白峯 凛は防人となる   作:秋嘉

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様々な方の防人防人達の物語に触発され、自分も防人立体物合同企画「防人全隊招集」にて製作した防人達の物語を作ってみることにしました…!
処女作ですので、拙い箇所もあるかと思いますがよろしくお願いします…!



第一章、五岳時代~初陣直後まで
第一話「白峯」


(――あぁ、またこの夢を見てるのね)

2年前まで通っていた懐かしい教室―神樹館小学校の教室に居て、戸惑っていたが黒板に書かれている日付をみて、そう確信した

黒板に書かれている日付は、7月11日―神樹館の遠足の翌日の日付が書かれている

担任教師が教室に入ってくると、生徒達は雑談を止め朝の挨拶を行う

 

「お隣のクラスの三ノ輪銀さんは、神樹様のお役目の最中に亡くなりました」

「明日、告別式があります。午前中の授業はお休みして皆で参加しましょう」

担任教師から、そう告げられると視界が暗転し、今度は告別式会場の入口付近に立っていた

 

「何で守ってくれなかったんだよ!姉ちゃんを…連れてかないでくれよ!!」

告別式で響く叫び声、母親らしき人物が小さな男の子を制止しようとしているのが見える

「こんなの…神様なんかじゃない!!」

その声が響くと、壇上に居た2人の少女の姿が忽然と消え、再び視界が暗転した

 

次に視界に入ったのは、神樹館の廊下に立っており、教室内を覗くとカレンダーの日付は10月末になっていて、生徒達は登校しなくなった2人を心配してる様子で、1人の女の子が教室から飛び出して先生に話しかける

「先生!鷲尾さんと乃木さんは神樹様の御役目のせいで学校に来れてないんですか!三ノ輪さんみたいに死んじゃっていたり…」

「落ち着いて下さい、白峯(シロミネ)さん…これから話す事は、決して誰にも話さないで下さい。約束出来ますね?」

先生が念押しすると、女の子―白峯と呼ばれた子が首を立てに振る

「…お二人は生きています。が…御役目の都合上、もう神樹館には帰って来ることはありません」

「でも、お別れ会も無く急に居なくなるなんておかしいですよ!」

「そう言われても、既に決まった事です。教室に戻りなさい」

人が変わったかのように、淡々と話す先生に対して抗議をするも聞き入れられず

「…こんな事を許す神樹様なんて…大嫌い」

そう吐き捨てて踵を返すのを見届けると、再び視界が暗転した

 

「ん…」

目が覚めると、いつもの自室でベッドに寝ており、枕元に置いているスマホの画面には[7月17日]と表示されているのを見て小さくため息をつく

(はぁ…去年に続いて、またあの夢を見ちゃうなんて…)

自分自身に少し苛つきながら身体を起こし、リビングへ向かう

「あっ、おはよう凛。ご飯出来てるわよー」

この家に共に住んでいる人物―綾川 冬花(アヤカワ トウカ)が朝食のトーストとベーコンエッグを焼いてお皿に盛り付けてテーブルに置くところだった

「おはようございます。冬花先輩」

「ちょうど起こしに行こうと思ってたのよね。ほら、先に着替えて顔を洗って来なさい」

1年半前に五岳市へ進学する際に、ルームシェアを受け入れてくれた冬花先輩に促され洗面台で顔を洗う事にした

『姉ちゃんを連れてかないで!』

顔を洗ってる間も、夢で見た三ノ輪銀さんの告別式―特に弟くんのあの叫び声が残り続けていて、それと自身への苛つきを一緒に振り払う様に顔を拭いて、寝間着から制服に着替えてからリビングへ向かい、朝食が置かれたテーブルに冬花先輩と向かい合って椅子に座る

「今日も食べられる事を神樹様に感謝して」

「「いただきます」」

食べる挨拶をして、朝食を食べ始める

「今日の予定、覚えてる?」

「はい、この後は駅へ客人を待ち合わせしてから学校へ行き剣道部の練習試合。でしたよね」

「私達はそれでOK。一葉と千秋ちゃんは先に学校へ行って追加の竹刀や防具、木刀とか準備してくれるらしいから、そっちは任せましょ」

2人で今日の予定の再確認をしていると、あっと言う間に食べ終わり食器洗いは私がする事を伝えた

「じゃあ、頼むわね。その間にアタシも着替えてくるから」

そう言って部屋に入っていき、蛇口から水を流しながら食器を洗ってる音だけが聞こえる

(神樹館で大赦の御役目に就いてたあの2人、どうしてるのかな…)

ふと、さっきの夢―告別式の会場で見た黒髪の子と金髪の子、鷲尾さんと乃木さんが今どこで気になったものの、そう考えてる間に食器の片付けまで終わったので、意識を切り替える為に軽く背伸びをしていると冬花先輩から呼ばれた

