白峯 凛は防人となる 作:秋嘉
目標は、今年中に二章完結…行けると…良いな…
私は夢を見ていた
それは、いつも見ている様な過去の記憶を辿るものではなく、ただ深い霧の中に立っていた
(ここは…?いつもと違う?)
霧で何も見えないなか、私は手探りで歩き始める
しばらく歩くと、霧の中から冬花先輩が現れた
「先輩…?」
「凛…アナタは足手まといなの。もう、何ましなくて良いわ。だから、アタシとはここでお別れよ」
そう言って私に背を向け霧の中へ歩いて行く
私は、その背だけ追って懸命に走るが一向に前へ進めず、距離がどんどんと離されていく
「待って下さい!私は…私は、まだやれます!だから…私を――置いていかないで!」
そう叫びながら手を伸ばすと、そこにはいつもの私の部屋の天井が見えていた
(夢…?でも、私のせいで2人が辞めちゃったから、本当に先輩に捨てられても…)
無意識の内に目からこぼれ落ちた涙を拭っているとドアがノックされる
「凛、起きてる?」
冬花先輩の声だ。そう思いベッドから起き上がりドアを開ける
「おはよう。…って、どうしたの!?その目…」
「ちょっと、悪い夢を見ちゃいまして…」
「…凛、久しぶりに髪を梳いてあげるわ。おいで」
そう言って椅子まで歩き、トントンッと座面を軽く叩き私に座るように促す
「ねぇ、今年の正月の事って覚えてる?」
私の髪をブラシで梳かしながら優しく語りかけてくる
「アタシね、あの時にあなたのお父さんに会ってきてたの。あなたは行かなくても良いって言ってたけど、大切な子供を預かるんだから直接顔を合わせておくべきだって考えたのよ」
ブラシを持つ手を止め、一拍置いてから続きを話す
「…そうしたら、一言【好きにしなさい】ってだけ言われたの。あの時は言葉通りの意味だって思っていたけど、昨日の話を聞いて理解したわ。あれは、あなたの事がどうでも良いって意味だったのね…」
(やっぱり…変わってないんだ、あの人は…)
知っていた様な、それでも少しは残っていた期待すら裏切られて残念な様な、そんな複雑な心情の中、先ほど見た夢のことを話す
「…先輩が私をいらないって言った夢を見たんです。手を伸ばしても届かなくて、独りになっちゃう夢を…」
「…血が繋がってなくても、あなたはアタシの大切な妹よ。だから、アタシからあなたを拒絶なんてしないわ」
そう言いながら制服のポケットをから何かを取り出して私の手に握らせる
手を開くと1つの南京錠があり、裏返すと[桜井一葉][出水千秋][綾川冬花]と3人の名前が書かれていた
「それ、あげるわ」
「これは…?」
「防人の願掛けってのらしいわ。昨日、一葉が出て行く前にアタシの部屋の前に置いていったらしいの。喜びも不安も、全部纏めて班の皆で共有して形に残す…ってヤツらしいわ。離れちゃっても、アタシ達4人はずっと一緒よ」
(ずっと一緒…か)
話を聞きながら、お父様が集めている西暦時代の資料の中で、そんな友達の事を表した言葉があったことを思い出す。確か――
そう思考を巡らせている最中に、突然ドアがノックされ開かれた
「白峯さん…綾川さんもここに居ましたか、朝食の前に伝えることがあります。展望台へ向かいなさい」
入ってきたのは、いつも私達の監督をしている神官様だ。全員の部屋を回っているのか、伝えるだけ伝えると私達の返事を聞かずに次の部屋に行き、同じように伝えている
「何でしょうか…?」
「とりあえず、アタシ達も行きましょっか」
冬花先輩が先に部屋を出て、私も受け取った南京錠を握り締めて先輩に続いて展望台へ向かった
展望台に入ると既に20人以上は待機しており、その内の4人は防人隊の制服を着ているが見たことの無い顔だった
私達に遅れて楠隊長が到着したのを確認してから、神官様が口を開く
