アルト・ザ・ダイバー【書籍化】   作:左高例

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第16話『アルト・ザ・乱戦』

 

 殺到する海水に巻き込まれてどっかに叩きつけられるのが最悪のパターンだ。センセイはエリザとウリンを抱えてはぐれないようにする。オレもセンセイの背中に乗ると、声が聞こえた。

 

『アルト! 私が二人を庇いながら移動するから、射撃を頼む!』

 

 そう告げるとスペランクラフトジャケットの基本武装、ブラスターが背中のホールドポイントから外された。

 

「あいよ。とりあえず外に出るぜ!」

 

 屋内だと水流が激しくなり危険物も多い。外もまあ、魔物がたんまり居るんだが。

 それにしても他の冒険者やオケアノスの迎撃部隊も出るはずだから、ササッと離れて安全な上陸場所を探そう。

 濁流をかき分けてセンセイは水が流れ込んでくる窓へ近づくとさっき爆発を起こしたドラグアナがこっちを見ている。

 

「お亡くなりになりやがれ、レプティリアン野郎‼」

 

 ブラスターのトリガーを引くと、銃口から緑色のレーザーがどでかい閃光花火みたいに前方へ弾ける。

水を透過する波長のレーザー兵器というまるで未来ポワワ銃なブラスターは、射程こそ二十メートルそこそこだが威力は高い。拡散する関係上、近距離ほど強力になるものの射程ギリギリで当てても魔物の体を焼き削る。

 顔をかすめるように照射されたドラグアナは悲鳴と共に怯んだ。その脇をセンセイにしがみついたオレたちがすり抜けていく。

 海に出た。ダンジョンから離れているこの海域は水の透明度がそう高くないから見通しが悪い。あの謎の海域だったら一キロ先が見えるほどなんだがな。

 

「大丈夫か、ちびっ子ども! 慌てず呼吸だけ気をつけろよ!」

『こっちはそこまで大変じゃないけど……! ウリンちゃんは⁉』

『コホー……コホー……』

『必死だけど大丈夫っぽいよ!』

 

 通信で呼びかける。いきなり深度ウン十メートルの海に突入したこともアレだが、センセイの巡航速度も時速二十キロメートルほど。激流の川に逆らって進むぐらいの水の勢いが掛かるはずだ。オレは慣れているから平気にしても。

 

 ……なんか知らんが、少し前に音速マグロの目玉を食って以来、やけに水圧に対して平気になっているんだが。今日もゴーグルすら付けてないのに余裕で目を開けて銃を振り回せる。

 魔物には未知の薬効があって、食っていると身体能力や内臓機能が強化されるという噂もある。同じく未知の毒が含まれているやつもあるから死ぬやつも絶えないが。

 そのうちエラとか生えて来ねえだろうな。

 

『アルト。周囲に小型の魔物反応も多いぞ』

「チクショウ、ダンジョンの範囲でも広がったのか? とにかく内湾を目指そうぜ。あそこならオケアノスも広範囲殺戮魚雷とか使わねえはず!」

 

 三岳島は『コ』の字をした人工島で、凹んだ部分が大型船も出入りできる湾になっている。岸には冒険者ギルドこと漁協関連施設も多く、魔物への対応も早いだろう。 

 下手なところで水遊びしていたら魔物と間違えられて爆殺されかねない。

 

「ちっ、速いやつもいやがる!」

 

 こっちに突っ込んでくる細長い三匹の魚はカマイタチウオだ。タチウオっぽい形をしているが、必ず三匹でつるんでいる。

 妖怪の鎌鼬よろしく、一匹目が硬い頭で突撃して衝撃を与え、二匹目が鋭利な尻尾で切り裂いてくる。

 

「そらよ!」

 

