店まで送ったらメシ作ってくれるってんで仕方ねえから食うことにした。
遅めの昼飯っつーか早めの夕飯っつーか、微妙な時間帯だが。どっちにせよエリザとウリンは夜営業が六時から九時まであるから、いつもその前にメシを済ませているらしい。居候のセンセイは主に閉店後、余ったものを食わされている。
「持って帰った出来合いのものだけど、ちらし寿司にしてみたよ!」
プールの冷蔵庫にあったローストビーフや海老のマリネ、牡蠣なんかがひと手間加えてちらしの具になっていた。
「色合いを出す錦糸卵はメタルウニの卵巣を混ぜ込んで、桜でんぶはセンソウタラの身から作ってるんだよ! 召し上がれ!」
「ウニは痛みやすいから余ったものを卵焼きに。タラの身の切れ端をでんぶに加工。無駄のない余り物ネ」
メタルウニは名前の通り針が金属で踏んだらヤバそうなウニだ。ほぼ動かないから楽勝で取れるので安い。センソウタラは群れ同士で争っているタラで、負けて死んだやつが回収しやすいザコ魔物だった。
「あと、おかずでドラグアナを肉吸いにしてみたよ!」
「センセイ。ガイガーカウンターとか強化アーマーについてねえ?」
『待ってろ……大丈夫だ』
ドラグアナの肉を入れた吸い物に、センセイが強化アーマーの目をピカピカ光らせて計測してみた。なにせ口から放射性物質を吐き出すクソヤバ生物だ。ゴジラの肉を食べるようなもんじゃねえのか? 細胞に侵食されたりしねえよな。
「疑わず食べろヨ」
ウリンが先んじて肉吸いをぐいっと啜って、ちらし寿司を食い始めた。
「毒見役が居ても、ただちに影響はないってパターンもあるんだよなあ……」
「むしゃむしゃ……アルト! 凄く美味しい! 要らないなら貰うぞ!」
「躊躇いねえなあ!」
強化アーマーから上半身を出して(器用に強化アーマーの腕を操って食器を手元に運んでいる)センセイががっついて食べ始めた。あまりの美味に涙でも浮かんでいるのか目が輝いている。
仕方ねえ。諦めて素直に食うか。味はいいはずなんだ。ちらし寿司をむしゃりと──
舌と脳がスパークしてやがる。
「……」
「アルトくんが白目を剥いてる!」
「いい気味ネ」
「美味しいからなあ」
──ハッ!
「クッ……ここ数日、海モヤシと景品のビッグカツしか食ってないもんで、旨味に過剰反応しちまった……!」
「もっとちゃんとしたの食べろヨ」
「アルトくんも賄い食べに来なよ……」
「オレの脳内麻薬はギラギラ光る演出とぐるぐる回るスロットとジャラジャラ出てくる玉の音でしか分泌されなかったはずなのに……メシが美味いごときで……!」
「三大欲求死んでるナ」
「よくわかんないけど、アルトくんの中でパチンコに勝ったぞー!」
肉吸いもあのトカゲの肉のくせにやたら美味い。そんなに薄く切れるのか?ってぐらい薄く切って味付けし、吸い物の味にマッチしてやがる。この吸い物自体も魔物のあら汁でやたらいい出汁が出ている。
悔しいが、オレが十四万エレク使ってゲットしたビッグカツとは比べ物にならない味だ。コスパも、栄養価も。
「アルトも毎日食べにくればいいのに」
と、冬眠前のげっ歯類みたいに熱心に食っているセンセイが言うが、
「毎日こんなの食ったら舌が肥えて贅沢になっちまうだろ。いざというときは生ゴミでも食って生きていけるガッツを持っとかねえとな」
「捨てろヨ。そんなガッツ」
ジト目でウリンが言うが、必要なときが来たらどうすんだ。舌の肥えた現代人がサバイバル生活をしたとき、あまりにも不味くて栄養が取れずに餓死する可能性があるなんて実際言われているわけで。
……っていうかオレは実際、腐った魚や雑草を食って生き延びていたこともある。
五年前。ここにダンジョンが生まれたときに起きた海底大隆起。それに伴う大地震と津波でオレの地元も被害を受けた。
