白峯 凛は防人となる   作:秋嘉

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お待たせしました!
第二話書き終えましたので、投稿致します…!


第二話「防人」

「皆、ありがとうね。アタシのワガママに付き合って貰っちゃって」

「これくらい、ウチはかまへんよ~。でも、後で何か奢ってや~」

大赦からの召集に応じる為に大束駅で電車を降りた際、冬花先輩が「寄りたい場所がある」と言ったのでゴールドタワーと正反対の場所にある神社に来て、参拝を終えて今は社務所と本殿の中間にある石段に座っている

「2年前、アタシはここで勇者様を選ぶ試験を受けていたの」

「綾川先輩は…そこで三好様と?」

誰に促された訳でもなく冬花先輩が呟き、それに出水さんが質問をする

「ええ、ここで何人も勇者候補としてお互いにしのぎを削っていたわ…もっとも、アタシは途中で地元に帰らされちゃったから、誰が最後まで残ってたのか知らないんだけどね…それでも、ここに来れて、気持ちの踏ん切りがついたわ」

冬花先輩が立ち上がり、それに続いて桜井先輩も立ち上がる

「まだ時間に余裕ありそうやし、タワーに行く前にもう一カ所どっか寄ってくか?」

「はい!わたし、海が見たいです!」

桜井先輩の提案に対し、出水さんが真っ先に声を上げる

「確かに、海なんて微妙に遠くて見ること殆ど無いものね…確かに良いかも」

「ウチも賛成や。凛はどないや?」

「私も賛成です」

神樹館時代は、たまに見に行っていたが五岳東中学へ進学する事になった後は引っ越しだとかで忙しくて見れていなかったのを思い出し、提案に賛成してゴールドタワーを一旦通り過ぎて近くの臨海公園に近づき、瀬戸内海とその先にそびえ立つ白い壁が見えると、出水さんが一目散に走り出した

「わぁ~!せんぱーい!海ですよ!海!」

「今年も去年も、皆揃って海なんて来ぉへんかったからなぁ」

「お弁当を持ってピクニック…なんて、1回はしても良かったのかも」

桜井先輩と冬花先輩が喋りながら出水さんを追いかけるのを見つつ、私は視界右側に見える途中でねじ切られた様に崩壊している大橋がよく見える位置へ歩く

それに気づいたのか、3人も私の隣へ移動してきた

「白峯先輩、一体何を見られているんです?」

「2年前に事故で崩壊した大橋やな。当時、ニュースは見たことあるやろ?」

「確か…行方不明者が4名、重軽傷者が多数出たってニュースだったわよね」

そのニュースは私も見たことがある。2年前の10月、大橋で未曾有の大事故が発生したとテレビに流れ、同時に発生した山火事の影響もあり大人達は大騒ぎしていた記憶がある

「凛は大橋市の生まれだったわよね…大丈夫だった?」

「私の家は大橋から遠かったので、影響はそれほどありませんでした。行方不明者の捜索で騒がしかった記憶もありませんし…」

「あそこは大赦が管理しとる場所で、行方不明者の続報も無かったんは、その人らも大赦関係者やったからかもしれへんな…ウチの親父が巻き込まれてへんかったら、ええんやけどな…」

「え!?桜井先輩のお父さんって、大赦の関係者だったんですか!?」

桜井先輩の言葉に、出水さんが驚きの反応を見せる

「ん?あぁ、言っとらんかったか。そん繋がりがあったから、ウチが大赦との連絡役になったんや。10年くらい会ってないから顔も知らへんけど、どっかで生きとるんやったらそれでええんや…さてっと、ボチボチええ時間やし、そろそろタワーに行こか」

笑いながら質問に答えつつ、桜井先輩を先頭にタワーに向けて歩き出した3人に私はついて行きつつ、振り返ってもう一度大橋を見る

(大橋は大赦が管理していて、崩壊を境にあの2人は神樹館に来なくなった…神樹様の御役目は大橋でしていて、何かが起きた?)