「凛ー、食器洗い終わった?髪を結んであげるから、こっちに来なさーい」

返事をして部屋へ向かい、冬花先輩にブラシで髪を梳いて貰う

「…いつ触っても、凛の髪って長くて綺麗で羨ましいわね」

「冬花先輩も、もっと髪伸ばしたら良いじゃないですか。もっと長くなっても、先輩の赤い髪なら似合いますよ」

「あー…アタシ自身が伸ばすのは違うのよ。こう…人の髪を触りたいって言うか何て言うのか…ね?」

肩に掛かるかどうかと言うサイズの髪を弄りながら、私の長い銀髪を側頭部にサイドテールに結い、鞄を取って玄関へ歩いて行く

「さっ、そろそろ行きましょ!」

先に冬花先輩が出て、私も後を追いつつ誰も居ない室内へ振り返り「…行ってきます」と呟いて玄関を施錠して追いかけた

 

家から15分程歩いて五岳駅に着いて暫くし、象頭行きの電車が駅に着きドアから2人の学生が降りてくる

1人は金髪ツインテールで左目を眼帯で覆っていて、もう1人は額を出したツインテールの子だ

「初めまして、五岳東中学の綾川冬花です。勇者部さんのお噂は兼々…」

「同じく、五岳東中学の白峯凛です」

「初めまして、讃州中学勇者部の犬吠埼風です。んで、こっちが」

「三好夏澟よ」

双方、軽く自己紹介をしてから冬花先輩を先導に犬吠埼さん・三好さん・私の順で学校まで歩き始める

「今回は依頼を受けて頂き、ありがとうございます。練習試合でも、我々内部の人だけでは限界がありますし、よその剣道部にウチの剣道部の実力を直接知られたくはありませんでしたので、受けて頂けて本当に助かりました」

ちょっと雑談をしながら学校に到着し、先に荷物を置ける場所として部室へ案内をする

「ここが、アタシ達が普段使っている部室です。自由に使って下さい」

「出水さん、居ますか?お客さんが来られました」

「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」

ドアをノックしたら中から開けられ、金髪のツインテールを垂らしち人物―出水 千秋(イズミ チアキ)が深々と頭を下げて挨拶をする

「こちら、出水千秋ちゃん。ウチの期待の新入りの1年生です」

冬花先輩が出水さんを紹介し、勇者部さんからも軽く自己紹介をされてから、出水さんに2人の案内役を引き継いで貰って私と冬花先輩は一足先に武道場へ向かった

 