連鎖的に発生した南海トラフ地震によって日本の太平洋側へ死ぬほど広い範囲が被災したことで復興や支援が難航。漁港は生活の糧だった港湾施設や船が破壊されまくり、魔物まで海に出るようになった。海上輸送も滞り、道路が寸断された箇所も全国で何百と起きた。オレの地元がある大隅半島はハッキリ言って超絶田舎で山道しかない。
そうなると孤立した集落では食料が不足する。釣りに行くったって海岸から釣れる地魚は無限じゃねえ。フグ食って倒れたやつも出た。当時まだ高校生だったオレは誰かが食い残した魚の頭やネズミ、カラスなんかを塩水や雑草で煮込んで食って飢えを凌いでいた。とんでもなく不味かったが、何人も地元で死んだ中で生き延びることができた。
もし、またそうなったとき。
そう思うと毎日の贅沢な食事ってのは気が引けるもんだ。特にエリザのメシは旨すぎてちょっと引く。脳が溶ける気がする。
たまにならいいんだけどな。
オレたちがメシを食っていると、「ごめんよ」という声と共に入口が開けられた。無言で店内のメカルス二体が音波銃を向ける。この警備ロボは、女所帯を守るために怪しげな客には容赦なく発砲する。この一週間で八人ぐらいチンピラ冒険者が病院送りになっていた。
入ってきたのは白髪交じりの髪をした、くたびれたワイシャツ姿のオッサンだ。無害そうなヘラヘラした笑みを浮かべ、額に浮かんだ汗をハンカチで拭っていた。
「やあこんにちは。フリーのカメラマン、グレイだよ。やってるかい?」
「なぁにがフリーだよオッサン。オケアノスの斥候じゃねーか」
「どこに所属していても気持ちはフリーダムなのさ! どっちつかずの灰色なんて言われてきたからね、これまで」
「取材に来たおじさまですね! 今日はどうされました?」
「取材なら費用三十万エレクネ」
このオッサンはオケアノスに雇われてダンジョン周辺を調査している腕利き冒険者で、自称魔物博士だ。
まだ魔物が見つかって数年しか経過していないがご立派な百種類以上掲載された図鑑が出されているのも、このオッサンが発見・撮影・命名などの多くに関わっているからで、そういった功績から最も有名な冒険者の一人でもある。戦闘力は知らんが、生存能力はオレ以上にあるかもしれない。なにせ危険な魔物を尽く撮影して生還している。
年齢は五十前後なんだが元気なオッサンだぜ。
「今日は取材というわけじゃないんだがね、実は珍しい魔物を手に入れたから、ここで寿司にしてもらえないかと頼みに来たんだ」
「珍しい魔物ですか⁉ やりますやります!」
エリザが嬉しそうに応える。とりあえずこの娘は、魔物という変わった食材を寿司にすることを楽しんでいるようだ。
それにしても、わざわざこの寿司屋に、『珍しい素材』をねえ……
「確か……うちのゴルゴン姉妹から寿司の持ち帰りを頼まれていただろう? あれに是非使って欲しいんだ」
「構いませんよ、どんな材料ですか?」
そう聞くとグレイは頷いた。
「ちょっと失礼」
そしてなにかリモコンみたいなのを取り出して操作すると、近くにいたメカルスがピーっと音を立てる。
『スリープモードに入ります。所定位置にて待機……』
そしてスーッと充電ポイントへ戻って動きを停止させた。
「お、おいオッサン⁉ あんた今、遠隔で警備ロボを無力化しなかったか⁉」
「え⁉ い、いやー、単に充電が切れただけじゃないかな? うん。それよりお魚お魚」
あ、怪しい……っていうかなんだそのハッカーのアプリみたいなの。センセイもハッキングで、メカルスのカメラが自分を映さないように処理しているみたいだがより直接的になんかやってたぞ。
肩に下げていたカメラの三脚を入れるらしきケースをカウンターに置くと、それを開いた。中には保冷剤と、新聞紙に包まれた魚っぽいのが入っている。なんでそんな保管方法なんだよ。
ワクワクしているエリザの前で新聞紙の包装を解くと、大きめの鮭の切り身みたいなのが出てきた。グレイが咳払いして、それを紹介する。
「これは……なんか、シャケっぽい魔物……だ」
「おいポケモン博士⁉ なんだその歯切れの悪い解説は⁉ いつも喜々として勝手に名付けたオヤジギャグネームの魔物自慢してくるのによ!」
