皆さんも一度は想像したことのある話ではないでしょうか?
それではどうぞ!
(ね、猫になってるにゃ……)
簡潔に言うと、凛は本物の猫になっていた。学院内の芝生で昼寝をしていたのだが、起きたらこの姿に変わっていたのだ。何が何やらわかっていない。周りには誰もいない為、猫に変わる瞬間を見ている人もいないだろう。
(とりあえず誰かにこのコトを知らせないと……)
散らばっていた自分の制服を芝生に隠し、学院内の探索を開始する。しかし、この小さな体では学院全体を歩き回ることは非常に困難だ。体力的にもキツイので、一刻も早く知り合いに出会わなければならない。
(どうして凛がこんなことに~!?)
~※~
凛はアルパカたちがいる飼育小屋へとやって来た。そこへ来た理由はもちろん、飼育委員である花陽に会うためだ。動物好きの彼女なら、もしかしたら凛が猫だってことに気付くかもしれない。
(あ!あそこにいるのは!)
「アルパカさ~ん、おやつですよ~」
(ことりちゃん!)
花陽ではなかったが、これは僥倖。アルパカの言葉がわかると思われることりなら、こっちの正体がわかるかもしれない。
「にゃ!にゃ~!」
(ダメだ!『にゃ~』しか喋れなくなってるにゃ~!)
「子猫さん?学校に迷い込んじゃったのかな?」
「にゃー!にゃー!」(気づいて!ことりちゃん!)
「こんにちは!勝手に入ってきたらダメだよ~」
(全然気付く気配がないにゃ~)
「そうだ!さっきアルパカさんにあげてたお菓子がまだ残ってたんだ。子猫ちゃん、どうぞ」
ことりは袋からビスケットのようなものを取り出して、凛の口元へ持って行く。
(アルパカにお菓子あげてたの!?それって大丈夫なのかにゃ!?)
「にゃにゃにゃ!」(いらないにゃ!)
「食べないの?美味しいのに……」
(もしかしてことりちゃん、どんな動物でもお菓子をあげてるのかにゃ?)
凛は急にことりの周りの動物たちが心配になってきた。
「ことりちゃん?どうしたの?」
「あ!花陽ちゃん!」
(かよちん!!)
今ここにチャームボイスの2人が揃った。意外にも早く花陽を見つけることができたので、これは何とかなりそうだ。
「どうしたの?この子猫」
「ことりもさっき見つけたんだ。たぶん外から迷い込んじゃったんだと思うよ」
「にゃー!にゃにゃ!にゃにゃ!」(かよちん!凛だよ!凛!)
「わぁ!すごい元気だね。この子猫」
「うん!でもお菓子は食べてくれなかったんだ……もうご飯食べたのかな?」
「お菓子はさすがに食べないんじゃないかな」
(かよちん、もしかして凛のコトがわからない!?そんな!?)
幼馴染でも、猫が凛だというコトには気付かない。普通は親友が猫になっているとは夢にも思わないから仕方のない話だが。
フェーフェー
向こうの小屋から別のアルパカの鳴き声が聞こえる。
「アルパカさん、どうしちゃったのかな?急に鳴き出して」
「あ!お水がなくなってる!ちょっと汲んでくるね」
「ことりも手伝うよ!」
「ありがとう!」
「猫さん。早く帰らないとダメだよ」
「にゃー!にゃー!」(待って!待って!)
凛の鳴き声も虚しく、2人は水汲みに行ってしまった。どうやら学院に迷い込んだ野良猫だと勘違いされてしまったらしい。ことりと花陽の2人がダメとなると、望み薄だが他の人に賭けるしかない。
~※~
トボトボと歩きながら、先程の芝生近くまで戻って来た。
(不本意だけど、段々猫の姿に慣れてきたにゃ。初めと比べてすごく動きやすいし)
もしかして、このまま一生誰にも気付かれずに猫のまま過ごすことに!?そう考えるだけで背筋が凍る。普段猫語を使っているせいで、こうなってしまったのだろうか?
ここに凛が再び戻ってきた理由はただ1つ。
(あ!真姫ちゃん発見にゃ!)
この芝生地帯の近くには何本か木が植えられている。その木陰で、真姫はよく本を読みに来るのだ。
「にゃー!にゃー!」(真姫ちゃん!真姫ちゃん!)
「猫……?」
「にゃ!にゃ!」(凛だよ!気づいて!)
「お腹空いてるのかしら?ほら、このトマト食べる?」
(どうしてみんな猫に食べ物を与えたがるのかにゃ!?それに真姫ちゃん、トマト常備しているの?)
「あれ?食べないの?」
「おーい、真姫ちゃーん!!」
「穂乃果!?」
(穂乃果ちゃん!)
