引きこもり、魔法学校にぶち込まれる   作:年中有休

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【悲報】元引きこもりワイ、試験に寝坊する

1:元引きこもり転生者

やらかした

 

2:名無しの転生者

でたわね

 

3:名無しの転生者

久しぶりやな

 

4:名無しの転生者

寝坊はいかんでしょ

 

5:名無しの転生者

退学RTA始まったな

 

6:名無しの転生者

まーた引きこもりに戻るのか

 

7:元引きこもり転生者

入学式まで何もないと思って油断してたわ

 

8:名無しの転生者

ワイなんか初出勤の日に寝坊したしヘーキヘーキ

 

9:名無しの転生者

試験って何?前スレでそんなこと言ってなかったけど

 

10:元引きこもり転生者

>>9

入学式の前にクラス分けの試験があるんや。内容が簡単に言うと「なんでもいいから得意な魔法見せろ」ってやつ。その結果でA~Eまでクラスを分ける。

 

11:名無しの転生者

ん?

 

12:名無しの転生者

今なんでもって

 

13:名無しの転生者

分かりやすいけど雑な試験やな

 

14:元引きこもり転生者

ほんで試験あるの知らんかったからずっと寝てたんや。隣の部屋のフレッド君が叩き起こしてくれてギリギリ遅刻はせずに済んだんやけど、試験対策何もしてへんねん。試験内容もフレッド君にたった今教えてもらったばっかやし。

 

15:名無しの転生者

フレッドとは

 

16:名無しの転生者

誰だよフレッドって

 

17:名無しの転生者

フレッド君に迷惑かけるなよ

 

18:名無しの転生者

対策って何を対策するんや?

「得意な魔法見せろ」って言われて困ることある?

 

19:名無しの転生者

魔法チートもってるんやろ、魔法ならなんでもええやろ

 

20:元引きこもり転生者

>>19

選べる魔法が多すぎて逆にパニクるんや。

食べ放題行ったら何から食うか迷うあれと同じ。

 

21:名無しの転生者

は?オレは迷わず肉を選ぶが?

 

22:名無しの転生者

僕は大トロ寿司!

 

23:名無しの転生者

適当に派手な攻撃魔法撃てばいいやろ、見た目にも分かりやすいし

 

24:元引きこもり転生者

>>23

いや攻撃魔法とか危険が危ないやろ、使ったこともないし。

人に当たったらどうすんねん。

 

25:名無しの転生者

いや使っとけよ

 

26:名無しの転生者

もっと危ない魔法人に使ってただろ

 

27:名無しの転生者

他人の記憶を吹っ飛ばす魔法はOKなの草

 

28:名無しの転生者

でもまあ実際、戦闘職じゃないと攻撃魔法使わんしな

 

29:名無しの転生者

てか誰か試験あるって教えてやれよ……

こいつ何も知らんやん

 

30:元引きこもり転生者

>>29

そういや校長がそれっぽいこと言ってたような……

めんどくて話聞いてなかったわ。

フレッド君も「練習しといた方がいいよ」とか言ってたけど意味わからんからスルーした。

まさかあれ試験の話やったんか……

 

31:名無しの転生者

うーんこの

 

32:名無しの転生者

話聞いとけ

 

33:名無しの転生者

フレッドも苦労するな……

 

34:名無しの転生者

イッチのマッマが解放されたと思ったら今度はフレッド君が犠牲者に……

 

35:名無しの転生者

じゃあ今まで何やってたん?

 

36:元引きこもり転生者

>>35

普通に引きこもってたけど

 

37:名無しの転生者

は?

 

38:名無しの転生者

元引きこもりじゃないじゃん

 

39:名無しの転生者

引きこもる場所が変わっただけじゃねーか!

 

40:元引きこもり転生者

アカン、お前らがグダグダしてるせいでもうすぐワイの番や!

どうしてくれんねん!

 

41:名無しの転生者

人のせいにすんな

 

42:名無しの転生者

お前が寝坊したせいだろ

 

43:元引きこもり転生者

しゃーない、もうお前らが魔法決めろ

>>50な

 

44:名無しの転生者

ライブ感で生きてるなコイツ

 

45:名無しの転生者

もう何でもいいやん

テンプレみたいにクソデカファイアーボールでも撃ってろよ

 

46:名無しの転生者

ただし魔法は尻から出る

 

47:名無しの転生者

メ”テ”オ”ォ”ォ”ォ”オ”オ”!!

