【悲報】元引きこもりワイ、牢屋にぶち込まれる
1:引きこもり転生者
目が覚めたら牢屋に引きこもってた
助けて
2:名無しの転生者
おはよう
3:名無しの転生者
ものすごいやらかしやな
4:名無しの転生者
ついに捕まってて草
5:名無しの転生者
普段は優しくて挨拶もしてくれるいい子だったんですが……
6:名無しの転生者
彼はいつかやると思っていました。
7:名無しの転生者
差し入れくらいはしてやるよ
8:名無しの転生者
死刑なんやから差し入れはできないやろ
9:名無しの転生者
ギロチンがイッチの首に差し入れられるぞ!
10:引きこもり転生者
>>8
勝手に死刑にすな!まだ裁判すら始まってへんわ!
11:名無しの転生者
王族の殺害未遂とか余裕で死刑やろ
12:名無しの転生者
裁判させてもらえるだけありがたいとも言える
13:名無しの転生者
確か決闘で反射した王子の魔法の威力が高すぎたんだよな、それで殺しかけて逮捕か
14:名無しの転生者
今回は珍しくイッチに非がないな
15:名無しの転生者
王子の自業自得やんけ
16:名無しの転生者
これは無罪
17:名無しの転生者
でも元はと言えばイッチが王子に喧嘩売ったのが始まりやぞ
18:名無しの転生者
イッチの自業自得やんけ
19:名無しの転生者
これは有罪
20:名無しの転生者
ほな死刑でええか……
21:名無しの転生者
じゃあなイッチ!
22:引きこもり転生者
>>19
ええわけあるか!
23:名無しの転生者
ていうかイッチ、魔法で脱獄とかできんのか?
24:引きこもり転生者
>>23
無理や。変な首輪つけられてて魔力量もガッツリ制限されとる。
めちゃくちゃ効率化して、しょぼい魔法一発撃てるかどうかってレベルや……
つーか監視も張り付いとるから、そもそも撃つ機会すらないわ。
25:名無しの転生者
それもう無理ゲーやんけ……
26:名無しの転生者
そもそも決闘やるなら怪我くらいするやろ、なのに逮捕っておかしくね?
27:引きこもり転生者
>>26
どうも王子殺しかけたのがマズかったらしい。
決闘でも、ルール破って危険な魔法使うと“殺意あり”って扱いになるらしい。
弁護士先生が言うてた。使ってへんけどな。
28:名無しの転生者
弁護士どっから出てきたんや
29:名無しの転生者
捕まった時点でもう詰みやろ。今さらジタバタしても遅いで。
30:引きこもり転生者
>>28
国選弁護人がついた。ここにもそんな制度あるの知らんかったわ。
>>29
まだ裁判がある、ワイは何も悪いことしてへんし勝てるやろ!……勝てるよな?
31:名無しの転生者
悪いことはしてるだろ
32:名無しの転生者
通貨偽造、脱税、忘却魔法、王族侮辱……
むしろ今まで捕まらんかったのが奇跡
33:名無しの転生者
裁判はいつや?
34:引きこもり転生者
>>33
明日
35:名無しの転生者
早スギィ!
36:名無しの転生者
逆○裁判かな?
37:名無しの転生者
王族が平民に決闘で負けて殺されかけたとか完全にスキャンダルやから、
さっさと処理したいんやろな
38:名無しの転生者
処理(死刑)
39:名無しの転生者
いや観客大勢おったし、今さら隠蔽は無理やろ
下手に揉み消そうとしたら王子の面子まるつぶれやんけ
40:名無しの転生者
それじゃ何や?王子の面子潰してでもイッチ捕まえたかったんか?
そこまでする動機あるか?
41:名無しの転生者
もしかして原因はアレか?紋章をゲーミングに光らせたやつ
たしかあの儀式って、国の役人も立ち会ったって言うてたやろ
42:名無しの転生者
紋章の色変えただけで収監されるの草
43:名無しの転生者
流石にそれが理由はないやろ
でもこのタイミングで捕まえたってのは、裏で何かあるんちゃうか
44:名無しの転生者
どっちにしろ裁判で勝てばなんとかなるやろ
45:名無しの弁護士
>>44
勝てると思うか?
