数日間睡眠を最低限にした結果、私は襲撃してくるであろう先生達がくる前に新たなキラーマシンを完成させた。その名も、サージタウス!!
…まあ、時間と材料的な都合でメガボディくらいのサイズになってしまったけれど。でもこれはこれで乗りやすいし、小回りも効く。ゲーム的に言えばメガボディになった事でこうどうはやい辺りの特性が消えてるかもしれないが、走らせてみたらタイプGくらいの速度は出てたのでOKだ。
下半身は白馬、上半身は青く見慣れたキラーマシンを踏襲した4本腕。そのうち2本はクロスボウになっている。アーマーに刻まれた金のラインは美しい青と白に完璧に調和されており、サージタウスのデザインの完成度を際立たせる。
ジョーカー2で一目見た時から好きだったキラーマシン系統、サージタウス。やはりかっこいい…。
「リオリオー!アバンギャルド君サイズでも遊べるゲーム機無いー!?サージタウスと遊びたーい!」
「あるわけないでしょうそんなもの。…その子をコントローラーに見立てて無線で接続すればその子もゲームをプレイ出来るでしょうね。少し待ってなさい」
「わーい」
リオも丸くなったよねえ。最初なんてキラーマシンに心があるなんて言っても信じなかったのに、今では「その子」なんて言って一つの生命体として扱ってる。あの時言ってたキヴォトスの脅威になる人物ってアリスのことなんだろうけど、人物って言った時点で人間扱いはしてるんだよねえ。もし仮にアリス
のヘイローを破壊する事になっても先生が責任を感じないように、先生に対してはロボットとか言ってそうだけど。
「トキ、アリスとキシリアの面倒を見ておいて」
「承知致しました」
トキの手に引かれて明らかに落ち込んでるというレベルを越して絶望しているアリスが近づいてくる。
…可哀想だけど、このままだとアリスを壊す事にはなっちゃうんだよねえ。物語でもそうでしょう?一度失敗したからって絶望に包まれてても、何も事態は好転しない。悪い方向に転がっていくばかりだ。気持ちの問題、なんて根性論を振りかざすつもりはないけれど、気持ち次第でパフォーマンスや見え方、行動力なんかは変わってくる。
だから───
「よし、アリス!ゲームをしよう!」
お、ちょっと瞳が揺れ動いた。やっぱり好きなんだねえ。
「…どうしてですか?アリスにはもう、ゲームをする資格なんてありません。アリスは魔王です。大事な友達を傷つけてしまうような、そんな存在なんです。だから───」
「うるせェ!やろう!!」
ロビンに密かに持ってきてもらった自前のゲーム機とソフトを無駄にでかくていっぱいあるモニターに接続しセッティングする。勿論キヴォトス産のパチモンゲームである。だが、今のアリスにはこれが効くだろう。
◻︎
アリスは困惑していました。
リオ先輩に連れられて訪れたのはキシリアと呼ばれる少女の為に用意された部屋でした。生活スペースと工房がくっ付いたような不思議な部屋で、大きな天井の工房側のスペースには見たことないかっこいいロボットが足を折り畳んで座っていました。
リオ先輩はトキとアリスを連れてきた途端、キシリアに頼みごとをされて何処かに行ってしまいました。
そのすぐ後にキシリアからゲームのお誘いが来ました。いつもなら喜んで承諾します。事実心が少し揺らぎました。ですが、アリスは魔王です。モモイを傷つけた大罪人です。モモイはそれでもアリスの事を友達だと言っていましたが、アリスはアリスの事をモモイの友達だと認めたくありません。勇者は、仲間に銃を向けたりしないんです。だから断ろうとしました。
「うるせェ!やろう!!」
そんなアリスの事など知ったことか言わんばかりに、キシリアは手際よくゲームのセッティングを始めました。ゲームカセットに記された名は、星のタービィ。有名ですが、やった事はないタイトルです。
リオ先輩が戻ってくるとゲーム機に何かを取り付けて、トキとアリスとキシリア、それとサージタウスと呼ばれたロボットの4人のプレイヤーが揃いました。
リオ先輩は作業があるからとまた何処かに行ってしまいました。