 まあそんなカスみたいな物理攻撃してくるやつは遠距離攻撃手段があれば余裕だ。銛やナイフで対処しようとすると危険なだけで。

 ブラスターで突っ込んでくる二匹目までをボロくずにしてやり、三匹目は持ってきていたナイフで脳天を突き刺した。三匹目は遅いし弱い。そんで三匹目だけ薬効成分持ちで売るとかなり高値がつく。

 

「センセイ、保管!」

『開けた』

 

 センセイの腰に付属している小型コンテナみたいな収納ボックスへ放り込む。行き掛けの駄賃ってところだな。

 

「そんでトカゲ野郎も追いかけて来てやがるし。一匹ぐらい仕留めとくか。センセイ、いい感じに敵の周り旋回してくれ!」

『やってみる』

 

 ドラグアナを引き連れて島の近くに戻ったら魔物ごと弾丸の雨を打ち込まれるかもしれない。ブラスターで十分倒せそうだからな。

 ドラグアナの武器は口から吐き出す爆炎以外には刃みたいになった爪と、背中の針を打ち出す攻撃だ。針の根本でルビジウムを生成して爆発させて飛ばすようだ。

 更に外皮は近距離で発生する爆発に耐えられる頑丈さを兼ね備えている。だが、弱点も判明している。喉元にある特徴的な尖った部分だ。俗に逆鱗とか呼ばれている。

 

「逆鱗ハンニバル討伐戦チャァァンス!」

 

 付かず離れず、ドラグアナの周囲を動くセンセイに合わせて、逆鱗を狙ってレーザーを打ち込む。鱗がその部分だけ変異しているのは、そこに溜め込んでいるルビジウムから出る放射線の影響で奇形になっていると聞く。そして肉質が柔らかい上に、ざっくりと傷つけると──

 爆発音。ドラグアナが喉に溜め込んでいるルビジウムへ傷口から海水が流れ込んで反応し、喉を吹き飛ばす爆発を起こした。頑丈な口元ならまだしも内部からの衝撃には耐えきれずに頭を失ったドラグアナが沈んでいく。

 

『アルトくん、お肉回収できないかな?』

「マジかよこのアマ」

 

 エリザからそう言われてげんなりする。毒火炎を吐き出すクソ生物の肉だぞ? 汚染とかされてねえ?

 でも寿司のために生きるセンセイは卑しくも沈んでいくドラグアナの方へ機体を動かすので、せめてルビジウム袋から離れていて、ワニ肉なんかだと美味しい後ろ足の付け根あたりをレーザーで切断して回収ボックスに入れた。

 

『コー! ホー! コー! ホー!』

「ほら! 二人が欲を出すから必死こいて呼吸してるウリンがキレてんだろ! 早く戻るぞ!」

『す、すまない』

『ごめんねウリンちゃん!』

 

 ウリンだけはダイビング初心者すぎて呼吸するだけで精一杯、喋る余裕もなさそうだ。

 深度を上げて湾へ向かおうとすると、あちこちで戦闘が行われているのが目につき出した。ドラグアナだけでなく小型魔物の群れもいる。

 それらを退治するのにオケアノスの潜水艇『シーホース』も何機か動いているようだった。ダンジョン周辺では大型魔物に襲われるので活用できない潜水艇も、ここらなら使える。

 潜水艇に装備されているのは有線式大型電気ショッカーが多い。どでかい魚雷で吹き飛ばすと素材が手に入らないからだ。一斗缶ぐらいの大きさをしたドローンを魔物に近づけ、電気銛を突き出して痺れさせる。

 まあもちろん、余裕がなくなったら容赦なく大量破壊兵器を使いだすのが暗黒メガコーポのやり口なのでさっさと逃げるが。

 するとシーホースが一機近づいてきた。操縦席はガラス張りになっているが、中には赤毛のマッチョ黒人女性が手を振っている。

 

『やー、アルトくん。ミッション頑張ってるねぃ』

「ゴジラさんか!」

 

