許可も取らず仮眠に入ったトキを見て大きめのため息を吐いたリオがキシリアにサージタウスを出撃させるよう要請した数分後、ネル達C&Cはそのキシリアが生み出した新たなキラーマシンと対峙していた。
「か、かっけぇ…!」
「リーダー、見惚れてる場合じゃないぞ」
『侵入者発見、マスターキシリアノ命令ニ従イ排除ヲ実行』
「喋った…!?」
「んーと、確かキシリアちゃんのロボットって上位個体になると喋るのもいるんだっけ?」
「「「…」」」
アスナの思い出したかのような発言にネルも含めた3人がピシリと固まる。実は一度、C&Cはキシリアの作ったキラーマシン系統の上位個体、ゴールドマジンガと戦わせてもらったことがある。結果は惨敗…とまではいかなくとも全滅。特にゴールドマジンガが放った黒い霧のようなものに辺りが包まれた途端、まるで自分の中のエネルギーが阻害されたかのように上手く力が出せなくなり、アスナに至っては普段の鋭すぎる直感が無くなったりしてまともに戦わせてもらえなかったのだ。
ネルとしてはその中でどう戦うかを考えながら動くことで、普段のパフォーマンスが上がったりしたので訓練としては非常に有意義だった。だがそれはそれ、これはこれ。悔しいのでその霧をなしで戦わせてもらったが、それでも惜敗。
まず、誰か1人がその剣で怯ませられる*1。そしてそのカバーに入ろうとすると入った者諸共斬られる*2。ちなみにカバーに入らなかったらそのまま怯ませ続けられて1人脱落になる。おかげで最終的な作戦は一定距離からチクチクすることになり、ネルのフラストレーションが溜まりまくったという。
閑話休題。
そんな経緯で、ネル達は非常に苦い顔をしていた。訓練でもなくぶっつけ本番だというのに初見の相手というのも苦しい。それでもネル達は銃を構えた。
「…よし、気合い入れろテメェら。私達の勝利条件はチビスケ救出までの時間を稼ぐこと、それは違いねぇ。だけどな、私は負けっぱなしってのは嫌いでよ。そろそろ一勝もぎ取らねえとなあ!」
ネルのその宣言とも言える喝が開戦の狼煙となり、全員が一斉に動き出す。一番速かったのはネル…ではなくサージタウス。こうどうはやいの特性が残っているのか、このキヴォトスにおいてトップの俊敏性を誇るネルよりも速く、その両腕についたクロスボウが火を吹いた。
4×2連射のクロスボウがネル達に襲いかかる。ネルとアスナは難なく躱し、カリンとアカネは遮蔽に隠れてやり過ごした。
そのまま攻勢に出ようとした途端、アスナの直感が警報を鳴らし、ネルの経験から来る予感が危険を察知した。
「全員退避!」
「チッ、忘れてたぜ。キシリアの作るロボットは一回行動した後に
「うーん、今のは逆に被弾した時点で攻撃に出るべきだったかも?」
「いや、キシリアの作るロボットがただクロスボウ飛ばすだけなんてチャチなもんの筈がねえ。まだ何か持ってやがるぞ、あいつ」
確信にも近い予想。それは間違っている事もなく、ネルがチラリとサージタウスを見ると舞のようなステップを踏んでいた。ネルはその踊りに困惑しながらも猛烈に嫌な予感を感じ取り、近くのビルの屋上に移動していたカリンに狙撃を指示した。
しかしそもそもサージタウスの行動速度とネルたちの行動速度は一段階違う。故にその
「はぁ!?」
『リーダー、今何が起きたんだ?まるで銃弾が自分で奴を避けるように…』
無線で困惑するカリンの声が聞こえるが、ネルも動揺を禁じ得なかった。
カツン。
困惑している2名を他所に、アカネが発砲した銃弾は問題なく命中しさらに意味がわからなくなる。
『どうやら、銃弾が逸れるには何か条件が必要か、或いは100%では無いみたいです。数打ちゃ当たるかもしれません』
「ハッ、上等!」
「コールサインゼロワン、アスナ、行きまーす!」
とにかく、謎を解明するには試行回数を重ねるのは必須。戦闘集団と言えどミレニアムの生徒。検証や証明に何が必要かはわかっていた。
