穂乃果に抱っこされ、1階に降りた俺たち。早速、海未とことりが昼食(俺にとっては朝飯)の準備にとりかかった。
適当なものでいいって言ったんだが、2人はあれこれと話し合って作っているようだ。
「ことり、それ取ってくれませんか?」
「うん!海未ちゃん、これってこのぐらいでいいかな?」
「はい。また料理の腕があがっているみたいですね」
「結構練習してるんだ~」
エプロン姿の2人を見て、俺の為に御飯を作ってくれていると思うと心の中から幸せが込み上げてくる。毎日作ってもらえるのなら、いっそこの姿のままでもいいと思ってしまう。
「零君!」
「なんだよ穂乃果」
何故このひと時の邪魔する。ちなみにこいつは料理はできないため、俺と待機中だ。
「せっかくだし遊ぼうよ!ほら、おもちゃも一杯あるし」
穂乃果の隣にはカゴが置いてあり、その中には明らかに子供が遊ぶようなおもちゃが置いてあった。どうやら姉さんが、このことを想定して置いていったみたいだ。舐めやがって……
「ほら!ガラガラだよ~」
「それ赤ちゃんが遊ぶやつだろ!ガキ扱いすんな!」
「でも今は赤ちゃんだよ」
「否定はできんが、それでは遊ばん!」
「穂乃果ちゃんずる~い。私も零君と遊びたい!」
むしろお前が俺で遊びそうで怖いんだが。
「何をしているんですか……御飯できましたよ」
待ってました!女の子の料理を食べられるなんて、ガキも悪くないな。たまに姉が帰ってくる時以外は1人なので、大勢で飯を食えるのは少し嬉しかったりもする。
「おぉ~!すごくいい匂い」
海未とことりが作った料理はチャーハンだった。俺が作ってもここまで上手くできないだろう。一人暮らしだからこそ、食事は適当でいいやってなってしまう。
「「「「いただきます!」」」」
「零君、零君!穂乃果が食べさせてあげようか?」
「断る!」
ガキ扱いするなって言っただろうに。
しかし、いつもと体の勝手が違うのかスプーンすら上手く扱えない。チャーハンも少しポロポロと溢れてしまう。
「もう!しょうがないな~。はい!あ~ん」
穂乃果がスプーンを俺の口の前に突き出す。仕方ない……
パク!
美味しい……
「私も!はい!あ~ん」
次はことりが食べさせようとする。
えーい!こうなったら羞恥心は捨てよう!
パク!
「わ~!食べてくれた~!」
ことりは俺のことを本当に赤ちゃん扱いしているのかもしれない。
「次は私ですね。あ~ん」
「って!?お前もかよ!?」
海未がこういうことをするなんて珍しい。てっきり恥ずかしがってやらないと思っていた。
ここまで来たら、拒否する理由もないので
パク!
羞恥心を捨てたといっても、やっぱ恥ずかしいな、これ。
「零君、顔真っ赤だよ!」
この俺がそんな訳ないだろと思ったが、この状況。複数の女の子から料理を食べさせてもらえるなんて、男にとっては夢のようなシチュエーションではなかろうか。そう考えた瞬間、自分でも顔が熱くなっていることがわかった。
「零君かわいいね~」
「今までの仕返しということで」
みんないい顔してやがる。元に戻ったらどうしてくれようか……
~※~
昼食(朝飯)を食べ終わり、やろうと思っていた部屋の片付けも済んだ時には既に15時になっていた。今日は暖かく、さらに飯を食って一仕事終えて疲れていたためか、急に睡魔が襲ってきた。
「零君、眠たいのぉ?」
「そういうお前も眠そうだな、穂乃果」
「こっちにおいで~」
寝そべる穂乃果が俺をあま~く誘う。
ガキ扱いされるのは癪だが、睡魔に襲われている俺は正常な判断ができなくなっていたためか(そう思いたい)、よろよろと穂乃果の元へ近づいていった。
ギュ!
穂乃果が俺を抱き寄せる。
あたってる!2つの膨らみがあったてるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
「いい子いい子」
もはや俺のことは完全に赤ちゃん扱いらしい。
俺の睡魔は完全に消え去り、穂乃果の温もりに浸っていた。
「じゃあ私も~」
ことりが俺の右に寝そべった。
「ぎゅ~」
そしてことりからも抱きしめられる。すごくいい匂いがするんですけど!!ずっと嗅いでいたい!!決して匂いフェチではないのだが、今にも目覚めそうだった。これだと俺って変態じゃないか!?いや、変態だったか……
じぃ~
どこからか視線を感じる。少し顔を上げると、海未がじっとこちらを見ていた。顔を赤らめ、俺たちを凝視している。昼食の時は積極的であったが、やはり一緒に寝るとなると恥ずかしいのだろう。
「海未ちゃんもおいでよ!」
ぐりん!と穂乃果は俺を持ち上げ回転する。赤ちゃんクラスの体になっている俺では、抵抗することなどできるはずもなく、穂乃果に胸元に抱えられる。まるで穂乃果をベッドにしているようだ。
「それでは、失礼します」
そう言って、恥ずかしながら海未も寝転がる。
現在、俺は穂乃果に抱きかかえられ、右にことり、左に海未がいる状況である。
いつもセクハラ発言が絶えない俺だが、意外にこのような状況になると戸惑ってしまう。案外チキンなのかもしれない。
~※~
どれくらい時間が経ったのだろうか?俺の位置からでは時計は見えない。
「「「すぅすぅ…」」」」
3人とも可愛い寝息を立てながら眠っている。
ゴソッ
急にことりと海未がこっちに向かって動いた。一気に俺との距離が近くなる。手を伸ばせば、そこに女の子たちが!