それからは、気がつけばそのゲームに夢中になっていました。能力をコピーして様々な姿になって戦う。時にはサージタウスが大してヒットポイントが減ってないのにキシリアの分の回復アイテムまで取ってしまったり、トキがアリスの方に敵を投げたりしてきましたが、なんだかそれすらも面白くて。一画面に4人ものプレイヤーキャラクターがいるので少し画面が狭く感じますが、その窮屈さがなんだか心地よくて、自分の好きな姿に変わって戦うタービィがアリスは少し羨ましかったです。
ラスボスも間近に迫ってきた時、キシリアが口を開きました。
「アリスはさ、何になりたい?」
まるでアリスの心を覗いているかのような質問でした。それに対してアリスはソードの能力を持った自分のタービィを見つめて開きかけた口を閉じてしまいました。勇者になりたい。その一言がどうしても今のアリスには言えませんでした。
「知ってる?今私やサージタウスが使ってるキャラ、元々敵だったんだ。タービィと何度も戦って、負けて、でも今は故郷を守る為に一緒に戦ってる。敵が仲間にならないなんて道理はないんだよ。…タービィも星の戦士って呼ばれてるけど、それってただの称号だと思う?」
アリスはキシリアの言ってる事をゲームをしながら少し考えました。アリスは勇者になりたいです。その気持ちは今でも変わりません。でも、アリスにはもうそんな資格は…
「星の戦士とか英雄とか勇者っていうのは、後から他の人達がつけた客観的な事実なんだ。英雄の子孫だから英雄とか、コピー能力を持ってるから星の戦士だとか、勇者の紋章を持ってるから勇者とか、そういう事じゃない。その名に相応しい行いをしてきたから大勢の人がその名で呼ぶようになるんだよ。…アリスにその資格がなくても、アリスになりたいものに相応しい行いをずっと続けていけば、いつかそう呼ばれる日がくるかもしれないね?」
「…でも、アリスは仲間に銃を向けました。それはアリスのなりたいものに、勇者に相応しくありません」
「じゃあ聞くけど、仲間を撃ってしまった。まあ仲間割れとかでそういうのが無いわけじゃないしね?とにかく、それが起こってしまった。…その後仲直りもせずに1人勝手に消えることが、勇者のする事なの?」
「それは…」
アリスは魔王です。それは真実です。ですが、勇者に相応しい行いをした、その事実が積み重なって勇者になるのだとしたら、それはアリスでも───
「アリスはまだ、勇者になれるのでしょうか?」
ラスボス戦中のアリスの目の前に、ウルトラソードの能力がちょうど落ちてきました。恐らく、このコピー能力を吸い込んで剣を振れば、ラスボスは倒れるのでしょう。ですが、アリスは…
「アリス、もう一度聞くよ。アリスは…何になりたい?」
「アリスは…!」
勇者になりたいです!!!
ウルトラソードがラスボスのバリアを破り切り裂きました。
◻︎
あー楽しかった。久しぶりにカービィやったわ。パチモンだけど。え?ネル達が来た?トキが私たちに付き合ってたせいで寝不足?これ私の責任?…まあ、そっスネ。すいません。
「モモイ達が来たのですか?」
アリスが少し前とは違って希望と決意に満ち溢れた顔で聞いてくる。だがまだ会う事を許す事はできない。
「アリスの中には、お話しするべき相手がいる。その子を説得できない限り、アリスには魔王って称号が付きまとう。…今は仲間を信じて待つ時だよ、アリス」
「…はい!」
アリスは笑顔で頷いた。うん、やっぱ女の子は笑顔が1番!…私より身長15cm以上高いから私が見下ろされる形になってるけど。
「キシリア様。アリス達のゲームに夜通し付き合ったおかげで私は寝不足です。迅速に寝かせてください」
「えぇ!?じゃあネル達はどうするの?」
「サージタウス様に任せましょう。いざとなったら会長のアバンギャルド様もいらっしゃいますし、大丈夫でしょう」
「まあ、良いけど…リオリオに許可取ってね?」
「勿論です。では失礼します」
そう言ってトキは私のベッドで横になって一瞬で寝息を立て始めた。自由だなあ。え?てか今速攻でベッド行ったよね。リオに許可取ってないよね。勿論って「勿論放置です」って意味だったの!?誰か教えてくれー!!
◻︎
「リーダー?どうしたの?急に止まって」
「なんか思ってたのと違うのが出てきやがる気がする…」
サージタウスの見た目“は”嫌いな奴いない説