「ごほん、ごほん!」
「鮭の魔物っつったら、発見されてるのは『夜鮭』か『サーモンデーモン』か……」
何故か夜にしか取れない黒い星と紅白模様の夜鮭。悪魔みたいな模様のあるサーモンデーモン。日本人は鮭好きだからどっちも珍重されてそれなりの値段がついている。
「あとは……」
「ごほんごほんごほん!」
グレイが目を泳がせて咳き込んでいるのを見てオレも「まさか」の予感が浮かんだ。
超激レア、ハイパーな効能で値付け不能な魔物。これまで数匹しか見つかっておらず、世界中の金持ちや権力者が求めている魔物。
効果は食うと寿命が伸びる。末期癌で明日死ぬってレベルの重病人に刺し身一切れ食わせたら一年生きたらしい。しかも健康になって。
で、だいたいトシトラズ一匹から百枚刺し身が作れるので、ざっと一匹で百年の健康寿命を手に入れられる。らしい。数が少なすぎて噂だけが知られている。
もちろんそんなもん冒険者が偶然にでも手に入れたら一発で冒険生活卒業して、海の見えるマイホームでヨットでも買って豊かな余生が送れるだろう。大喜びで企業に売りつける。グレイだって写真撮って自慢するはずだ。
だけどそんな、スクープ大好きカメラマンなグレイが。
当然知っているはずのトシトラズを、名前をぼかしたまま持ち込んで。
おまけにその超貴重な魔物は既に一部しかない。
や、厄いネタにしか思えねー!
「エリザ! ウリン! とりあえずこのオッサンを追い出して塩撒くぞ!」
「待ちたまえアルト青年! 話せばわかる! こんな風に!」
キャバーンキャバーン!
「うわっ十万振り込まれた! ……へへっなにも追い出すこたあねえな。オレはなにも見ちゃいないし聞かねえでゲスホロッホー(語尾)」
「こっちにも振り込まれたネ! ……お茶でも飲んでいくカ? 美味しいのあるヨ?」
「一瞬で買収されてる⁉」
センセイがツッコミを入れた。だってよ。目を逸らすだけで十万だぞ。
一方でエリザは食材と真剣に向き合ってなにやら考えている。
「保存状態がよかったのかな……身は凍っているけど冷凍焼けはしていない……熟成十分な状態だったから脂も抜けていないけど……グレイおじさま、料理するために味見してもいいですか?」
「そうだね、三人分の寿司が残る程度なら」
許可を得て鮭の切り身の端っこをちょっと切り取ってエリザは味見してみた。あれで数十日ぐらい寿命伸びたんだろうか。
「──ん、これなら魔海ぶどうの三杯酢ソースで味が引き立ちそう! やってみます!」
「おー頑張れ頑張れ。そして早く持って帰らせろ」
オレが応援するとエリザは嬉しそうに持ち帰り寿司を作り始めた。魔海ぶどうはこのあたりで取れる海ぶどうの仲間で、昆布系の味がするイクラみたいな食い物だ。長持ちしないので取り扱いが面倒。
エリザが店にある材料を使って持ち帰りの桶にせっせと寿司を詰め始めた。十人前の寿司用の大きな桶で、三人が食べるというので三で割り切れる数に揃えて多くの種類を盛り込んでいく。
その光景を見ながらグレイと雑談をしていた。
「そういえば聞いたかね、アルト青年。君がやっつけたツインヘッドシャークだが」
「ん? なんかわかったのか?」
「死骸を回収して解剖調査したのだが、どうやら魔物じゃなくて突然変異したホオジロサメだったみたいだね」
「オレがぶっ殺したやつはともかく、百メートル越えのやつが地球産でいいのかよ」
「もともと日本全国で目撃例があったぐらいだからねえ。魔物はどうも、このダンジョン周辺海域にある海水でしか長く生きられないようで、あまり出ていかない」
「そのわりにゃ、あちこちの漁港や船が魔物に襲われたって話を聞くが」
「うん。ここの海水が黒潮に乗って太平洋沿岸を、親潮で戻ってきて日本海側にも広がっていくからその影響だろう。今回、この三岳島が襲われたのも徐々にダンジョン周辺……『異海』と呼んでいるが、その範囲が広がってきたからではないかと思っている」