 操縦者はガッディラ・ミスカトニック女史。あだ名はミス・ゴジラさん。オケアノスに雇われている女兵士だ。泳ぎが得意ではないのでダイバーではないが、戦闘艇や潜水艇は操縦できる。たぶん戦闘機とかヘリとかそういうのも行けそう。そういうミリタリーレディだ。

 

「ちょうどいい、安全なとこまで案内してくれ!」

『あれ? 魔物目当てで飛び込んだんじゃないのかい?』

「沈下区画で遊んでたら窓を割られたんだよ。一般人(パンピー)を二人抱えてるんだ」

 

 ゴジラさんが覗き込むように確認すると、センセイの腕にエリザとウリンを抱えているのを見つけた。

 

『お寿司屋さんじゃないかぃ! 怪我でもさせたら大変だ。一旦、こっちの潜水艇に避難させなよぃ』

「できるならやってくれ。溺れたら怖い」

 

 エリザは先月ぐらいから三岳島でちょっとした有名人になっていた。音速マグロの寿司で大々的に宣伝を打ち、やたらめったら味の良い寿司を連日販売した。

 そのおかげで『魔寿司』はここのところ夜のみ営業しているが、客入りは結構なものだ。繁盛しているとタカリ難いのでオレはあまり入っていないが。

 流行りに乗じて魔物料理を出したり、魔物寿司を出したりする店も出たらしい。だがエリザの料理に比べて圧倒的に不味いか、下処理が不十分で有毒になっていて駄目だった。噂だとオケアノスも保管している音速マグロを料理してみたものの、エリザの寿司にはまったく及ばなかったとか。一応、エリザ以前にもボチボチ魔物料理は研究されているんだがな。さっきのセレブプールの冷蔵庫に入っていたやつみたいに。

 

 とにかくエリザが腕のいい料理人であることは間違いない。

 そんな彼女が怪我でもして料理を作れなくなってしまったら大問題だと、魔寿司の常連になりつつあるゴジラさんも内部で保護することに同意した。

 エリザとウリンを潜水艇下部の魚雷発射後みたいなところから収納する。そこがエアロックになっているらしく、減圧してから潜水艇の操縦室へ二人は入れた。ウリンの顔が相当青くなっている。まあ、操縦室には酸素供給器も落ち着くための薬物もあるから大丈夫だろう。たぶん。少なくとも、外よりは。

 

「そんじゃ案内頼むわ」

『はいよー。そうだ、アルトくん。武器要るかい武器ぃ。使いなよ』

 

 ゴジラさんがそういうとシーホースに横付けされているストレージが解放されて銃とカタナが出てきた。センセイのレーザー砲よりはしょぼいが、タダなら借りよう。

 ブラスターを返して手に取る。

 

「ヴァルナ社の新型か」

『そうさねぃ。幾らなんでも威力不足だって言われていたから新開発したやつだって。そこらのドラグアナを参考に、ルビジウムを芯にしたニードルを打ち込んで爆発させる弾頭を打ち出せるVA-NG2(ヴァングツー)と、近接兵装ダンビーラ』

「なんでカタナだけは日本語のダンビラ採用してんだよ。チェスターの影響か?」

 

 まあいいか。カタナはなんか角度とか重さとか計算されていて、水中でも振り回して抵抗が少ない感じだ。近接用武器は危険度が高いんだが、魔物の硬さによっては銃撃が効果薄いこともあるので最近見直されている。ぶっ刺して電撃を流せば銃より効く。

 

『それじゃあ安全な脱出ルート……って言っても戦況微妙だからねぃ。ソナーレーダー効かないからどこに敵が居るのやら』

「なんでだ? そもそもこんな大群が寄ってくるのをよ、オケアノスが事前に見つけなかったのか?」

 

 魔物に襲撃されるのは初めてじゃないので常に監視しているはずなんだが。

 

