ラブライブ!~μ'sとの日常~【完結】   作:薮椿

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去年からずっと書きたかった話。

あの作品とのコラボですが、借りているのは設定だけであり、話はラブライブのキャラのみで構成する予定なので、原作未読の方でも楽しめると思います。


今回は導入部分です。


鶏竜田の香味ソース弁当 978kcal

「やっちまったな~」

 俺は夜道を歩きながらため息をつく。適当に晩御飯を作ろうとしたのだが、昨日でちょうど材料をすべて使い切っていたのを忘れていた。カップ麺で済ませようとも思ったが、生憎カップ麺まで切らせていたので、近くのスーパーまで買いに行っている途中である。

 

 

「もうこんな時間だし、大したモノ売ってないよな~」

 時間は夜9時になろうとしている。今日はいつも以上にμ'sの練習に付き合わされ、久々にヘトヘトになって帰って来た。そのせいか、ソファで少し横になっていたらいつの間にか眠ってしまった。夜遅くなった原因はそれである。

 

 

「ん?これは!?」

 俺はスーパーの前で立ち止まり貼られているチラシを見る。そのチラシは、俺の疲労をすべて解放するほど魅力的だった。

 

 

「弁当すべて半額……だと」

 スーパーでは売れ残りを避けるため、閉店間近になると弁当の割引サービスが行われる。そのコトは知っていたのだが、まさか半額まで値引きされているとは思わなかった。

 

 

「卵とじロースカツ弁当、極上うなぎ弁当、鶏竜田の香味ソース弁当……」

 チラシを見るだけでも涎が出そうなぐらい美味そうだった。元々それなりに値は張るが、今は半額。このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

 

 

 

 俺は自然とスーパーに足を踏み入れていた。閉店間近だからか、人の姿はあまり見られなかった。だが弁当コーナーに近づくたびにちょくちょく人の姿が見え始める。なんだコイツら……目つき悪いな。こんな時間だから不良か何かか?

 

 

 

 弁当コーナーへと目を向けると、男性店員がまさに半額シールを貼り終えたばかりだった。俺は店員が立ち去るのを確認した後、弁当コーナーへ近づいて、半額弁当へと手を伸ばす。

 

 

 

バタン!

 

 

 関係者通路の扉が閉まる音がした。

 

 

 

 

「!!」

 

 

 俺はその一瞬で何が起こったのか理解できなかった。1つ確かなのは、俺が宙に浮いているというコトだ。

 

 

 

「一体何なんだ!?コイツら」

 

 

 いつの間に弁当コーナーにこれだけの人が集またのだろうか。そこには十数人の男女が苛烈な戦いを繰り広げていた。

 

 

「ぐっ!」

 

 

 突然、俺は襟元を掴まれた。身体から一気に空気が抜ける。

 

 

 

ブン!

 

 

「がはぁっ!!」

 

 

 空中で掴まれた俺は、そのまま集団から放り出すように投げられた。床に打ち付けられた衝撃で、身体全体に猛烈な痛みが走る。

 

 

 

「なんなんだよ……コレ」

 

 

 俺は倒れながら、弁当を巡る熱い戦いを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「無様ね~。安易に近づくからこんなコトになるのよ」

 

 

「にこ!?」

 俺の前ににこが現れた。彼女の右手には半額シールの貼られた弁当がある。

 

 

「その反応……とりあえず大丈夫そうね」

 

 

「これは一体なんなんだ!?」

 

 

「意地とプライドを懸けた食の戦い……」

 

 

 

 

「半額弁当争奪戦よ!」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 戦いは鎮火し、俺たちはスーパーの外で戦利品を頂いていた。戦利品といっても俺は弁当を手に入れれなかったためカップ麺だ。隣ではにこが『鶏竜田の香味ソース弁当』を美味しそうに食べている。読んで字のごとく、香味ソースの匂いが俺の腹の虫を掻き立てる。

 

 

「なによさっきからジロジロと。欲しいの?」

 

「いらねぇよ」

 

「意地張っちゃって。匂いに釣られてるのが見え見えよ」

 

「くそっ……」

 

 つまらない意地を張らずに下さいって言えばにこは食べさせてくれただろう。実際に、香ばしい匂いで俺の唾液が大量に分泌されている。だがここで下さいって言ったら負けのような気がする……

 

 

 

 

 

「それで?アイツ等は一体何者なんだ?目が獲物を狩る狼になってたぞ」

 

「そう。その”狼”よ」

 

「狼?」

 

「ええ。礼儀を持って誇りを懸け、半額弁当の争奪に挑む人たちよ。狼たちは皆己にプライドを込め、”腹の虫”の加護を受けているから、迂闊に近づけば命の保証はないわ」

 

 