「だったら三岳島も恒常的に危ねえじゃん」
「さすがにオケアノスも防備を固めるようだがね。対策を考えねば、百年後には日本近海は全部ここの海と同じになり、魔物が跋扈するようになるかもしれない」
「レアな魔物があちこちで取れるようになればオトクなこともあるだろうがな」
それこそ無害な薬草昆布は美味い上に内臓疾患にまで効果が期待されている回復アイテムだし、空気ボンベに使われている酸素珊瑚は超効率的に二酸化炭素を酸素へ変換する性質があるらしく温暖化対策に使えるのではないかと言われている。だが、どちらもダンジョン周辺の海でしか育たない。
「そういえばオッサンが見つけた海サトウキビはここ産なのにどこでも育つんだな」
「いや、あれもどうやら異海の水が必要らしい。ただ少しの濃度でいいから、日本近海だったら育つのだが他の海域では上手くいかない」
「ふーん。それこそ日本復興に都合がいい作物だったな」
海サトウキビは海水と日光で育つサトウキビで、海の上のイカダみたいな養殖畑を浮かべて育てる。年に三回収穫できて、北は北海道の海でも冬以外は作れる。日本近海をすべて海サトウキビ畑にすることも可能だ。
そのサトウキビで作ったバイオエタノール燃料は日本を支える資源として注目されている。海だけはクソ広い経済水域持っているからな。日本。
日本は五年前、ここらの海底の隆起と連動した南海トラフ地震によって広範囲に被災した。被害総額はなんだかんだ百兆円近くなったようだ。
津波によって沿岸部の港が破壊された地域が続出。職を失った漁師が溢れ、物流も大ダメージだ。五年経過した今も復旧していない港は全国に無数存在し、中には港町を捨てて移住する集落も出てきている。二度と元には戻らないかもしれない。
そんな壊滅的な状況にある日本では希望が必要だった。これさえあれば一発逆転、皆が豊かになれるかもしれないと縋るものが。
それが海サトウキビによる再生可能エネルギー開発だった。こいつを使った発電設備は二酸化炭素の排出が少ないし、排他的経済水域にサトウキビ畑を敷き詰めれば計算上日本全部のエネルギーを自前で賄えるどころか輸出もできる。更に研究費に税金突っ込みまくって発電の効率化も進めている。
海サトウキビ畑の作成と管理では元漁師なんかの再就職先になっているし、海サトウキビ自体を菓子にしたものも全国で売られて日本人に親しまれていた。
海サトウキビを見つけたがオケアノスじゃなくて日本の研究機関に持っていったグレイは後世だとそこそこ偉人になってそうだよな。
「とにかく、ダンジョンが広がれば今は貴重な魔物もいずれはもっと数が取れるようになるはずさ。だからまあ、ちょっとぐらい私的利用しても、あとで取り戻せるんじゃないかな」
「言い訳がましい……っていうかだったら自分で食わねえの? あれ、ゴルゴン小隊の連中が食うやつだろ」
「彼女らの方が不健康だからね。おじさんは健康診断の結果は全部Aだし」
「その年で全部Aは健康マニアみたいで若干キモいな……それに冒険者なんぞに食わせても明日にも鮫の餌になるかもしれねえのによ」
オレだってトシトラズが手に入ったら自分で食わねえで売り払う。
っていうかどっかから掻っ払ってまであの三人にこっそり食わせるって、そんなに具合悪いのかね。海で暴れまわっていたけどよ。噂だと、オケアノスから非人道的な強化改造を施されているとは聞いたことがあるが。
「はい! お寿司できましたよ! 風呂敷で包んでおきますね!」
「おお、ありがとう。桶と風呂敷は後で返しに来るよ」
「ええと寿司の特上十二人前で会計するト……」
ウリンがスマホで計算していると、入金を示すポップが出た。オレも覗き込むと『五百万エレク』が支払われていた。
「五百万!」
オレは泣いた。寿司に五百万払う世界の理不尽さに。セレブによって人生を踏みにじられているように感じた。資本主義の終わりは近い。これからは暴力が支配する。
「これで足りるかな?」