ワイ弁護士やから分かるけど、イッチがいる国みたいなところやと、
上流階級が絡む裁判って、ほぼ忖度祭りになる。要するに“権力バトル”や。
今回の場合、王国が完全にバックに付いとる。
裁判所の連中は全員、実質敵やと思ったほうがええ。
なんなら、イッチに付いた“国選弁護人”すら敵の可能性あるで。
46:名無しの転生者
唯一の味方も敵で草
47:名無しの転生者
全員敵になったらどうしようもないやんけ。何があっても最終的に裁判長が死刑判決出して終わりやん。
48:名無しの弁護士
>>47
傍聴人が見てるから、さすがに理不尽すぎる判決は出せんはず。
こちらの落ち度をゼロにして、
向こうの主張を一個残らず潰すくらいの勢いでいけばワンチャンある。
まぁイッチはなんとか一人で頑張ってくれや。
49:名無しの転生者
難易度高すぎて草
50:名無しの転生者
頑張ってなんとかなる問題か?
51:引きこもり転生者
>>48
先生!流石に一人じゃ無理です!助けてください!
52:名無しの弁護士
>>51
ええよ。
最近ヒマやし、よその世界の裁判とかちょっと面白そうやから引き受けたるわ。
ただし、そっちの法律とか裁判のルールが分からんとどうにもならん。
とりあえず今回の事件に関係する情報、特に決闘と王族関連の法律、優先で集めてくれ。
53:引きこもり転生者
>>52
先生サンガツ!
でもワイも法律とか裁判のやり方とか分からんのやが……
というか、捜査とか証拠集めとかやらなくてええんか?探偵パートどこや?
54:名無しの転生者
なんで容疑者が捜査しようとしてるんだよ
55:引きこもり転生者
あれ、なんか面会希望してるやつがいるって
ちょっと会ってくるわ
────────
いつも通りの朝。僕は教室へ向かったが、扉を開けた瞬間、空気がどこか違うと気づいた。案の定、昨日の決闘の話題で持ちきりだった。
「ようフレッド、今日はエインのやつ、一緒じゃないのか?」
クラスメイトの一人が僕に声をかける。
「うん、部屋に行ってみたけど返事がなくて。たぶん昨日の決闘で疲れて寝てるんじゃないかな」
「そうか……みんなその話を聞きたがってるんだけどな」
そう言う彼の顔には、期待と心配が半分ずつ混じっているように見えた。
「そろそろ静かにしたまえ」
ハーゲン教授が咳払い混じりに言うと、教室はすぐに静まり返った。
「エインはまだ来ていないようだが……まあいい。授業を始めるぞ」
普段通りの講義が始まったが、彼は依然として姿を見せなかった。
昼になり、クラスメイトたちがぞろぞろと校内の食堂へ向かう中、僕は足早に寮へと引き返した。食堂では、おばちゃんが一人、夕食の準備を始めていた。
「おや、フレッド君じゃないか。こんな時間にどうしたんだい?」
「ちょっと聞きたいことがあって……」
おばちゃんは眉をひそめた。
「……まさか、あんたも王子との関係を聞きに来たんじゃないだろうね」
「ち、違いますって!」
ため息まじりに笑うおばちゃんの顔は、朝から何度も同じことを聞かれて疲れきっていた。
どうやら、決闘での“あの発言”のせいで、寮生たちから散々詰め寄られていたらしい。
「エイン君のことで来たんです。今日、授業にも出てなくて……朝、見かけませんでしたか?」
「エイン君? そういえば今日は見てないねぇ。朝ご飯にも来なかったし」
──やっぱり、おかしい。
あのエイン君が朝食を逃すなんて、考えられない。昨日だって、決闘より先にしっかり夕食を取ってたし、寝坊して遅刻しそうな日でも、食事だけは絶対に外さない(そして、絶対に遅刻する)。これはもう、ただ事じゃない。
胸騒ぎを覚えながら、僕は寮の廊下を駆け抜け、彼の部屋の前で立ち止まった。
「エイン君、いる?」
ノックの音に返事はない。
ドアノブをそっと回すと、鍵は──かかっていない。
「……開けるよ」
扉を開くと、部屋の中は静まり返っていた。だが、その光景は想像と違っていた。
──彼の姿はない。
椅子は倒れ、ベッドの掛け布がずり落ちていた。
床には倒れたインク壺が黒い染みを広げ、机の上には書きかけの紙がぐしゃぐしゃに残っている。
