願いの物語シリーズ【エレメンタル】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第4話『このお礼は必ずする』

勢いよく走る車の中で私は火野坂さんの髪の毛をタオルで拭きながら話をしていた。

 

「アイドル作品っていうのは本当に色々な作品があってさ。それぞれの良さがあるんだけど」

 

「琉生。喋る前に準備を進めろ」

 

「良いじゃん。話しながらでも準備はしてるんだからさ」

 

「手伝って貰っているだろうが! 現在進行形で! 本当に申し訳ない。高垣さん」

 

「いえいえ。慣れてますから」

 

「そうなんですね。もしかして、理仁とはそんなに長い付き合いを?」

 

「えっと、理仁さんっていうと風間さんですよね。風間さんは昨日初めて会った方ですね」

 

「初めて……? えっと、どういう経緯で」

 

「公園で風間さんが倒れてましたので、このまま外に居たら大変だと一時的に家へ運ばせていただきました」

 

「……あの。前も聞いたかもしれないんですけど。理仁のファンの方……ではない?」

 

「そうですね。エレメンタルさんというグループの事も今朝初めて知りました」

 

「何やってんの!!? 駄目でしょ! 知らない男を家に入れちゃ!」

 

「今の何やってんのは。有名なセリフでさ。ガソダムの初代シリーズからの名艦長で」

 

「琉生は黙ってろ! 話がややこしくなるから!」

 

「えっとですね。一応風香さん、いえ。お姉さんと一緒に居たので、大丈夫ですよ」

 

「いやいや。危機管理能力が低すぎるよ。その男が武器持ってたらどうするの。か弱い女の子二人じゃ、何かあってからじゃ遅いよ? なんか他人事ながら心配になってきたな」

 

「リーダーは心配性だなぁ。麻衣ちゃんも大丈夫だって言ってるし。大丈夫だろ」

 

「おい。琉生。忘れてるかもしれないが、もし彼女がその暴漢に刺された場合、もう二度とお前の好きな漫画やアニメの話は出来なくなるんだからな。その辺り、分かってるのか?」

 

「はっ!? だ、駄目だよ。麻衣ちゃん! 気を付けないと! その体はもう君一人の物じゃ無いんだよ!?」

 

「言い方ァ! スキャンダルを起こす気か!」

 

「分かってますよ。お友達ですもんね。ちゃんと気を付けますよ」

 

「本当に? あぁ、心配だなぁ。心配だ。うー。心配だ」

 

「極端な奴だな」

 

私はアハハと笑いながら、とりあえず彼らをテレビ局まで送り届け、そのまま運転手さんに自宅まで送って貰った。

 

そして、自宅に入ると、既に起きていた風香さんに挨拶をして、一緒に風間さんの様子を見る事にする。

 

どうやら熱は大分下がった様で、後はゆっくり眠れば回復するだろうとの事だった。

 

風香さんは一人で置いておくことなんて出来ないと言い、レストランへ行くことを拒否していたのだけれど、いざという時はすぐに連絡するという事で納得してもらい、店に行って貰った。

 

それからすぐに風間さんも目を覚まして、どうにか帰る事が出来るというので、見送る事にする。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「あぁ。十分休ませてもらったから」

 

「それは良かったです」

 

「このお礼は必ずする」

 

「要らないですよ。大した事してませんし」

 

「そういう訳にもいかないよ。これは男としてのプライドの問題なんだ」

 

「それなら。またご飯を食べに来てください。待ってますよ」

 

「分かった。必ず行くよ」

 

「はい」

 

私は風間さんとお別れをして、また日常へと戻る事になった。

 

しかし、テーブルの上に置かれた水谷さんの名刺と、絶対に見てねと押し付けられたアニメのBDが大きな変化の訪れを私に教えていたのだった。

 

 

 

風間さん達と出会った日から三日ほど経ったある日。

 

私は普段と同じ様に夕焼けの里で働いていると、怪しげな二人組が入ってきた。

 

サングラスを掛けており、キョロキョロと周囲を伺っている。

 

「いらっしゃいませー」

 

「やぁ」

 

「はい。ご予約のお客様ですか?」

 

「いや、俺だよ。俺」

 

「オレ様。少々お待ちください」

 

「そうじゃなくて。俺! 火野坂!」

 

「ヒノサカ……? あぁ、火野坂さん。お久しぶりです」

 

「本当にね。あれから何の連絡も取れないから、困っちゃったよ。まだ話したい事沢山あったのにさ」

 

「あ。そういえば火野坂さんに連絡先教えてなかったですね。ごめんなさい」

 

