ラブライブ!~μ'sとの日常~【完結】   作:薮椿

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気付けばいつの間にかUAが50000になってました。感謝です!



半額弁当争奪戦はこれにて終幕です。


おろしロースかつスペシャル 1312kcal

前回のラブライブ!

 

 失ったプライドを取り戻すため、初めて半額弁当争奪戦に挑んだ俺。だが狼たちの猛攻は凄まじく、俺では全く歯が立たなかった。それでもなんとか弁当に手を掛けた矢先、突然乱入してきた大猪(おおじし)の圧倒的な力の前に気絶してしまう。次こそは……次こそは絶対に!!

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

「あっ!やっと目を覚ましたわね」

 

「全然起きないから心配したにゃ~」

 

「でも大丈夫そうでよかった。ここはスタッフルームだよ」

 

「スタッフルーム?」

 

「アンタを心配して店員さんが部屋を貸してくれたのよ。後でお礼言っときなさい」

 

 

 俺が目を覚ましたのはどうやら店員が休憩に使うスタッフルームらしい。寝かされているソファも決して気持ちいいモノではないが、寒い外の地面で寝かされるよりかはよっぽどマシだ。

 

 

「はい。零君の晩御飯だにゃ」

 

 

 凛が手渡したのはカップ麺だった。しかも昨日と同じやつだし。

 

 

 見れば、にこも花陽も凛も弁当ではなくカップ麺をすすっている。あれだけの実力を持っているのに弁当を手に入れられなかったのか。

 

 

「はぁ~大猪が来ちゃったらどうしようもないわね」

 

「大猪?」

 

「さっきアンタを気絶させた人よ。大猪……一般的には主婦のコトね」

 

「半額って言葉だけで主婦の皆さんはああなちゃうの。大猪が来たらその日のお弁当は諦めたほうが身のためだよ」

 

 

 あの狼たちをもラクラクに跳ね除ける。主婦って恐ろしい……

 

 

「で?これからどうするワケ?初戦であんな目にあって、まだ続ける気?」

 

「もちろんだ。2度も敗北したんだ、逆に燃えてきたよ」

 

「それでこそ零君だにゃ!」

 

 

 神経の図太さなら誰にも負けない。今度は、今度こそは!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

「よっ!」

 

「来たわね」

 

 

 翌日20時45分、俺は三度このスーパーへとやって来た。スーパーの前でにこ、花陽、凛と合流して中に入る。

 

 

 半額弁当争奪戦については大体理解した。にこたちも『もうお前に教えるコトは何もない』とばかりに、ずっと黙ったままである。既に神経を集中させているのだろう。俺もスーパーに入った直後から、腹の虫の調子を整えている。

 

 

 

 弁当コーナーの下見に入る。昨日凛たちが狙っていた『牛カルビエビフライ弁当』、シンプルでうまそうな『チーズデミグラスハンバーグ弁当』、そして莫大なカロリーの『おろしロースかつスペシャル』の3つがあった。

 

 

 

 

「凛たちは昨日取れなかった『牛カルビエビフライ弁当』を狙うにゃ」

 

「ふ~ん、それじゃあ仲良くはできなさそうね」

 

「まさかにこちゃんも!?」

 

「そうよ。久しぶりにアンタたちとやり合える時が来るとはね」

 

「お前ら、前に戦ったのか?」

 

「ええ。さすがに、"オルトロス"の二つ名を持つ2人を倒せなかったわ」

 

「二つ名?」

 

「狼の中でも目立つ人につけられるあだ名のコトよ。実力のある人は目立つから、二つ名がある=強いってワケ」

 

「それで花陽と凛が"オルトロス"なのか、にこは?」

 

「にこちゃんは"湖の麗人"だにゃ!」

 

「どうしてその二つ名に?」

 

「にこちゃん、半額弁当を勝ち取った喜びと満腹から噴水の近くで寝ちゃったっていう過去があるの」

 

「ちょっと花陽!勝手に言わないでよ!」

 

「く、くく……」

 

「笑うな!!えぇええい、アンタの二つ名は"変態"でいいわ!!それがお似合いよ!!」

 

「なんでやねん!!」

 

「ピッタリだにゃ!」

「自分でもたまに言ってるしね」

 

 

 確かに自分は変態だと認識しているが、全く関係のないところで変態と叫ぶのは止めてもらいたい。

 

 

 

 

