琴の音に耳を澄ませて 作:緑雨
オープニング
はじめまして、琴葉葵と申します。心の中まで堅苦しいのは苦手なので、ちょっと崩してしゃべるね? 私は昨日、友達と夜中までゲームをして、それから寝たんだ。そしたらね…
「雲の上… 夢か、早く覚めないかな」
『夢などではない! ここは天国じゃ!』
っと、こんな感じ。これでも私は生粋のゲーマーだから、この後の展開を予想しようと思うんだ。おそらく、『死んでしまうとは情けない!』『特別な特典を与える!』『異世界でも頑張れ!』みたいな展開だと思うよ。昨日外した馬券を賭け… たって意味ないか。
『ワシは神じゃ、驚いたか?』
「いいえ、そう思ってました」
『察しがよいな… ワシが、お主をここに呼んだのじゃ』
「はぁ…」
『お主には異世界に行って、ワシが楽しめるような物語を紡いで欲しいのじゃ』
「はぁ… で、その世界はどんな世界です?」
『お主、仕事で稼いだ金を半分近く競馬に注ぎ込んでいるようじゃな』
えぇ、なんで知られてるの。私の名誉のために言っておきますが、借金とかもしてないですし、収入から生活費を抜いた残りの半分、ですからね。予想家とかでもないですから、趣味でやってるだけですよ? …本当ですよ。
『そこでな、かつての名馬たちが女の子になった世界に行ってほしいのじゃ』
「…どんな世界なんです?」
『ウマ娘、といってな』
「それを最初に言ってください。それなら知ってますから」
ゲームとかアニメとか、色々あるやつでしょ、確か。スマホでやってみようかとも思ったけど、時間がなくてやってなかったんだよね… こんなことになるなら予習しておけばよかった。
「え、私、ウマ娘の世界に行くの?」
『そうじゃ、そこでウマ娘達と仲良く暮らして、ワシに見せてくれ。ワシはウマ娘の世界に行けんが、見ることはできるんじゃ。ワシの代わりにウマ娘達とキャッキャして、それを見せてくれ』
「どうして私なんですか?」
『おっさんよりは可愛い女の子のほうがええと思ってな』
「神様なら、自分で作った人間を送り込めば好き勝手できるんじゃないですか?」
『…お主に行ってもらいたいのじゃ』
「メタ的な話ですか、わかりました。私が行きます」
断る理由もない、二つ返事で行ってもいいくらい。1つ問題があるとしたら、友達と話せなくなることかな…
『そうじゃ、お主の友達も数年後に送り込む。お主がウマ娘世界に適応したタイミングで送り込むぞ』
「それなら、時間の進む速度について教えてもらえませんか?」
『ウマ娘世界で1年暮らしたら、こっちの世界でも1年経つぞ。それと、ウマ娘世界では年は取らん。ウマ娘達も、年を取るのがゆっくりじゃ。その方がお主も楽しいと思ってな、改造させてもらった』
「そんなに干渉できるのに、自分で行くことはできないんですね」
『バカにするでない! 神にだってできないことはあるんじゃ!』
失礼なのはわかってるけど、ちょっと笑えてくるよね。だって、私のために沢山お膳立てはできるのに、自分で行くことはできないって。でも、おかげさまで助かった。大切な友達ともまた会えるんなら、本気で頑張ろう。それに、この感じは… 私、死ぬまでウマ娘世界に閉じ込められそうだし。第二の人生ってところかな?
『他に質問はないかの?』
「あの馬はいますか? キ『そういう質問には答えられん。トレセン学園にはいると思うが、出会えるとは限らん。だから、希望を持たせるようなことは言えん。特定のウマ娘を探すのは、やめるように』
「わかりました。それと、私は結局何をすればいいんですか?」
『トレーナーとして、ウマ娘をトゥインクル・シリーズの頂点に導くのじゃ。どこを頂点とするかは、お主と相棒で決めることじゃ。詳しいことは、現地で調べてくれ。トレーナーの資格はワシからプレゼントしよう。現地に着いたら、新人トレーナーとして案内されるはずじゃ』
「わかりました、転生特典とかはないんですか?」
『ある、何が欲しい』
話の雰囲気的に、何も特典とかないのかと思ってました。でも貰えるんですね、しかも自由に選んでいいと。こういう状況になったら神様に何を頼むか、私は決めてるんですよ。ゲーマーですから、そういう妄想はよくするので。
「神様から私を見えないようにしてください」
『…どういうことじゃ』
「誰かに見られながら、助けられながら生きるのは嫌なので。私は現地で頑張りますから、神様は私の友達を観察していてください。私は自由に生きたいんです」
『ぐっ… わかった、そうしよう。だが、ワシから見えなくなるのであれば、今後は手助けはできん。自分の力で頑張るのじゃぞ』
…この神様、思ったよりも良い人なのかもしれない。私とウマ娘がキャッキャしてるのを見たいとか言いだした時は変態かと思ったんですが… 素直に私を応援してくれるような人なら、普通に手助けしてもらえばよかったかな。やっちゃったかな…?
『では行きたまえ!』
「それじゃ、行ってきます。頂点から美しい景色、見てきますよ。 …それと、さっきのお願いはキャンセルで。私の物語を観ていてください、面白いはずですよ」
…こうして、私はウマ娘の世界に転生しました。これからどんなことが待ち受けるのか、今はまだ何もわかりません。でも、楽しみです。シルバーコレクターな子に頂点を取らせたり、海外の夢を追いかけたり。トレーナーってそんな簡単じゃないのかもしれませんが、楽しみな気持ちが強いですね。勢力図を史実と変える… 本当にゲームみたいで、楽しそうじゃないですか。
『言い忘れとった、ウマ娘達のデビュー年も改変しとるぞ。だから、史実の通りにはいかんこと、覚えとくんじゃぞ!』
「先に言ってくださいっ!」
そういう、大事なことは、まず、最初に、言ってください!
なんて、もう遅いですね。前が見えなくなってきました、音も聞こえません。これが転生、か… 私は新人トレーナー、私は新人トレーナー、ちゃんと覚えときましょう。転生モノって、転生前の記憶とかをポロッと言っちゃって、周りから不審がられるってよくありますから。気をつけましょう。
それと、あの神様、やけに軽いというかフランクだったな… 神様ってきっちりしてるのかと思ってた、色々いるのかな? まぁ、別にいいか。
「琴葉さん! 大丈夫ですか? 正門で立ち止まって…」
「すいません、えっと…」
「駿川たづなです、この学園の理事長秘書をしています。今日は、琴葉さんの案内を担当させていただきます」
「よろしくお願いいたします、駿川さん」
「たづな と呼んでください」
さぁ、行こう。私だけの物語を作りに、ね。
…私が主人公ではないか。ウマ娘達の物語、だもんね。さぁて、どんな娘と会えるかな?
カッコの色で誰が話してるのかわかるよ!
「これが私の言葉
「こっちはたづなさんの言葉
神様の言葉のように、色がついてない言葉もあるよ
それと、次回までチュートリアル。ウマ娘があまり出てこなくてごめんね!