そう思いながら、3人の後を追いタワーへ歩き続けた

 

ゴールドタワー入口に神官様が居たが、私達の制服を見て「展望台に皆さんお集まりしています。早くお行きなさい」とだけ喋り、私達をエレベーターに乗せる

タワーの中層は鉄骨のみで構成されているので海や壁がよく見え、出水さんは景色に目を輝かせ、冬花先輩と桜井先輩は上に何があるのかと考えているのか険しい表情を浮かべているのが見えた

上階にある展望台に到着すると既に何人もの同年代の少女が待機しており、皆が神官様の到着を待っていた

「…何人か、顔を見たことのある人が居るわね」

「つまり、元勇者選抜候補の子が集められとる…って訳かいな」

冬花先輩が室内を見渡し、勇者選抜試験に居た子を見つけたのだろうか、その事を伝えてくれる

「全員、揃ったようですね」

壇上に1人の女性神官様が来たので、全員雑談を止めて神官様を注目し始める

「今集まって貰った人達は、全国でも勇者候補生としての適正が高かった者達です。あなた達には、その素養を活かして【ある御役目】に務めて貰いたいのです。今からお見せするのは、世界の真実です」

それから、神官様の背後のモニターに映された映像には、赤くなった空に白くてウネウネと動く生物が無数に飛び、地を覆い尽くしている映像が映された

(何の冗談なの…!?これは…)

私だけでなく、周りの子達も困惑をしているようだった

「壁の外…?何を言ってるの…?」

「壁の外は、致死性のウイルスで滅んだと習っています!これが、ウイルスの仕業だって言うんですか?」

金髪のお嬢様っぽい髪型の少女が神官様に疑問を投げかける

「…人類が隠してきた、真実をお話ししましょう」

神官様は、そう言うと約300年前の始まりから勇者様の戦いの歴史、四国内でのみ生きる事を赦されている事を話す

「ちょっと待って!私達に、そんな化け物と戦えって言うんですか!無理ですって!!」

「正式に勇者でもないのに…」

「こんな事だって知っていたら、私は訓練を頑張らなかった!」

「勇者様って、もっと神事に携わるものだって思ってた…」

「これが…隠されてきた神事」

最初に拒否した1人をきっかけに、次々と不満が噴出してくるもパーカーに手を入れた銀髪の子の一言によって一斉に静まる

「わ、私、頭痛が痛くなってきたので帰ります」

そう言って退室しようとした子を、神官様は「加賀城さん」と呼びかけて制止して私達全員を見る

「皆さんも、バーテックスとの戦いは勇者達が終わらせてくれました。あなた達【防人】には、これからの世界を復興する為に外界の調査をお願いしたいのです」

戦いは勇者達が終わらせてくれた――そして、防人とは?気になる点は非常に多いが、神官様による話は終わり、各々荷物を自室に置いてから食堂へ向かうこととなった

 

「空いてる席は…ここで良いかな」

泣き喚いている人が居るからか、シュンと静まり返った食堂に4人揃って到着したものの、私だけ先に受け取れてしまったので4人分の座席を確保すると、冬花先輩がラーメンを持って歩いてくる

「おまたせ。あの2人はもうちょっと遅れそうね」

桜井先輩と出水さんは、何か特殊な料理をお願いしていたようで他の子達に次々と順番を抜かれていたが、ようやく受け取れたようでお盆に乗せてこちらへ歩いてくる

「待たせたな」

「お待たせしました!」

「今、何月だと思ってるんですか…季節的にどうなんです…?それ」

それぞれ[素麺]と[冷やし中華]を持って来て椅子に座ったので、一応ツッコミを入れておいた

「ん?美味しいんやし、別にええやろ?」

「そうですよ、好きな料理に季節なんて関係ないんです!」

付き合いきれない…そう思って冬花先輩に話を振る

「……冬花先輩、確か勇者候補生が居たって話でしたが、誰なんです?」

「ん?そうね…例えば、あの神官様に真っ先に反論していた金髪の子…弥勒さんもだし、今その人と話してる黒髪の子…楠さんもそうね。今パッと紹介出来るのは、その2人くらいかしら」