 

48:名無しの転生者

今のはメラゾーマではない、メラだ

 

49:名無しの転生者

【隠形看破】(ピカー)で試験場のハゲ全員看破

 

50:名無しの転生者

校長に忘却魔法リベンジ

 

51:名無しの転生者

その場で自爆する

 

52:名無しの転生者

風魔法で女の子達のスカートめくる

 

53:名無しの転生者

水魔法で女の子達を濡れ透けにする

 

54:名無しの転生者

決まったな

 

55:名無しの転生者

ロクな提案なくて草

 

56:名無しの転生者

校長とのリターンマッチや!

 

57:名無しの転生者

前後のレスがひどすぎる

 

58:名無しの転生者

イッチ危うく死ぬところで草

 

59:名無しの転生者

>>52>>53

仲いいなお前ら

 

60:名無しの転生者

得意な魔法見せろって言われて他人の記憶消すの冷静に考えてヤバすぎんか

 

61:名無しの転生者

そもそもどうやって評価するんや?

 

62:元引きこもり転生者

>>61

校長も試験官やからとりあえず試験官全員に撃ってみる。

その身でワイの魔法を評価させたるわ。

 

63:名無しの転生者

犠牲者が増えた…

 

64:名無しの転生者

試験官というより被験官だな

 

65:名無しの転生者

つーか忘却魔法って犯罪じゃなかったの?

 

66:元引きこもり転生者

>>65

校長が犯罪だからもう使うなよって言うてたけど、

見せる魔法はなんでもいいとも言うてたし大丈夫やろ

 

67:名無しの転生者

お、そうだな

 

68:名無しの転生者

まぁなんでもいいなら大丈夫か……

 

69:元引きこもり転生者

あ、やべっ、また話聞いてなかった。

もう試験官に呼ばれてたみたいだからさっさと行って来るで!

 

70:名無しの転生者

いってら

 

71:名無しの転生者

がんばれ

 

72:名無しの転生者

逝ってこい

 

73:名無しの転生者

逝くのは試験官の記憶だぞ

 

74:名無しの転生者

あれ、そしたら試験どうなるの?

 

75:名無しの転生者

あっ

 

    ◆

 

 クラス分け試験を終えて、僕──フレッドはほっと息をついた。

 

「はぁ……緊張した……」

 

 試験の指示は、やけに大雑把だった。「得意な魔法を一つ見せろ」。それだけだ。簡単に聞こえるのに、いざ自分の番が近づくと、心臓が妙にうるさかった。

 

 僕が披露したのは、村を出発する前に魔法庁の職員さんに教わった初歩の魔法だけだ。

 

【照光】(ライト)

 

 ぽん、と手のひらの上に小さな光が灯る。それで終わり。試験官が頷いたのを確認した瞬間、膝の力が抜けそうになった。

 

 周りの貴族たちは、まるで祭りの演目みたいな魔法を次々と見せていた。燃える鳥、氷の刃、雷の槍。僕の光は、その派手さの中に放り込まれると、虫も寄ってこなさそうな豆電球みたいに見えた。

 

 ……場違いだ。視線が刺さる。笑い声も、確かに混じっていた。

 

(消えたい……)

 

 そんなことを考えかけたところで、試験官の声が響いた。

 

「では最後、エイン!」

 

 ……返事がない。

 

「エイン! いないのか!?」

 

 ざわ、と空気が揺れる。嫌な予感のまま隣を見ると、エイン君は腕を組んだまま俯いていた。目は

半開き。完全に別世界だ。

 

「ちょっ、エイン君! 呼ばれてるよ!」

 

 僕は慌てて肩を揺すった。

 

「ゔぇあっ!? えっ!? 何!?」

 

 飛び起きた彼は、目をぱちぱちさせて前を見た。数日前に隣の部屋に入ってきたばかりの彼は、同じ平民のはずなのに、どうにも感覚が噛み合わない。練習に誘っても「面倒くさい」で終わったし、試験の話をした時も、今日初めて聞いたみたいな顔をしていた。

 

「次、エイン君の番だよ! 行って!」

 

