ラブライブ!~μ'sとの日常~【完結】   作:薮椿

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これが彼の日常になっていくのであった……


ちなみにサブタイトルのお弁当は、私が今年食べたお弁当の名前になっています。総じてカロリーがエグいですが。


牛カルビエビフライ弁当 1267kcal

前回のラブライブ!

 

 弁当を買おうと思ったら、突然吹っ飛ばされた俺。そこには狼と呼ばれる戦士たちの戦闘が繰り広げられていた。失ったプライドを取り戻すため、にこの指導の元、俺は狼になるコトを決意した。

 

 

 

 

 

 

「さて、いよいよ出陣だ」

 

「まだ10分あるけどね」

 

 

 翌日の20時50分、俺とにこは再びスーパーの前に集まった。この時のため、海未や絵里に無理を言って俺も練習に参加させてもらったのである。

 

 

「今日は一段と身体を動かしたからな、腹の虫がぐーぐー唸ってる」

 

「アンタが一番張り切ってたもんね。みんな驚いてたわよ」

 

 

 そういや張り切りすぎて、穂乃果たちから変な目で見られてたな。さすがにライブも出ない奴がいきなり出しゃばるのはマズかったか……

 

 

「とにかく、とっとと入ろうぜ」

 

「ちょっと待って。まだ来てない人がいるわ」

 

「ん?他に誰か呼んだのか?ってか、お前友達いたんだな」

 

「失礼ね!!……でもまあ、驚くと思うわ」

 

 

 待っている間にも、俺の腹の虫が食を求めている。誰が相手でも手加減しない。軽く蹴散らしてやる。そう自信満々な俺だったが、目の前から走ってきた人たちを見て驚愕した。

 

 

「おい…もしかして、お前が呼んだ人って」

 

「そう、花陽と凛よ」

 

「何でこの2人が!!?もしかしてこの2人も狼なの!?」

 

「ええ」

 

「え゛ぇぇぇ!!」

 

 

 花陽と凛が狼!?この2人が戦えそうに思えないんだが。

 

 

 

「ゴメンなさい、遅れちゃって!」

「ギリギリ着いたにゃ~!」

 

 

「いやいや、遅れたとかじゃなくって!!」

 

 

「ん?あっ零君だ、やっぱり来たんだね」

「まさか零君まで狼になってるとは思わなかったにゃ」

 

「あれ?知ってんの?」

 

「本当は秘密にしようと思ってたんだけどね。学校で2人があまりにもしつこく聞いてくるから言っちゃったのよ」

 

 

 今でもこの2人が戦う姿を想像できない。正直言わせてもらうと…………弱そうだ。

 

 

「零君、もしかして私たちのコト弱そうだって思ってる?」

 

 

 うっ!花陽に思考が読まれてる……

 

 

「なにィ!!それは嘗めすぎだにゃ!!」

 

「あのね、花陽と凛はこの地区では凄い有名なのよ」

 

「えぇ~この2人が?」

 

「凛とかよちんのコンビネーションは抜群なんだから」

 

「2人で戦ってんのか?」

 

「そうなんだ。私だけじゃ力不足だから、凛ちゃんと一緒になってそれを補ってるの」

 

 

 その後少し話を聞いたが、花陽と凛の狼としての実力は相当なモノらしい。他の狼を震え上がらせていた時期もあるんだとか。

 

 チラッと2人を横目で見る。凛はまぁ分からなくもないが、あの花陽が目の色変えて人をボコボコにしている姿なんて想像できないし、したくもない。

 

 

「あと5分ね。それじゃあ中に入りましょ」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 3人の後に続き、俺たちは弁当コーナーまでやって来た。とうとう始まるのか……

 

 

「おい!」

 

 

 俺はにこたちを呼び止めた。弁当コーナーに来たと思ったら、横目で弁当を見ただけでそこを通り過ぎてしまったからだ。てっきり戦いやすい位置に着いておくのだと思っていた。

 

 

「どうして通り過ぎるんだよ。弁当コーナーはココだろ?」

 

「弁当コーナーからは一定の距離を保っておくのがルールなの。ルールを守らないと、また昨日みたいに無様な姿を見せるコトになるわよ」

 

「開始の合図は半額神が扉を閉めた音だにゃ。それより先に飛び出したらアウトだからね」

 

「他のルールとしたら、お弁当を手に入れた人を攻撃するのは禁止だよ」

 

「お、おう……」

 

 まだまだ俺の知らないルールがたくさんあるようだ。さすが、誇りを賭けた戦いなだけのコトはある。

 

 

「アンタたちは何を狙うの?」

 

「凛たちは『牛カルビエビフライ弁当』にするにゃ」

 

「案外ガッツリといくのね」

 

「今日はこのためにお腹を空かしてきたからね」

 

「ふ~ん、にこは『月見マーボハンバーグ丼』にするわ」

 

「にこちゃんも人のコト言えないくらいガッツリしてるにゃ!」

 

 

 コ、コイツら……さっき横目で見ただけで、瞬時に自分の狙う弁当を決めたのか!?俺は弁当の名前すら見えなかったぞ!?