2人とも強かったわよ。と、ラーメンを啜りながら、答えてくれる

「その楠に泣きついとるの…確か、加賀城って言われとったか?まさか、神官に顔と名前を覚えられとるとはな…」

「もう呼び捨てで読んでるのね…大丈夫なの?まぁ、アタシ達をスカウトしたのは大赦なんだし、情報は把握済み…って訳なんでしょうね」

素麺を啜りつつ桜井先輩も疑問を投げ、冬花先輩が答えつつ呼び捨てしてるのを咎めると「本人に怒られたら直すわ」と楽観的に返してちょっと呆れられてる

「…さ!これからアタシ達の素養を見るって話だし、午後からも頑張るわよ!」

「「はい!」」「あいよ!」

冬花先輩の気を入れ直す掛け声に応える様に、私達は気合の入った返事をして食堂から出ていった

 

午後からは、タワー付近の施設ではなくバスに揺られて【讃州サンビーチ】へやって来た

「あなた達は、ここで各々の実力を測るテストを行います。先程渡したスマホからアプリを起動して下さい」

神官様に促され、私達はスマホを取り出しインストールされていたアプリを起動すると、光が溢れて私を包む

(何…!?)

意識した次の瞬間には光が収まっており、手を見ると先程まで着ていた制服とは違う特殊な装束に変わったうえに、身体の奥底から今までに感じた事の無い力が湧き上がってくるのを感じる

「これが…勇者様達と同じ力…?」

ポツリと言葉をこぼして周りを見ると、仲の良い子同士で盛り上がってる者、落ち着かずにそわそわとしてる者、湧き上がる力に浸っている者、何かが不満なのか目が鋭い者―様々な反応を示している

「凄いもんやな!これは!」

「これが…三好様も感じているお力…!」

桜井先輩と出水さんが興奮気味に駆け寄ってきて話してくる

「2人とも落ち着きなさいって…まぁ、アタシにもその気持ちは分かるけどもね」

落ち着いてる雰囲気を装いながらも、上機嫌に冬花先輩も寄ってきたタイミングで神官様が言葉を発する

「それが、皆さん防人の力となる戦衣です…が、見ての通り、今はまだ個体番号も武器もありません。今回のテストで皆さんの武器と番号が決まりますので、決して手を抜かない様に」

説明が終わり、まずは護盾を用いた試験をするらしく、2人一組を作り砂浜の端から端まで相方に被弾させずに走りきる事らしいが、道中バレーボールやら何やらが飛んでくるので防ぎながら進む様に言われた

「ちょっと、一葉!盾を振り回してないでちゃんと守っ―うわぁ!?」

「んなこと言われても…バリアが全く出んのやからしゃーない、やろ!」

桜井先輩は、盾を振り回して全てのボールを打ち返しながら進むせいで、後ろの冬花先輩に盾がぶつかりそうになりながら走って行く

「桜井先輩、何でバリアを展開しないんでしょうか…?」

「さぁ…?」

「次の2人、始めて下さい」

先輩達2人の試験を見終え、私と出水さんのペアも神官様に促され走り始める

「出水さん、私の後ろに!」

「はい!」

出水さんが後ろに付いたことを確認し、バリアを出せるだけ出して走る

(出せたのは2枚だけか……にしても、砂に足を取られて走りにくい…!)

