今回は2人に脳を溶かされること間違いなし!!
零の家
ピンポーン!
「今出る!」
俺は……俺はこの時を……今日という日を待っていた!!なんせ俺が人生の合間を縫って制作していたアレが火を噴く日が来たからだ。楽しみ過ぎて寝すぎちまったぜ!!
ガチャ!
「こんにちは~零くん♪」
「お、お邪魔します!」
「来たな!ことり!海未!さあ入ってくれ!」
この2人が俺の家に来た理由は単純、海未にある特訓をするためだ。
「本当にやるのですか……?」
「ここまで来て何言ってんだ。俺はやると決めたからにはやる男だ!」
「あなたの特訓ではないでしょう……」
「大丈夫だよ海未ちゃん!ことりもついてるから、頑張ろ!」
「え、えぇ……」
「今日の特訓はお前のその不安を取り除くためだろ?俺も応援するから頑張れ!…………フフフフ」
「最後の方、不敵な笑みが聞こえたような……」
特訓の内容は、海未の羞恥心を極力減らそうという取り組みだ。海未はライブに限らず緊張しやすいという欠点がある。もしその緊張で、みんなの足を引っ張ってしまったらどうしようと相談されたのが始まりだった。それで緊張や羞恥心を克服するための特訓なのだが、1人では特訓にならない可能性があるので付き添いとしてことりにも来てもらったのだ。
俺がことりを呼んだのは付き添いのためだけじゃないんだけどな……
「じゃあ着替えてくるね♪行こっ!海未ちゃん!」
「待て!海未が着る服は俺が用意してある」
「え゛ぇえ!?なぜです!?」
「特訓のためだ、諦めろ」
「もう帰りたくなってきました……」
「今来たばっかだろ!!とにかく、ハイこれな。お前のサイズにピッタリのハズだから」
「すごぉ~~い!!零くん服作れたんだね!」
「あぁ……この時のために頑張ったんだ。海未に着せるコトだけを想って作ったこの服を」
この服を着た海未をどうやって弄ってやろうかと想像するだけで制作が捗った捗った!やっぱり普段から妄想力を鍛えておいて正解だったな!
「よし!海未ちゃん、さぁ行こぉー!!」
ガシ!!
「ちょっとことり離してください!!自分で歩けます!!」
ことりが海未の腕を掴みながらズルズルと洗面所に引きずって行った。それにしても、海未と違ってことりはやけにノリノリだな。まぁ、いつも"あの服装"でアルバイトしてるから慣れているんだろう。
~※~
「じゃ~~~ん!!どう零くん、似合ってる?似合ってる?」
「大天使様がご降臨なされた……」
俺の目の前に降臨したのはメイド服姿のことり、つまり大天使様だ。ちょくちょくことりのバイト先であるメイド喫茶には足を運ぶが、今日は俺だけのメイドになってくれると思うとスーパーハイテンションになる。ちなみにメイド服は特別に店の許可を得て貸してもらったらしい。流石はミナリンスキー、伝説のメイドだ。
「もちろん似合ってるよ!!すべてのメイド服はお前のためにあると言ってもいい!!」
「ありがと~♪でも海未ちゃんもとっっっっっっっても可愛いよ!!」
「そりゃそうだ!俺が作った服なんだからな!それで?海未はどこに?」
「あれ?さっきまでそこにいたんだけど…………あっ!お~い海未ちゃ~ん!そんなところに隠れてちゃダメだよ~!」
ことりの目線の先を見ると、そこには海未が顔だけをリビングに出し、モジモジしながら廊下に佇んでいた。いつものキリッとした表情の海未もいいけど、涙目になって見つめてくる海未も大変可愛くてよろしい。
「零!!この服は何ですか!?普通のメイド服ではないじゃないですか!?そもそも黒を基調としたメイド服なんて聞いたコトがありませんよ!!」
「ことりが大天使メイドなら、お前が堕天使メイドをやらなきゃ釣り合いが取れないだろ?世界の法則が乱れちまう」
「うぅ……どうして私がこんな目に……」
「恥ずかしいのは最初だけだよ!ほら海未ちゃん!」
「ことり!!引っ張らないでください!!」
ことりが廊下に立っていた海未をリビングへ引っ張り出す。その勢いでよろけながらも海未は何とか体勢を立て直した。動くたびにメイド服に取り付けられた堕天使の翼がヒラヒラ揺れる。一応色が黒いコトと、翼が付いているコト意外は普通のメイド服だぞ。