「っぶねえなあ!」
遮蔽から出た途端に飛んで来る矢を連続で躱し、2回連続行動の後の隙、それを狙うように全員で攻撃を仕掛ける。
人離れした動体視力でネルはその弾幕全てを捉えていた。四方から撃たれる4人の弾幕。その全てを視界に捉え条件を探り…
「ほぼほぼ確定だ。無条件で約半分の確率で弾が逸れる。方向とか銃の種類とか関係無ェ」
『確率、ですか』
「ある意味一番嫌かもしれないね。運任せって事でしょ〜?」
『当てられるのに当たらないのがこんなに辛いとは思わなかった』
「だけどな、これには唯一にして単純明快の解決方法がある。弾が半分当たらないなら、2倍弾を撃てばいい」
『『「…」』』
若干傷のついたサージタウスとネルを交互に見てネル以外が小さくため息を吐いた。
(うちのリーダー脳筋だ…)
ネル以外の心が一つになった瞬間だった。
そんなメンバーの内心などいざ知らず、意気揚々とサージタウスに向かっていくネル。クロスボウを躱し、サージタウスに向かって銃を撃ってみれば、先ほどのように銃弾が逸れることはなく全弾しっかり命中する。
「あぁ?…もしかして時限制か?おいカリン、もう一回撃って…ッ!?」
『リーダー?』
みかわしきゃくの効果が切れたのを実感してカリンの攻撃を叩き込もうと思った矢先、ネルの体が打ち上げられた。空中にいるネルに降り注ぐ2射目。ネルはクロスボウの連射をモロに受け、地面を転がった。
「リーダー!」
アスナが急いでネルを拾い上げて遮蔽に隠れる。
「リーダー、大丈夫!?」
「何本か骨が折れてるだろうが、まだ戦えはする。問題ねえ。それより、誘導地点は?」
「もうちょっと先!リーダー、走れる!?」
「誰にモノ言ってんだアスナ」
ズキリと痛む体で大通りを走り抜ける。位置を移動し続けるカリンの狙撃で注意を逸らしながら、周りの建物より一回り大きいビルまで。
ネルは早い段階から隠し玉のことも考えると正攻法では勝てないと察していた。たとえコールサインダブルオーと言えど、今はまだキシリアの作るロボットに一対一ですら勝てない。だからアカネを別行動にさせ、自分達はサージタウスの気を引いた。
この、たくさんの爆弾を仕掛けた建物の地点まで。
「やれ、アカネ」
『はい、リーダー』
サージタウスの頭上に爆弾が降り注ぎ、それをアスナが撃ち抜く。爆煙がサージタウスを包んだ途端、大通りに面したビルがアカネの仕掛けた爆弾がさらに起爆され倒壊。サージタウスに降り注ぐ。
サージタウスはすぐさまトルネードで煙を晴らし、その足でビルの倒壊から逃れるべくネル達の方に走り出す。
「終わりだ。カリン」
『ターゲット、排除する』
別のビルの屋上からカリンの
ここに来るまでにそこそこ攻撃を加えていた上、大質量のビルをその身に受けたのなら、キシリアのロボットと言えど機能停止くらいには陥ってるのでは無いか。そんな期待は
瓦礫を吹き飛ばしてネルたちの前に着地したサージタウスに咄嗟に臨戦体制を取るもサージタウスはその弩を引かなかった。
『試練ノ突破ヲ確認。通行、許可』
そう言ってサージタウスは足音を鳴らしながら走り去っていった。
「はぁ〜、なんか勝ったっていうには納得できねぇ」
「いいじゃんリーダー!通行許可って言ってたよ!」
遠くの爆発音を耳にしながら、座り込んだネルは立ち上がった。
『ゲーム開発部の皆さんも頑張っていらっしゃるようですし、私達も参りましょうか』
疲労困憊、生傷絶えず。それでも彼女達は次の戦場に向かう。
サージタウス、Mサイズとは言え弱くね?と思った人。次回で理由を明かします。
あと基本的にスキルはイルルカSP準拠で生まれた時に持ってる奴をポイントmaxで持ってるという設定にします。
それ以外はその個体が生きて習得した技術です。
ちなみに感想開くのはまだ怖いです。すいません。