めっちゃ声が重なった。恐らくセンセイ以外全員そう言った。センセイだけきょとんとして聞き返す。
『なんでみんな同じことを?』
「いや……敵に向けて大爆発する攻撃仕掛けたらお約束的に言わないとって思って」
『誰か縁起悪いこと言うな! ってツッコミ入れろよな』
『これはやってないパターンでござるなあ』
『本当にやってたら笑っちゃうよね!』
ゴルゴン小隊も自社の新型兵器を何一つ信頼してない様子でそう言った。
だがセンセイは聴診器で壁を探りながら深刻そうな声で皆に伝えてきた。
『この壁の先……爆撃前からかなりの数の魔物がひしめいている……さっきの爆発の効果範囲外か……?』
『……こっそり確認することはできるかな? 壁をギリギリまで掘って、撮影用ファイバーを差し込んでみよう』
『やってみよう』
グレイの提案にセンセイは頷いて小さくピキャストを動かして壁を細かく掘っていった。
そして数メートルほど掘って、グレイに場所を譲る。グレイは太めのワイヤーみたいな道具を取り出して壁に突き刺し、グリグリと穿孔していく。手元の防水仕様モニターで映像が確認できるみたいで、オレも覗き込んだ。
「盗撮に便利そうな道具だな」
『せめてスパイと言ってくれ。というか胃カメラみたいなものだよ、こんなの』
「妙に使い慣れてるけど」
『そりゃあ、この先掘っちゃ駄目って言われている遺跡とかを調べるときにちょいちょいと穴を空けて』
「穴空けてんじゃねえよその遺跡」
言い合っているとカメラが壁の向こう側へ貫通したようだった。モニターを見ると、空間は空いているがどれだけ広いかは暗くてわからない。
カメラを動かすと遠くに小さな灯りが見えた。とすると、かなり広い空間かもしれない。
「あれは……ポータルイカか? 十数匹はいやがる」
『暗視カメラを起動させよう。ポータルイカの光源だけでも周囲を見渡せるはずだ』
グレイはカメラを操作して、光の感度を数百倍に増幅させて映像に出した。夜でも星灯りだけで昼間みたいに見えるようになる便利な装置だ。
するとその空間は……
「げっ!」
『うわあ……』
『魔物が……ひょっとして、避難しているのか?』
鴨池ドーム(鹿児島にあるドーム運動場。みんな知っているね)ぐらいの広さがある空間には魔物が数十匹も居た。主にはイルカ人が多い。イルカの胴体から生えたキモい腕には水中銃や銛だけでなく、スコップみたいな道具を持っているやつもいる。
「マジかよ、ゴルゴン小隊の強化アーマー着てるイルカ人もいるぞ」
『うげ! ウチのアーマーが生臭くなる!』
『基本的に奪われることは想定してござらんから、ロック機能とか起動キーとかないでござるからな』
『合法的に壊せるならラッキーじゃん! ミクちゃんがやりまー!』
他にもポータルイカが隅っこの方で他の魔物とぶつからないように佇んでいて……部屋の中央には、いやがった。
二足歩行しそうな体型のゴツゴツした爬虫類っぽい巨体と特徴的に肥大した頭部。全長十八メートルの怪物、殺人電波を出す機甲ドラグアナの統率種だ。
うげ。おまけに近接種と砲撃種が一匹ずつ近くにいやがる。
「おいオッサン。あの化け物、ここに避難してたんなら全然爆雷当たってねえんじゃねえか?」
『ううむ、投下直前の十数分前までは確実に当たるよう位置を観測していたはずなのだが……まさか』
グレイが嫌な可能性を考えたように顔を歪める。オレも気付いた。
「ひょっとしてあの統率種……こっちの通信を盗聴してやがるのか⁉」
そう、作戦はいくらなんでもお手紙と伝令で全部やり取りしたわけはない。無線機なりデータ送信なりで詳細まで報告連絡相談を行っていたはずだ。
その電波をドラグアナ統率種が受信、解析し……ギリギリまで爆雷を引き付けてから安全な避難壕へ逃げる作戦を立てたのがこの状況なのではないか。
もともと他の魔物を操れる疑惑のあった統率種だ。ポータルイカと工具を持ったイルカ人を使えばブルーホールから近くのデカい地下空間への穴を繋げられる。
「ヤベえな」
『なにがだ? ぶっ殺しゃ同じだろ』
首を傾げている半子にオレは言う。