誰かが荒らしたというより、あのエイン君が……何も言わず、突然いなくなった。それも、自分の意志じゃなく。
その後、食堂に戻った僕は、クラスのみんなよりも遅れて中へ入ると、すぐに目当ての人物を見つけて声をかけた。
「カイル王子! 聞きたいことが!」
彼はベイルの弟であり、第三王子でもある。彼は取り巻きに囲まれながら、静かに食事をしていた。
「お前、たしか……フレッドだったな。俺はいま食事中だ。すぐに立ち去れ」
「ご、ごめん! でも、エイン君が──」
「待て」
カイル王子が僕の言葉を遮った。
「話を聞かないとは言っていない。ただ、ここでは人目がある」
彼は一瞥だけこちらに寄越すと、静かに言った。
「放課後、俺の部屋に来い。そこで、お前の知りたいことを教えてやる」
午後の授業中、僕の頭はずっともやもやしていた。
彼の部屋をもう一度訪ねてみたが、やはり不在のまま。
何かがおかしい──そう確信した僕は、放課後、重い足取りで貴族寮へと向かった。
カイル王子の部屋。
護衛に通された先で、僕はようやく本題を切り出した。
「エイン君が、今朝からずっと見当たらないんだ。それに、部屋も……荒らされたような跡があった。何があったか、知っていたら教えてほしいんだ」
僕の問いかけに、彼はしばし無言で僕を見据えたあと、低い声で答えた。
「ああ、知っている。……教えてやろう」
「……!」
「だが最初に言っておく。今回の件で、俺が君たちに肩入れするつもりはない」
「……分かってるよ。君
「そのとおり。俺には──俺の立場がある」
その言葉は冷たかった。だが、拒絶ではなかった。
どこか、真実だけは伝えようとする意志が、そこには確かに感じられた。
「エインは今、王立裁判所の牢に収監されている。罪状は──王族殺害未遂。裁判は明日午後だ」
僕は言葉を失った。
「……どうして!? あれは決闘だったんだよ! ルールの範囲内で……!」
「その“結果”が問題なのだ。決闘であっても、致命傷を与える攻撃は禁止されている。それはお前も知っているだろう」
「でも……あれは、ベイルの魔法が自分に跳ね返ってきたんだ! エイン君は──」
「本当に、そう断言できるか?」
「……え?」
「俺もあの場にいた。たしかに、表面上は兄貴の魔法が自滅したように見えた。だが、それをどう証明する?」
「証明……」
そう口にした自分の声が、情けないほど頼りなく聞こえた。
「エインが使った魔法は、誰も見たことのない未知のものだった。威力を増幅して跳ね返した可能性もあるし、表向きには受け流していたが、同時に【石槍】を撃ち込んでいたのかもしれない」
「そんな……」
カイル王子は目を細め、声を低くした。
「今回の件には、おそらく父上が関わっている。だが──」
そこで一度、言葉を切る。
「正直なところ、なぜベイルの面子を潰してまで、あの平民に執着するのか……俺にも分からん。本来なら、第一王子の名誉を最優先し、決闘の一件も穏便に片づけられるはずだった。だが、実際には真逆の判断が下された。王家の利益にすら反してまで、エインを潰そうとしているように見える」
彼の目がさらに細まり、声に冷ややかな響きが宿る。
「一つだけ確かなのは、父上が絡んでいる限り──エインが裁判で勝つ可能性は、限りなく低いということだ」
僕の背筋が、すっと冷たくなるのを感じた。
「そんな……」
「それでも、お前が何かをやるというのなら──好きにすればいい」
カイル王子はそれきり黙り、窓の外に目を向けた。
その瞳は、まるで何かを──いや、僕の奥を見透かしているかのようだった。
突き放すような言葉。
けれどその響きには、ほんのかすかに、期待の色が混じっていた。
────
分厚い扉が軋む音を立てて開き、僕は面会室へと通された。
格子の向こうには、ちゃんとエイン君が座っていた。
「エイン君、本当にここに……」
「フレッド、来てくれたのか!」
彼は椅子に腰かけたまま、こちらに笑顔を向けていた。
見た目には怪我もなく、表情も明るい──思ったよりも、ずっと元気そうで。
……いや、ちょっと元気すぎじゃない?