『未確認だけど、機甲ドラグアナの統率種が来たんじゃないかって話で、無人偵察艇を出したみたいだよう』

「げっ。EXランクの化け物じゃねえか」

『機甲ドラグアナとは?』

 

 センセイからの疑問の声に応える。

 

「そこらにいるドラグアナの上位っつーか、強化版で鎧みたいな鱗付けてるやつだ。動きも早いし炎も強い。で、統率種ってのは変な電波だか音だか使って他のドラグアナや魔物を操るリーダーだな。おまけにその電波はレーダーを阻害するどころか、魚雷やドローンを操って打ち返してくる。軍艦に搭載されている機雷を遠隔起爆させて沈めたこともある」

 

 何体か確認されている機甲ドラグアナの近接種や砲撃種がAランクで、恐らく一匹だけのユニーク個体の統率種がEXランクだ。EXランクの魔物ってのは単独で軍艦を沈めるような、冒険者がどうこうできるレベルじゃない化け物だった。

 

「早く陸に逃げようぜ。統率種相手だとオケアノスも核魚雷とか使うかも」

『打ち返されたら致命傷だねぃ。それじゃ、腕利きのゴルゴン小隊が投入されたエリアだったら魔物も減っているだろうから、そっちから上がろうねぃ』

 

 シーホースが旋回して移動を始めたのでセンセイに掴まってそれについていく。

 近づいてくる小型の魔物へ銃を向けてぶっ放す。水の抵抗を受けないように畳針めいた細長い銃弾が三点バーストで発射され、一メートルほどの体長を持つヨウカイベラの頭を爆散させる。

 

「なかなかいいな! 借り物だから弾代気にしなくていいのが特によ!」

『ちなみに弾芯に使われているルビジウムの価格は一グラム三万円ぐらいで……』

「アホか! この銃弾アホか! どんな値段してるんだボケ!」

『まあまあ。ドラグアナの生物酵素を使った合成方法でそれから随分安くなったから兵器化にゴーが出たらしいねぃ』

 

 あのトカゲ野郎も役立つことあんだな。それにしたってセンセイのレーザー銃の方が万倍便利なんだろうけれど。

 三人の乗るシーホースから離れないようにして近づいてくる魔物をセンセイと迎撃する。さすがにオケアノスの潜水艇なら識別コードもついているだろうから、それに引っ付いておけば暗黒メガコーポの魔物ぶっ殺し部隊から誤射されることはないだろう。

 暫く進むと魔物の残骸が多く浮かんでいるようになった。前方でしゃべくりながら戦っている連中の声を通信翻訳機が拾い上げる。

 

『クソがアアアアア! サイゴン絶唱確変継続してたのに出動させやがってえええ! 台をハイエナに盗られただろうがボケエエエ! アタシのシンフォグェンンン!』

『……アルトくんみたいなこと叫びながら戦ってる人がいる!』

「いや、オレじゃないぞ。シンフォグェンは通路だから打たねえし」

 

 1は良かったんだが2がイマイチで、3でクソ台になって4は完全に通路だったな。シンフォグェン。

 進行方向に見えてきたのは二十メートル級の機甲ドラグアナ……近接種だな。素早くて攻撃用ブレードが強力なやつ。それを囲んで高速で水中移動しまくっている三人の冒険者たちだ。

 

「ゴルゴン小隊の女どもか」

『ゴルゴン小隊?』

「オケアノス所属の強化アーマーを装備した三人組だ。姉妹かなんかじゃなかったか? 全員女だから珍しいこともあって有名だな」

 

 水中だからやや見えづらいが、機甲ドラグアナへ挑む三人は特徴的なオケアノスの強化アーマー『ゴルゴン』を身に纏っている。

 こいつは例えるなら頭のデッケエヘビみたいなのを背負っている形をしていて、頭部ユニットから八本の触手が数十メートルも伸びて縦横無尽に動き回り相手を攻撃する。触手の先端には銃器が装着されていたり、毒だか電撃だか打ち込めたりするようになっているらしい。