「明らかになんか知能高すぎだろ。トカゲの仲間にしちゃあ。もしかして学習してんのか? 下手したら能動的に電波ジャックして先制攻撃仕掛けてくるようになるぞ、こいつ」
そうなった場合、他のEX級の魔物に比べて被害は甚大なものになる。なにせ科学文明と電波は切っても切れないお友達だからだ。
それを自由に操る……どころじゃないな。普通だったら電波が通らない海の中から一方的に干渉してくるなんて人類の電波パワーを遥かに上回った化け物だ。
グレイも皆に指示を出す。
『どちらにせよ、統率種が目視できる距離にいるというチャンスは千載一遇だ。ざっと作戦を伝える。おじさんとアルト青年は統率種に攻撃して気を引き、他への攻撃を逸らす。アルミホイラーズは火力を他の魔物にぶつけて数を減らす。ポータルイカは優先的に潰すように。敵が減ったら統率種へ攻撃。センセイとヘミシュくんは強化アーマーの攻撃力で近接種と砲撃種を撃破してくれ。間違っても強化アーマーの二人は統率種の攻撃やポータルイカに接触して破損しないように。ゴルゴン小隊の二人は一番詳しいから敵の強化アーマーに応れ』
「アルミホイラーズ採用したんだ。そしてしれっとオレ危ないところに指名されてやがる」
『大丈夫かアルト。代わろうか?』
「まあいざとなったらオッサンを盾にするからいいか」
長年生き残っていた頑丈な盾なんだからお守りには丁度良いかもしれない。
どっちにしてもこっから一旦撤退ってのはできなさそうだ。まずは統率種に強く当たって後は流れで、だな。倒せりゃそれでいい。
全員が小型水中スクーターと武器を用意した。水中スクーターには追加の武器を入れるウェポンラックが接続されていて戦場でも切り替えられる。
『では作戦を開始するぞ──開通!』
センセイがピキャストを振り上げて壁に叩きつけると、大穴が空いてオレたちは次々に中へ飛び込んだ。
真っ先に入って推進装置で高速移動を開始したセンセイが部屋の中あちこちに光源……光る輪っかのファインダーを射出して内部を照らしてくれる。暗闇は基本的に魔物の方が有利だからありがたい。
「オラッ! 騎兵隊の到着だ!」
景気よく叫んで水中スクーターに仕掛けられた電撃魚雷をぶっ放す。乱戦になると使えないから、次々に他のアルミホイラーズも初撃の広範囲破壊兵器を打ち込んだ。
電撃魚雷は周辺にワイヤーを射出して半径十五メートルほどに通電させて痺れさせる武器。他にも猛毒を撒き散らす猛毒魚雷。ダイバースーツで肌を保護している冒険者は平気だが、エラ呼吸で体内に取り込む魔物には効く。音響爆弾、嗅覚を狂わせるコマセ爆弾なんかが魔物の群れや統率種に向けて放たれた。
派手にあちこち爆発して様々な死を撒き散らす。あいつらが混乱している間がボーナスタイムだ。オレたちは四方に散りながら攻撃を開始していた。
「イルカ保護団体にはナイショにしといてくれよな!」
イルカ人へ銃撃を加えながらオレは統率種へと視線を向けて接近する。イルカも撃ち返してきているから一方的な虐殺じゃなくてイーブンな生存競争だろ。
さすがに統率種はこの場にいる魔物の中では圧倒的にデカいからどこに居ても分かる。どうやら自分に向けて打ち込まれた魚雷はオークエハタを数匹操り盾にして防いだようだ。面倒な知識がありやがる。
ドラグアナ統率種は特徴的な形状の頭をしている。半円型のパラボラアンテナみたいなもんで、そこから強力な電波を発射するらしい。だが逆にそんな形だからどこを狙っているか丸わかりだ。上手く後ろを取れば攻撃は来ない──
なんかゾワッとした。オレは咄嗟に水中スクーターを捨てて
すると次の瞬間、統率種が首をグルンと動かしたかと思うとその軌道上にあったオレの水中スクーター……及び、後方に離れて居た冒険者の体が切断された。更にはその切断された周辺がプラズマのように輝き、爆発を巻き起こした。
「
周囲を見回す。首を振りながら発射した電磁波の刃が三人ぐらい冒険者を巻き込んで殺していた。一瞬で切断される上に切断面が超高熱になって爆発するもんだから助からない。オレもヤバかった!
