今年の一発目は正月に似つかわしくないタイトルからスタートです。地味にR-15にならないように表現と文章を頑張ってみた話だったりします。
『今日の運勢、第一位はいて座のあなたです!』
たとえ占いに全くの興味がなくても、朝の情報番組で2、3分流れる星座占いを見てしまう人は多いのではないだろうか。朝食を取りながら見る人もいれば、出かける身支度をしながら見る人、それも終わって家を出る時間まで多少ウトウトしながら見る人もいるだろう。特に暇ではないが、忙しくもない。ついつい他事していてもチラッと見てしまうのが、朝の占いというものだ。
「一位だ……」
俺も希の占いをバカにするぐらい興味ないが、パンをかじりながらついついそこだけは見てしまう。自分の星座が上位に君臨すれば、少しだがホッと安心する。
ちなみに俺はいて座で今日の占いは1位であった。
『いて座のあなたは、想っている異性に向かって行動するチャンス!あなた自身を存分に見せつけて、異性のハートをぎゅっと鷲掴み!ただし突然のハプニングにはご注意を!』
「うさんくさ……」
元々占いコーナーの時間自体が短いのは分かるが、曖昧なコトを言ってお茶を濁すのは止めてもらいたい。だが朝の占いコーナーなんて家を出る頃にはだいたい忘れているのがオチである。
「着替えよ……」
少しウトウトしながらも、朝食を食べ終える頃には自分の占い結果など記憶の彼方だった。
~※~
「ふぁあああ~」
朝の暖かさに酔いしれ、大きな欠伸をしながら登校する。最近テストも終わったばっかりでμ'sの活動も順調、みんなと楽しい日常生活が送れているためかどうも気が緩んでしまう。これが平和ボケという奴か。
「あっ零君だ!おっはよー!!」
交差点の向こうから穂乃果が俺に向かって腕をブンブン振っている。
「穂乃果か、おはよう」
「おはようございます、零」
「おはよう零君」
「ああ、海未もことりもおはよう」
相変わらず3人一緒にいる幼馴染組。
「お前ら今日は早いんだな」
「穂乃果が珍しく早く起きましたから」
「いつもそんなに遅れてる?」
「遅れてるんじゃないかな?」
俺は3人の少し後ろを歩きながら、世間話兼日常会話をしている。
ビュー!
突然、一陣の風が俺たちの間を横切った。
「「「きゃあ!」」」
目の前で3人の可愛い悲鳴が聞こえた。何のイタズラなのかその風は下から上へすくい上げるように吹いたので、女の子の鉄壁な部分がヒラッとめくれ上がった。
「お、おお!!」
3人は隠そうとしているがもう遅い。俺の脳内ハードディスクはそこら辺の機器よりも遥かに性能がいい。つまりとっくにその光景は保存されているというコトだ。
「「「見た!?」」」
3人揃って俺の方を向き、何を見たのかというところは濁しながら問いかける。
するとここで俺は朝の占いを思い出した。
(『いて座のあなたは、想っている異性に向かって行動するチャンス!あなた自身を存分に見せつけて、異性のハートをぎゅっと鷲掴み!』)
あなた自身を存分に!?俺自身……俺らしさと言えば……
「見たぞ!!しっかりとこの目で!!」
「「「なっ!」」」
顔がトマトみたいに真っ赤になってしまった。真姫に食べさせれば喜ぶぐらいに。
「3人共色が違うんだな。でもそれぞれのイメージカラーに合っているというか、まあ……よかったぞ!」
ドカ!!
「ぐぼっ!!」
穂乃果は無言でカバンを振り回して俺にぶち当てた。その衝撃で地面に倒れ込む。
「零君、最低!!」
たぶん穂乃果の本気の『最低』を聞けるのは俺ぐらいだろう。占い通りにやったハズなんだけど……
「忘れなさい!!今すぐに!!」
今にも殴りかかってこようとする海未。
「零君、忘れて!おねがぁい」
あま~い言葉で俺を翻弄することり。
「それは…………無理だ」
ゲシッ!
「いった!!踏むなよことり!!」
ことりは前髪で表情を隠しながら無言で俺を踏みつける。ことりに踏まれるとか何かに目覚めそうだ。
そして今日1日、彼女たちは一切口を聞いてくれなかった。
~※~
「いててて……なんなんだよもう」
学院内の階段に座りながら1人で愚痴をこぼす。とんだ占いもあったもんだ。あんなコトを言われたら期待するだろ普通は。
「零じゃない、そんなトコに座り込んでどうしたのよ」
「にこ……」
階段の下からにこが俺を見上げていた。上から見下ろすと、小さなにこがさらに小さく見える。
「何かあったの?」
「別に。占いって当たらないんだなぁと思って」
「?……とにかくもう休み時間終わるから、早く教室に帰りなさい」
「そうするよ」
腰を上げ、階段を降りようとしたその瞬間……
ズルッ!
「うわっ!!」
足を滑らせて階段を真っ逆さまに急降下した。
「ちょっと!!こっちに来ないでよ!!」
「うぁあああ!!」
ドシーン!!!