 ここでスタッフルームの扉が開いた。さっきまで騒いでいた俺たちは一瞬にして沈黙する。

 

 

 店員は半額弁当にシールを貼っていく。

 

 

 

 

 3つの弁当にシールを貼り終え、店員は一礼してスタッフルームへの扉を開ける……

 

 

 

 

 パタン……扉が閉まった。

 

 

 

 

 俺たちは同時に飛び出す。いつの間に持って来たのか、既に花陽と凛の手には買い物かごが握られていた。

 

 

 

 

 まず俺は近くにいた男2人を足払いで転倒させる。そのまま真っ直ぐ走り、茶髪の女や顎鬚の男のサイドを抜けていく。今にこたちはどこにいる……?

 

 

 

 

 

 にこは両手に割り箸を持って、自分の身体よりも遥かに巨体な男を1人、また1人と撃退している。逆に小柄なおかげで、身体が大きい狼には有利に立ち回れているようだ。

 

 

 

「なにジロジロ見てんのよ!!」

 

 

 にこは俺に向かって巨体な男を投げつけてきた。かわしきれないと思った俺は、両腕を顔の前にクロスさせて受身をとる。

 

 

 

 

「がっ!!!」

 

 

 巨体の男は俺の想像以上の勢いで飛んできたため、自動車に轢かれたかのような衝撃が走った。俺の身体は大きく吹き飛ばされ、戦いの中心から弾き出される。

 

 

 

「まだまだ!!」

 

 

 気合を入れ直し、再び戦場へと舞い戻る。

 

 

 途中で3体の狼を沈め、気付いた時には狼の数はだいぶ減っていた。

 

 

 

「にこたちがやったのか……」

 

 

 戦いというものは、最終的には強者だけが生き残るものである。つまり、今生き残っているのは二つ名を与えられるほどの強者だというコトだ。

 

 

 

 

「おもしれぇ……」

 

 

 さらに2体の狼を倒し、ついに弁当コーナーが見えた。もう少しだ!!

 

 

 

 

 

「そうはさせないにゃ!!」

「私たちを忘れてない?」

 

 

「凛、花陽……」

 

 

 昨夜、この2人のボコボコにされた苦い記憶を思い出す。だが……

 

 

 

「昨日の俺と思うなよ。腹の虫は昨日より段違いに唸りを上げてるぜ」

 

 

 

 今日は俺が先に仕掛けた。直線状ではなく、カーブを描きながら2人の元へ向かう。この2人の戦術は、買い物かごを使って俺をサンドイッチにするコトだ。つまり2人の間に入らなければいい。

 

 

 

 2人も俺に端から回り込まれないように、お互いが逆方向に走っている。だがそれはまさしく俺の読み通りだ。

 

 

 

 

「悪く思うなよ!花陽!!」

 

 

 隙を見て、俺は花陽だけに向かって突進する。花陽と凛、2人のコンビネーションは最強だ。だが単純な話、2人を"同時"にやっつける必要はない。1人を先に撃破すれば、必然的にもう1人のパワーもダウンする。俺はそれを狙った。

 

 

 

 花陽と凛は俺の挙動を意識するあまり、お互いが離れすぎていた。もう凛は俺を止めるコトはできない。俺たちの距離が離れすぎているし、何より凛と俺たちの間には他の狼たちが戦っていて通れない。

 

 

 

 

 俺と花陽が激突した。花陽もただ俺に突進されるだけではなく、拳を下から上にすくい上げるように振り上げる。

 

 

 

 

 

 結果は相撃ち。

 

 

 

 だが、床を滑っただけの花陽に対し、俺は宙を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

 俺は花陽と凛の作戦にハメられていた。。地上と違って、空中では2人の間を遮るモノが何もない!!

 

 

 状況を把握した時には遅かった。既に花陽と凛はかごを持って飛び上がり、俺の左右にいる。

 

 

 

「ごめんね、零君」

「これで終わりだにゃーー!!」

 

 

 左右から2人が買い物かごを持って突っ込んでくる。

 

 

 また俺はかごに閉じ込められてしまうのか……ここで終わりたくねぇ……でもどうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 !!……今何か音が……この音は……

 

 

 

 

 

 ぐぅ~

 

 

 

 俺の腹の音だ!俺の腹の虫が唸りを上げている!!