「攻撃力も高えじゃねえか! トカゲの一番ブサイクな親玉がよ!」
天井付近からVA-NG2のロングレンジ弾頭を連射して統率種を狙う。あいつが顔を動かすだけで殺人ビームがグリングリン飛び回るのはシャレにならん。特別仕様の水中長距離弾は発射と共に弾丸のケツが海水と反応して燃焼、推進力を得る。弾丸には矢羽みたいなパーツがあって姿勢を安定させて前方へかっ飛んでいく。百メートルは威力を保ったまま突き進む最新の弾頭だった。
オレの攻撃を察知して統率種の前に近接種が躍り出て、全身から硬質化した刃を生やしたそいつが銃弾を受け止めた。近接種は特に硬えんだ!
『そいつは任せな!』
半子の声と共に、銀色に染めた強化アーマーを高速で近接種へ近づけていく。頭部ユニットから触手みてえな攻撃アームを伸ばした。
同時に統率種が強化アーマーを向けるが、
『……! オーケーオーケー! 電波弾いてる! アルミホイルやるじゃん!』
「マジかよ」
恐らく強化アーマーを狂わせるための電波を出されたみたいだが、アルミホイル加工でどうにかなっているらしい。一点集中で電波が当たらないよう動き近接種を盾に回り込んだ。
『アルト、私は砲撃種へ向かう』
「おう、気をつけろよ!」
『これはアルトが持っているといい。砲撃種はなんとかなる』
センセイがすれ違いざまにピキャストを渡してきた。接近して当てないといけねえけれど、なんでも分解して崩す道具だ。当たればイチコロかもな。
センセイはバックパックから小型魚雷やネットガンを取り出して砲撃種へ打ち込みながら接近。至近距離でブラスターを叩き込み焼いていた。頑張って倒してくれ。
ちっとばかし重たくて担ぎながら泳ぐのは大変だ。他の冒険者が乗っていた水中スクーターが乗り捨てられていたのでそれを拝借して統率種へ向かう。
統率種には既にグレイが攻撃を仕掛けていた。ワイヤーフックを統率種の体に打ち込んで接近したり離れたりしながら銃撃を加えている。ただ手持ちの火器程度だと統率種にさしたる傷は与えられていない。
「オラッ! オッサン、手伝うぜ!」
『アルト青年! 頭に攻撃を集中させろ!』
言われた通り旋回しながらごっつい頭部に銃弾を撃ち込む。当たっているんだが、硬い。まともに突き刺さらずに弾かれている。刺さらねえと猛毒弾頭や電撃銛が通用しねえんだけど。
「そらよ!」
音響手榴弾VS-Gをぶん投げたが、頭に近づく目標地点よりかなり手前で自壊した。
『電磁波の放射で頭を守っているようだ! 直接近づくなよ! 体が沸騰するぞ!』
「百Gぐらいありそうな電波だな」
『電波の単位はGじゃないからなアルト青年!』
統率種もボケっと浮かんでいるわけじゃない。オレらの方へ突っ込んできてフリーな手足や尻尾で薙ぎ払ってくる。ガンダムぐらいデッカイイグアナに殴られたら水中でも余裕で死ぬ。統率種の体全体を見て、どこに攻撃が飛んでくるか見極めて事前に安全地帯へ水中スクーターで移動する。
「粘着グレネード撃ち込むぞ!」
『できれば足の辺りに頼む!』
「気軽に言いやがって!」
狙った。当たった。まあそんなもんか。とはいえ人間が使うサイズの粘着グレネードなんてドラグアナからすればガムをくっつけられたようなもんだ。小型の魔物ならこれだけでヒレの動きを止められるんだがな。
粘着弾が当たったあたりにグレイはワイヤーを使って接近し、仕掛け爆弾を叩きつけた。水中で徐々に固まりだしていた粘着物質に付着した爆弾を一旦離れて爆破する。
見た目は手のひらサイズの爆弾だったが、爆発力はかなりのものだった。統率種は大きく身を捩って怯み、爆破した部分の肉が焼け焦げていた。
「チャンス!」
硬い鱗が剥げたあの部分なら猛毒弾も通るかもしれない。射線を取ろうと移動するが、イルカ人が数体オレの進路上へやってきて水中銃を撃ってきた。
「クソが! 手前らは操られているんだ! 正気に戻れクジラッキー!」
適当に言いながらぶっ放す。基本的にイルカ人の使っている水中銃は冒険者の誰かが落としたやつで、こっちは最新式だ。装甲になるダイバースーツもあるから撃ち合いでは有利になる。
