前回とは打って変わって、雰囲気が全然違いますのでご注意を。
普段の主人公はこんな感じなのです。ですが本人は至って真面目です。
今回は紛れもないギャグ回。
「~♪」
俺は現在μ'sが練習している歌を口ずさみながら部室のドアを開けた。練習の際は俺も屋上にいることが多いため、みんなが歌っている歌を嫌でも覚えてしまうのだ。みんなに『もしかしたら俺もアイドルになれるんじゃね?』って言ったら、みんな一斉に、同時に否定された。ひどい……
既に練習は終わっている。なぜ俺だけが部室に来たのかというと、携帯電話を置いてきてしまったからだ。みんなは先に帰らせてある。
「どこかなぁ~僕の携帯ちゃ~ん」
あるある : 家で1人でいる時に妙なテンションとなる。
「あれ?見当たらないな」
机の上にあって、すぐ見つけて帰ろうかと思っていたのだが、どうやらかくれんぼをしているらしい。
「でもここ以外に置くところないしなぁ」
部室は結構散らかっているため、携帯を置くとしたら机しかない。他のところに置けばアイドルグッズに埋もれてしまうだろう。にこの奴、海未や絵里に散々言われているのに片付けてないな。
「もしかしてこっちか?」
俺は部室の隣の部屋のドアを開けた。知っているだろう……そう、メンバーの更衣室である。基本的には男の俺が立ち寄ることはない。基本的にはな…
「あ!あった!」
携帯はイスの上に置いてあった。こんなところ、誰か気付くものだと思うが…。そういえば思い出した。今日の練習中に凛がタオルをここに忘れてきたとかで俺が取りに行ったんだっけ。ちょうどその時にメールが来て、読み終わったと同時にタオルを見つけたんだ。そして手に持っていた携帯を間違えてここに置いちゃったんだな。
「今からならみんなに追いつけるかな?……ん?」
腕時計を確認し、部屋を出ようとした瞬間、床に落ちている物に気づく。
「これって練習着か?」
落ちていたのは誰かの練習着だった。みんなの練習着は日々変わり、女の子だからか、新しい服をどんどん着てくるため、さすがの俺でも今日誰がどんな服を着ていたのかは思い出せなかった。
ドクン!
突然自分の心臓の音が聞こえた。この……この練習着……湿っているぞ!
練習が終わってからそれほど時間は立っていない。この湿っているのは明らかに汗だ!!
それがわかった瞬間、俺の中から何かが込み上げてくる。ダメなことだとわかっている、しかし男にはやらねばならぬ時がある!
俺は右手に持った練習着を自分の顔に近づけていく。そして……
クンクン
匂いを嗅いでしまった。あま~い匂いがする。これを部屋に置いて匂いを放出させているだけでリラックスできそうだ。
「この練習着は誰のだ!?まずそこからだ!!」
もう周りは何も見えていなかった。今この世界には俺と練習着しか存在していない。
~※~
「甘い匂いとなると……」
考えられるのは穂乃果、ことり、花陽、希、にこ辺だろうか?海未、凛、真姫、絵里は甘い匂いって感じがしない。もっと落ち着いた匂いだと思う。
「後は服の大きさで決めるしかないか」
普通の服なら多少大きくても買ってしまう可能性があるが、練習着として着るため、自分の体型より大きかったり小さかったりすることはないはずだ。体格としては穂乃果、花陽は同じぐらい、にこが一番小さくて、ことり、希が少し高いぐらいだ。どうやら服のサイズだけでは決まりそうもない。
「練習着の柄で決めるか……でもみんな普段どんな服を着てるんだ?」
休日は1人で過ごすことが多いため、普段の日常でみんながどんな服を着ているのかわからない。2年生組とは休日に会ったりすることもあるが、服のセンスを見抜けるほど会ってはいない。
「そもそも練習着にオシャレさを求めるのか?」
女の子は動きやすくすることを目的とした練習着でも、時間を掛けて選んだりするのだろうか。ちなみに落ちていた練習着のデザインは……
「全体的にピンクだな、特に派手な装飾はない」
ピンクと言っても鮮やかなピンクではなく、少し濃いピンクだった。海未、絵里、希はピンクのイメージではない。凛は白をベースとして、最近スカートを履くようになった。真姫は黒系統だった気がする。ことりは黄色のシャツが多い。穂乃果は服に『ほ』の字を入れたがるので論外だ。
「となると残りはにこと花陽か……」
にこはピンクの練習着を着ている。毎回同じような服なので印象は強い。花陽はどうだっただろうか、ジャージっぽい練習着を着ていた気がする。
他に何かないか、持ち主がわかる条件が……
俺は未だに右手で掴んでいる練習着を見る。見る過程でまた少し匂いを嗅ぐ。よし!甘い匂いはまだ残ってるな。このまま犯人が判明しなかったら持ち帰ってやろうか……
「ピンクか……俺はさすがにピンク色の服は着れねぇな」
ピンク?そういえばさっき濃いだの鮮やかだの言ってたような……
「!!!」
そうかわかったぞ!これは花陽の練習着だ!鮮やかなピンク色のジャージっぽいのを着ていた花陽の物に間違いない!
