『アルト。相談があるのだが』
ある日、センセイが困った様子でそんな声を掛けてきたのは、オレが日本会館で賞味期限切れになった保存食をタダで貰ってむさぼり食っているときだった。
スペランクラフトジャケットを着てやってきたセンセイは、周囲を確認して他の職員が見ていないので強化アーマーから降りて下半身を隠せる車椅子に座った。最近は強化アーマーの座席が広がったので持ち運べるようになったらしい。
ともあれオレがついていたテーブルの体面に座ったセンセイは、深刻な顔をしていた。
「どしたん? なにか悩み事?」
「うむ……実はなアルト」
センセイは難しそうな表情で頷き、妙なことを言い出した。
「話の順番と時系列がよくわからなくなってきて」
「なにが!?」
「ほら……この作品って結構オムニバスな感じに単話で完結するだろう。それにだいたいの掌編が二巻の後の話なのに、それらの後で二巻分が順番で掲載されてしまったから混乱してな」
「なんの話!?」
こっちの方が混乱するわ。
それで詳しく聞いてみたら、センセイの日記の話らしい。
記憶喪失なセンセイはある時から日記というか日誌というか、まあつまりそういった記録を取っていたようだ。冒険の内容だとか日常だとか、あるいは自分が体験していないがオレから聞いた昔の話なんかも纏めていたのだとか。
で、それ自体には何の問題もないんだが、センセイの分類配列方法が悪かった。
最初は時系列順に並べていたんだが、タイトルを数字の順番ではなく掌編だのにして保存していた記録が並べるとごっちゃになってしまったらしい。
関連する話を纏めて1巻2巻3巻と綴ろうと作業をしていてそれが判明した。余談だけどアレだ。時々センセイが「それは2巻であった出来事だな」とか謎の言葉をほざいていたのは、これを示していたらしい。解決。
さてそれはそうと、まだ纏めていない記録を読み返すと混乱して、記録を疑う前に記憶に疑われている状況だとか。
「なんでそんな保存方法にしちゃったんだ?」
「んんーん……なんか……その場のノリで……」
「もう全部番号振り直して時系列順に並べ直した方がいいんじゃねえの?」
「それをすると匂わせみたいな描写の意味がわからなくなったり……」
「匂わせってなんだよ」
「あと掌編の中でも時系列は意外と前後している気がして……」
「なんでそんな構成にしちゃったんだ?」
「んんーん……」
センセイは誤魔化すように呻いた。
「それに記録を三箇所別々にそれぞれ保存しているので全部変更はやりにくいというか。ついでに言うと日付を記録していなかったせいで余計によくわからなくなって」
「……」
「ほら、私記憶喪失だからちゃんとした記録方法を忘れていたんだな」
「便利に記憶喪失設定使ってやがる」
しかし聞いた話だと、今更50以上もある記録ファイルを読み直して一から分類し直すのは確かに面倒すぎる。
下手に並べ直すことでまた混乱しそうだ。
「というわけでアルト。協力して記録だけではなく全体的に時系列を整理しようではないか」
「オレは別にやらんでもいいんだけど……」
「読者のためでもあるが、混乱している作者のためでもあるんだぞ」
「読者!?」
日記なら読者も作者も同一のセンセイだろと思わなくもなかったが、センセイが混乱して仕事に差し支えがあっても困るので仕方なく付き合うことにした。
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物語開始前。
『五年前』
異海ダンジョンが生まれた大災害が発生。アルト高校一年生。父親死亡。借金受け継ぐ。
関係する話
・1巻メロンブックス特典『アルト・ザ・5年前』
・Kindle『RE異世界に帰ったら江戸なのである外伝』『現代に異海ダンジョンが発生した話』
アルト「いや知らん別作品混ぜないでくれる!?」
センセイ「わかった」
『四年前』
日本国全体が割と大変な状況。復興中。オケアノスが海上輸送の中継地として三岳島を作り、同時に異海の調査を始める。
グレイもこの頃に冒険者として活動を始め、海サトウキビを発見、日本に持ち帰る。アルト高校二年生。
『三年前』
グレイによって一攫千金の大発見も知られ、冒険者の募集と活動が盛んになる。アルト高校三年生。
この年、二年ぶりに全国高校野球選手権大会が行われる。アルト、甲子園決勝大会で完全試合するもパチンコで失格。
関係する話
・掌編2:過去話1『アルト・ザ・甲子園』
『二年前』
アルト、高校卒業後に三岳島で冒険者になる。19歳。借金3億円。
『一年前』
アルト、冒険者とパチンコしつつ5000万円程度は返済する。凄いな。20歳。
『約半年前』
エリザ、ウリンが三岳島に店を出す下見に来る。その際にチンピラに襲われアルトに助けられる。アルト21歳。
関係する話
・1巻Kindle限定特典『アルト・ザ・巡り合い』
『本編直前』
アルト、他の日本人冒険者とたまには飲み会で交流する。
関係する話