 

 

 

『”腹の虫”はにこたちに加護を与えてくれるわ。空腹感と弁当を食べたいという欲求によって、普段よりも身体能力が上がるのよ。この争奪戦には筋力や格闘技経験なんて問題じゃない、腹の虫の加護によって勝敗が決するわ』

 

『決めたのなら、黙って精神を集中させなさい。そうしたら腹の虫が力をくれる。空腹は最大の武器なんだから』

 

 

 にこに教えてもらった教訓が頭に浮かんでくる。そうだったな……

 

 

 

 

 

 俺は両腕にすべての力を集中させ、左右の腕を同時に横に伸ばした。

 

 

 

 

ガシ!!

 

 

 

「にゃ!?」

「うそ!?」

 

 

 2人は驚愕している。そりゃそうだ、俺が2人のかごを手で押さえつけたんだからな。右腕は右に、左腕は左に伸ばして花陽と凛の攻撃を完全に防御する。

 

 

「俺は今……」

 

 

 腹の虫は鳴り止まない。その鼓動が俺の全身に力を与える。

 

 

 

「とても腹が、減っているんだぁああああああああ!!」

 

 

 その両腕を思いっきり振り下げる。かごを掴んだままの花陽と凛は、その勢いで床に一直線に落下する。

 

 

 

 

「う、うわぁあ!!」

 

 

 空中で無理な体勢をとったためか、俺の身体もあらぬ方向に曲がり落ちていく。

 

 

 

 

 

ドシーン!!

 

 

「いってぇええええ!!……ってあれ?」

 

 

 てっきり床に叩きつけられると思っていたのだが、落ちたのは僥倖にも弁当コーナーの上だった。

 

 

 目の前には『おろしロースかつスペシャル』が転がっている。

 

 

パシ!!

 

 

 手を伸ばして弁当を掴む。

 

 

「……ゲットした……半額弁当を」

 

 

 

「やったじゃない!」

 

「にこ……」

 

 にこの手には既に『牛カルビエビフライ弁当』が握られている。

 

 

 

 ちょっとあっけなかったが、ついに俺は半額弁当を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「「「「いただきま~す!」」」」

 

 

 俺は『おろしロースかつスペシャル』、にこは『牛カルビエビフライ弁当』、花陽と凛は当初の目的とは違ったが『チーズデミグラスハンバーグ弁当』を手に入れた。

 

 

「うはぁ~いい匂いだな~」

 

 

 湯気の水滴がついたフタを開けると、ロースかつの香ばしい匂いが顔全体を包み込んだ。

 

 

「匂いもそうだけど、しっかりと味わって食べなさい。戦いで掴み取った弁当は格別なんだから!」

 

 

 割り箸でロースかつの真ん中の部分を掴む。いよいよ狼生活、第一口目が投入されようとしている。

 

 

 

パクッ

 

 

「う、うめぇえええええええ!!!」

 

 俺の箸は止まらずに、ロースかつをどんどん口に放り込む。

 

 

「零君、がっつきすぎだにゃ!」

「でも、とても美味しそう」

「それだけ嬉しそうに食べてくれるなら、作った人も店員も喜ぶでしょうね」

 

 

 

「お前らの言った通りだよ、勝ち取った弁当は格別だ!」

 

 早いもので、弁当はもう半分なくなっていた。

 

 

 

「俺、これからもココに来るよ。また勝利の味を噛み締めたいからな。覚悟しろよお前ら!!」

 

 

「ふん!次はにこの洗礼を浴びせてあげるわ!!」

「その時はリベンジだにゃ!!」

「うん!覚悟してね、零君!!」

 

 

「よっしゃ!いつでもかかってこい!!」

 

 

 

 

 新たな狼の誕生を祝福するかのように、大きな満月が光を放っている。

 

 

 

 こうして狼たちの夜は更けていった……

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「そういや1つ思ったんだけどさ」

 

「なによ?」

 

 

 

「いつも空腹ならラブライブ優勝できるんじゃね?」

 

 

 

「「「……」」」

 

 

「なぜそこで黙る!?」

 

 

 

 

 

本当に終わり!!

 

 




個人的にはうまく話の構成を練れたと思うんですが、キャラがあまり出せなかったのが心残りです。もしかしたら、いずれまた新たなラブライブキャラを登場させてこの話をやるかも……


ガッツリとした戦闘シーンは初めてだったので、その部分はお粗末だったかもしれません。命の奪い合いなら向こうの作品でやっていますが。




次回は零とことりが保健室で……




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