誰の物かわかった練習着を見つめる。俺は掴んでいる服をもう1度顔に近づける。しかし……
「…」
花陽の練習着だとわかったら、だんだん罪悪感が生まれてきた。こんな俺でも彼女は慕ってくれる。築いた信頼関係を崩したくはない。ここは今すぐ連絡をするべきだろう。モタモタしてると、誰かが戻ってくるかもしれない。こんなところを見られ……「ガチャ!」……たら……
明らかに後ろのドアが開いた音だ。背筋が凍る。俺は恐る恐る振り返った。
「零……君?」
「は、花陽……」
見られてしまった!!だったら生かしておく訳にはいかねぇ…とはならないので、俺は脳ミソをフル回転させてこの場を凌ぐ策を考える。
「か~よちん!見つかった?」
「何ィ!!!」
まさかの凛乱入。1人で戻ってきたんじゃなかったのか!?
「どうしたの?かよち……」
凛も花陽と同じで俺を見て固まる。
そこで俺は気づく。右手に持っている練習着を顔に近づけたままにしていたことに……
「さっ!」
「さ?」
「裁判だにゃーーー!!」
~※~
「じゃあ零君に下す判決を決めるにゃ」
何故か全員集合していた。というより、この裁判セットとステージはどっから現れた?
「とりあえず、とっとと死刑!!」
「ちょっ!?決めるの早いな!俺の話を聞いてくれ!!」
「この判決でいい人~」
バッ!
花陽以外の7人が同時に手を上げる。
「お前らなぁ~。違うんだよ!俺は誰の練習着か当てようとしただけだ!ちょっとしたクイズ感覚だったんだよ!」
「『ちょっとした』とか『気の迷いで~』とか、犯罪者の典型的なパターンだにゃ!」
ここで『俺はやってねぇ!』と言えないのがツライ。匂いを嗅いでしまった事実は変わらない。
にこ「もう認めちゃいなさいよ」
海未「今までお疲れ様でした。向こうでもお元気で」
「向こうってどこだよ!?刑務所か?」
穂乃果「さすがに擁護できないよ」
「穂乃果が『擁護』なんて言葉使ってる!?」
穂乃果「うわぁ~ん!!ことりちゃ~ん!」
ことり「大丈夫だよ穂乃果ちゃん。もうすぐ刑が執行されるからね」
「何てこと言いやがる!!」
絵里「あなたが変態だってわかってた。だけど本当に実行に移すとは思わなかったわ」
「ぐっ!」
希「まあ自業自得ということで」
真姫「弁解なんて見苦しいわね」
「…」
紛れもない正論の嵐が俺を襲う。かくなる上は……
「花陽わかってくれ!!俺は無実だ……」
捨てられたプライド、綺麗なフォームの土下座、そして清々しいまでの嘘。もうお前しかいない!マイエンジェルよ、どうか!!
「…」
花陽は喋らない。
…………
会場?に緊張が走る。
「いいよ」
「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」
花陽以外の9人が驚く。今何て言った?いいって!?
「もうこれからしないって約束してくれるなら、許してあげる」ニコッ
「は、花陽~!」
天使のような笑顔と寛大な心に胸を打たれた俺は勢いで花陽に抱きつく。
「ちょっ、ちょっと零君!?」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
ジトー
他のメンバーからの目線が痛い。背中を突き抜けそうだったので、俺は花陽から離れた。
「俺、もうしないよ。これからは真っ当に生きていくって誓うよ!」
キラキラした笑顔から放たれる濃厚な嘘。
「かよちんが言うならしょうがないにゃ~。じゃあこれにて裁判は閉幕だにゃ!」
なんとか死刑判決を乗り切った俺。だがその後、無期懲役として更衣室の侵入禁止を言い渡された。
花陽は零に抱きつかれた時のことを思い出した。
(零君いい匂いだったな)
匂いに惑わされている人がもう1人……
前回とのギャップが凄い、としか言い様がありませんでした。実はこちらの方を先に書き終えていたのですが、これを10作目としたかったのでデート回を先に持ってきた次第です。その結果がこれなんですけどね(笑)。さらに言うと、今回は花陽回になるつもりだったんですが…彼女には悪いことをしてしまいましたね。後悔はしていない。
今回の話には直接関係ないですが、先日発売したCDのドラマ部分だけ聞きました。意外に希ははっちゃけキャラなんですね。内容よりそちらに驚いていました。
読者様から感想を頂きました。ありがとうございます!
ではこの辺で失礼します。ありがとうございました!
次回はμ'sファッションショー!