ラブライブ!~μ'sとの日常~【完結】   作:薮椿

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久々に恋愛モノ。私の腕ではこれが限界です。



※零の恋愛事情について

一部話でも言及してますが、普段セクハラまがいなことをしている彼が、突然μ'sのみんなから本気で好意を向けられると弱いです。肝心な部分は奥手なのです。


ことりと保健室で……

ガラガラガラ

 

 

「ことり!?」

「零くん!?」

 

 

 

 保健室にいたのはことりだった。そういや保健委員だったっけ?

 

 なぜ俺が保健室を訪ねたのかというと、さっきの体育の授業で膝を擦りむいてしまったからである。授業は何とか乗り切れたが、終わってから再び痛み出したため保健室に駆け込んだのだ。

 

 

「保健の先生はいないのか?」

 

「うん。だから今はことりがお留守番してるんだ。でも零くん、急にどうしたの?何かことりに用事?」

 

「いや、体育で膝を擦りむいちまってな。悪いけど、ガーゼか何かないか?」

 

「分かった。じゃあここに座って」

 

 ことりは俺を補助しながらイスに座らせてくれた。こういう細かい気遣いができるのがことりのいいところだ。

 

「えぇ~と、ガーゼ……ガーゼ……あった!」

 

「そんなに慌てなくてもいいって」

 

「ダメだよ~怪我したところはすぐに塞がないとばい菌入っちゃうよ」

 

 ことりは湿布と消毒液を持っていそいで俺の元へやって来る。かすり傷程度のケガだというのに、まるで自分のコトのように心配してくれている。

 

 

「ちょ~とだけ、動かないでね」

 

 俺の膝に消毒液が放たれる。

 

「いってぇ!!何で直接噴射するんだよ!綿棒とかでやってくれよ」

 

「もう!男の子なんだから我慢!」

 

 お前は俺のお母さんかよ……それにしても本人は怒っているようだけど、頬っぺをぷく~と膨らませながら怒っているため可愛く見える。

 

 

「よしできた!痛み収まった?」

 

「そんなに早くは収まらないけど、まあ少しは引いたかな」

 

 脚を動かして調子を確かめる。ことりがやってくれたおかげかもしれないが、かなり痛みは引いてきたようだ。

 

 

「この後の授業はどうするの?」

 

「海未から先生に言ってもらえるように頼んであるよ」

 

「そっか……」

 

 さっきと違って、ことりの声のトーンが低くなった。その後は黙ったまま余ったガーゼや消毒液を救急箱に戻す。

 

 

「ねぇ零くん、隣座ってもいい?」

 

「あ、あぁいいけど……」

 

 イスは俺が占領していたため、ことりはすぐ隣のベッドに腰掛けた……って

 

 

 

 ちけぇええええええええええええええええええええええ!!!

 

 

 

 ことりが座ったのは俺の隣であっても、もう少しで肩がぶつかりそうなぐらい近かった。お互いに呼吸の音が聞こえそうだ。何でそんなに近くに座るんだよ!!いやとっても嬉しいけど、急に来られても困るっていうか……あ、いい匂いした……

 

 

「こ、ことりさん、ちょこ~と近いような気がするのですが……」

 

「零くんは、ことりと一緒だとイヤ?」

 

「全然イヤじゃない!むしろ歓迎、大歓迎だよ!!」

 

「じゃあもっとそっちに行っちゃお♪」

 

 ことりはさらにグイッと俺に近づき、挙げ句の果てに俺たちは1つのイスに2人が座るという荒技を繰り広げた。初めは何かのイタズラだと思っていたのだが、ことりの顔は真っ赤っかである。恥ずかしいならしなきゃいいのに……

 

 

「あ~!零くんの顔すごくあか~い!」

 

「人のコト言えるか!!ブーメラン、自分に返ってきてるぞ」

 

「えへへ~♪」

 

「本当にどうしたんだよ急に。嬉しいコトでもあったのか?」

 

「今がまさに嬉しい時だよ」

 

「今って、俺と一緒にいる時が?」

 

「うん!私、あまり零くんと2人きりになったコトなかったなぁ~って思って」

 

「そういえば……」

 

 

 そう言われてみればことりと2人きりってのは今までなかった気がする。ことりはいつも穂乃果や海未と登下校してるし、学院にいる時も一緒だ。もちろん練習の時はμ'sのみんながいる。いつも誰かが傍にいるから、こうやって2人きりで話すのはもしかしたら初めてかもしれない。

