※今回の話は今までと違って見切り発車で書いてしまい、結構話の構成が適当です。しかも長くなってしまたので前後編に分けるという始末。消すのも勿体無かったのでUP。
零の家
『女子校生のお弁当を調査!さて今日は……』
「……」
俺はテレビで『子供から大人まで!女の子のお弁当特集!』という番組を見ている。興味はないのだが、只今ぼっち飯中なので、食べ物番組を見て、少しでも楽しく食べれたらいいなぁとか思っていた。結局、さらに惨めになっただけなのだが。元々1人暮らしなのでぼっち飯はいつものことである。
番組では女子校生のお弁当について調査をしていた。色とりどりなお弁当や和風なお弁当、中にはお弁当と疑うような豪華なものまで紹介されていた。
「はぁ~……俺もこんな弁当を食べてみたいなぁ」
俺は1人暮らしだからって料理が特別上手い訳ではなく、学校に持って行くお弁当は適当に作った夕食の余り物である。夕食が余らなかった時はカップ麺で済ますことも少なくない。
音ノ木坂学院は共学とはいえ、女子の比率が結構高い。そんな女子たちの美味しそうなお弁当を毎日目の当たりにしていると、自分の弁当がいかに質素かがわかる。
「ダメ元でもいいから、誰かに頼んでみるか」
この腐れた食生活から脱却するため、ついに俺は動き出す!
~※~
「さあ!お昼だよ!お昼ご飯の時間だよ!」
「急にハイテンションになりましたね」
「穂乃果ちゃん、4限目ほとんど寝てたよね」
いつもの如く、騒がしい幼馴染3人組。
「腹が減っては戦はできぬって言うじゃん!ここでエネルギー蓄えて、午後の授業に備えるんだよ!」
「お腹いっぱいになって午後の授業で寝る未来しか想像できませんが」
「ははは……」
昼食を取って、穂乃果が5限目を起きている方が珍しい。起きていたら天変地異の前触れと言われるぐらいには。
「早く食べようよ!」
海未とことりはヤレヤレといった感じで穂乃果の席に集まる。話を切り出すならここしかない。そう思い、俺は3人の席へ向かった。
「ことり!海未!」
「零君?」
「どうしたのですか?」
「頼みたいことがあるんだが」
「零君が?」
「珍しいですね。零が頼みごとだなんて」
確かにそうかもしれない。俺は人に頼られることがあっても頼ることは少ない気がする。
「実は…お弁当作ってきて欲しいんだ」
本当はこんなことを面と向かって相談するのって、結構勇気がいるものだと思う。だが、自慢ではないが俺はかなり積極的な方だ。
「お弁当を?ことりたちが?」
俺はコクンと頷く。
「何か裏があるのでは」
「いやいや、昨日テレビ見てて、お弁当特集やってたから食べたくなって。でも俺料理上手くないし、いつも2人のお弁当見て、食べてみたいなって思ったからさ」
「あ!それ穂乃果も見たよ!零君いつもお弁当質素だからねぇ」
うるさい!て言いそうになったが、とりあえず話を進めたいので無視する。
「「う~ん」」
考えることりと海未。そりゃ急にこんなこと言い出したら迷惑だよな。でも俺は女の子の手作り弁当を食べてみたいんだ。そのためだったら羞恥でも何でも捨ててやる!せっかく仲がいい女の子がいるんだ、頼まない訳にはいかないだろう。
「いいよ!」
「え?」
「作ってきてあげる!」
「ありがとう!ことり!」
さすがマイエンジェル。懐の大きさは格が違った。
「ことりが作ってくるのなら、私も……」
「いいのか!?」
「へ!?あ、あくまで自分用のついでですよ、ついで」
「わかってるって!初めからそのつもりだ」
海未からも了承を貰った。見た目は堅物そうに見えるが、意外に押せばやってくれるのが海未の優しさだ。
「ちょっとちょっと!」
「なんだ穂乃果。今2人とお話してるんだが」
「何で穂乃果には頼まないの!?」
「お前には最大の欠点がある」
「な、何?」
「お前の昼食はいつも市販のパンだろうが」
「むぅー!穂乃果だってお弁当ぐらい作れるもん!朝時間ないからパンにしているだけで!」
「家の和食に飽きたからパン食ってるって言ってなかったっけ?」
出会った当初、パンばっかり食べている穂乃果が愚痴っていたのを聞いたことがある。
「うぅ……でも饅頭なら作れるよ」
「誰が悲しくて昼食に饅頭食わなきゃならんのだ!」
「まぁまぁ」
ことりが仲裁に入ったため、論争は打ち切りとなった。少しだが穂乃果が悲しそうな顔をしていた。仕方がない……
「はぁ~。わかったよ饅頭でも何でもいいから食べるよ。デザートだと思えばいいしな」
「やった~!明日とびきりのやつ作ってくるね!」
表情がコロコロ変わる奴だ。まあ、女の子が作ってくれることには変わりないんだし別にいいか。
「じゃあ頼んでもいいか?」
「いいですけど……お弁当箱はこの大きさで大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。女の子のお弁当ぐらいペロっと平らげられるさ。いつも小さいお弁当箱だなって思ってるし」
「それだったら今日材料買いに行かないと」
こうしてお弁当+饅頭の予約を取ることができた。明日が楽しみだ!