「今日から彼女たちが新たに防人の御役目につきます」
そう言って宿舎の空いている部屋を自室とするように告げる
(そこって、出水さんと桜井先輩の部屋じゃ…)
御役目を辞退した人が使っていた部屋と防人番号をそのまま引き継ぐ…と言うことなのだろう
「連絡事項は以上です。では、朝食を食べた後から授業を始めます」
それだけ言うと、今紹介した4人と共に先に展望台から退室していった
午前の一般授業が終わり、午後からの訓練に備えて食堂でお昼ご飯を食べる
いつも通り私はうどんを、冬花先輩はラーメンを受け取り椅子に座る
「アタシ達の誰かがお役目から抜けても、また別の誰かが新しく入る…か」
誰に向けてでもなく、冬花先輩がポツリと呟く
私は、うどんを啜りながら考える
(私達全員、掃いて捨てるほどある雑草みたいに大赦から思われてるんだ…)
出水さんみたいに途中で御役目を辞めたいと言い出す人が出てくる事も、大赦には想定内だったのだろう
だから、いくらでも補充要員を呼ぶことが出来る…そう考えていると隣から声がかけられた
「隣座らせて貰っても大丈夫かな?」
声のした方向を見ると、朝に顔を合わせた4人の内の2人がお盆を持って立っていた
「どうぞ」と冬花先輩が了承し、それを聞いた2人はお盆を机に置いてから敬礼をする
「申し遅れました、本日付で防人隊第七班へ配属となりました、“佐倉あやめ”と――」
「同じく、“春日由良”であります!」
2人が名乗り、冬花先輩も敬礼を返してるのを見て慌てて私もそれにならう
「防人隊第七班、班長の“綾川冬花”よ」
「“白峯凛”です」
お互いに敬礼を解き、2人が着席する
「綾川さんに凛くんだね、よろしく頼むよ。同じ班になったんだし軽く自己紹介するよ、ボクの名前は佐倉あやめ、玉藻市出身で誕生日は3月10日の3年生だ。7月までは大赦で戦衣の試験をしていたよ」
「自分は春日由良であります!大束町出身で誕生日は12月8日の2年生であります!ここに来たのは一昨日が初めてでありますが、誠心誠意頑張るであります!」
佐倉先輩を一言で表すなら【女の子だけども王子様】と言う表現が合っている感じで、格好良い雰囲気を感じる
春日さんの方は、現代に珍しい褐色の肌をした子で古風な軍人みたいな喋り方をしていて、あんまり見ちゃいけないものの、私と同じ中学2年生とは思えない大きさの胸をしているとしか言いようがない…
そんなことを考えていると、2人へ冬花先輩が話題を振る
「2人は平気なの?その…世界の真実とか聞いて…」
「…正直、世界の真実については、未だに信じ切る事が出来ないけどね。壁の外は致死性のウイルスではなく、天から飛来した化け物によって滅ぼされたなんて…事実は小説より奇なり。なんて言葉を今ほど実感したことは無いね」
「正直、自分もまだ実感が無いであります…ですが、御国の為に御役目に尽くす覚悟は自分も皆さんと同じであります!」
2人は世界の真実を知ってなお、御役目から逃げる気は無いらしい
(2人とも…特に春日さんは、もう覚悟が出来てるんだ…)
そう思っていると、ボソッと冬花先輩が呟く
「…“ニイタカヤマノボレ”」
「?ニイタカヤマ…?」
「そんな山、四国にあったかな…」
「…!“ヒトフタマルハチ”!」
私と佐倉先輩が目を合わせて考え込んでいる間に春日さんが答えて、そのまま春日さんが言葉を続ける
「“皇国の興廃、この一戦にあり”」
「“各員一層奮起せよ”!」
冬花先輩が答え、周囲が静寂に包まれたと思ったら、突然2人が拳を強く握り始めた
「まさか、こんな所で同志に会えるだなんて思ってもなかったわ!」
「同じくであります!国防の同志に出会えるとは!」
国防の同志、という言葉で思い出した
