許されるか…?
「ネル…私、ちょっと休む…」
ネルの指示により猛スピードを出したキラーマシン2に乗っていたことにより、貧弱フィジカルの私はダウンしていた。
「あー、スピード出し過ぎたか。悪いキシリア」
「私自身は本当に弱いからね…うぷっ」
「ちょっと休んでろ。私は先行ってるからよ」
うぐっ…ネルちゃんのせいとはいえ急いでいたのも事実…。ユウカがネルを任務中にもかかわらず呼び出したということはそれなりに緊急事態のはずだ。流石にネルとはいえキラーマシン2の全速力以上のスピードでミレニアムまで走り続けることは不可能。だったらキラーマシン2にかっ飛ばしてもらってミレニアムまで体力を温存させた方が合理的だ。
ぐでーとキラーマシン2の上で伸びていると不意に近づいてくる足音。まー敵性存在だったらキラーマシン2がなんとかするでしょ。
「…キシリア、女の子が外でそのような体勢を取るべきではないわ」
「ん?あれ、珍しいねリオリオ。自らの足で出向いてくるなんて」
「私を不健康な引きこもりみたいに言うのはやめてくれるかしら」
「違うの?」
「断じて違うわ。…ネルは今頃まだ任務中のはずだった。キシリアを誘って任務に行くことを考慮すべきだったわね。まあいいわ。時間稼ぎは十分でしょう」
「…何の話?」
「今、キヴォトスを終焉に導く可能性のある人物をテストしているの。ヒマリと私の2人で」
「へー、珍しいね。ヒマリとリオリオめっちゃ仲悪いのに」
リオリオ…基、調月リオ。最先端の技術を生み出し続けるミレニアムの生徒会長。勿論めっちゃ賢い。が、不器用な合理主義者である。そうだなあ、例えばだが。100人の命を救うために、50人の命を差し出さなければならない。そうなったら間違いなくリオは50人を切り捨てるだろう。「私たちのために死んでちょうだい」とか言ってヘイトを一身に引き受けてそれが合理的だって言いながら悪役になる。そう言う人。
対照的にヴェリタスの部長でありミレニアムでも3人しか授かったことのない全知の学位を持つ明星ヒマリは人情やロマンに重きを置くためリオとは非常に仲が悪い。自分の事はめちゃくちゃ持ち上げるけど、リオの事だけは異常にこき下ろすくらいには仲が悪い。
まあお互い認め合ってるのは確かみたいだし、ヒマリが一方的にヘイト向けてる感はあるけど…多分口で言うほど嫌ってはないんじゃないかな?実際どうかは知らないけどね〜。
「でもさあ、キヴォトスを終焉に導くどうこうって言ったら私も大概だよ?私の命令一つで多分キヴォトス焦土にできるよ?やんないけどね?」
「ええ、それに関してはあなたの善性を信じるしかないわね。どちらにせよ今の私達…いえ、キヴォトスにはあなたを止める手段がない。どうしようもない事にあれこれ手を尽くすよりも、明確に止められる手段がある物に注力した方が合理的だもの」
「ま、そうだよねー。一回私に手出そうとして腰抜かしたもんねリオリオ」
「その話は忘れなさい。…とにかく、私達はその人物を試しているの。だからイレギュラーな変数であるあなたにまで現場に行かれると何が起こるかわからないから、今日はもう帰って欲しいというわけ」
「おっけー。そういうことならネルには私から連絡入れとくよ。キラーマシン2、帰るよ」
ふわりと浮き上がったキラーマシン2に少しの浮遊感を感じながら出発しようとするとリオに呼び止められる。
「キヴォトスを襲う厄災、その対処については協力する。わたしが1年生の時に交わした同盟。破棄するつもりはないわよね?」
「勿論。キヴォトスが滅んだら私も困るしね」
「ならいいわ。それだけよ」
またねー、と言いながら手を振り夜の街の上空に溶け込みながらリオのさっきの発言について考える。
まず間違いなく、リオの言ってたテストしてる人物とは生徒だろう。そしてその生徒がキヴォトスを壊す可能性があると。ならそれを防ぐにはその生徒のヘイローを破壊するのが手っ取り早い。で、それを簡単に命令一つで実現可能なのが私。あれは言外に「お前に人殺しになる覚悟はあるのか」と言ってるような物だろう。だがここで重要なのは、リオは自分の手を汚したくなくて私に頼んでいるのではなく、それが一番成功しやすく確実な手段だからに過ぎない。私が居なくたってリオはその生徒のヘイローを自分の手で破壊するだろうし、自分が罪を被る事だって厭わないはずだ。
だが、これはリオが進んで人殺しになりたいのを意味するわけではない。小を犠牲にせず大も救う。それが出来るなら1番いいと思ってるのは間違いない。
「本当に不器用なんだから」
だから私はリオに力を貸すし、リオも私も人殺しになんかさせない。リオはいざという時裏切られたって感じるかもしれないけど、要はキヴォトス終焉を防げばいいんでしょー?確かにキラーマシンは破壊の方が得意だけどさ、破壊の力が何かを守れないなんてそんな道理は無いよね!
飛びながらもどこか不思議そうに私を見つめる赤いモノアイに対して、私はその頭を抱きしめた。
約1週間後、突如としてアップロードされた
そんな平和な日々が続いたある日、以前から交友のあったヴェリタスのマキから「なんか変なの見つけたから来て!」とか言われたので急遽ミレニアムに向かって見れば、モモイは頭から血流して倒れてるし、ネルちゃんに気絶させられてる生徒はいるし、ヴェリタスの部室は荒れてて先生もちょっと固まってる。
これは…危惧してたことが起きちゃったかあ。