「はぁはぁ」
穂乃果は息を切らして、真姫の元に走ってきた。その様子はただ事ではない感じだが……
「どうしたのよ。そんなに慌てて」
「はぁはぁ……早弁しようとしたら……はぁはぁ……海未ちゃんに見つかっちゃってね」
「それで海未から逃げていた訳ね」
「そうそう……ってこの子猫可愛い~」
「さっきからそこにいるのよ」
「何か欲しいのかな?」
(どいつもこいつも食べモノを……)
日頃、ストレスというものをあまり感じない凛であったが、今だけは怒りが爆発しそうになっていた。しかし、ここで暴れてもなにも解決はしない。凛はぐっと堪えた。
「珍しい。あなた今日お弁当なのね」
「うん!最近雪穂が料理の練習してるから、今日だけ特別に作ってもらったんだ」
(ダメだ~……真姫ちゃんも穂乃果ちゃんも全然気付きそうにないにゃ~)
何か字を書いて伝えようにも、この猫の手ではどうしようもない。地面を掘って書こうとも思ったが生憎ここは芝生の上、残念ながら字を書くことはできない。
「よーし、猫さん!穂乃果のお弁当からこれをあげよう!」
穂乃果はお弁当からおかずを箸ではさみ、こちらへ向ける。
「にゃ、にゃにゃにゃにゃーーーー!!!」(お、お魚ぁああああ!!??)
プロフィールにて
星空凛 : 嫌いなもの・・・お魚
「猫ちゃん!?どうしたの?」
「穂乃果!一体何したのよ!」
「お魚あげようとしたんだよ。ホラ、猫って魚好きでしょ?」
「詳しくは知らないけど…そういうイメージはあるわね。でも嫌がってるみたいだけど」
(この匂い……もうだめだにゃ……)
魚の匂いに耐え切れなくなった凛は全速力で逃走した。
「あ!行っちゃった」
「おかしな猫だったわね」
~※~
(はぁ……はぁ……一刻も早く元に戻らないと、また魚を食べさせられてしまうにゃ)
猫は魚好きという世間のイメージから、このまま無闇に誰かに助けを求めると魚を与えられかねない。助けを求める人材を選ばなければ、元に戻る前に息絶えてしまうだろう。
その人材についてだが、既に凛は誰の所に行くかを決めていた。
(出会うべきは希ちゃん。希ちゃんのスピリチュアルパワーなら、きっと凛だってわかるハズ!)
どんな胡散臭いオカルトパワーであっても頼らざるを得ない状況である。
だがこの姿のまま校舎内に入るのはマズイため、運良く外にいてくれることを祈る。
「……」
「……」
(向こうから話し声がするにゃ!)
凛は急いで声がする方向へ走る。
「希、そっちは後ろ歩きなんだから気を付けてね」
「大丈夫。エリチも急に手を離さんといてな」
「普段から練習で鍛えてるから平気よ」
(絵里ちゃん!そして希ちゃん!)
2人は倉庫から生徒会室へ長机を運んでいる最中であった。
「にゃー!」(希ちゃん!)
「危ない希!」
「え!ね、猫!?」
ズル!
ガッシャーン!!
「にゃぁああああ!!」
凛が希に近づきすぎてしまったため、希の緊急回避が遅れる形となった。驚いた希の手から離れた机は、見事凛にクリーンヒットした。
「希!大丈夫!?」
「ウチは大丈夫、それより猫が……」
希は机の下敷きになっていた猫を救出する。絵里も机を地面に下ろし、希と猫に駆け寄る。
「……」(……)←気絶中
「怪我はないみたいやね」
「そうね。でも動かないわね」
「どうしようエリチ、このままって訳にはいかへんし……」
「とりあえず生徒会室へ運びましょう。本当はペット禁止だけど、元気になるまでなら理事長も許してくれるでしょうし」
こうして何も知らぬまま、凛は生徒会室に運ばれることになった。
~※~
(ん?ここはどこにゃ?……生徒会室?)
しばらくして、気絶していた凛は目を覚ました。朦朧とした目で辺りを見回し、ここが生徒会室であることは理解することができたのだが、この部屋には誰もいなかった。もしかして、既に授業が始まってしまったのだろうか?そうなれば、凛がいないことを不審に思うハズだ。そこで必死にアピールすれば、もしかしたら誰かに気付いてもらえるかもしれない。
そう考えた凛は早速教室へ向かおうとするが、先程の衝撃の痛みがまだ残っているのか、中々歩くことができなかった。
(うぅ~折角のチャンスなのに歩けないと意味ないにゃ……)
「ここにいるって聞いたけど……お!いたいた!」
(零君!?)
生徒会室の扉を開けて入ってきたのは零であった。さっきの口振りから察するに、どうやら絵里か希から聞きつけたらしい。
「お前、机の下敷きになったんだって?随分マヌケな猫だな、オイ!」
「にゃにゃ!!」(マヌケとは失礼な!)
凛の引っかき攻撃!
零はサラリと身をかわした!
「まあ落ち着けって」
(へ?)
零は凛を抱きかかえた。そして、猫となっている体の下腹部を見る。
「お前、女の子なのかー」
「にゃ…にゃ…」(なっ…なぁ…)
「どうした?そんなに驚いた顔して」
ニヤニヤしながら零は凛の顔を見つめる。ここで凛に1つの憶測が浮かんだ。
(まさか零君、人間の女性では飽き足らず、メスの動物まで……元に戻ったら一生このことについてイジリ倒してやるにゃ!!)