「にこどうしたの!?」
「にこっちどうしたん!?」
にこの叫び声が聞こえたのか、たまたま近くにいた絵里と希が駆けつける。
「いてて……ひどい目に遭った」
「こっちのセリフよ……」
「零……何してるの?」
「零君……大胆やねぇ」
「え?」
冷静に今の状況を確認する。倒れている俺たちを見つめている絵里と希……うん普通だ。俺と激突して廊下に倒れ込むにこ……これも申し訳ないが普通だ。そしてそのにこに覆い被さって、慎ましやかな胸に触れている俺の両手……うん……ふ、普通だ。
あっ!意外と揉めるぐらいの大きさはあるんだな。
「な、な、な、何してんのよ!とっととどきなさい」
「ぐっ!!」
にこにお腹を思いっきり蹴り上げられ、後ろに大きく仰け反った。今度は身体が後ろに倒れようとする。マズイ!廊下に頭を打ち付ける!
ボフ!!
「あれ?」
俺のシナリオではこのまま後頭部をゴチーンと打ち付けて保健室直行ルートだったのに、打ち付けるどころか何やら柔らかいクッションのようなものに衝撃をすべて吸収された。
「絵里……」
「絵里ち……」
にこと希が唖然とした表情でこちらを見ている。そういや絵里の姿が見えないな。
「ちょっと零……早くどいてくれないかしら」
俺の後ろから絵里の声が聞こえた。後ろ?振り返って顔を上げると、そこにはピクピクして今にも怒り出しそうな絵里の顔が飛び込んできた。じゃあこの柔らかいのはクッションではなく…
「!!」
ここで俺はまたあの占いを思い出してしまった。
(『あなた自身を存分に見せつけて、異性のハートをぎゅっと鷲掴み!』)
そうだ!敗北のままで終われるかよ!!
「いや~助かったよ絵里!やっぱり持つべき人は胸が大きい人だよな!これからも頼りにしてるぜ」
「零……あなた反省してる?」
「してない」
バチーン!!!
絵里から無言のビンタが繰り出された。
「なぜだ……占い通りに行動したハズなのに……」
ここで俺は占いの最後を思い出した。
(『ただし突然のハプニングにはご注意を!』)
もしかしてコレのせい?
「○ね!変態!」
「今日は練習来なくていいわよ。しっかり反省しなさい」
にこからの暴言と絵里からの冷徹な言葉。そしてそのまま2人は立ち去ってしまった。
「相変わらずバカなコトしてるわね」
「真姫ちゃん。凛ちゃんに花陽ちゃんも、今から体育なん?」
目の前に真姫たち1年生組が現れた。ジャージ姿ということはこれから体育なのだろう。それに真姫の言動から察するに、さっきの騒動を見られていたらしい。
「そうだけど……零君大丈夫?」
「花陽~!俺にはもうお前しかいないよ~!」
俺は勢いで花陽に抱きつこうとする。
「かよちんに近づくにゃーーー!!」
「零!動いちゃダメよ!」
凛と真姫が花陽を庇うようにして立ち塞がる。
「なんで防ぐんだよ!」
「今日のあなたは危険すぎるわ。いつも危険だけど今日は特に」
「零君に近づかれたら何をされるか分かったもんじゃないにゃ」
「ひでーなお前ら……」
「ほら!とっとと廊下の隅に移動しなさい。私たちに近づかないようにね」
「ちょっと希助けてくれよ!」
「頑張れ~」
「オイ!」
言われた通り渋々廊下の端へ移動する。
「ここまでしなくてもいいんじゃないかな?」
花陽、お前なんて優しい奴なんだ!次の休みにご飯を好きなだけ食わしてやろう。
「あまーーーーーい!!μ'sに入った後の絵里ちゃん並に甘いにゃ!!」
「ええ!?」
「今日1日は零と接触しないように!分かった花陽?」
「真姫ちゃんがそう言うなら……」
そう言って花陽たちは体育館へと向かった。
「俺……一生占いなんて信じないわ……」
「どんな占いやったん?」
「確か、『いて座のあなたは、想っている異性に向かって行動するチャンス!あなた自身を存分に見せつけて、異性のハートをぎゅっと鷲掴み!ただし突然のハプニングにはご注意を!』……だったハズ。とんだ占いだったよ」
「なるほど…それじゃあ零君が占いを外すのも無理ないよ」
「どいういうコトだ?」
「内緒!」
「お、おい!」
「もう休み時間終わってまうよ」
真実を語らず希は教室へ戻っていった。俺も帰るか。
零の姿が見えなくなった後、希はボソッと呟いた。
「そりゃ占いはあたらんよ。だって零君はもうみんなのハート鷲掴みにしてるんやから」
そんなコトなど俺は知らず、災難な1日はまだまだ続く
続きがあるような終わり方でしたが、この話は今回だけです。
おそらく零君の今年のおみくじは大凶だったんでしょうね。しかし大凶はかなり出にくいらしいので、当たれば逆にラッキーなのかもしれません。ちなみに私は大吉でした。
追記:おみくじで大凶は出ないそうです。感想にて教えてもらいました。