 

 

 

「だから、私もちょっとだけ授業サボっちゃおうかな~なんてね」

 

「海未に知られたら怒られるぞ。まあ、その時は俺も怒られてやるよ」

 

「え~そんなの悪いよ~」

 

「俺の看病してくれったって言えば分かってくれるさ」

 

 

 どうせ、『ことりにあらぬコトしていたんでしょう!』とか怒られるんだろうな。海未は穂乃果には厳しいがことりには甘い。その流れで俺も許してもらえないだろうか。

 

 

 

「じゃあお話た~いむ♪」

 

「急に切り替わったな」

 

「ご趣味は?」

 

「そんな基本的な会話から!?初対面じゃあるまいし」

 

「基本的なコトだからだよ」

 

「あ、そう。えぇ~と趣味は……女の子鑑賞?」

 

「具体的には?」

 

「え゛!?」

 

 あれ引かれない?引かれるような話題を振って話の主導権を握ろうかと思っていたんだけど、まさかそこにツッコんでくるとは思わなかった。

 

「はやく~」

 

「気に入った子の写真を撮ったり、スリーサイズ調べるとか」

 

「ほかには?」

 

「ほか!?セ、セクハラ発言とか」

 

「うんうんその言葉を待ってたんだよ。それでこそ零くんだね♪」

 

「何の罰ゲームだよ、コレ……」

 

 自分から変態は暴露しているものの、自分の行動まで晒されるのは恥ずかしい。しかも自らの口によってだ。稀に発動することりのドSには困ったものだな……

 

 

「だったらお前の趣味は何だよ!」

 

「お菓子作りと衣装作り!!」

 

「うん知ってた」

 

 この話題では逆転できそうにない。他の話題に切り替えなければ……

 

 

「あの~零くん」

 

「ん?」

 

「またことりが作ったケーキ、試食してくれないかな?」

 

「何だそんなコトか。いつでもいいぞ」

 

「ありがとう♪今回は新作ケーキだよ」

 

「新作か……穂乃果や海未もきっと喜ぶと思うよ」

 

「ううん、違うの」

 

「違う?」

 

「そのケーキは零くんのために作りたいから」

 

 『零くんのため』、その言葉が俺の心に大きく響く。自慢ではないけど、学院ではことりからだけではなく全く知らない女子生徒たちから手作りのお菓子を貰うコトもある。もちろんそれも嬉しいのだが、あのことりが俺だけのために作ってくれる方が何倍、何十倍、何百倍も嬉しい。

 

 

「もしかして、迷惑……だった?」

 

 

「迷惑だなんて、むしろ嬉しすぎるよ!そりゃ好きな人から貰えるなら嬉しいに決まってる」

 

 

「す、好き!?」

 

 

「あっ!ちょっ、これは……その、違うんだ!いや違わないけど……何ていうか」

 

 自分の言葉選びがヘタクソだったため、ことりにあらぬ誤解を招いてしまった。だがその誤解も丸っきり違うというのではなく一部だけ違う。かなりぼかした表現だが許してくれ、俺が耐えられそうにない。

 

 

「ち、違うの?違わないの?」

 

 ことりは周りをキョロキョロしながら俺に問いかけてくる。明らかに動揺している。彼女の顔は先ほどまでの真っ赤っかではなく、ぽっと頬を染めていた。まるで"あの時"の穂乃果や真姫のように……

 

 

「これだけははっきりとしておこう……違わないよ。それだけは絶対に、俺はお前のコトが好きだ」

 

「ことりも、だからこうやって一緒にお話したかったんだ。少しでもあなたに近づけたらなって」

 

「ことり……」

 

「時々思い出すんだ。自分探しのためにメイドをやってた時のコトや、留学で迷っていた時のコト」

 

 

 そういえばあったな。メイドとして働いていた時は穂乃果と海未の足を引っ張ってると思い込んでいた。留学騒動ではラブライブ予選に向けて頑張っているμ'sに話を切り出せなかった。そのため解散直前にまで追い込まれた経緯がある。

 

 

「ことりが迷っていた時、零くんが励ましてくれたんだよね。それからだったかな、零くんの存在がドンドン自分の中で多くなってきて、いつの間にか零くんを目で追っていた。お弁当を作ってきてくれって言われた時は嬉しかったんだよ」