「えっ、もう!?」

 

 ふらふら立ち上がり、前へ出る。それを見て、試験官が苛立ちを隠した声で言った。

 

「使う魔法を宣言して、行使しなさい」

 

「あっ、じゃあ忘却魔法を使います!」

 

 一瞬、空気が止まった。視線が一斉に、エイン君へ集まる。

 

「……今、何と?」

 

 確認するような声が上がるより早く、校長が反射的に魔法を展開した。試験官たちの前に、半透明の膜が張られる。

 

 それでもエイン君は気にした様子もなく、両手を軽く前に出した。

 

【記憶消去】(メモリーイレース)!」

 

 青白い光がふわりと広がった瞬間、僕は体の奥が冷えた。なんだこれ……ただの魔法ってレベルじゃない。空気がピリついて、肌がざわつく。これ、人に向けてセーフなやつ?

 光が防御膜に触れた。止まる──と思ったときには既にすり抜けていた。

 校長の抵抗虚しく魔法は着弾し、試験官たちの動きがぴたりと止まる。目は開いているのに焦点が

合っていない。虚空を見つめたまま、呼吸だけが続いている。その姿は、魂が抜けた人形そのものだっ

た。

 ……うん、アウトだろう。

 

「よっしゃ、効いたぜ!」

 

 エイン君はなぜか無邪気にガッツポーズした。

 

「……あのときのお返しだ!」

 

 新入生たちが固まる。僕も固まる。理解が追いつかない。

 

 やがて、試験官たちの目にゆっくり光が戻った。ぎこちない動きで紙をめくり、さっきまでの流れを続けようとする。

 

「ではまず、アナベル・フォートハイム!」

 

 それは、最初に試験を受けた女子生徒の名前だった。

 

「えっ、私ですか!? でも、私、もう……」

 

「……あっ、やべっ」

 

 数瞬のあと、エイン君が小声でつぶやき、顔をこわばらせた。その表情からは、彼が状況の深刻さに気づいたことがうかがえた。

 

 その様子を見て、僕も遅れながらようやく事態を理解した。彼の魔法のせいで、試験官たちの記憶が消えてしまい、試験が振り出しに戻ってしまったのだ。

 

 それはつまり、試験が終わるどころか、僕たちが必死でやったあの試験そのものが、最初から無かったことになる、ということで――。

 

 ……え、じゃあこの後……どうなるの……?

 

    ◆

 

95:元引きこもり転生者

アカンやらかした

 

96:名無しの転生者

 

97:名無しの転生者

おかえり

 

98:名無しの転生者

だいたい予想つくけど説明して

 

99:元引きこもり転生者

試験官達に忘却魔法使ったら試験中の記憶全部消えちゃった。

ワイの順番最後だったから全員試験やり直しや。

 

100:名無しの転生者

 

101:名無しの転生者

ファーーーーwww

 

102:名無しの転生者

クソ迷惑で草

 

103:名無しの転生者

新入生ガチギレ不可避

 

104:元引きこもり転生者

>>103

試験中だから流石にキレてないけどみんなワイのこと睨んでくる

すげぇ怖い

 

105:名無しの転生者

そらそうよ

 

106:名無しの転生者

お前のやることのほうが怖いわ

 

107:名無しの転生者

試験やり直しって大丈夫なん?

みんな魔力とか消費しちゃってるやろ

やっぱ後日にやるんか?

 

108:元引きこもり転生者

>>107

スケジュールカツカツだから今日中にやるって。

今は全員に魔力回復薬配って回復した順に再試験してる。

 

109:名無しの転生者

他の新入生かわいそう

 

110:名無しの転生者

先生方も大変そうやな……

 

111:名無しの転生者

忘却魔法って解除とか復元とかできないん?

 

112:元引きこもり転生者

>>111

普通の【忘却】(オブリヴィオン)は記憶を“思い出せなくする”だけやけど、

ワイの【記憶消去】(メモリーイレース)は記憶そのものを“消し飛ばす”魔法や。

つまり復元は不可能。前に戻されたから、そのへんもちゃんと対策済みや。

 

113:名無しの転生者

はえーすっごい

 

114:名無しの転生者

すごいけどそのせいで最悪な事態になってるやんけ

 

115:名無しの転生者

そういや校長にリベンジ言うてたけど、レジストはされなかった?

