「オケアノスが栽培工場に監査を入れることを通達してきた」
「早えよ! 事業妨害のスピード感が!」
オレたちの魔海藻栽培が始まって数日。毎日トン近い量の収穫物をギルドに納品していたのが目に付いたのか、オケアノスとかいうクソは妨害をするつもりかスパイをするつもりか知らんが、監査とかいうのを申し込んできた。
「そもそも監査ってなんだ? オレの人生で今まで関わったことねえからボヤッとしかわかんねえんだけど」
イメージ的にはボードとチェックシート持ったメガネのオッサンが仕事場をうろついてなんか色々確認しては嫌味な評価を付けていくとかいう、企業型の嫁姑問題みたいな感じだ。
「そうだな。私も記憶喪失なので受けたことはないのだが……ざっくりと3つの要素をチェックされる。
・安全対策は問題ないか。
・周辺環境への負荷、汚染はないか。
・法令違反はしていないか。
……といったところだな」
「おおっとこんなところに機密情報が! 持ち帰って検討させてもらうぜ! ……みたいなことをしてくるんじゃねーの?」
「さすがに自社が運営する島だからといって、貸し出しているテナント相手にそんなことをしたら信用ガタ落ちで訴訟もされるだろう。それに問題はない。実のところうちの工場は見られて困るようなモノはないからな」
センセイが言うには、一見ハイテクなオートフォーメーション栽培工場なのだが使われている技術はどれも市販品と変わらないのだという。
勿論、一般人があれだけの自動化設備を揃えようとすると億以上のカネが掛かるわけだが、そこは当のオケアノスが売りつけたビルダーによって作られているわけだから不審な点はない。
余談だが、オケアノスが島拡張などに使っているビルダーは、本来の使用親機であるスペランクラフトジャケットに接続されていない影響か、センセイが持っているモノよりも性能が発揮できていないらしい。マテリアルタンクとの接続やスペランエナジーの充電、設計図のインストールに問題があるのだとか。
センセイはサクサクと複雑な機械工場を一から作れるのだが、オケアノスが運用するならばせいぜいが工場のガワだけ作れる程度になるだろう。まあその分オケアノスは中に詰め込む機械なんかはどこからでも取り寄せられるわけだが。
「ちなみに特別なアイテム……骨粉なのだが、アルトの言うとおり一応各国に特許申請の申し出はやっておいた。すぐに却下されたところも多いが」
「今どきはAIで申請書作ってネットで送れるから楽だよな」
センセイは「骨を粉末にしただけ」という単純な仕組みの製品では特許は取れないと言ったのだが、それはそれ。
しっかり申請した上で却下されたという前例を出しておくことで、オケアノスが暗黒メガコーポ流の裏技で骨粉の特許を取ろうとしても防げるという寸法だ。たぶん防げると思う。大企業と裁判で争いたくねえな……面倒すぎて。
「それでもなんか不安だな……そうだ。工場の取材という案件でグレイのオッサンを同じ日に呼びつけるか。なにげにあのオッサン、オケアノス嫌いなフシがあるから理不尽な悪事働いてたら嬉々として記事にするんじゃねえかな」
「なるほど。第三者の目も入れるのか……ならば、同時に私が動画の配信をしてもいいかもしれないな。工場の紹介にもなる」
「大勢に見られたらパクられるかも……いや、そうでもねえか? 異海の水じゃねえとそもそも育たねえから三岳島か、日本近海じゃないと栽培できねえし、割と産業壊滅寸前な日本沿岸にいきなり工場建てるのは厳しいわな」
勿論、産業の復興としてマネされる可能性はあるのだがそもそもノウハウがない栽培事業だ。骨粉で強制的に育てているとはいえどこに成長の限界があるのかすらわかっていない。
一か八かでデカい工場建ててその土地では育ちませんでしたなんてなると目も当てられない。以前に雑魚メス牡蠣を広島の養殖業者が買い取っていったが、それはずっと牡蠣養殖をやっていたというノウハウの応用ができるからだろう。
オケアノスが三岳島にパクった栽培場を作るかもしれないが、需要と供給の問題もある。例えば薬草昆布なんかは世界中の製薬会社や医療メーカーが奪い合って研究、実用化しているのだから、毎日1トン取れても買い手は尽きない。消耗品だしな。