「そりゃあ足りるケド……大丈夫なお金カ?」
「はっはっは。問題ないよ。ゴルゴン姉妹から寿司を買ってくるために預かった分だからね。彼女ら、お金を溜め込んでいるから」
好き勝手使えねえんだろうな。なにせオレも一回企業に雇われたが、支度金を引き出してパチンコで全部スって請求書回したらクビになったぐらいだ。
グレイのオッサンが帰っていき、エリザは板場で微妙に悩んでいた。
「どしたん? 話聞こうか?」
「そういう口調で寄ってくる男は基本的に犯罪者ネ」
「私も言われたことがある」
「うっせ」
「ええとね、さっきのトシトラズ、お寿司にしたんだけど皮が余っちゃったんだよね。誰か食べる?」
まな板には鮭の皮が置かれている。まあ、確かに寿司なら普通は皮を剥ぐよな。
でもこれは一匹で億の価値がある魔物の素材だ。塩振って焼いて食っていいものか。
「残してたら厄介事に巻き込まれるかもしれねえしなあ。エリザかウリンが食えば?」
「ウリンちゃんどう?」
「一人分だから姐姐が食べるヨ」
「うーん、なんか大皿料理で最後の一口を取るとき気が引ける感じで……」
「イタリアにもあるのかよ。遠慮のかたまり的な概念」
微妙に気乗りしない様子に、センセイが提案した。
「そうだ。ならばいっそ、私のスペランクラフトジャケットに食べさせてはどうだろう」
「強化アーマーにか?」
「うむ。普段から補給で食べさせないといけないのだが、つい勿体なくて私が食べてばかりだからな」
センセイの乗る強化アーマー『スペランクラフトジャケット』は基本的に電力で動くのだが、それ以外にも魔物料理を頭部ユニットから食べさせることでエネルギー補充ができるらしい。
というか鮫に噛まれても平気な特殊装甲や、SFめいたレーザー銃にプラズマ兵器の類はその方法でしかエネルギー充填ができないらしく結構な問題だ。
補充する物体は糖分と酢酸と魔物素材を適量に配合したもの……つまり魔物寿司がベストだという。なんでだよ。
そういうことになってエリザがササッと皮を寿司にしてみた。
「脂が凄くて火に通すと素揚げできるよ~……そしてこれをネギとマヨネーズで味付けして、鮭の皮揚げ軍艦巻き!」
「回転寿司で出てきそうなジャンク感だな」
「いずれ養殖とかできたら回転寿司で出回るのカナ。トシトラズ」
「微妙に嫌な未来だな……」
回転寿司食っているだけで寿命が無限に伸びていく社会。怖くねえかそれ。
センセイが強化アーマーのハッチを閉じて、スペランクラフトジャケットの目が光る。そして口みたいなところがパカッと開いた。
ロボのアームで器用に軍艦巻きをつまんで口に入れる。残念ながら搭乗者に味はフィードバックされないらしいが。
『おおっ⁉ これは……』
中からセンセイの驚いた声が聞こえた。
『エネルギー不足だったシステムが大きく改善された。ブラスターに新たな射撃モードが追加され、センサー範囲も広がった。遥か遠くだが、落とした装備の位置もわかる』
「高級な魔物ほど補給効率よくなるのかよ」
「是非、高い魔物を取ってきて欲しいところネ」
『そうだな。いろんな種類で試してみたいところだ。明日には冒険に出られるだろうか。落とした装備の回収もしたいから、アルトも行こう』
「EXランクのクソ魔物が近くにいなかったらな」
スマートウォッチでSNSにアクセスして情報を確認する。
「一応、魔物の群れは撃退して港の被害も復旧しているところか。オケアノスが周辺海域を
なんてったってオケアノスにとって一番重要なのは冒険者の命でも、島内での経済でもなくて魔物の素材とお宝なんだからな。原因不明な拠点襲撃事件の翌日で危なかろうが、冒険者の自己責任で行かせるはずだ。
そういうことになって解散し、オレはプールから掻っ払った装備を売り払ってパチ代にすることにした。エリザとウリンは暫く保管しておくらしい。もしオケアノスにバレて返却を命じられたら怖いとか。そんなのを怖がっていたら冒険者になれねえぜ!