ただでさえ走りにくい砂浜で、身の丈程ある大きな盾を構えながら全力疾走しているせいか、時折転けそうになりつつも何とか走りきった

「はぁ…はぁ…」

(こんなに大変だなんて…)

その後は、もう一人に盾を渡して同じ様にボールを防ぎながら走る

私達4人の中で1番バリアの展開数が多かったのは、以外にも出水さんだった

「やるな~、千秋!一気に3枚も出して驚いたわ!」

「アタシも一葉も、1枚すら出せなかったのに…ホントに凄いわ」

「えへへ、上手く出来て良かったです!」

私以上に枚数を出しても、普段通りの笑みを浮かべつつも恥ずかしそうに笑う

 

「うわーーー!!怖い怖い怖い!楠さん助けてー!」

「加賀城さん、あなたが盾を持ってるんだから後ろに隠れずに前に出て!」

勇者候補生だった楠芽吹さんと、展望台で神官様から逃げようとしていた加賀城雀さんが組んでいたみたいだが、何故か盾を持っている加賀城さんが楠さんを盾にして進もうとしているのを横目に、私達は次の射撃テストを受ける待機位置へ歩き出した

 

次にする銃剣での射撃テストは、先程のペアを解消して1人づつ行われるらしい

本物の銃剣を使うと流れ弾で周りに被害が出る事が想定されるので、レーザーポインターを用いた競技用ライフル――ビームライフルと言う物を使い、所定位置から動かずにバレーボールやフリスビィを撃つ…と、言うテストらしい

名前順に冬花先輩(アヤカワトウカ)出水(イズミ)さんと進み、桜井先輩が射撃位置から帰ってくる

「今のところ、楠さんが首位でアタシは一応上位勢って感じかしらね」

「う~ん、思ったより難しいですね…わたし、全然当たらなかったです」

「クッソ、冬花よりも成績良い自信あったんやけどなぁ…」

3人の命中率は、冬花先輩が70%、出水さんが30%、桜井先輩が60%と言ったところで、楠さんはほぼ満点を出していた

「次、白峯凛さん。前へ」

神官様に促され、射撃位置へ向かう

(私だって…!)

自分なりに集中し撃つ。が、レーザーはボールを擦る程度で1つたりとも直撃せず終わってしまった

「ぶっははは!一発も当たらんなんて、何をどうしたらそうなるんや?」

「凛…帰ったら何か奢ってあげるから、そう気を落とさないで」

「白峯先輩、わたしもダメダメでしたから…」

桜井先輩には笑われ、冬花先輩と出水さんからは同情された

 

「まぁ、私にかかればこの程度楽勝ですわ」

私が慰められてる間に、終盤辺りの人――弥勒夕海子さんが射撃テストを終えて戻って来て、次の人が射撃位置に行くタイミングだった

「…」

銀髪の子――山伏さんは何も喋らず的確に当て続け、最終的には上位5位に入る好成績を出して戻ってきた

普段の無表情を一瞬だけ崩し、「フッ…」と笑った様に見えたが、すぐに普段の雰囲気に戻った様に感じた

 

最後に行う試験は、銃剣術を用いた近接戦能力の確認らしく、全員一斉に動きを確認するらしい

「はっ!やぁ!」

「っらぁ!」

「えい!たぁ!」

これは、勇者候補選抜試験に参加していた人が有利みたいで、私を含めた素人とは動きが違うように見える

中でも、楠さんの動きは頭一つ飛び抜けて良く、まず間違いなく最優秀なのは彼女だろうと言うのが分かる

(楠さんも冬花先輩も凄い…!)

こうして、この場所で行う試験は全て終わったようで、私達全員ゴールドタワーへ帰ってきた

 

タワーに戻ってくると、再び展望台に集められ私達全員に番号を振ると伝えられた

「成績が優秀だった順に番号を振っていきます。8番までは隊の指揮官として、それ以降は同時に班も伝えます。1番、楠芽吹」

その後、2番、3番と呼ばれていき、冬花先輩が7番

、桜井先輩が17番、出水さんが22番、私が26番と続き

「32番、加賀城雀、第一班へ。班分けは以上です…10日後、あなた達には初めての御役目として壁の外へ出て貰います。それまで、訓練に励む様に」

奇跡的に、私達の五岳東中学組4人で第七班を結成することとなり、御役目に備えることとなった

 




途中で訪れた「讃州サンビーチ」は、鷲尾須美の章にて3人が特訓に訪れた場所です
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