前々からだが、先生は私の事を結構気にかけてくれている。自惚れならそれまでだが、多分そうじゃない。なんだろう、割れ物を扱うかのような繊細な付き合い方をされている気がする。私がヒナよりもさらに小さいロリ体型だからか?…先生は褐色好きだしロリコンではないと思うが、一応気をつけておこう。日本人は皆ロリコンって誰かも言ってたしな。
そんなわけだから、先生がこうして私にモモトークを送ってくるのも、そう珍しい事じゃない。
[補習授業部の皆と一緒に勉強してみない?]
だから、今回のこのお誘いもいつも引き篭もって学校にも通っていない私を連れ出そうとしてくれてるだけなのだろう。
勉強もキラーマシンが作ってくれたテストとかやってるけどそれも偶にだ。基本私はキラーマシンを作って食っちゃ寝生活してたい!!人間の屑と言われようとも私はキラーマシンが作れればそれで良いのだ。
ただ私も自分を気にかけてくれている先生のお誘いを無碍にする程ダメ人間ではない。それがトリニティじゃなければなあ!!
セイアには悪いが、トリニティはそんなに好きじゃない。私がそもそもお上品な雰囲気に合わないと言うのもあるが、あそこは陰湿なトリカス共の巣窟なのだ。まずイジメ。これは普通に横行している。そして陰湿なので正義実現委員会などの治安組織にはバレないように、証拠が残らないようにやる。家の権力も笠に着て、自分より下の者を徹底的に虐めている。
次に価値観。彼女らは自分達が上位の権力者だと信じて疑わないし、何をされたわけでもないのにゲヘナを異常に憎んでいる。だからトリニティ以外の自治区の事を平気でこき下ろすし、ゲヘナの生徒がトリニティに入ったらそれだけで石を投げられる。彼女らはゲヘナの事を野蛮で穢れた学園と言っているが、人間的により醜いのはトリニティの方である。
極め付けはそうした醜い者達ほど自分自身は何も誇れるものがないのだ。そしてトリニティの生徒の何割かはここに集約される。
勿論、全ての生徒がそう言うわけではないのも知っている。正実のツルギなんて見た目が怖いだけで実力も人格も実績も兼ね備えた模範的な人物だ。シスターフッドもトップが非常に勘違いされやすいが比較的まともな人物が揃っていると言える。
多分今回先生が担当する補習授業部の生徒達も、そう言ったトリカスではない子達が集まっているのだろう。先生が私をトリカスの周りに居させるはずないしね。ワンチャントリニティが地図から消えるし。と言うか2年前一回消えかけた。
だから行ってもいいんだけど…セイアの言い方的に絶対何か起こるんだよね。そして何か起こった時、私が現場にいるのは非常によろしくない。私は回復魔法が使えるが、即死したら意味はないしザオラルも使えない。使えたとしても私が即死した時点でゲームオーバーだ。ペ◯ソナかな?
それで私が即死したり意識不明になると何が起こるってさ、キラーマシン達が殺意の波動に目覚めて名前の通りになっちゃうんだよね。トリニティは間違いなく歴史が終わるしキヴォトスの終焉もあり得るかも知れない。
だが!私がいつまでも同じ轍を踏むと思うなよ!この度カックンをアップデートし、私にバリアを張れるようになったのだ!ゲーム的に言えば1000ダメージくらいなら耐えるよ!残念ながらシールドゲーティング*1はない。
ちなみにこのバリアの防御力は一般キラーマシンを元にしているのでそこらのスケバンの銃弾では2とかしか減らない。ミサイルとか来なければ余裕ですよ!勝ったなガハハ。行くって返信してくる。ちょうど合宿初日らしいので突撃だ!
「たのもー!」
私が昼前に合宿所にたどり着くと、先生と見覚えのあるペロキチが草むしりをしているところだった。
「“こんにちは、キシリア”」
「え!?先生が言ってたゲストってキシリアちゃんだったんですか!?」
「ヒフミじゃん。補習するほど成績悪かったっけ?」
「“2人は知り合いなの?”」
「何回かうちに護衛や襲撃の依頼を…」「わーっ!!それ以上言わないでくださいキシリアちゃん!!」
何を隠そうこのペロキチ、ブラックマーケットに出回ってるペロログッズを集めるために護衛を依頼するに留まらず、転売ヤーへの襲撃依頼を何回もしてくれているお得意様なのだ。私も心情的に転売ヤーを潰せてハッピー、ヒフミも憎しものを潰せてハッピー。手段を選ばず憎いものを打ち砕くと言う点において、ヒフミはトリニティらしさを持っているかもしれない…。最近は転売ヤーの数が激減し普通に公式から買えることも増えてるらしい。
「それで?今は合宿前の大掃除ってところ?」
「“そんな所だね”」
見たところ草むしりは始めたばかり、となれば今回連れてきたキラーマシン2に草刈りをやらせて先生達には他の場所をやってもらったほうがいいだろう。
その事を伝えるとキラーマシン2にはジト目で見られるし先生達は苦笑いだ。どう考えたってキラーマシン2が剣ブンブンした方が草刈り早いやろがい!
そうして一通り草刈りが終わり、補習授業部の全員がプール前に集まった。
「で、誰?この人」
「初めて見る機械だ。戦闘用だろうか?」
「…」
初対面3人のうち1人は警戒心むき出しの猫、1人はキラーマシン2に興味を示し、1人は驚いたようにこちらを見ている。
驚き戸惑っていた1人が少し考えたそぶりを見せた後、口を開いた。
「ブラックマーケットの単眼の殺戮者、その主であるキシリアちゃんでお間違い無いですか?」
「そうだけど…」
「やはりそうでしたか。…とはいえ意外でしたね。ティーパーティーの方々がキシリアちゃんがトリニティに入るのを許すなんて」
「な、何!?あんた指名手配犯だったりするわけ!?」
「“…とりあえず、自己紹介しよっか”」
というわけで、補修授業部のイカれたメンバーを紹介するぜ!!