牢の中とは思えないその様子に、僕は言葉を失っていた。
「とにかく、ちょうど良かった。フレッド、お前に頼みがあるんだ」
そして開口一番、彼が真顔で口にしたのは──買い物のお願いだった。
「俺の部屋にある、机の一番下の引き出しに金が入ってる。それ使って、この国の法典を買ってきてくれ。金貨五枚もあれば足りるはずだ」
「法典って……法律の本? え、そういうのって、弁護士に任せたほうが──」
「……フレッド」
そこで、エイン君の声が少しだけ低くなった。
「もし間に合わなかったら……俺、死ぬかもしれない。頼む、マジで頼む!」
僕は一瞬、息を飲んだ。
普段なら何を考えてるのかまったく読めない彼が、今は目の奥まで真剣そのものだった。
あのエイン君が、冗談も軽口も一切ない。
その空気に圧されるように、僕の足は自然と動いていた。
「……わかった。すぐ買ってくる!」
寮に戻った僕は、そのまま彼の部屋へ向かった。
机の前にしゃがみ込み、言われたとおり一番下の引き出しを引っ張る。だが、見えるのは雑に突っ込まれた紙くずだけ。
「……どこにも金なんて入ってないじゃないか……」
まさか嘘だった? いや、エイン君にしては妙に必死だったし──とそのとき。
ガタン。
引き出しの奥から、何か板のようなものが落ちた。
思わずのぞき込んだ僕は、目を見開いた。
二重底だった。しかも、そこから金貨がざらざらと溢れ落ちてくる。
……いや、金貨だけじゃない。
金塊、鉄塊、たぶん鉛塊?みたいなのまで雑多に詰め込まれていた。
何に使う気だったんだ、これ。
「ちょ、何これ……」
どう見ても、まともな手段で手に入れたとは思えないラインナップだ。
金属の塊ばかりがぎゅうぎゅうに詰め込まれた引き出し。
エイン君、君は一体……何をやってたんだ。
いや、今は考えるな。考えたら負けだ。
金貨をざっと掴み取ると、僕は部屋を飛び出した。
そして──
忘れずに、ちゃんと鍵もかけておいた。
────────
70:引きこもり転生者
よっしゃ、フレッドから法典もらってきたで!
71:名無しの転生者
きたか
72:名無しの弁護士
別スレ立てた。さっき言った決闘と王族関連の法律、そこに探して貼っといて。
[url]
73:引きこもり転生者
任せろ!
引きこもり時代に鍛えた爆速入力スキル、ついに活かすときが来たようやな……!
74:名無しの転生者
活かすときが特殊すぎる
75:名無しの転生者
人生、何が役に立つか分からんもんやな
──────────────────────
おまけ
────────
書類の山とコーヒーの香りが漂う、王都調査局の第三分室──
その一角にある捜査官室で、羽ペンのカリカリという音が響いていた。
「……で、例の村長、“共犯者”については?」
分厚い資料に目を通しながら、年配の捜査官グレアムが眉をひそめる。
「最初から一貫して“共犯者はいない、全て自分ひとりでやった”と主張してます」
隣の若手捜査官ロイスが、疲れた声で答える。
「徴税官とのやり取りも、帳簿の改ざんも、記録上は村長の一存で処理されているように見えますし……村の規模を考えれば、理屈の上では“やろうと思えばできた”って範囲ではあるんですが……ひとつだけ、例外が」
「……例外?」
ロイスはため息混じりに別の報告書を持ち上げた。
「徴税官の記憶が改ざんされていました。かなり高度で、記憶全体に矛盾が出ないよう巧妙に整えられていたため、事件の発覚が遅れたようです」
グレアムの目つきが鋭くなる。
「村長の魔法適性は?」
「初級魔法すら満足に扱えないレベルです。村で確認された魔法記録も、簡単な照明と冷却系がせいぜい。記憶干渉なんてまず無理です」
「……つまり、そこだけは誰かが“外から手を貸した”ってことだな」
「可能性は高いです。とはいえ村長本人には明確な洗脳痕は見られず、むしろ自発的に“全部自分のせい”って繰り返してる。……妙に徹底してますね」
「徹底、ねぇ……」
グレアムは静かに呟いた。
「……むしろ、不自然に感じるぐらいだ」