確か、この2つの言葉は神樹館時代に授業で西暦時代を勉強した日のお昼休みに、クラスが違うのに鷲尾さんが教室を訪れて、授業の補足としてみっちりと解説していた際に出てきていたはずだ
確か2個目の言葉は、東郷…何て名前だったっけ?そんな名前の軍人さんが言っていた言葉だって熱弁してた…様な気がする
「これは…もう、何も聞こえてないだろうね…」
困惑してるような、呆れてしまっているのか、佐倉先輩がそんな声をこぼして自分の昼食のから揚げ定食を始める
「神樹館!それって先代の勇者様が通っていた学校ですよね!」
珍しく国土さんが大声を出し、私は驚いて国土さんが居る楠隊長のグループの方を見る
どうやら、山伏さんも私と同じく神樹館に通っていたらしく、それを知った楠隊長から先代勇者様について質問攻めされていた様だが、何も答えない間にチャイムが鳴ってしまった
「私達も行かないと…」
「だね。でも、まずは…この2人を何とかしようか」
未だに自分達の世界に浸っている2人を何とか引き剥がして訓練所へ向かい、持久力の訓練を行ってこの日は解散となった
翌朝、ゴールドタワー内食堂のカウンターで朝食のうどんを受け取り、空席を探していると机に突っ伏している冬花先輩と春日さんを見つけた
「どうしたんですか?ラーメンとパスタ、冷めちゃいますよ」
隣に座りながら声をかけると、冬花先輩が何も言わずに1枚の書類を出してきた
「外出許可申請書?讃州市に?」
讃州市と言えば、勇者様達の住んでいる場所だったはずだ。
「私達防人は、勇者様との接触が禁止されていたはずですが…」
「理由の方を見て欲しいのであります」
指摘に対して春日さんが突っ伏した状態のまま口を開く
「?理由ですか?…[国防仮面に会う為]…本気ですか?」
そう問いかけると2人とも沈黙してしまった
「私、違う所で食べてきますね」
「わー!待って欲しいであります!せめて、自分達の話だけでも聞いて欲しいのであります!」
バカバカしくなり席を立つと、春日さんが身体を起こして、すがり付くかの様に両手を伸ばして引き留めてくる
「…話を聞くだけですよ」
「おや?第七班の3人が揃ってるなんて奇遇だね、ボクも相席させて貰っても大丈夫かな?」
引き留められ、観念して椅子に座り直したタイミングで、親子丼が載ったお盆を持った佐倉先輩が現れた
「佐倉殿にも、ぜひ聞いて欲しいのであります!」
さっきまでと打って変わって目を輝かせながら、座りやすい様に佐倉先輩の椅子を引き、それに対し佐倉先輩は「ありがと」と答えて着席する
「それで…国防仮面さん?は、ご当地ヒーローみたいな人なんですか?」
「それは…話すよりも、この動画を見て貰った方が早いと思います」
私からの問い掛けに対し春日さんはスマホを机に置き、皆が見える様にしてから動画を再生させた
『国を護れと人が呼ぶ!愛を護れと叫んでる!憂国の戦士、国防仮面!見参!』
「この人が…国防仮面さん?」
背丈から見るに、中学生くらいと思われる女の子が古めかしい軍服の様な服を着て塀の上に立っている
「そうであります!人々が悪の脅威に晒された時、出来るだけ駆けつけてくれる救いの―」
「国防仮面さんか…で、どうしてキミ達は彼女に会いたいんだい?」
ガタッと音を立てる勢いで急に立ち上がり、拳を握りながら熱弁し始めた春日さんを制して佐倉先輩が疑問を尋ねる
「自分と綾川先輩は、偶然にも似た趣味嗜好をしていたのを知って意気投合をしたのであります…が」
「…今まで居なかった似た話題で盛り上がれる仲間が出来て舞い上がっちゃってたのよ」
春日さんが座り直す向かい席で、冬花先輩が顔だけ起こして続きを話す
「で、そこに国防仮面なんて名乗ってる人が讃州市に居るなんて記事を見ちゃったものだから[この人も趣味仲間に入れなければ]って使命感が出ちゃったのよ」