グレイのオッサンから振る舞われた謎の金も怪しいから使っちまうに限る。
颯爽とパチ屋に入って新台へ向かう。『八月革命機ベベベ』だ。ここのオーナーがベトナム人だからか、ベトナムで改造されたパチ台が多く置かれている。改造っていうか、ベトナムライズっていうか。
隣にどっかで見たような若い女が包帯頭に巻きながら険しい顔で打っていたが、とにかく座って始める。演出。『ニンゲンヤメマスカ? Da(はい) Không(いいえ)』やめまぁーす!
一時間後。
キテる……! 今日のオレはかなりキテる! オレのバスターはビンビンだ!
既に三十万はプラスになっている! まだまだ行くぜ!
隣のザコパチカス女は一切アタリがなかったみてえで、絶望的な顔をしながらこっちを見ていた。
そう。こうして当たるだけでも脳汁が出るんだが、他のザコから羨ましそうに見られるのもたまらん。
もはやパチスロ以外だと脳内麻薬は出ねえな。
「な、なあ兄ちゃん……調子良さそうだな……一箱分けてくれねえ? なんならイイコトしてやるから……」
卑屈な笑みを浮かべた隣の女がそんなことをほざいてくるので、オレはきっぱりと言ってやった。
「失せろダボ。ドツボが伝染る」
「クソケチ野郎が! 伝染れ! ペッペッペ!」
「うわ汚え! 警備員来てくれー! この害獣を駆除してくれー!」
パチンコ屋にも警備員はいる。電撃スタン警棒を手にした冒険者崩れの警備員が走ってきたが、ツバを吐きつけてきた女は罵声を浴びせて逃げていった。
「最悪だなあの女。ああはなりたくねえ」
ま、これもザコパチンカスの無駄なあがきだな。余裕のオレは気にせず稼がせて貰いますか……!
二時間後。
「いやあ、三十万の牛丼は旨いなあ。なにせ三十万もするからなあ。今日は三十万の牛丼食っただけだから、別に損はしてないなあ」
勝ちを全部溶かしたオレは近くの牛丼屋で夜食を食った。いつもよりしょっぱい味がした。クソが。ドツボが伝染ったじゃねえか。
https://www.amazon.co.jp/dp/4825000290
Kindle版は限定SS、ウリンちゃんとイチャコラする?「アルト・ザ・ポイズン」
https://bookwalker.jp/deed37bad3-a241-4eca-abf7-28043535bcc1/
BW版は限定SS、ゴルゴン姉妹が寿司屋にやってくる「アルト・ザ・ゴルゴン」
をそれぞれ収録!
また物理書籍も
メロンブックス版ではセンセイとのちょっとメロい話「アルト・ザ・メモリー」
ゲーマーズ版ではエリザとのアホラブコメ「アルト・ザ・ホイラー」の特典SSが!
購入時に付いてくるQRコードから入れるアンケートも応えると今度はグレイオッサンが人事評価されている「グレイ・ザ・人事評価」も読めます! 特典多し!
ちなみにWeb投稿するやつは下書きver3ぐらいで、そこから校正5回ぐらい重ねて本稿になっているので
ネタが変更されていたり会話が追加されていたりするので、是非買って見比べてください!
あと御祝儀に評価ポイントください!
今後もアルト・ザ・ダイバーをどうぞよろしくです!(江戸もそのうち新刊出るでよ)