「誰かに“そう思わされてる”可能性も考慮して、精神干渉の痕跡も探ってみました。わずかに、暗示系の魔力残滓がありましたが……薄すぎて解析不能でした」
「証拠の一部は、村長ひとりでもやれる範囲だ。
だが──記憶の改ざんだけは、どう考えても無理筋だな」
グレアムは資料に視線を落としたまま、ぽつりと続けた。
「普通なら、そこだけでも切り離して保身に走るだろう。
……それを真っ先に引き受けてる。まるで“そうしなければならない”ようにな」
「ええ。まるで“そいつの名前を出す選択肢そのものがない”みたいに」
「となると、保身じゃない。……信念か、抑圧か、仕込みか……」
ロイスが肩をすくめた。
「どれにしろ、村長一人の犯行って決めつけるには、だいぶ強引ですよ」
グレアムは腕組みし、資料に視線を落としたまま呟いた。
「……もし背後に誰かいるとしたら、だが──」
彼の声は、少しだけ低くなった。
「そいつは、ずいぶん用意周到な奴だ」
「失礼しまーす!緊急報告でーす!」
突如、部屋のドアが勢いよく開き、報告官の少女フィーネが駆け込んできた。
「“贋金”が発見されました! 大量です!」
「……また妙な話だな。今度はどこで?」
「銀行の精査で発覚しました! 通常の取引では一切気づかれなかったとのことです!」
「つまり……使えたってことか?」
「はい! 店でも普通に通ってたらしくて、完全に“本物”と区別がつかなかったと!」
ロイスが唖然とする。
「じゃあなんで贋金ってわかったんだよ……」
フィーネは顔色を変えずに、追加報告を読み上げた。
「銀行員の方が、あまりに色が綺麗すぎるってことで、念のため金の含有率を調べたら……純度が高すぎて、そこでようやく判明したそうです!」
「……」
「具体的には、王国発行の正規金貨より、金の割合が3割も高かったそうです!」
「……それ、もう“上位互換”じゃねぇか……」
「はい!しかも素材も完全に純金ですので、金貨の模造ではあるんですが……偽造ではなくむしろグレードアップされた“超・贋金”です!」
グレアムがこめかみに手を当てて、うんざりしたように眉間を揉む。
「誰が何のためにそんなことするんだ……?」
ロイスがぽつりとつぶやいた。
「つまりはこれ……“王国製より出来がいい金貨”ってことになるんじゃ……」
「だから気づかれなかったんだろう。誰も“良すぎる偽物”なんて考えないからな」
「しかも精製技術、金の流通経路、全て不明……」
フィーネから手渡された資料を眺めながらロイスはぼやく。
フィーネが書類を胸に抱えたまま、ぽんと手を打った。
「そうだ! あと、“上”からお手紙もらってましたー!」
「……通達か?」
「えっと……ちょっと待ってくださいね……」
ポーチをごそごそと探り、くしゃっと折れた封筒を取り出す。
「えーと……なになに……『贋金事件については、これ以上の調査を行わないこと。報告の義務も──』……あれ? あれれ? “解除する”って書いてありますね、これ!」
ロイスが固まる。
「……今、それ初めて読んだのか?」
「えっ? はい! さっきはバタバタしてたので、開けるの忘れてました!」
グレアムが額を押さえ、重いため息を漏らす。
「……つまり、“なかったことにしろ”ってわけか」
沈黙。
誰もが悟った。
──それはつまり、“この件は表沙汰にするな”という意図なのだと。
「……まあ、言いたいことは分かるよ」
グレアムがソファに沈みながら肩を落とした。
「これが広まったら、“王国の造幣技術が無名の贋金師に負けました”って話になる……国家の威信、丸つぶれだ」
ロイスがぽつりとつぶやく。
「……犯人は、ただの犯罪者じゃ済まない気がします。だけど“上”から命令があったんじゃ、もう捕まえるのは無理でしょうね……」
フィーネがきらきらした目で言った。
「“王国を手玉に取る謎の天才詐欺師”……ですか!? なんか、もう……かっこよすぎますっ!」
グレアムとロイスが揃ってうんざりしたように言った。
「……お前は黙ってろ……」