「いや、良いんだ。今日聞くから。それに教えなかったリーダーも悪い」

 

「お前に教えたら、仕事をしなくなるだろう? 当然の処置だ」

 

水谷さんは当たり前だとばかりにサングラスを取りながら笑う。

 

「さて。今日来たのは例の話をしに来たからなんだけど。オーナーは居るのかな」

 

「はい。呼んできますね」

 

「その必要は無い。話ならここで十分だ」

 

私の声に応える様に、店の奥からオーナーがゆったりとした足取りで歩いてきた。

 

そして、私の肩を掴んで、店の奥に下がらせると、私の前に立つ。

 

「帰りな。麻衣はお前らにはやらん」

 

「何の話でしょうか。私たちは仕事で」

 

「麻衣を雇いたいって話だろ? 聞いてるよ。だが、ふざけた話だと思わんか」

 

「え」

 

「麻衣はな。見ての通りお人好しで、警戒心も薄いし、すぐ騙されちまう。そんな大切な孫娘をたぶらかして、怪しげな仕事に誘おうとしている野郎共に、俺がはいそうですかと頷く訳ねぇだろうが」

 

「ちょ、ちょっと大きな誤解があると思うのですが」

 

「誤解、だぁ? お前らエレメンタルっていうアイドルグループなんだろう?」

 

「え、えぇ。ちゃんとした身分が」

 

「そのエレメンタルの! 一人であるクソガキが! 昨日! 麻衣に何やったかもう忘れたって訳じゃねぇだろうが!? アァ!?」

 

オーナーが怒りに体を震わせながら水谷さん達を威嚇するのを見て、私は良くないなと口を挟む事にした。

 

「オーナー。風間さんと水谷さんは別の人ですよ」

 

「その違いが判らねぇほど耄碌しちゃいねぇよ! 良いか? 麻衣。俺が普段から言ってる事だ。店に出るお前や風香がアホやればそれがこの店の評価になる。だから全員が同じ店の人間として、考えて行動しなきゃなんねぇ。そうだろう?」

 

「はい。分かってますよ」

 

「なら、分かるはずだ。こいつ等の仲間はその看板に泥を塗った。その上で、間抜け面した二人が、その詫びに来るでもなく! 言うに事を欠いて麻衣を連れていくだと!? ふざけるのも大概にしろ!」

 

「た、大変申し訳ございません。申し訳ないのですが、昨日風間は何をやらかしたのでしょうか……?」

 

「まだ未成年の麻衣ちゃんにお酒を飲ませようとして、しかもそのまま連れ去ろうとしたのよ」

 

「何やってんだ理仁ー!!」

 

水谷さんは怒りながら懐から携帯を取り出して外に飛び出していった。

 

そして、そんな水谷さんを見送りつつ、火野坂さんはマイペースにお腹減ったし、ご飯食べたいというのだった。

 

「オメェも帰れ」

 

「ちょっと待ってよ、オーナーさん。俺は別に麻衣ちゃんに仕事をやって貰いたいなんて考えてないよ」

 

「そうなのか。じゃあ何だテメェは」

 

「麻衣ちゃんのお友達です」

 

「ほぅ。麻衣。本当か?」

 

「はい」

 

「ほー。で? 何の友達なんだ」

 

「アニメ、漫画! そしていずれはゲームの友達です!」

 

「あぁ、麻衣の好きなピコピコか。なら良い。風香、気にしてやれ」

 

「あいあいさー」

 

「じゃあ俺は戻る。後は頼んだぞ。風香」

 

「ほい! お任せっ」

 

オーナーはそれだけ言うと、さっさと奥に引っ込んでしまい、私はとりあえず火野坂さんを席に案内する事にした。

 

とは言っても、予約で席は埋まっているから、彼用の席を作る事になる。

 

そして席に着いた彼はワクワクした様子で、麻衣ちゃんのオススメと言い、私は風香さんに全てをお任せするのだった。

 

「んー。こういう店に来るのは初めてだから楽しみ」

 

「火野坂さんは、あまり外食しないんですか?」

 

「そうだね。とは言っても食べてるのは弁当屋さんの弁当ばっかりだけど」

 

「じゃあ期待してください。風香さんの料理は本当に美味しいですから」

 

「口からビームが出るくらい? うーまーいーぞーって」

 

「そうですね。食べたら体の悪い所が全部治るくらいです」

 

「なんと! つまりこの水を飲むと、涙が止まらなくなる……!」

 

「ふふ。楽しんでいってくださいね」

 

私はそう火野坂さんに告げると、また仕事に戻っていくのだった。

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