「そして、行こうとして外出許可申請書を神官殿に提出したら、『そんなことに意識を向けずに訓練を励みなさい』だとか『そもそも、今日は皆さん御役目に出る日です』と言われ不承認…で、今に至るであります」
そう言うと2人揃ってまた口を開かなくなってしまった
「神官様にそう言われてしまったのでしたら、諦めた方が良いのでは?」
どうすることも出来なさそうなので、バッサリ切り捨てる事にした
「酷いであります!あんまりでありますぅー!」
鬼!悪魔!と続けて言ってきてるのをスルーして、話を聞いてる間に食べ終わった食器を持って返却口へ持って行く
「でも、国防仮面さん…か…昔、どこかで聞いたことあったような」
神樹館時代か、それよりも前だったか定かでは無いが、国防仮面と言う名前だけは何処かで耳にしていたのかもしれない
そう思いながら、食堂から出ていった
後ろから、「麺が伸びてる…」や「冷めちゃってる…」と言う声が聞こえた気がするが放っておく事にして、先に葦原船へ向かった
「総員、戦闘態勢!護盾隊は盾を展開して!指揮官型と銃剣隊奇数番号は星屑と交戦!偶数番号はサンプル採取、及び交代時の為に後方待機!」
葦原船が入れないポイントのサンプルを採取する為に降りて土壌サンプルの採取ポイントへ歩いて行き、採取をしていた最中に星屑に襲撃された
船の護衛に着いたチームと二手に分かれているので、採取班に同行している指揮官型と護盾隊は1,3,5,7班だけであり私を含めた4人の護盾隊が前へ出て星屑の突撃を防ぐ
「ぎゃあああー!来たー!!助けてメブ~~!!」
盾を展開しながら絶叫する加賀城さんや私の横を、楠隊長を始め数人の銃剣型防人が通り抜け星屑に斬りかかる
「綾川殿!自分も前線へ出して欲しいであります!ご命令を!」
「ダメよ!楠隊長の指示に従って後方で待機して!これは命令よ!」
私の後方で春日さんが冬花先輩に不服申し立てをするも、否定されてなお「しかし…!」食い下がった所に弥勒先輩から無線が繋がる
『いずれ、わたくし達にも活躍の機会が訪れますわ。それまでは任されたお役目に徹しましょう』
その言葉を聞き、渋々と後方へ下がってサンプルの採取を始めた
(私は護盾隊、敵を倒すのが仕事じゃない!私の役目は――)
「役目は、皆を守ること!」
自分自身に、そう発破をかけて採取チームへ向かう星屑の突進を防ぐ
「やぁああ!」
「はっ!」
私が足止めしていた星屑を、冬花先輩と佐倉先輩がそれぞれ一閃し消滅させてから顔を見合わせ、2人が別方向へ飛び他の人への援護へ向かった
『芽吹さん、指定量のサンプル採取が終わりましたわ!』
「よし、撤退開始!」
副官として採取班へ指示を出していた弥勒先輩の報告を聞き、楠隊長が直ちに撤退指示を出す
「メブ!あれ!なんか…なんかいっぱい集まってるぅぅ!!」
加賀城さんの指差す方向を見ると、一体の星屑の元へ複数体が集まり別の形へと姿を変えている最中だった
その個体は、身体の一部を【角のように硬質化して隆起したもの】を持つ姿へ変質し、隊列の最後部へ近づいてくる
「殺さっ殺されるぅぅぅ!お父さんお母さん先立つ不孝をお許しくださいぃぃ!」
『こちら二番船、現在星屑と交戦中!至急救援を!』
「総員!直ちに葦原船まで走って!」
泣きながら親へ詫びる加賀城さんに抱きつかれながらも、楠隊長は皆に葦原船の救援に向かうように指示を出し他の指揮官型と一緒に最前列で交戦を始める
隊列から離れた箇所で春日さんが1人で星屑と戦っていて、後退しようとした際に足をもつれさせて転ける
「凛くん!」
「はい!」
同じタイミングで気付いたらしい佐倉先輩と一緒に春日さんの前へ出て、盾を展開し星屑の突進を防いで動きが止まった隙に佐倉先輩が一閃し星屑を消滅させた
「し、白峯殿、佐倉殿…助かったであります…」