~※~
「~♪」
μ'sの練習が終わった後、南ことりはスーパーで明日作る弁当の具材を調達してきた。今は自宅に戻り、冷蔵庫に具材を詰めている。
「やけにご機嫌ね、ことり」
音ノ木坂学院の理事長であることりの母がことりの様子を見る。弁当の具材を買ってくることはままあるが、ここまでご機嫌なのは珍しい。
「あっお母さん。実は明日お弁当を2つ作るつもりなの」
「どうして?」
「作ってきて欲しいって人がいて…」
「ははぁーん。さては零君ね」
「何でわかったの!?」
「お友達に作るなら、顔を赤くして機嫌よくはならないでしょ。だとしたら対象は異性の可能性が高い。あなたの身近な異性って零君しかいないでしょ?」
的確な推理で娘の心を揺さぶる。
「そ、それは零君が言うから仕方なく……」
「仕方ないのに、今顔真っ赤にしてるのはなんでかな~?妬けるわね」
「もう!お母さん!!」
「でも到来したチャンスはしっかりものにしないとダメよ。男の子は胃袋を掴まれると弱いんだから」
「うん。わかった」
考え事をしながら弱々しく発言する。ことりはこの時から、ある決心が芽生えていた。
~※~
園田海未は台所に立っていた。弁当を作るのは明日なのだが、自分でも何故かわからないまま台所に来てしまった。たかが弁当を作るぐらいで緊張しているのだろうか。
「すぅ~はぁ~」
深呼吸して緊張を追い出す。
普通のお弁当作りなら緊張も何もないはずだ。ことりとおかずの交換をしたり、穂乃果に奪われたりしているので、他人の為に作るのは決して特別なことではない。だが、零にお弁当を渡すと考えると何故か緊張してしまう。ライブ直前の緊張とはまた別の緊張が心を支配する。
「何故これぐらいのことで私が緊張せねばならないのでしょう。普通に作って、普通に渡すだけじゃないですか」
そう自分に言い聞かせても心のモヤモヤは取れない。何を悩むことがあるのだろう。零においしいと言ってもらいたいから?もし口に合わなかったらとか?いつもの弁当作りでは考えてもいないことが次々と浮かんでくる。
「この程度で緊張するとは、武道をやっている身として情けないことですね」
ようやく気持ちの整理がついたのか、台所から立ち去った。
しかし、海未は自分の真の心にはまだ気づいていない。
~※~
和菓子屋である『穂むら』では高坂穂乃果が饅頭作りに勤しんでいた。
「!!!!」
「あっ!どうしたの雪穂!」
「お姉ちゃんが…店の手伝いを自ら進んでやってる……明日は雪かも」
「もうひどいよ!穂乃果もやる時はキチンとやるよ!」
「いっつもお母さんに頼まれても、『メンドくさ~い』とか『後で~』とかで回避しようとするくせに」
「今回は特別だよ、特別。ほら!」
穂乃果は自分が作っていた饅頭を雪穂に見せる。
「あれ?これって……」
「そう!明日から売り始める新作なんだって!」
「それで?なんでお姉ちゃんが新作作ってるの?」
「あぁ~それは~」
穂乃果が言葉につまる。その時、穂乃果の母が入ってきた。
「明日学校に持っていくんでしょ?さっき言ってたじゃない」
「学校に持って行く?まさかおやつに持っていくんじゃ。また太るよ~」
穂乃果は先日甘いものを取りすぎて、花陽とダイエットをした苦い記憶が蘇る。
「ち、違うよ!とりあえず2人共出てって!」
雪穂と母をグイグイと部屋の外へ追い出す。
バタン!