「一応今のうちに安全面を考慮して設備を更新しておこう」
「それがいいな」
「自爆装置は付けたままでいいのか、外したほうがいいのか」
「絶対それ爆破オチに使われるやつだろ! 外せ外せ!」
「避難口と誘導灯が必要らしいから作っておこう」
「自爆装置は作ったのにそっちは作ってなかったの!?」
こうして記憶喪失と高卒社会人経験ゼロなオレらの工場はどうにか人に見せられるように手を加えて行くのであった。ググって調べたりしながらな。
******
監査当日。なぜかやってきたのはいつもの第一ギルドのエリート課長……それとぬるぬるずるべた死神女こと塚本
「ふひひっ、どぉも~……今日はぁ、銀行の方から監査を頼まれてやってきましたぁ……融資の件でも小生が債権回収の担当になりましたのでぇ……」
「暇してたからじゃねーの」
実際、取り立てと返済プランの説明役として派遣されてきたカロンだが、オレたちがある程度順調に返済していることでそこまで忙しくなく、日頃はもっと少額の借金をしているカス冒険者から殴られたり(カロンを殴ったら相棒の男が制圧しにいく)、そうでない日は潜って雑魚魔物を採取しているようだ。
体から特別な汁を分泌して、それを周囲に排出する特殊なスーツを着ているカロンは雑魚魔物が寄ってきて突っつかれやすいという。
「実際ぃ、三岳島のオケアノスバンクって極少人数で回しているからこういう監査に人を出しにくいんですよぉ……それでお鉢が回ったっていうかぁ……」
「ふーん。そんでエリート課長サンは? 降格して監査員のバイトしてんの?」
オレが話題をそっちに向けると神経質そうなメガネ男は眉にシワを寄せて言う。
「やかましいぞ冒険者アルト。……本来はこの監査、上司であるジノ・スピンクス人事部長が是非やりたいと言い張って、やってくるところだったのだが……」
「だが?」
「彼女は今朝方、慢性的な発作でビルの10階から飛び降りて大怪我で入院したので、急遽私が来ることになったのだ」
「慢性的な発作!?」
「会話していると突然飛び降りたがる癖がある人?……みたいな」
「心の病か!? いやそんなやつと関わり合いたくないから連れてこないでくれよマジで」
「会話中に栽培水槽に飛び込まれても困るから来てほしくないな……」
センセイも嫌そうな顔をしていた。なんでそんな生きづらそうなやつが人事部長なんてやってんだよオケアノス。世界飛び降り選手権とかで入社を決めたのか。
「まあとにかく、チェック項目と疑わしいところを質問するだけだから怠惰でなければ誰が来ようと特に問題はない」
「そんなこと言って、大量生産の謎を持ち帰るつもりなんだろ?」
「違法行為が行われていないか確認は必要だ。例えばそこらの冒険者の死体を水槽に浮かべたらよく生えるようになった……とか」
「発想が暗黒メガコーポのやりそうなことすぎるだろ」
「実際にやっていないでくれ。うちの会社がマネをしだす」
「こわ」
そして最後にカメラを持ったグレイおっさんがパシャパシャと工場の外観を撮影している。
「いやあ嬉しいねえ、アルト青年から撮影のお誘いがあるとは! あっ今の駄洒落っぽい! フフフ私はこういう新技術の撮影会が大好きでね。海サトウキビを提供したときも研究所の内部資料まで撮影していたら出禁になったぐらいだよ!」
「出禁になってんじゃねえよ」
「ついでに海サトウキビを使ったエネルギー開発の記事も作ろうと潜入取材していたら当時の省庁の組織ぐるみの汚職を撮影しちゃってそっちにも出禁を食らったよ! まあ全部公開したけど」
「なんか数年前そんなニュースになってた気がすんな……」
日本の新たな資源にしてバイオエタノール発電の主要産業となることを期待されている海サトウキビだが、この腰が重い政府が順調にそっちへ舵取りしたのは当時の政府で反対側に回っていた議員が多数汚職で逮捕されニュースになったのが関係しているとか。