 

116:元引きこもり転生者

>>115

精神防御の魔法使われたけど、それもちゃんと対策して通した。

 

117:名無しの転生者

やるやんけ

 

118:名無しの転生者

どうやったん?

 

119:元引きこもり転生者

【記憶消去】(メモリーイレース)は精神じゃなくて、脳の記憶中枢を直接いじるタイプや。

イメージとしては電撃で海馬を焼く感じやな。

魔法分類は精神系ちゃうから、精神防御はすり抜けられる。

 

120:名無しの転生者

なるほどなぁ

 

121:名無しの転生者

よう考えついたな

 

122:元引きこもり転生者

校長にも解説したら感心しとったわ。ほかの試験官の先生はガチギレしとったけど。

 

123:名無しの転生者

そらキレるやろ

 

124:名無しの転生者

むしろ怒らない校長が優しすぎる

 

125:元引きこもり転生者

校長先生意外とええ先生やで。他の先生がワイを訴えようとしたのをかばってくれたし。

 

126:名無しの転生者

 

127:名無しの転生者

マジで牢獄入れられそうになってたんか

 

128:名無しの転生者

校長先生そいつ衛兵に突き出した方がいいですよ

 

129:名無しの転生者

ほんでイッチの再試験はどうなったの

 

130:元引きこもり転生者

>>129

もうそろそろでワイの番やな

また使う魔法安価で決めるけど校長に念押されたから精神系以外の魔法な

>>135

 

131:名無しの転生者

適当やなぁ…

 

132:名無しの転生者

お金複製の実演

 

133:名無しの転生者

他の受験者の魔力吸い取って試験妨害

 

134:名無しの転生者

会場の全員に【記憶消去】(メモリーイレース)して全てを無かったことにする

 

135:名無しの転生者

【隠形看破】(ピカー)で試験場のハゲ全員看破してヅラ剥ぎ取り

 

136:名無しの転生者

イッチの だいばくはつ!

 

137:名無しの転生者

風魔法で女の子達の服をボロボロにする

 

138:名無しの転生者

水魔法で女の子達をヌルヌルにする

 

139:名無しの転生者

はい

 

140:名無しの転生者

決まったな

 

141:名無しの転生者

前後2つよりはまぁ……マシやな……

 

142:名無しの転生者

イッチまた死にかけてて草

 

143:名無しの転生者

>>137>>138

あのさぁ……

 

144:名無しの転生者

ヅラ剥ぎ取りってどうやんの?

風魔法でふっとばすんか?

 

145:元引きこもり転生者

>>144

打ち消し魔法ならいけるはず。

ワイんとこの国だとヅラって魔道具製らしい(村長に聞いた)。

内側はツルツルやけどヅラに仕込まれた魔法回路のお陰で外れんようになってるんやって。

でも逆に言えば装着者との魔力パスを打ち消し魔法で一時的に切断すればずり落ちるはずや。

ほな行ってくるで!

 

146:名無しの転生者

行ってら

 

147:名無しの転生者

報告待っとるぞ

 

148:名無しの転生者

異世界のヅラってすごいんやな

 

149:名無しの転生者

今更だけど試験で無差別ハゲ晒しの魔法使うってまともじゃないやろ……

 

150:名無しの転生者

最初からまともじゃないぞ

 

    ◆

 

 なんとか自分の再試験を終えた僕は、他のみんなが終わるのを静かに見守っていた。

 

「では次、エイン!」

 

 少し緊張した声色で、試験官がエイン君を呼ぶ。

 

「はい!」

 

 さっきまでの焦りが嘘のように、エイン君は元気よく返事をして試験官のもとへ向かうと、僕たち新入生の方を振り返って、にっこりと笑った。

 

「みんな、さっきはごめん! これから面白いものを見せるから許してくれな!」

 

「試験と関係ないことは話さないように! 使う魔法を宣言して魔法を行使しなさい!」

 

 さらに緊張した声で、試験官が指示を出す。

 

「はい! 打ち消し魔法を使います!」

 

 その一言で、会場に動揺が走った。

 

「打ち消し魔法だと!?」

 

「難易度が高すぎて使える者がほとんどいない魔法じゃないのか?」

 