扉は閉められてしまった。
「お姉ちゃん、何であんなに張り切ってるんだろう」
「女の子がお菓子を一生懸命作って食べさせたい。そんな状況、1つしかないでしょ?」
「あぁ~なるほど。じゃあお姉ちゃんが頑張るのも無理ないか」
母の言葉に雪穂はようやく納得する。今まで男の気配なんか微塵も感じられなかったが、高校2年生になってから零の話が増えたということは、そういうことなんだろう。
(頑張ってね、お姉ちゃん)
~※~
練習後の帰り道、零は浮かれていた。なんせ女の子からお弁当を貰えるのだ。男子として舞い上がらない訳がない。ちなみに幼馴染3人衆は先に帰ってしまったので、1年生組と3年生組との帰宅だ。
「何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いわよ」
にこの失礼な発言に対しても寛大な心で受け入れられた。本来なら盛大なツッコミを入れてやるところなんだが、今回は許してやろう。
「何かいいことでもあった?」
「いつもよりテンション高めやったしなあ」
「わかるか絵里、希。いや~これからは優雅な昼食になると思ってね」
「優雅な昼食?いつもお弁当だよね?」
花陽が俺に疑問をぶつける。いつも教室で食べているため、1年生組と3年生組は知らなくて当然だが。
「いつもか…。いつもは質素な食事だった。だがこれからは違う!何と穂乃果たちが作ってきてくれるんだぜ!」
正しくはお弁当を作るのはことりと海未だけだが。
「え!?どうして?」
お弁当を作ってくるというのが意外だったのか凛が聞く。
「俺はいつもの自分の弁当には飽き飽きしてたんだよ。時には夕食の残り物、時には周りが美味しそうな弁当を食べてる中でのカップ麺、惨めな人生だった。そこでダメ元で頼んでみたら快く承諾してくれたんだ!持つべきものは友達だよな!」
「じゃあ私も作ってきてあげましょうか?」
絵里が提案してきた。
「えっ!いいの!?」
「まあ、亜里沙の分も作ってるし、1人ぐらい増えても平気よ」
「ありがとな!嬉しいよ!」
まさか絵里まで作ってきてくれるとは。やっぱり持つべきものは先輩だよな!
「じゃあウチも作ってこようかな?」
「に、にこも作ってきてあげなくもないけど」
「是非頼むよ!2人は家事上手いから、料理も期待できるしな!」
「ふ、ふん!まあせいぜい期待してなさい。にこちゃんの料理でアンタを昇天させてやるわ!」
殺人だけは勘弁願いたい。しかし、この2人ならマジで期待していいだろう。
「それだったら私も……」
この流れに便乗して花陽も提案する。
「凛もー!」
凛、お前料理できるのか?
「いいのか!?じゃあ美味い米使ったやつ頼むよ、花陽」
「うん!おにぎりぐらいしか作れないけど」
「OKOK作ってくれるならなんでもいいさ」
米にはうるさい花陽のことだ、今までで一番美味しいおにぎりが食えそうだ。持つべきものは後輩だな。
「凛は何作ればいいのかにゃ?」
「とりあえず何でもいい……味見はしっかりしろよ」
「そんな心配いらないにゃ!」
お前が自信満々の時が一番怖い!
「……」
そんなメンバーのやり取りを真姫は眺めていた。少し俯いて何やら考えているようだけど。
「真姫?真姫さーん?」
「な、何?」
「いや~この流れで真姫さんにも何か私めに作ってくださることはできるでしょうか?」
「何でそんなにへりくだってるのよ……いいわよ」
「え?」
意外な答えに驚く。てっきり『あなたにお弁当を作るなんてイミワカンナイ』とか言われると思っていた。
「真姫、料理できたっけ?」
「できるわよ!……少しぐらい」
おい、後ろの方聞こえづらかったが、聞こえたぞ。
という訳で結局みんなに作ってもらえることになった。
みんなと別れ、帰路に立つ。そういえば……
「いつ作ってきてもらうか、相談するの忘れてた。まあ、全員が明日持ってくるってことはないだろ」
前書きの通り、今回の話は序盤の構成だけしか組んでいない状態で書き始めてしまったので、後編も特にオチのない展開となっています。日常回みたいな感じで読んで頂けるとありがたいです。本来は2年生組しか登場しない予定だったのですが、話を長くしようと全員追加したら、結局前後編に分けなければならない状態に。しっかり構成を練ってから書かないとダメだなと痛感しました。
ここまでご覧いただきありがとうございます!
読者様から感想を頂きました。ありがとうございます!
それではこの辺で失礼します。ありがとうございました!
次回はお弁当披露回!