中には他国にエネルギー(と、賄賂)を支援して貰う代わりに領土を売り渡す密約までしていたやつも見つかって、政府は慌てて話題を払拭するためクリーンでエコで多くの雇用も産む海サトウキビの拡大に力を入れだした。
「今回の異海植物栽培工場もセンセーショナルな発見になるかもしれないよ! アルト青年が日本の救世主として祀り上げられるかもしれない」
「百歩譲って祀り上げられるのはセンセイのほうだと思うが。オレはタイミーなんで」
そしてセンセイが撮影用のスマホを機体から伸ばしたアームに付けて、配信を始めていた。
『センセイのスペランチャンネル始まるぞ。今日は私の作った工場をオケアノスの監査員と共に案内しよう』
《センセイ、オネガイシマス》
《センセイ、オネガイシマス》
『こちらはオケアノス第一ギルドの人事課長、エリートさんだ』
《はい男出たチャンネル解除》
《頭にELITEって書いてるやつ初めて見た》
『こちらはオケアノスバンクからの監査、塚本歌論さん』
「ど、どぉもぉ……ふひひ」
《チャンネル登録しました》
《陰キャ女子! 陰キャ女子!》
《くさそう くさそうくさそう 情熱の花をくさそう》
「なんかぁ……凄く失礼なこと書き込まれてそうな気が……」
「ネットの書き込みなんて一ミリも気にしないのが大事だぞ」
微妙に不安そうにしているカロンにそう助言してやった。オレなんか出るだけで野球関係者が炎上させてくるからな。ネットにはカスしか存在しないと思ってもいい。
『そしてカメラマンのグレイ』
「よろしくね。皆も魔物をゲットじゃぞ」
《は男チ解》
《海サトウキビのオッサンだ》
《工場爆破されないよう気をつけて》
そうして紹介を終えて、一同を連れて工場内へ入っていく。入口には来客用も合わせて、安全ヘルメットと安全靴が用意されているのでそれを着用させた。ついでにウリンをデフォルメしたイラストが片足を上げて「安全確認ヨシ!」ってやっているイラストも何故か貼ってある。なんでだ?
「安全用の備品準備は問題なしだな。ほぼ全域、足場を組んでいるわけか」
基本的に人間が歩けるスペースは床には無く、外の海水と水が入れ替わる仕組みになった水槽が敷き詰められている。その水槽の上に建設現場みたいな足場があってそれを渡って移動していく。奥の方にある水槽へ海藻の株を補充したりするのにはそれを使う。
昨日丸一日掛けて二人で思いつく限り(ググって調べて)、工場の安全対策は万全にしている。水槽の上を通る足場には手すりと落下防止柵も付けているし、水槽からベルトコンベアへと海藻を引き上げる自動稼働しているアームの範囲にはそもそも近づけない。
グレイが柵から身を乗り出しつつ水槽の写真を撮っている。
「おお、アレで海藻を回収しているのだね。オケアノスでも海洋ごみの清掃などにも使われている海中カッタードローンだ」
『それを簡易化して自作した品だ』
「ふむ。工場に襲撃してきたテロリストなどが落ちて惨殺されそうだが……」
『水槽にセンサーを付けていて、外部からモノが落ちて入ったら安全装置が作動して停止するようにしているからそういった事故は起こらない』
「むう……テロリストへの攻撃ガジェットとして使えそうだったのだが。定番なのに。硫酸のプールに落としたり肉食魚が群れている川に落としたり」
「オッサン、人の工場で襲撃の予想と対策するの止めねえ? 本当にそうなったらどうすんだよトラブルメーカーがよ」
海藻の回収チェストは常時モニターされて内部での詰まりや異物混入を防ぎ、回収量はカメラと計量で確認して自動でログが記録されていく。
「おぉ……これがウワサのチェストですねぇ……実質、この工場で一番高価な機材と言えますけれどぉ、防犯とかどうなっていますぅ?」
『まず単純にここのチェストは機械に組み込んでいるから取り外すことが非常に困難だ』
ベルトコンベアが海藻を流し、終点でまたアームがつまんだ海藻を放り込むチェスト。材料がたっぷしあったのでセンセイが改造し、内部で区分けして種類ごとに海藻が溜まるように作っていた。内部容量も増えていて、余裕を持って20トンほどは溜め込める。
