒険者一行が居たらしい。そういう通信を近くのやつが傍受した。

 船上からテンノウノツカイめがけて射撃したあと、そいつらは行方不明になった。船の上にはそいつらが着ていたダイバースーツと装備一式、それに体が水に置換されたように濡れた形跡だけ残っていたとか。

 

 こわ。なんか、撃たなくてよかったぜ。

 

 

 




お盆更新!
日本人の強化アーマートビーは九州限定SSに登場しています。あと2巻にも(予定
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