 

 

「アンタは……ってどう考えてもアンタじゃあの間に確認するのは無理ね。それだったら、私が昨日食べてた『鶏竜田の香味ソース弁当』を狙いなさい。涎を口いっぱいに溜めて欲しがってたし」

 

「う、うるせぇ!!」

 

 昨日の俺をほじくり返さないでくれ。惨めになる。

 

 

 

 

「決めたのなら、黙って精神を集中させなさい。そうしたら腹の虫が力をくれる。空腹は最大の武器なんだから」

 

「あぁ……」

 

 3人のおちゃらけていた雰囲気が一転してシリアスな雰囲気に変わった。俺もそれに触発されて、狙いを定めた弁当を睨みつける。

 

 俺の狙う弁当には、他の狼たちの視線も集まっていた。そう簡単には取らしてくれないか。

 

 

 

「来たわよ!」

 

 半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)になり、ついにスタッフルームの扉が開かれた。店員は売れ残っている弁当に次々と半額シールを貼っていく。

 

 

 しかし、その弁当の内の1つは別のシールが貼られようとしていた。

 

 

「あれ?シールの色が違うぞ」

 

「月桂冠(げっけいかん)だよ」

 

「月桂冠(げっけいかん)?」

 

「半額神が太鼓判を押した特別な弁当のコトよ。それを手にした者は、このフィールドでの絶対的勝者になるわ」

 

「絶対的勝者……」

 

 この時、俺の中で何かが揺れ動いた。

 

 

 

 

 店員が扉を開け、スタッフルームへと戻っていく。扉が閉まろうとしている……

 

 

 

 

 

 ……ぱたん。扉が閉まった。

 

 

 

「!!」

 

 気付いた時には、既に3人は俺の周りから姿を消していた。弁当コーナーを見ると、にこたちがまもなく他の狼たちと戦闘を開始しようとしている。

 

 

 

「くそっ!!」

 

 俺も負けじと戦場に突入した。

 

 戦闘中の花陽と凛の脇を通り抜け、ほぼ一直線に弁当コーナーへ走る。花陽たちが狼を引きつけてくれているため、意外にも簡単にたどり着けそうだ。

 

 

 

 

「甘いわね」

 

 

 

「なに!!」

 

 

 目にも見えないスピードで俺の前に飛び出してきた茶髪の女は、俺の首根っこを掴んで横に放り投げた。

 

 

 

 その勢いで床をゴロゴロと回転する。

 

 

「邪魔よ!何寝てんのよ!」

 

 

 にこが寝転がっていた俺を思いっきり蹴飛ばす。その小柄な身体からどれだけの力が出ているのだろうか、気付くと俺は宙を舞っていた。

 

 

 

 幸か不幸か、俺は戦場の弁当コーナーの近くへ落下した。背中に猛烈な痛みを感じながらも、素早く身体を起こして次の攻撃に備える。

 

 

「!!」

 

 俺の目に飛び込んできたのは花陽と凛の姿だった。2人は両手に買い物かごを持ったまま、俺に向かって突進してくる。

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

「遅いよ、零君」

「もらったにゃ!」

 

 

 

 一瞬だった、2人によって俺の関節はあらぬ方向に曲げられ……

 

 

 

 

 

 買い物かごのプラスチック音が響き、左右両サイドからかごを使って俺を閉じ込めた。

 

 

 

 

「がぁあああああああああ!!」

 

 

 全身に激痛が走る。しかし狭いかごの中に閉じ込められた俺は、不穏に曲がった関節を気にするコトもできなかった。

 

 

 

 

 

 

 花陽と凛は次の戦いに移ったのか、ようやくかごから解放される。同時に曲がっていた関節も解放されたようで、今度は身体の中から激痛が襲う。

 

 

 

 

 それを耐えきり、俺は三度弁当コーナーへと走る。途中で何度も狼たちに襲われたが、攻撃を避けるのが精一杯で反撃できなかった。それでもなお狼たちの脇を潜り抜け、ようやく弁当コーナーへと辿り着いた。

 

 

 

 

「よし!もらった!!」

 

 

 俺は月桂冠へと手を伸ばす。その時だった。

 

 

 

 

 

 

「ガッデム!!!」

 

 

 突如、野太い叫び声が聞こえた。その絶叫は、地球上あらゆる生物を絶望と恐怖に叩き落とす声だった。

 

 

 

「あれは大猪(おおじし)!?零、逃げて!!!」

 

 にこの叫び声が聞こえたが、うまく耳に入ってこなかった。それよりも、猛スピードでこちらにカートを引きながら突っ込んでくる女性に圧倒されていた。

 

 

 "大猪"、後で聞いて分かったのだが、半額弁当と半額惣菜を買い溜めに来た主婦を指すらしい。腹の虫の加護はないが、家族のために戦う「生活力」によって狼をやすやすと蹴散らす。まさに狼たちの天敵である。

 

 

 大猪は狼たちをカートで次々と跳ねていき、俺がいる弁当コーナーへ一直線に向かってくる。

 

 

 

「零君!逃げて!!」

「早くしないと轢き殺されちゃうにゃ!!」

 

 

 花陽と凛の言葉でようやく我に返った俺は、月桂冠を手にしてその場を離れようとする。しかし……

 

 

 

 

 

「ガッデム!!!」

 

 

 

 

 既に目の前まで迫っていたカートの車輪に俺の身体が引き摺り込まれた。

 

 

 

「ぐわぁ゛あああああああ!!」

 

 

 

 その衝撃で俺は弁当コーナーから弾き飛ばされ、商品陳列棚に叩きつけられた。棚に置かれていた商品が大量に宙を舞う。

 

 

 

 最後の記憶にあったのは、俺の手から月桂冠がなくなっている、ただそれだけだった。

 

 

 




この話を書いている時が今までの執筆の中で一番楽しかった。真面目なギャグって面白いですね!


次でラストです!
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