しかし、そこでグッと堪えた。寝ている女の子に手を出すなど卑怯者だ。
伸ばしかけた手を引っ込め、今の幸せを噛み締めつつ二度寝した。
~※~
俺が起きた時には既に3人は起きており、夕食の準備に取り掛かっていた。その時の内容は昼食の時と同じなので割愛。簡単に言えば、また「あ~ん」地獄であった。
気が付くと、部屋に荷物が増えている。一体どういうことだろう?
「なあ、あの荷物何なんだ」
「私たちの着替えだよ」
「着替えって!?まさか泊まるのか?」
どうやら一旦家に取りに帰ったらしい。
「だって、そんな姿の零君を1人にできないし」
ことりと海未もウンウンと頷く。
「そうか、悪いな」
「困ったときはお互い様だよ!」
これがこいつらのいいところだ。俺が彼女たちに出会ったのは高校2年生になってから、つまり出会って1年も経っていないのだ。それなのにここまで俺を心配してくれるとは……だからこそ俺も彼女たちにセクハr…いやいや惹かれたのかもしれない。
「じゃあ、そろそろ風呂にでも入るか……」
「「「!!!」」」
「何だ!?そんなに驚いて?」
その瞬間、俺も自分の言ったことを理解した。今の俺は歩くこともままならない子供なのだ。当然、風呂に入るなんてできる筈がない。俺が風呂に入るためには、誰かと一緒に入らなければならないのだ。
「じゃ、じゃあ穂乃果が一緒に入ってあげようかなぁなんて……」
「なにぃ!?」
「穂乃果ちゃんが一緒に入るなら、私も一緒に入る!」
「ことりまで!?」
「2人ばっかりに迷惑をかけられません!私も入ります!」
「海未!お前もか!お前は止める係だろ!」
と言いつつも、俺の期待はMAXを振り切っていた。もう誰にも止められない!俺は今から天国に行ってくるぜ!!
~※~
「どうしてこうなった……」
現在、風呂内部。4人一緒に風呂に入り、キャッキャウフフな出来事を想定していたのだが…
「どうして目隠しされているんですかねぇ」
俺は顔にタオルを巻かれ、目隠しされていた。
「当然です!外見は子供でも、中身は零ですからね」
まあ、こういうことだろうと思ったよ、でも少しくらい夢見させてくれてもいいじゃねぇかよぉぉぉぉぉぉ!
しかし、ここで俺は考えた。誰かに顔を押さえつけられている訳ではない。タオルを外そうと思えば、自分で外せるではないか!
俺は迷わなかった。小さい手で少しずつ、少しずつタオルをずらしていく。今はまだ湯気で何も見えない。だが、もう少しでくっきりする筈だ!今見えているのは誰だ?あの髪の色から推測するに海未であろう。この際、この後どうなっても構わない!今!目の前の桃源郷を見る!
タオルが目元から外れ、視界もくっきりしようとしてきたその瞬間!
「ごめんね♪」
ピュー
ことりの声が聞こえたと同時に、ことりが持っていた水鉄砲のお湯が俺の目にダイレクトヒットした。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やっぱり海未ちゃんの言った通りだったね」
「はい、ことりに水鉄砲を持たせておいて正解でした」
俺の行動は完全に読まれていたらしい。
その後は監視の目も厳しくなり、俺が桃源郷を拝むことはなかった。
~※~
風呂を出たあとは特にすることもなかったので、トランプしたりゲームしたり、俺の部屋でアレな本やDVDが見つかって怒られたりした。そんなこともあってか、時間は深夜0時を回っていた。
「1人で大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。それに寝ている時に元の体に戻るなら、一緒には寝れないだろ」
俺としては一緒に寝てもいいのだが。
「そっか、それじゃおやすみ!」
「おやすみ、零君!」
「おやすみなさい」
「おう!おやすみ」
俺の部屋の電気を消して3人が出ていく。
「昼寝したのにすごく眠いな。これも子供になった影響かな」
目を閉じながら、今日の出来事を振り返る。大変なこともあったけど、穂乃果たちと一緒に過ごせたのは悪くない。なんだかんだ言って、あの3人といるのはとても楽しい。
俺はベッドに転がりながらふと、あの3人に出会ってからのことを思い出した。大失敗のファーストライブの時に、俺が『お前たちを守る』って約束をしたことがあったな。
「この借りは、ラブライブ優勝っていう形で絶対に返してやるからな」
そんなことを思いつつ、俺は夢の世界へ旅立った。
翌朝、俺の体が元に戻ったせいで子供サイズの服がビリビリに破れ、裸で寝ていた俺を起こしに来た穂乃果たちと一波乱あったのは、また別の話……
今回は書いていて物凄く楽しかったです。今までも楽しくなかった訳ではありませんでしたが、変態の主人公が書ける点では今回の話が最高かなと。自分自身、変態だけど、いざというときにはやるって主人公が好きです。クール系よりかは普段からテンションが高い人ですね。皆さんはどんなタイプの主人公が好きなのでしょうか?
ではこの辺で失礼します。ありがとうございました!
次回はμ'sの演劇回!