 それが三人、すげえ数の触手が機甲ドラグアナを囲み、柔らかそうな関節部なんかに刺さってはダメージを与えていく。ありゃ石化毒だな。エグいもん使いやがる。

 

『ゴルゴン姉妹~こっちは救助者運んでるから横通るよ~』

 

 ゴジラさんが近づきながら通信飛ばすとゴルゴンの一体が近づいてきて、シーホースの上部ガラスへ張り付いた。近くで見ると強化スーツを着ているやつのシルエットも見える。

 

『ウヒヒヒ! ハッロウ、ガディちゃん! 殺ってかないの⁉ ウヒヒヒ!』

『やあ(ミクロ)ちゃん。お客さんを乗せてるからねぃ。ほら、噂のお寿司屋さん』

 

 シーホースに取り付いたやつ(ミクロちゃん?)は見るからにちびっこい女に見えた。小学生ぐらいの女じゃねえの? さっきのパチやってるやつよりキンキンと甲高い声で笑い声を上げている。

 ゴジラさんの言葉にもう一人のゴルゴンが反応した。

 

『え? 魔寿司の寿司シェフでござるか? この前食べたでござる!』

「なんで翻訳機を貫通するござる口調なんだよ」

 

 小声でツッコミをいれる。ござる女は大柄っていうかスラッと背丈の伸びた女だった。ゴルゴン小隊は大中小のサイズな女三人組だ。

 

『また食べたいのに買い食いの許可が降りないでござる……!』

『ウヒヒ、メガちゃんは食べ過ぎだから怒られてるんだよ』

『あのー、持ち帰りもありますよ~』

『それだ! 今晩誰か取りに行かせるから十人前頼んでおくでござる!』

『はーい』

「営業してねえで、魔物退治はヘビ女どもに任せてさっさと逃げるぞ」

 

 まあ、連中は喋りながらも延々と攻撃触手を操っていたわけだが。

 オレが倒したツインヘッドシャークと同ランクの化け物である機甲ドラグアナを容易くハメ殺しつつ、周囲に寄ってくる魔物も振り向くことなく触手で始末していく。触手自体が鋭利な刃物になっていて、それを叩きつけるだけで小型の魔物は真っ二つだ。あいつらに率先して危険な魔物退治やらせろよ。

 そう思わなくもないが、三人分の強化アーマーとニュータイプみたいなパイロット揃えるのに百億ぐらい掛かりそうだから出し渋るのも仕方ないか。

 

『ミク! メガ! 遊んでねえで魔物ぶっ壊せ! もっと成果上げねえと自由時間減らされっぞ!』

 

 最初に叫んでいたやつが二人へ呼び戻した。その頃には石化毒でやられた機甲ドラグアナは海底に沈んでいくところだった。あの魔物一匹で三十人ぐらい冒険者犠牲になるんだが。普通は。

 

『ウヒヒ、あたいは別に自由時間要らないけど』

『配給のキューブ食料は嫌でござる……』

 

 ゴルゴン小隊の三人組はわめきながら別の獲物を探しに離れていった。

 

「あいつらもあいつらで企業の奴隷だよな。ああはなりたくねえ」

 

 強化アーマーも高価だが専用の操縦士も貴重だってのがもっぱらの話だ。それこそ最安値の装甲に推進剤ついただけの強化アーマー通称『段ボール』ならそこらのチンピラでも着込んで扱えるが、ああいった触手だのドローンだのついたやつはかなり訓練が必要だろう。

 で、そんなパイロットを管理もせず遊ばせて、そこらの町中で拉致られるなり殺されるなりされたら企業は大損害だ。ただでさえ三岳島は治安が悪いのに。だから普段から行動に制限が掛かるのは仕方がないことかもしれない。

 