身体を起こしながら礼を述べる春日くんの方を見る余裕も無く、周辺警戒をしていると山伏さんが進化体に追いつかれそうになっているのを見つけた
「佐倉先輩、春日さんを頼みます!」
それだけ言って、私は最後尾に居る山伏さんの前に出て盾を展開する…が、進化体の力は星屑のそれを大きく上回っており、私は呆気なく弾き飛ばされてしまった
「きゃああっ!」
『凛!くっ、どきなさい!』
楠隊長と冬花先輩も星屑に邪魔をされてこちらに来ることが出来ないみたいで、私は倒れたまま進化体を見る
(私は…また、何も出来ずに…)
「に…逃げ…」
進化体は私に興味は無いらしく、無視して呆然と立ち尽くす山伏さんへ近づき丸呑みにした
『しずくー!』
楠隊長の叫び声と同時に銃声が響き、進化体が内部から弾ける
「うらああああ!このデカブツが、ナマスにしてやるぁぁっ!」
進化体の腹部を切り裂いて出てきた山伏さんが叫び、銃剣を刺し、撃ち、切り裂き、1人で進化体を消滅させた
『ダ…ダレデスカ、アレ?』
加賀城さんの呟きを聞いて、私は全身の痛みによって意識を手放してしまった
「ん…ここは…?」
目を覚ますと見知らぬ天井が見え、私は身体を起こす
「凛!良かった…目を覚ましたのね」
ベッドの横には心配そうな表情を浮かべた冬花先輩と春日さんが居て、自分が入院着を着ているのを見てここが医務室だと理解する事が出来た
「あの…白峯殿、戦闘中に助けて頂きありがとうございました!今後この様な失態を犯さないよう、より訓練に励むであります!」
それだけ言うとそのまま部屋を飛び出して行き、入れ違いに佐倉先輩が部屋に入ってきた
「おや、凛くんの目が覚めたんだね。じゃあ、面白そうな話を1つ…これから、芽吹隊長とシズク君が決闘をするらしい。見に行くかい?」
「楠隊長と山伏さんが?」
あの2人の決闘を…普段の山伏さんからは想像も出来ないが、気を失う直前に見た気性の荒い彼女となら納得出来る
そう言うことで、すぐに制服へ着替えて医務室から出て訓練所へ向かう
道中、「巻き込まれるー!」と慌てて逃げ出してきたのだろう加賀城さんと、悔しそうな表情を浮かべた弥勒先輩とすれ違ってから中へ入ると、楠隊長と山伏さんが一進一退の戦いを繰り広げていた
「楠。てめぇはこの前、勇者がどんな奴だったかって聞いたよな?隣のクラスだった俺でも知ってるくらい、変な奴らだったよ」
そう言って鷲尾さんのこと、乃木さんのこと、三ノ輪さんのことを話す
「あいつらは、普通に暮らしてたんだ。どこにでも居る子供と変わらなかった!勇者になりたいって駄々をこねたりもしてなかった!てめぇみたいな駄々をこねる格好悪い奴が…勇者になれるわけねぇだろ!」
山伏さんが楠隊長の銃剣を捌き、刺突を繰り出す
「それでも、私は勇者になるのよ!」
楠隊長が叫び、山伏さんが持つ銃剣を脇に挟み込んで動きを封じる
山伏さんは銃剣を捨て距離を取ろうとするも、楠隊長が銃剣を喉元に突き付ける方が速く、山伏さんが降参し決闘が終わった
「やっぱり強いわね、楠隊長は」
「だが、シズクくんもかなりの腕前だ…9の番号なのは伊達じゃない、と言う訳か」
楠隊長が勝った事、それと互角の戦いをした山伏さんの実力に関心が集まるなか、私は2年前の神樹館で聞いた言葉を思い出していた
『そうなりたかった訳じゃないのさ~…』
ヒーローだとか教科書に載るとクラスメイト達に言われた際に乃木さんが返した言葉だ
勇者の選抜試験を受け、選ばれなかった楠隊長…
御役目を受けなければいけなかった乃木さん達…
(勇者様…大赦の御役目って…何なの…?)
私の中で、少しだけ大赦に対するモヤモヤした気持ちが大きくなっていくのを感じながら、国土さんと話す2人を見続けていた
今月中に、次話を書き切りたいなぁ…
なるべく頑張ります…