そしてチェスト自体がどデカい自販機みたいな機械と連結され、一々チェストの上部だったところから取り出さずとも内容品を横から取り出せるようになっていた。
改造型大型収納チェストとでも言おうか。これ1つ作るのにチェストの材料が4つ分ぐらい必要だったので、材料費4億エレク。ちゃんとチェストが販売できていたら32億エレクする超高級品だ。
「重機持ってきても取り外しはできねえだろうな。爆破するならともかく」
「アルト青年! この機械に爆弾らしきものが仕掛けられているように見えるのだが」
『おっと自爆装置を取り外し忘れていた』
「センセイ! 工場は爆破してもこの設備だけは守るようにしろよな!? 高えんだから!」
危ねえな本当に! グレイのオッサンを爆発物に近づけるな。遺跡やランドマークを二桁ぐらい爆発に巻き込んだ男だぞ。
『そしてこのコンピューターで生産量がリアルタイムで記録されていく』
「ほほう……いやなんで収穫する端から量が減らずに継続していくんだ……?」
エリート課長が首を傾げながらデータを見ている。そりゃあ植物なのに切っても切っても生えてくる状況では見たことのないログになるよな。
『それは──ん? 数値に異常が出ているな』
「どれどれ? んー……一部の水槽での成長率が急増してやがる。なんかおかしいな」
『水質をチェックしてみよう……水槽内部の海水に不純物が微量含まれている。なにかが混入したか?』
センセイは異常が出た時間を出して、防犯カメラの映像で多角的になにか異変がなかったか調べた。
異常が出始めたのはちょうどオレたちが該当する水槽の上にある足場を歩いているときだった。
映像をよく見ると……
「……ぬるぬるずるべた女から変な汁が出て水槽にぼたぼた落ちてるんだが!?」
「ふひっふへへぇ……小生ぃ……なんかやっちゃいましたぁ?」
「やった結果として工場に見学に来てほしくないランキング一位をくれてやるぜ」
カロンの常時湧き出てくる汗的な液体だった。ばっちいなあ、もう。
『ふむ……しかしその汗が異海植物の繁殖になにかしらの変化を与えるとは……研究のために少し採取してもいいだろうか』
「ふひぃ……も、もしかして小生の汗が役に立つのかと思うと……どばどば出ますぅ……」
「食品に役立ててほしくねえなあ……」
いや、センセイから取った出汁とかも魔寿司の味噌汁に使われていたりするかもしれねえけれど。怖くて明確には確認していない。
そして課長はキョロキョロと改めて工場内を見回して言う。
「彼女の汗はともかく……他になにかないと安定した収穫がこの規模の工場では不可能ではないか?」
『うむ。ではカメラマンのグレイも配信を見ている人もアレに注目だ』
センセイが腕とスマホを向けると、ちょうど骨粉散布の時間になって、骨粉製造用のドラム缶みたいな機械からタケコプターを付けたミニスペランクラフトジャケット型ドローンが飛び立ち、コショー瓶みたいなやつで水槽に骨粉を撒いていった。
グレイも何事かとカメラを連写していて、配信でも理解不能な反応だったが……
目の前で、ニョキニョキと水槽にある海藻が急成長しまくった。
「ええっ!?」
見学に来ていた三人が異口同音に戸惑いの声をあげた。
「な、な、な、なにを撒いたんだ!? 異物かなにかか!?」
『いや、単に魔物の骨粉だ。異海の植物や藻類を成長させる効果がある。藻類にも効果があるからまだ試していないが珊瑚の類も成長させるかもしれないな』
動揺したエリート課長に惜しげもなく中身を伝えてやる。魔物の骨が値上がりするかもしれねえけど、とりあえずスーパーの魚屋とは半年契約したから大丈夫だろう。暫くは。
「そっ……それは凄い! どの魔物の種類だい!? 海サトウキビにも効果があるかな!?」
『魔物なら基本的になんでもいいと思うが、最近発見したことなのでまだ実験段階だな。海サトウキビにも効果はあると思うぞ。ただし異海産でない、普通の植物や作物では効果がなかったようだ』
グレイのオッサンも食いついて、自分が見つけて広めた海サトウキビにも使えるのではないかと問いただした。