部長ペロキチ、阿慈谷ヒフミ!ペロロのイベントに行きテストを欠席!転売ヤーは粛清する自称している平凡とは程遠い逸般人!
転校してきたテロリスト、白州アズサ!正実相手に倉庫を占拠し籠城戦!本人にテロの意識はないらしい。
歩くR18、浦和ハナコ!校内をスクール水着で徘徊し無事補導!銃を持たない人が裸で歩くより珍しいからって、スク水で校内を歩き回っていいわけではないぞ!
最後!ただのバカ、下江コハル!ただただテストの点数が悪くて補習授業部にぶち込まれた!以上!
私?私は外様だから。ただのゲストだから。補習授業部の仲間入りなんてしません。誰がこのグループの人間と同じ扱いされたいって言うんだ。
えぇ、確かにトリカスではないかもしれません。だからと言って問題児だったらいいわけじゃないよ先生!!
結局その日は最後にプール掃除だけして終わった。プール掃除という名のお遊びだった気がしないでもないし、親睦は深まったかもしれないが、私は君たちのような問題児ではない。決して*2。
◻︎
コンコン、と私の部屋の扉がノックされる。夜もだいぶ更けてきたが、誰か眠れなかったのだろうか。私は「どうぞ」と返答し間も無くドアが開かれる。
「“ヒフミ。それにハナコも。どうしたの?”」
「夜中にすいません。でも色々考えてたらどうしても寝付けなくって…多分、ハナコちゃんも同じですよね?」
「まあ、似たようなものですね♡でも多分、私が考えていることとヒフミさんが考えていることは別口ですから、先にヒフミさんからどうぞ」
「あの、その…言ってもいいかわからないんですけど、それでも私の手に負えるような話でもなくって…聞いてくれますか?」
それからヒフミはぽつりぽつりと吐き出すように語り出した。
3次試験に落ちたら、全員退学。そしてナギサから直接依頼された、トリニティの裏切り者の調査。信頼してたナギサからこのような事を依頼され、そして自身も退学の危機にあることに不安と恐怖を抱いていることを、私たちに話した。
「本当は先生だけに話すつもりだったんですが、今日1日ハナコちゃんを見て、お互いに全部を話し合うことはできなくても、信頼し合える関係にはなれると思ったので…ごめんなさいハナコちゃん、巻き込むような形になってしまって」
「いえ、謝るのは私の方です。知らなかったでは済まされません。こんな状況であえて悪い点数を取るなんて…」
「“何か、理由があったんだよね”」
「…はい。ですがそれはもう少し心の整理がついてからお話しさせてください。勿論、明日からは真面目に補習授業部としての活動に取り掛かります。…それで、私の方の話なのですが」
「勿論、ハナコちゃんの話も聞かせてください!ここまできたら一蓮托生です!」
「…ありがとうございます。先生が連れてきたキシリアちゃんの件です。まさか私もキシリアちゃんを連れてくるとは思ってなかったのですが、多分先生は知らなかったのでしょうね。多分、補習授業部でも私以外知らないことでしょう。あの時はトリニティ全体に緘口令が敷かれましたから」
「“何があったの?”」
「キシリアちゃんがトリガーとなって、一度トリニティが滅びかけたんです」
「「“!?”」」
「キシリアちゃんが悪かったなどとは思っていません。多分、トリニティの生徒が外部の生徒にいつもやるノリでキシリアちゃんを害したのでしょう。それが言葉か銃弾によるものかは定かではありませんが。そしてそれに激怒した単眼の殺戮者が、トリニティを包囲しました。外側からじっくりと、逃げ場がないように攻められ当時のトリニティは大混乱に陥ったと聞いています。外出などでトリニティ自治区外にいる生徒までは報復の対象外だったみたいですが、元凶の生徒は羽を根本から千切られたりしたようです」
「羽をっ…!?」
「包囲が残すところ本校舎にまで迫った時、多分キシリアちゃんが気絶から覚めたりしたのでしょうね。単眼の殺戮者は一斉に撤退していったと言います。それからトリニティでは単眼の殺戮者については関わらない、それが暗黙の了解となりました。公言しないのはトリニティがたかがブラックマーケットの一勢力に負けると言う事を認めたくなかったからでしょうね。あれから2年経ったとは言え、噂などはまだ根強く残っています。エデン条約が間近に迫っているのにそんな不確定要素をナギサ様のような方が認めるはずありませんからね。私が意外だったと言ったのはそう言う事です。…先生、一体ナギサ様になんと言ったんですか?」
何も知らなかった私は少し胃を痛めながら口を開いた。
「“…私の生徒を補習授業部と一緒に勉強させてもらえないかなって”」
「…っふふ。確かに、嘘は言ってませんね…ふふ」
ハナコは笑いを堪えきれずザマーミロと言った感じでお腹を抑えていた。
「なんだかとっても楽しいことになりそうな予感がしますね?先生♡」
選択、間違えたかな…と思う私だった。
tips 今頃ナギサ様は監視の報告を聞いてお紅茶を吹き出しておりましてよ
tips セイア様はTSC2のお客様アンケートに2万文字に及ぶ感想を送っていましてよ!