イルカ人を減らす役目のアルミホイラーズはなにしてんだよ! と思って見回すとまあ乱戦になっているわ。イルカ人以外にもオークエハタやゴブリンフィッシュなんかの雑魚もあちこちに出て冒険者に襲いかかっている。
砲撃種の出すものはセンセイのブラスターに似たレーザー砲撃だ。ドラグアナ種が共通して生み出す生体ルビジウムと体内に数千兆個存在する特殊発光タンパク質細胞を組み合わせて水中でも減衰しないレーザービームを発射する。そうグレイが取材したオケアノスの解剖レポートに書かれていた。
センセイが立ち回って砲撃種を攻撃しているが、それの放つレーザーに当たるわけには行かないので回避すると流れ弾が発生して非常に危険だ。
もともとドラグアナは頑丈な魔物なので、センセイも半子もそれぞれの相手を倒すのにまだ掛かりそうではある。
『ぐあ!』
『クソ! やられた……!』
『畜生! あいつ人質を──!』
「なんかゴミみてえな通信が来やがる」
苦戦しているみたいだ。早めに統率種をぶっ殺したい。オレは接近しながら水中スクーターのウェポンラックにあった、投擲用ジェット電撃銛を手にして、表皮が剥げた部分目掛けてぶん投げた。
「オッサン! 電撃行くから離れてろよ!」
ジェット電撃銛は銛自体に推進装置が付いているやつで投げれば加速してぶっ刺さる。その後に高性能爆薬か放電で追加攻撃をする。ほぼ使い捨てで値段も高い、普段は使えない代物だが今は無料だ。
ガキの頃からモノを投げて当てるのは得意だったので狙い通りに電撃銛は統率種の太腿あたりに突き刺さり、強力な電撃を全身に流し入れた。
グレイは目ざとく気づいて、咄嗟に統率種の体に刺していたワイヤーフックを外して離脱したようだ。繋がっていると痺れちまうからな。
幾ら巨体つっても電撃銛のパワーはサメでも気絶するやつだ。相応に痛かったようで、周辺に異様な電波が吹き荒れて通信翻訳機アプサラが悲鳴みたいなノイズを拾い上げた。
「ぐお⁉ なんか五月蝿え!」
『アルト青年! そっちにゴルゴンが行った! 気をつけろ!』
ゴルゴンが? アナゴルゴンじゃねえよな?
周囲を確認すると高速でこっちに強化アーマーが近づいてくる。オケアノスのゴルゴンにイルカ人が搭乗したやつだ。微妙にキメえ。頭部ユニットから触手を伸ばしまくっている。
「つーかあれ倒す役目だった姉ちゃんどもはどこだよ!」
『ここでござる~』
『やーらーれーたー』
「触手にとっ捕まってるし!」
ゴルゴンの触手に巻きつけられて身動きが取れなくなった大子と小子が呻いていた。死んでねえけど戦闘不能状態だ。武器も持っていない。
『ゴルゴンには同士討ち防止のために拙者らを攻撃できないようプログラムされているのでござるが、余裕ぶっこいて機体を壊さず倒そうとしたら触手で捉えられたでござる~』
『
「ああもう、人間ポンコツ兵器どもめ」
イルカゴルゴンへ銃口を向けると触手を操作して防御するように二人を前に出してきた。これが人質作戦か。知能無駄に高いな。
『アルト青年! 二人を殺さないようにできるかい⁉』
「面倒な注文しやがってオッサン! さっさと統率種仕留めろ!」
『今複数種類の毒を打ち込んでいる!』
そうこう言い合っている間にイルカゴルゴンが近づいてきた。まず中距離から両手に装備したブレードドローンを飛ばしてくる。水中でかっ飛んでくる回転ノコギリみたいなもんだ。銃撃で軌道を逸らさせて避ける。
『あれは戻って来るでござるよ!』
「アドバイスあんがとよ、デカい姉ちゃん!」
後ろから戻ってきたのを水中スクーターにあったネット銃で絡め取り、勢いを殺した。それでも強引に回転してネットごと振り回し近づいてくる。
「壊れやがれ!」
動きが遅くなったブレードドローンをピキャストでぶん殴って粉々に分解。威力高えんだが、大きさがデッカイもんで強化アーマーも着ていないオレには振り回し難い。
しっかりと足がついた地上ならツルハシぐらい簡単に振れるんだが、海中をプカプカ浮いている状態だからこんな重量物を降ると逆に体が引っ張られるわけだ。
センセイから渡されたけど人間にとってめっちゃ取り回し悪いわ。破壊力は強力なんだが。
「次は……触手かよ! キメえ!」
『キヒヒ、気を付けて~、その触手からは石化毒が出るよ~』