「でも惜しかったな~。その驚いた顔、人間のお前の姿で見てみたかったぜ!なぁ、凛!」
「にゃ?」(にゃ?)
「とりあえずこれを飲め。そうしたら元に戻る。話はそれからだ」
零はお皿に水を入れ、その中に薬のようなものを投入した。
「ちょっと苦いかもしれないけど我慢しろ。後、お前の制服はここに置いとくからな」
そう言って、零は生徒会室から出て行った。
ゴクゴクゴク
零に言われた通り水を飲んでみる。罠かもしれないが、今は一刻も早く元に戻りたい。
(う!苦いにゃ~。ちょっとって言ってたのに……でも飲まないと)
ゴクゴクゴク
(体が熱くなってきたにゃ!うっ!!)
バタ!
体温が一気に上昇し、その衝撃でその場でパタリと倒れてしまった。
その後、記憶や意識は一時的に途切れた。しかし、凛が気がついた時には……
「元に……戻ってるにゃ……う~ヤッタにゃー!」
「おい凛、元に戻れたのか?」
部屋の中で騒いでいるのが聞こえたのか、零が外から扉をドンドンと叩く。
「ちょっと待つにゃ!今服着るから!」
~※~
「それで?これは一体どういうことなの?」
元の体に戻れたことで一息をつく。再び零を生徒会室に入れ、猫の体となってしまった原因の究明に取り掛かる。
「お前をそうしたのは全部姉さんのせいなんだ」
「零君のお姉さん?」
「そう。昨日姉さんがココに来たらしいんだ。どんな用事かは知らないが、その時部室にコレを置いていったらしい」
零が取り出したのは、ご飯にかけるふりかけであった。それに凛はこれに見覚えがある。
「これ、今日凛のお弁当にかけたふりかけだにゃ!」
凛は今日、花陽と真姫と一緒に部室で昼食をとっていた。母がうっかりしていて忘れたのか、お弁当のご飯に何もかかっていなかっため、その場にあったふりかけを勝手にかけてしまったのだ。
「それには人間を猫にしてしまう副作用があるんだと。トンでもなくくだらないモノばっかり作ってるな、アイツ」
零の姉である秋葉は、コレっぽっちも役に立たないモノを作るのが好きな科学者である。そのせいで以前、零も幼児化したことがあった。
「どうしてコレを部室に?」
「イタズラだよ、イタズラ。アイツのことだから影でコソコソ面白がっているんだろ」
「はぁ~。今日は疲れたにゃ」
「ごめんな、そんな姿にしてしまって」
「零君が謝ることじゃないにゃ。でも零君はどうして凛が猫になってるってわかったの?」
「ああ、姉さんから電話貰ったからだよ。そろそろ元に戻してあげた方がいいかもってな。いつの間にか俺のカバンに元に戻す薬も入ってた。初めは冗談だろって思ってたけど、絵里たちからおかしな猫がいたって話を聞いてここへ来たんだ」
「あれ?ということは、零君初めから凛が猫になってるってわかってたの?」
「そうだけど」
「じゃあさっき凛をオスかメスかを確認したのって…」
「あれか?ちょっとお前を驚かせてやろうかなって思ってな!ハハハハ!」
「……」
「顔赤いぞお前。もしかして怒ってる?」
「当たり前だにゃ!!!」
猫の姿になっていたとはいえ、丸裸状態で零に下腹部を見られたことになる。女の子からしてみれば、恥ずかしいことこの上ない。
「毛が逆だってるぞ……お、おちつけって……どうどう」
「凛は……」
「ちょ、お前爪をこっちに向けるな」
「凛は猫じゃないにゃぁああああああああああ!!」
バリバリバリバリバリバリ
「ぎゃぁああああああああああああああああ!!」
~※~
2年生教室
「零君、その引っかき傷どうしたの?」
「ほっといてくれ……」
その後一週間、その傷を引きずったという。
ということで凛ちゃん大災難な回でした。
猫になった経緯をどうしようか色々と考えていたのですが、結局今回のような方法で落ち着きました。当初はメンバー全員を出演させる予定でしたが、話が長くなってしまったので削って削って完成させてしまったせいで、猫化の経緯が少しこじつけになってしまいましたね。しかし、研究者キャラが1人いるだけでこのような展開が簡単に作れるのは、短編を書く上で非常にありがたいキャラです。次はどの子を変身させようか…
基本的には話毎の繋がりは無いようにして、来てもらった方に興味ある話から読んでもらいたいという算段があるのですが、ちょくちょく前の話にも触れてしまっています。1話から続けて読んでいる方がいらっしゃるならば、『ここってあの話のことか~どんな話だったかもう1度覗いてみるか』と、またその話を読み返してもらおうという算段があったりなかったりします。もし1話から追いかけてくれている方がいらっしゃるならば、非常に嬉しいです。もちろん、途中から読み始めた方もこれからよろしくお願いします!
それではこの辺で失礼します。ありがとうございました!
『ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~』というヤンデレモノの小説を投稿し始めました。そちらの第一章完結まではお休みさせて頂きます。もう少しだけお待ちくださいm(_ _)m
次回はことりとのデート回の予定です。