「何を打ち消すつもりだ……?」

 

「皆さん静かに! エイン君、早く魔法を使いなさい!」

 

 きょろきょろと訓練場を見渡すエイン君は、笑顔で手をひょいと上げる。

 

「えーっと……対象が必要ですよね!」

 

 一瞬、場の空気が凍る。

 

「対象……?」

 

 試験官たちの眉がぴくりと動いた。エイン君は得意げに指を伸ばした。

 

「校長先生! そこの試験官! あと、あの偉そうな人! お願いします!」

 

 一同、視線を向ける。校長は困惑を浮かべつつも一歩前へ。名前を呼ばれた試験官──たしかハーゲン教授は渋々とした足取りで出てくる。問題は『偉そうな人』だった。王国魔法師団と思しき男は怒りを浮かべて動かなかったが、隣の団長らしき人物に目配せされ、しぶしぶ前へ出てきた。

 

「お三方、どうぞこちらへ!」

 

 エイン君はにこやかに三人を中央に並ばせた。

 

「あの、エイン君……なぜ私たちなんじゃ?」

 

 校長の問いに、彼は肩をすくめてニコニコと答える。

 

「そんなの、皆さんが一番よくご存知じゃないですか?」

 

 校長の顔がぴくりと強張る。その視線が無意識に頭の上を泳ぐ。団長がそれを見て、じっと彼を見つめた。

 

「さぁ、いよいよ打ち消し魔法を披露します! 皆さん、注目してください!」

 

「待て、エイン君! それは──!」

 

 校長の制止は届かない。

 

【魔路切断】(パスサンダー)!」

 

「いかん!【固着】(フィックス)……!」

 

 静寂のあと──ズルッ。

 

 地面に滑り落ちるものがあった。カツラだ。校長の頭部は無事だったが、ハーゲン教授と魔法師団の男のカツラが、無残にも地面に転がった。二人が隠していた秘密は、文字通り明るみに出た。

 

 誰もが息を呑む。訓練場が、一瞬で凍りつく。校長は魔法の余韻が残る空気の中、動かず、静かに目を閉じていた。ハーゲン教授は硬直したまま、自身の頭上に手を伸ばしかけて、止まる。魔法師団の男は視線を泳がせながら、まるで何事もなかったように振る舞おうと、無言で一歩下がった。

 

 そして未だ静まり返る試験会場。だがその沈黙を破ったのは、エイン君のやけに素直な、感心したような声だった。

 

「……おお、校長、さすがですね」

 

 その一言で、張り詰めていた空気がほどける。

 

 ハーゲン教授と魔法師団の男は、我に返ったように動いた。

 床に転がったカツラを素早く拾い上げ、手慣れたような動きで頭に被りなおす。何も起きていない。そう言い張るように、二人は真顔を作った。

 

 だが──

 

「あっ、そのカツラ、魔術回路が焼き付いてるので、五分くらいまたないとくっつかないですよ」

 

 ズルッ。試験場の光源が二つ増えた。

 

 駄目だ、もう耐えきれない。

 

 僕の隣で、誰かが「ぷっ」と吹き出した。それを皮切りに、こらえきれない笑いが次々と連鎖していく。訓練場はもう、まともな空気ではなかった。みんな肩を震わせ、腹を抱え、涙を流している。僕も限界だった。目を逸らそうとしても、どうしてもあの二つの滑らかな頭頂部から目が離せない。

 

 その中で、エイン君はいつの間にか僕の隣に戻ってきて、すっと腰を下ろした。

 

「……くそっ、思ったより手強いな。次はもっと上手くやるからな、校長……」

 

 ──え、次?

 

 僕は思わず彼の顔を見た。悔しさに少しだけ得意気な笑みを混ぜたその表情に、僕の笑いも徐々に引いていった。

 

(……もしかして、本気でやってるのか)

 

 そんな考えがよぎったとき、訓練場の中央で誰かが静かに手を上げた。

 

「──試験はまだ続く。持ち場に戻れ」

 

 低く落ち着いた声。それだけで、さっきまでの喧騒が嘘みたいに引いていく。気づけばみんな、椅子に戻り始めていた。僕も慌てて背筋を正し、息を整えた。

 

 笑いの余韻はまだ残っていたけど──試験は、まだまだ続くらしい。

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