「今日も、我々の無茶振りを聞いて貰って悪いッスね」

「かまへんかまへん。ウチらも、他で色々と助けて貰ってるからな」

武道場に入ると、ちょうど関西弁と言う方言を喋る黒い短髪の人物―桜井 一葉(サクライ カズハ)と剣道部の部長さんが話をしていた

「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

「おっ!自分等も来よったな。ほな、ボチボチ準備始めよか」

桜井先輩は軽く背伸びをして、剣道部員達と共に防具や竹刀を保管室から出してくる

「失礼します!勇者部さんをお連れしました!」

ちょうど準備が終わったタイミングで出水さんと勇者部の2人が剣道場に入ってきて、剣道部の部長さんと挨拶にしてすぐに練習試合が始まった

勇者部の2人と何人かが打ち合ったものの全戦全勝をしていた

「流石、噂に違わず強いッスね…勇者部さん達は」

犬吠埼さんの方は片目が視えていないにしてはかなり強く、三好さんに至っては難しい二刀流で戦って勝ち続けている

「…三好さん、良ければ息抜きとして木刀で一戦お願い出来ますか?」

「ちょっと夏凜ー、アンタ強いんだからハンデでも付けてやりなさいよ」

「せやったら、こんなんどうや?」

冬花先輩が三好さんに試合を申し込むと、犬吠埼さんがハンデを設ける提案をしたのに桜井先輩が乗っかって、鞄から何かを取り出す

「アイマスクと耳栓…?流石に無理じゃないですか?」

「いや、流石に片方だけやって。…で、どっちにされます?」

両方を差し出して三好さんに選んで貰うつもりらしいが、三好さんは両方を手に取った

「アレで本当に勝つ気あるの…?」

「本気ですか…?耳栓だけでも外した方が…」

「私は両方で構わないわ。勝つもの」

周りの声を気にせずに、耳栓とアイマスクを装着を始める

「いつでも良いわよ」

三好さんの言葉を合図に冬花先輩が駆け、両手に持つ木刀を同時に振り下ろす…が、三好さんは分かっていたかの様に弾き、自身も反撃する

2人の攻防を周りで見ていた人達も三好さんのレベルの高さを感じ、ざわつき始める

「あれ、本当に見えてないの…?」

「これで!」

「気配で、見えてるのよ!」

一進一退の攻防が続き、冬花先輩が左手の木刀を投擲する奇襲を敢行するも、それも弾かれた上に距離を詰められ木刀を弾き飛ばされて決着となった

「そこまで!勝者、三好夏澟!」

「完成型に、これくらい朝飯前よ」

手応えを感じたからか、三好さんが戦闘態勢を解きアイマスクを外すのを見た剣道部員達が三好さんに殺到し、今のコツや普段の鍛錬内容等を質問攻めを始めた

「あの状態で、どうやって攻撃を見切っていたんですか!」

「普段は、どんなトレーニングを?」

三好さんが、一つ一つ質問に答えてアドバイスをしているのを見つつ、私と桜井先輩は冬花先輩の元へ近寄る

「まさか、冬花が負けるなんてな」

「三好さん、前よりも強くなってたわ。ハンデ無しだったら一瞬で負けてたでしょうね」

「前?…今日が初対面じゃなかったんですか?」

「2年前に、ちょっとね…ところで、千秋ちゃんは?」

過去にも会ったことがある口ぶりだったので聞いてみたものの、答えてくれず話題を変えられた

「あぁ、千秋やったら…ほら、そこで固まっとるで」

桜井先輩が指差す先に、恍惚とした表情を浮かべて三好さんを見つめている出水さんが居た

「三好様…素敵…」

「…そっとしておいてあげましょうか」

その後、勇者部さんとの練習試合により熱が入ったようで、非常に充実した練習が出来たみたいでお礼にお菓子の詰め合わせを受け取り、この日は解散となった

 

勇者部さんとの練習試合から数ヶ月後、突然家に大赦の神官様がやって来た

「今回は、あなた達“4人”に新たな御役目に就いて頂きたくお願いしに来ました」

「御役目って、また勇者様の選抜ですか?」

御役目?勇者様?2人は一体何を言っているのだろうか

「違います…が、今回の御役目は危険を伴います」

明日の朝に返答を聞きに来ます。と言いながら連絡先を書いた紙を置いて去った神官様の後ろ姿を見送るしか出来ず、完全に姿が見えなくなってから冬花先輩が口を開いた

「…凛、今すぐ一葉と千秋ちゃんも呼んでくれる?一葉には【新たな御役目の為に大赦神官が来た】って言ったら伝わるから」

いつになく真剣な声色で指示を出してくるので、それに従って2人へ連絡すると30分ほどで桜井先輩が、更に15分後に出水さんも到着した

「大赦神官が御役目伝えに来たってホンマか!?冬花」

「綾川先輩が非常呼集をかけられるなんて、どうしたんですか!?」

「詳しく説明はしてくれませんでしたが、大赦の神官が来て新たな御役目に就いて欲しい…と」

「あの、“新たな”ってどういう事ですか?わたし達、御役目なんて何も知りませんが…」

おずおずと出水さんが挙手して疑問を尋ねる

「その疑問は尤もね。それについては―」

「それは、ウチの口から説明するわ」

冬花先輩の言葉を遮って桜井先輩が説明を始める

自分が大赦との連絡役で、大赦の御役目に選ばれる可能性がある生徒を監視するためのグループとしてお助け部が設立されたこと、御役目は讃州中学の勇者部が選ばれたこと、大赦にとって私達は既に用済みであり解散の機会を窺っていた…と

「2人に隠し事しとったことは謝るわ…スマンかった」

桜井先輩が頭を深々と下げ誠意がこもった謝罪をした

「アタシと一葉は、この御役目を受けるつもりよ。2人は、このまま学校で―」

「私も、この御役目を受けます」

冬花先輩の言葉を遮って、私は御役目を受ける事を伝えた

「凛…無理して付いて来なくて良いのよ」

「いえ、自分の意志で決めました。私も行きます…それに―」

大赦の…神樹様の御役目に参加出来れば、あの3人が何をしていて最後に何があったのかを知れるかもしれない

「わ、わたしも一緒に行きます!」

「千秋!?」「千秋ちゃん!?」

私の言葉を遮って、出水さんが行く事を表明したことに2人が驚きの声を上げる

「わたし1人だけ仲間外れなんて嫌です!それに、大赦からの御役目って事は三好様と一緒に並べるんですよね!」

興奮しているのか、身体を前のめりに倒しながら目を輝かせて話す

「千秋ちゃん落ち着いて。…とりあえず、4人共参加の方向で神官様に伝えるわね」

冬花先輩が折れて出水さんの参加を認めて、神官様が置いて行った紙に書かれていた連絡先へメールを送るとすぐに返信が帰ってきた

「早速返事が来たわ。えっと…『御役目参加のご決断、ありがとうございます。詳細を説明しますので、後日支給される制服を着用し大束町ゴールドタワーへお越し下さい』…ですって」

「大束町って言うたら、ここから電車で30分位の街やけど…ゴールドタワーかいな…確かに、あそこは大赦が管理しとるはずやし、秘密の話をするならうってつけな場所やろな」

「制服を支給って事は、私達は転校…か」

ゴールドタワーについて桜井先輩が軽く説明をしているのを聞いて、私は誰にも聞こえない程度に呟いた

 

その後、4人で少し話して解散した翌朝には大赦からの荷物が到着したので中を確認すると、1枚の手紙と緑の襟が付いたワンピースタイプの制服が入っていた

手紙には集合時間が書かれており、これを着て直接向かえと言うことらしく冬花先輩と一緒に着替えて自分達の身だしなみを確認しあう

「うん、良い感じね。似合ってるわよ」

「ありがとうございます。先輩も似合ってます」

赤いネクタイを締めて2人揃って玄関へ向かい靴を履く

(それじゃ、行ってきます)

1年と半年程を2人で過ごした家に別れを告げて、ドアを施錠して私達は駅へ歩きだした

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