 

「弁当か、初めに頼んだのがお前だったよな」

 

「うん。その時に自分の心がはっきりしたんだ、私は零くんが好きなんだって」

 

 

 面と向かって『好き』と言われるのは生まれて初めてだ。不測の事態には強い方だが、こういった突発的な恋愛話に関してはめっぽう弱い。俺はことりの言葉を黙って聞いていた。

 

 

「でも零くんの"好き"は、ことりの"好き"とは違うよね?」

 

「あ、あぁ……それは」

 

「大丈夫だよ分かってるから。でもいつか、零くんを本当の"好き"にさせてみせるから!」

 

「こ、ことり……」

 

 

 俺はさっきからずっとことりを見つめていた。おっとりしながらも惹かれる顔立ち、ファンからも絶賛のスタイル。アイドルとしても女の子としても魅力的な彼女。ことりは俺に励まされたと言っていたが、それは俺もだ。彼女の笑顔や優しさは、いつの間にか俺の支えになっていた。そのことりが俺のコトを……

 

 

「ありがとな、とっても嬉しいよ。でもさっきお前が言ったのはその通りだ」

 

「うん。だから振り向かせてみせる!」

 

 

 その時からだった、俺が彼女、そして彼女たちの見方が大きく変わったのは……

 

 

 

 

「あっ!もうこんな時間!零くん、そろそろ教室に戻らないと」

 

「ホントだ、じゃあ戻るか!」

 

 

 知らない間にかなりの時間が経過していた。脚の痛みも引いているようだから、そろそろ戻っていいだろう。

 

 

 

 だが立とうとしたその瞬間、

 

 

 

「いてっ!!」

 

 

 急に膝を動かしたため、溜まっていた痛みが解放され脚全体を襲った。

 

 

「きゃ!!」

「うわぁ!!」

 

 

ドサッ!!

 

 その衝撃で俺はバランスを崩し、ベッドに倒れ込んでしまった。ことりを押し倒して……

 

 

 

「ごめん!!」

 

 俺は咄嗟に謝ったが、ことりからの返事はなかった。それはそうだ、俺たちの顔は僅か10cmぐらいの距離まで近づいていた。ことりは驚いた表情をしていたが、覚悟を決めたかのように目を瞑ってしまった。

 

 

 顔が近い、ということは口も近い。もしかして、もしかしなくてもこれは……

 

 

 

 

 そこから先は俺もよく覚えていない。1つ言えるのは、お互いに理性を失っていたというコトだけだ。

 

 

 

 

 俺の口がことりの口に迫る。なんて柔らかそうな唇なんだ。こんなモノを見せられたら俺は……

 

 

 

 

 後5cm……1cm……そして……

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ

 

 

 

 

「零くーーん!大丈……」

「穂乃果、零は怪我をしているのですから静か……」

 

 

 

 

 保健室に穂乃果と海未が入って来た。2人共最後まで言葉を言わずに固まっている。

 

 

 あ……この状況……

 

 

 

 

 

「零君!!ことりちゃんと何してるの!?!?」

「零、あなた最低です!!元々変態だと思っていましたが、まさかここまでとは!!」

 

 

「待てって!!ことりからも説明を……っていないし!!どこ行った!?」

 

 

「零君説明して!!」

「今日という今日は逃げられませんよ!!」

 

 

 

「だから待ってくれぇええええええええ!!」

 

 

 そして空気を読んでくれぇえええええええええええええ!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 ことりは1人、廊下を歩いていた。

 

 

 

 

「し、しちゃった……ほんの少しだけど」

 

 

 実は、2人の唇は僅かだが触れていた。すぐに穂乃果と海未の乱入があったため、零は気付いていないがことりには分かっていた。

 

 

 

「しちゃったぁ……しちゃったんだ♪」

 

 

 保健室から聞こえる断末魔は耳に入ってこない。ことりはスキップで教室に戻っていった。

 




今回は久々の恋愛回でした。20話ぐらいで予告していたのにも関わらず、今さらなのは単純な恋愛モノが個人的に難しいからです。特に零君の立ち位置。いつもとキャラが違うので苦労します。

彼はまだまだ奥手ですが、この先μ'sのみんなとの個人回でどんどん成長させていくつもりです。暖かく見守ってやって下さい。



次回はまだ決まっていませんが、リクエストを頂いたのでそちらを書き進める予定です。

ではまた!
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