ただでさえ海サトウキビは成長した茎を適当に切って海水に浸けとけば増えていくという雑に増やせる性質を持ち、年に三回は収穫できると言われている優秀な作物なんだが、骨粉で栽培すると毎日収穫できるだろう。
実質、日本近海で尽きない量のエネルギーと食料が手に入ることになる。ノーマルのサトウキビ農家は転職しないと廃業になるな。
「大発見ですねぇ……小生の汗どころじゃありませんよぉ……」
『カロンの汗もなにやら調べがいがありそうだ。風呂を用意しようか』
「わあ、小生ぃ……湯船が即座に濁って排水溝がゼラチン状の物体で詰まるのでぇ……お風呂久しぶりでぇ……ふひひっイエーイ」
「センセイが使い捨てでバスタブ作れば丁度いいな」
体から変な粘液を分泌するウーマンはともかく。
ネット配信でも新発見はすごい勢いでコメントが伸びていっているようだ。
「か、監査などしている場合ではない! 問題なしでいい! 社に戻らせてもらう!」
「ありがとうアルト青年! センセイ! 今度記事にさせて貰うとして、こっちも研究所に連絡をしなければ!」
「小生はぁ、お風呂入って帰りますぅ……報告はメールで送ればいいですしぃ……」
大慌てで男二人は帰っていった。センセイはカロンを連れて風呂を作りにラボへ向かったようだ。
監査は終わったみたいだが、世間は一騒動ありそうだな。
オレは電話を手にエリザへ連絡した。
「もしもしエリザか? たぶん値上がりするから寿司ネタ今のうちに買っといた方がいいぞ。センセイに冷蔵庫増設してもらえ」
******
さて、まだ真偽はオケアノスを始めとする様々な機関で研究中とはいえ一気に界隈を騒がした、魔物骨粉の問題。
なにはともあれ実験が必要であるし、それが本当ならば大量の骨粉を確保しておきたいという流れで魔物の値段は一気に跳ね上がった。
本来なら安くてイマイチなマズアジやゴブリンフィッシュですら、骨粉としての価値が生まれて価格が上昇したという。
魔物の値段が上がるのは冒険者にとって良いことだわな。今まで見逃されていたような雑魚魔物でも十分稼げるようになったので活気づいている。
ま、骨粉の成分分析だとか実験だとかで成果が出て、栽培工場を作るための計画を建てて……とか色々やって商売敵が出てくるのはまだ先だろう。たぶん。
「つーわけでお勘定。マズアジ20貫幾らだっけ?」
「3万エレクネ」
「……は!? ええと、ちょっと待てこの店で一番安いやつで……」
「仕入れが値上がりしたから店も値上げするのは当然ヨ。全体的に三岳島はインフレ中ネ」
「……ちょっと3万今持ってないんだけど待ってくれない?」
「工場で作ったのを売ったお金が毎日100万エレク入ってるはずダロ」
「さっきパチでスッて残り3000エレクしか無くて……」
「3000エレクで20貫食べるナ! ほらっ!」
ウリンはオレに水回りのお掃除セットを当然のように渡してきた。
店のトイレ、排水溝、更にグリーストラップ(台所から流した油分なんかを分離するデロデロになっている場所)の掃除までさせられた。
なんで寿司屋の排水がデロデロなんだよって思うが、結構天ぷらの寿司とか作ったり魚の脂を落として流したりしてるからデロるらしい。
「あとこの前センセイが連れてきたぬるびちょズブズブ女のダシ汁も流したらそうなったネ」
「なにかに使えないかなって思ったんだけどねー」
「すっげテンション下がる。頼むからオレの食うやつに利用しないでくれ」
……余談だが、交代制で掃除することになっている、下宿している日本会館のシャワー室の排水溝もぬるべちょだった。カロンも利用しているから。あとモジャ毛とか固まってた。テンション下がる。
工場編はとりあえず一段落。次回はエリザちゃんの出番予定だでよ!
名前だけ登場した人事部長のジノ・スピンクスさんは2巻アンケート特典SSで初登場。人化した怪物スフィンクスです
(アルトが認識していないので本編に出ない)世界の裏設定も語られる話なので良ければ是非どうぞ!
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おまけのウリンちゃんハロウィンコス
【挿絵表示】