・1巻九州限定特典『アルト・ザ・九州勢』
『本編1巻』
スーパームーンによる異海環境リセットが発生し、装備を失っていたアルトはエリザたちからの依頼を受けて簡単な採取へ出かける。季節は初夏。約1ヶ月前後の出来事。
関係する話
・第1話~第13話
・掌編1:第10.5話『センセイの生態考察』
『1巻と2巻の合間』
センセイの記憶違い(書籍時の改訂)によって描写が変更されここに入ることもある。
関係する話
・1巻ゲーマーズ特典『アルト・ザ・寿司学校』
・1巻アンケート特典『アルト・ザ・人事評価』
・掌編3:『広報係のガッディラさん』
・掌編8:『アルト・ザ・タイフーン』(アルトの住居がイカダ小屋だったので)
『本編2巻』
出来事:エリザとウリンがダイバースーツ入手。センセイがピキャストとビルダー入手。アルトの住居がイカダ小屋から日本会館に移住。チェスターがメカ化。
借金が二人に20億エレク以上発生。利息30%込みで返済額は26億。
関係する話
・第14話~第31話
『本編2巻ちょい後』
関係する話
・2巻メロンブックス特典『アルト・ザ・メモリー』
・2巻ゲーマーズ特典『アルト・ザ・ホイラー』
・2巻Kindle特典『アルト・ザ・ポイズン』
・2巻BOOKWALKER特典『アルト・ザ・ゴルゴン』
・2巻アンケート特典『グレイ・ザ・人事評価』
『3巻と以降に該当するもの』
主にそれ以外の掌編。
掌編にてセンセイがビルダーやピキャストを当然のように使用している、アルトが借金に頭を悩ませて仕事をしているなどは元から2巻の後の時系列で書かれている。
また、途中で利息分以上の借金(8億エレク)をピキャスト販売で返済し、生活に余裕が生まれている。
その後、チェスト(8億エレク)も販売したので今のところ26億エレクの借金を16億と少し返している。
掌編の順番は時折前後するが、だいたい順番通りに進んでいく。
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「よし……とりあえず残っている掌編を時系列順に纏めて三巻にすればいいんだな」
「色々ツッコミどころが多い気がするが……日誌の特典ってなんなんだ……」
「アルトから聞いた話をちょっとしたメモ書きにしたものだな。大きく話に関わるわけでもないので、正式には記録に残していない……一応確認だが、後から閲覧することはほぼ無理な物理特典、ちゃんと記録として残した方がいいのか?」
「いや知らんが……」
「読みたいという意見が多ければ改めて記録に残すことも可能ではあるが、せっかくお金を出して特典を手に入れたのにそれが無料で公開されるのは嫌という意見もあるだろう。どうせ公開されるならと特典付き書籍の買い控えが起きても困る……」
「なんの話!? センセイひょっとして自分の日誌どっかで販売してんの!?」
そんなあり得ない話を問い詰めると、センセイはどこか面白そうに微笑みを浮かべた。
「スペランクラフトジャケットの内部にだけ保存していては、機体になにかあったときに消失してしまうだろう。誰も知らないインターネットのクラウドに上げていても忘れたらどうしようもない。しかし、物語のようにして他人に読ませることで、私とアルトの行動や冒険は自分たち以外の人からも覚えられるようになる。だから編集してネットに出している。大受け大売れしているわけではないが一部のマニアが細々と評価してくれているぞ」
「オレのプライバシーとかは!?」
なにせオレがセンセイに向かって異海の解説だとか冒険者の常識だとかパチの設定だとか教えているもんで、さっきチラッと記録を読んだところまるでオレが語りかけているっぽい文体で書いていた。
センセイの中のイマジナリー・アルトが自伝小説でも書いているみたいな感じだ。
だがそんな小っ恥ずかしい文章を公開しているセンセイは自信満々にこう言った。
「この物語のタイトルはもう決まっているんだ。そう──名付けて、『アルト・ザ・ダイバー』……!」
「いやセンセイ、そのタイトル回収しましたみたいなドヤ顔見せてるけど、この前撮影していったトロスのサメ映画のパクリだろ!? そのクダリもうやったぞ!?」
意味はわからんが……センセイは時々暴走してなんかやらかす。そのことには注意しようと思った。
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「ところでアルトの同級生、有場トロスがやってきてサメ映画を撮影したのも2巻の後の話だな。さり気なく撮影にビルダーを使っているから」
「ついこの前なのに時系列あやふやになってんの!?」
ちょっとメタい順番解説の話
連続更新には含まれなかったけど掌編8のアルト・ザ・タイフーンは2巻書籍に掲載されています
二巻分以降は『第◯◯話』ではなく『掌編◯◯:』で順番に続いていきます
タイトル回収! 作者はタイトル回収が大好き人間。いや…寄生獣か!
【挿絵表示】