「給料はいいかもしれねえが、気楽に毎日パチ屋に行ける生活の方がいいね」

『パチンコはともかく、自由がないのは困るな。好きなときに冒険できないだろうし、寿司を食べにも行けなさそうだ。オケアノスの誘いを断っておいてよかった』

『帰ったらお寿司食べましょうね、センセイ!』

『それより早く戻るヨ……なんか気分悪くて吐きそう』

「気をつけろよゴジラさん。そいつのゲロ、たぶん毒だぞ」

『毒じゃないゲロがあるカ⁉』

『はっはは~酔い止めを飲むかい? 先進国だと持ってるだけで捕まるような成分が入ってるやつしかないけど』

『帰るヨ!』

 

 ウリンが急かすのでオレたちはそのまま、シーホースを出した港へ向けて進んだ。さすがにこの海域あたりはゴルゴン小隊が暴れていたおかげで魔物もほとんど居ない。真っ二つに切り裂かれたザコ魔物や頭に石化毒を入れられたり首を爆破されたりしたドラグアナの死骸が漂っていた。サメも寄ってくるんじゃねえかな。早く逃げよう。

 

 

 オレたちが港から陸地に上がって暫くしたら、爆発音と共に遠くの海面にどでかい水柱が上がった。百メートルぐらい上に水が吹き飛んでないか?

 

「うげ。オケアノスの連中、デッケエ魚雷でも使ったのか? それとも機甲ドラグアナの砲撃タイプが出たか?」

 

 機甲ドラグアナの砲撃タイプは口ではなく背中に大砲みたいなトゲを持っていて、そこからヤバい爆発を起こすビームを撃ってくる。近接タイプより動きは鈍いんだが、被害がとんでもない。

 

『今の衝撃で潜っていた冒険者も浮いてきているな……』

「低ランクの強化スーツとヘルメットつけてたんだろうな」

 

 冒険者の必需品である強化スーツとヘルメットやゴーグルは高価なほど耐衝撃性に優れている。最高ランクだとそれこそ近くで魚雷が爆発しても生存できるんだが、そんなカネのねえ冒険者たちはさっきの爆発でフグみたいに浮かんでいた。気絶しているのか、脳味噌がジュースみたいに溶けたのかは知らん。

 

「なにはともあれ、爆発前に上がれてよかったぜ。よし、帰ろう」

『いいのか』

「怪獣との戦争なんてのは兵隊に任せとけばいいんだよ」

 

 ダンジョン周辺海域以外で魔物の大量発生、回収ができるというのでオケアノスだけではなくヴァルナ社も出動しているようだしそいつらの戦力で勝てない状況ならもうおしまいだろ。この島。そんなこと杞憂するよりさっさと離れたほうがマシだ。

 

「店に戻って収支計算するヨ。更衣室に置いてきた服は取りに戻れないシ……」

「手に入れた素材を下拵えしないといけないしね!」

 

 大騒ぎになりつつある港とギルドから帰路につこうとすると、ゴジラさんから銃とカタナは返せって言われた。ちっ。まあドサクサで、オレらが着ているダイバー用品は誤魔化せたか。

 




ドラグアナ近接種:高速移動と体から生やしたレーザーブレードを用いるタイプ。船でもぶった切るが、中距離から複数に囲まれるのに弱い。通称ドラグアナ1型(D-1)
ドラグアナ砲撃種:長距離の生体砲を生やしたタイプ。遠距離から広範囲砲撃を行う厄介さを持つ。接近されると弱い。通称ドラグアナ2型(D-2)
ドラグアナ統率種:一度しか姿を撮影されておらず詳細不明なところが多い。強力な電波を操り、精密機械を無効化、掌握してくる。通称ドラグアナ3型(D-3)

ゴルゴン小隊の使っているゴルゴンアーマーはイラストのミチハスさんが公開していますのでXの方で確認できますでよ!
https://x.com/michi_hasu/status/2087896618641379583
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