捕まったままの小子からあまり役に立たなそうなアドバイスが飛んできつつ、オレに向かって二本伸びてきた触手を銛で払う。瞬間、銛を捉えて奪い取ろうと巻き付いてきた。
「遅ェ!」
すかさず腰から新型ナイフ『カゲバーラ』を取り出してハサミモードを展開。触手を途中からぶった切ってやった。オケアノス特製のワイヤーアームだったが、ヴァルナ社の油圧式カッターの方に軍配があがったようだ。
『うわお。あのハサミすっごい。今度仕入れようよ』
『刃紋の意匠がどことなく刀っぽくていいでござるな』
「今度があればいいけどよ!」
銛を背中に戻して水中銃でイルカゴルゴンを撃ちまくる。ゴルゴンアーマーは搭乗者がオケアノスのハイエンドダイバースーツを着ていること前提の防御力で、頭部ユニットと脚部ユニットを除いた胴体はがら空きだ。乗っているのがイルカ野郎なら普通に着弾する。
尾ビレに接続した脚部ユニットを動かしてなんとか弾丸を受け止める。器用な真似だが、銃弾に怯むと頭から伸びた触手の動きが疎かになる。当たり前だ。こんな動き回って銃撃しつつ自由自在に複数本のワイヤーを動かすなんてアホな機体、脳を強化された人間兵器にしかマトモに動かせやしねえだろ。幾らイルカは頭が良いつっても慣熟訓練もマトモにしてないはずだ。
「隙だらけだぜ!」
触手の迎撃が弱まったと見たオレは水中スクーターで急接近して、操縦しているイルカ人にほぼ密着して銃を向けた。
「手前らにも天国があるといいな! お亡くなりになりやがれ!」
そして銃をぶっ放し──なんか乗っているイルカ人がお辞儀するように頭をこっちに向けた。
激烈に嫌な予感。オレの脳裏にイルカの基礎知識が蘇る。イルカは口ではなく、頭の膨らんだメロンと呼ばれる器官から超音波を発する。
強引に体を逸らすと、イルカ人に突きつけていた銃が吹っ飛んだ。弾倉に入れていた銃弾が爆発したらしい。あっぶね! ついでに水中スクーターが動きを止めた! 謎の超音波攻撃を受けているらしい。オレに当たってないよな⁉
次の瞬間にイルカゴルゴンが脚部ユニットを思いっきり横薙ぎに叩きつけてきた!
「ぐっ⁉」
イルカは尾ビレで人を蹴って怪我させることもあるんだが、そこに強化樹脂製の推進装置付きな脚部ユニットが加わって海の中で交通事故にあったような衝撃が襲ってくる。
『チンピラ殿!』
『あー、あの蹴り、オークエハタの頭ぐらいなら潰せるからねえ……』
要らん声が聞こえてくる。ダイバースーツの性能で耐えても骨の一本や二本……あれ? 折れてねえな?
よく見るとオレのダイバースーツが何度か点滅発光していた。
センセイが施してくれた、衝撃の威力を光と熱に変換して放出するシステム『残機』だ。
「っしゃあ! 無敵ゾーン突入──継続してやらあ!」
無事な体で強引にイルカゴルゴンの脚部ユニットを掴んで足に挟み固定。足がしっかり固定されていればピキャストも振りやすいってなもんだ!
暴れ出すイルカゴルゴンに向けてミノフスズキの粉末が入ったスプレー缶を投げつけ銛で突き刺して爆発させる。周囲に催涙ガスのエアが吹き出て拡散するが、同時にこれはミノフスズキの効果で電波を妨害する。
統率種からの命令電波が途切れたことでイルカゴルゴンは戸惑って動きを止めた。今だ!
「あの世で夫人によろしくな!」
思いっきり腹部に叩きつけてやった。慌ててイルカゴルゴンはもう一個残していた腕のブレードドローンで防御しようとするが、それごと粉々に粉砕。イルカ人の胴体にピキャストが直撃したところ砂で作った人形を崩したみたいに、イルカ人は分解されて海に散らばっていった。
魔物に直接当てるとこうなる。過剰な威力だよな。売り物にならねえ。
夫人ってのはパチスロの「新妻イルカ夫人」のことを指します
大ちゃんと小ちゃんも生身でも並の冒険者よりやれるんだけど
ゴルゴンアーマーの触手機能が対人捕獲能力高すぎてとっ捕まりました(同士討ちできないので二人を攻撃できないけど捕獲はできる)
しかしこんな感じの強化アーマーに
【挿絵表示】
イルカがちゃんと入れるのか…(かなりイルカ人も小型で150cmサイズだと思われる)
コミカライズされるのを待とう!(投げる)