 正直何かの冗談ではないかと思った。しかしスーパーの出来事を思い出すと、にこの言葉がいかに現実味を帯びているかが分かる。

 

 

「俺、あの時一瞬にして袋叩きにされて放り出されたんだけど……」

 

「それはアンタが”豚”だったからよ。最近は”犬”も多いから、彼らは総出で潰しやすい敵から始末したってところね」

 

「ちょっと待て、”豚”?”犬”?それにさっきの”腹の虫”ってのは?」

 

「”豚”っていうのはスーパー内での暗黙のルールを理解せず、礼儀を持たずに半額弁当を求める人たちへの蔑称のこと。基本的には何も知らない奴や、ルールを守らない奴に使うわ」

 

 

 くだならないと思いながらも、俺はにこの話を真剣に聞いていた。

 

 

「”犬”っていうのは、最低限の礼儀は弁えているんだけどまだ半額弁当を掴んだことない未熟な人のこと。つまり初心者ね」

 

「未熟……」

 

「”腹の虫”はにこたちに加護を与えてくれるわ。空腹感と弁当を食べたいという欲求によって、普段よりも身体能力が上がるのよ。この争奪戦には筋力や格闘技経験なんて問題じゃない、腹の虫の加護によって勝敗が決するわ」

 

 

 俺は再びあの時の状況を思い出していた。確かに狼たちは力技で戦ってはいなかった。なのに俺を吹き飛ばすほどの力が出ていた。それが腹の虫の加護……

 

 

「なあ、にこ。狼って俺でもなれるのか?」

 

「あら?興味あるの?そうねぇ~アンタならいい線いくんじゃない?」

 

「そうか」

 

 

 俺はその場で立ち上がる。さっきから頭に取り付いていた違和感がやっと分かった。

 

 

「その眼、やる気みたいね」

 

「ああ。正直言えばメチャクチャ悔しかった。それでいて豚だの犬だの……情けねぇ!!ホントに情けねぇよ!!」

 

 

 

 狼、争奪戦、半額弁当……それらの言葉が俺の闘志に火を点ける。

 

 

 

「俺は失ったプライドを取り戻す。このまま敗北で終われるかよ!!」

 

 

「じゃあ明日も21時にココに来るといいわ。このスーパーの半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)はその時間だから」

 

 

「半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)?」

 

 

「店員……にこたちは半額神って呼んでいるけど、その半額神が弁当に半額シールを貼る時刻のことよ」

 

 

「21時に来れば、その争奪戦に参戦できるんだな」

 

 

「そうだけど、この地区の狼たちは強敵揃いよ。初心者のアンタが勝てるわけ……」

 

 

「そうかもしれないけど、男ってのはプライドを失ったら終わりなんだよ。アイツらにプライドを奪われたまま、この先の人生を過ごしていける訳がねぇだろ」

 

 

「だったら精々頑張るコトね。もちろんだけど、にこも容赦はしないからね」

 

 

「もちろん、手加減する気はないよ」

 

 

「あ~ヒドイ~~!こんな可憐なにこちゃんをイジメるなんて~~!にこは~アイドルなんだぞぉ~」

 

 

「お前なぁ……」

 ここへ来て、にこお得意のぶりっ子攻撃が発動。ちなみにそのぶりっ子が誰かに効いた試しは一度もない。μ'sのみんなからも冷たい目線で見られてるし。

 

 

「冗談よ。じゃあまた明日、学校でね」

 

 

「ああ、じゃあな」

 

 俺はにこと別れ帰路に立つ。まだあの時に味わった悔しさと屈辱は忘れられない。だが、絶対に己のプライドを取り戻してやる!!

 

 

 

 

「待ってろ!!狼共!!半額弁当!!」

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 零と別れたにこは、その場でとある2人に電話を掛けた。

 

 

「もしもし?花陽、凛?」

 

 

『にこちゃん?どうしたの?』

『にこちゃんから電話なんて珍しいにゃ~』

 

 

「明日、例のスーパーに来てみない?」

 

 

『明日?別にいいけど……凛ちゃんは?』

『行く行く!!今日はかよちんの家に招待されてて行けなかったから、明日は絶対に行くにゃ!!』

 

 

「じゃあ決まりね!面白いモノが見れるわよ」

 

 

『面白いモノ?』

『なになに?』

 

 

「それは明日お楽しみ!じゃあまた明日ね!」

 

 

『うん!お休みなさい』

『お休みにゃ!』

 

 

 

 

 

 

「さぁ零、アンタの力、見せてもらうわよ」

 

 

 

 




おバカなことやってるなぁ~と思うかもしれませんが、彼らは本気です(笑

書いている途中で思ったのですが、これって"日常"ではなく"非日常"な気がしてきました。



この話は後2話続きます。
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