「……」
「零?」
「いや悪い、似合いすぎていて声が出なかった。黒メイド服、いい感じじゃん。いつもの海未は綺麗って感じだけど、今のお前は間違いなく可愛いよ。是非ご奉仕してもらいたい!」
「それは……その……ありがとうございます……」
「海未ちゃん顔あか~い♪」
「なっ!?これは違います!!恥ずかしいだけです!!」
初めはちょっとだけおふざけだったが、実際に黒メイド服を着た海未を見てみるとこれはこれでアリだなと思ってしまう。髪の色と相まって、この黒メイド服はコイツのためだけにあると言っても過言ではない。
「よ~し!それじゃあ今から特訓開始だ!!」
「特訓って、具体的に何をするのですか?私にとってはこれを着ているだけでも十分なのですが……」
「それだけで終わると思うなよ。まずは俺の呼び方からだ!メイドなんだから、"ご主人様"って呼んでみ?」
「はぁ!?」
「何のためのメイド服だと思ってんだよ。まぁ、いきなりは無理かもしれないな。じゃあことり!お手本頼む!」
「は~い♪」
ことりはすぅ~と息を吸い込む。もう既に俺の心臓がバクバク唸りを始めている。俺がメイド喫茶に行く理由はまさにこれなのだ。
「お帰りなさいませ!!ご主人様♪」
ブシャーーー!!!!
「え゛ぇえええ!?零が鼻血を出して倒れましたよ!?」
「海未ちゃん!!零くんの輸血手伝って!!」
「なぜ輸血キッドがあるんですか……」
「零くん、いつもことりを指名してくれるんだけど毎回こうなっちゃうの。だから零くんにメイド服を披露する時には、決まって輸血キッドを持ち歩いているんだよ」
「店にとっては迷惑極まりない話ですね……」
我が人生に、一生の悔いなし……ガクッ!
~※~
「途中お見苦しい点がありましたが、俺は元気です」
「珍しいですね、零が鼻血を出すなんて」
「メイド萌えだし、ことりのご主人様呼びは本当に胸打たれるからな。それに、"零"じゃなくて"ご主人様"な」
「ぐっ……恥ずかしいです……」
「オイオイ、それだと特訓にならないだろ?」
今回は海未とことりのメイド姿を拝むのではなくて、あくまで海未の羞恥心克服のための特訓だ。俺としてはこのまま2人を拝むだけでも別にいいのだが。
「海未ちゃん♪特訓特訓♪」
「……分かりました、潔く諦めましょう」
「そこまでイヤなのかよ……」
「い、いきますよ……」
「おう」
たかが"ご主人様"って言うだけで相当な覚悟を使っている。そりゃあそんな調子だとライブ前に緊張もするわな。
海未はことり以上に大きく息を吸い込む。身体全体をモジモジとさせながら、顔を真っ赤にして恥らいつつ俺の目を見つめてくる。あっ、これヤバイ。輸血準備頼む。
「お、お帰りなさいませ!!ご主人様♪」
ブシャーーー!!!!
「れ、零!?」
「零くん輸血輸血!!」
「ことり、俺もう助からないかもしれない……」
「ダメだよ零くん!!目を閉じちゃダメ!!」
「死ぬ前に一度、メイド姿のお前とベッドインしたかったぜ…………ガクッ」
「零くーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
「なんの茶番ですか、コレ?」
~※~
「再び見苦しい場面があったが、次の特訓にいこう」
「休まなくてもいいのですか?もう輸血可能な血が残ってませんよ」
「心配すんな、もう大丈夫だ。これからはしっかり、お前をことりと並ぶ伝説のメイドに成長させてみせる!!」
「趣旨変わってますよ!?!?」
「海未ちゃんならお客様からたくさんご指名されそう。一緒にバイトしない?」
「しません!!ことりも零に悪乗りしないでください!!」
俺も海未がメイドになればいい線いくと思うんだけどなぁ。少なくとも海未がバイトする日は毎回行くぞ!そう言えば以前、ことりの代理としてメイド喫茶で1日だけ働いたコトがあったな。あの時は店が大変な事態になってたけど……
(※第15話『メイド喫茶で大暴れ!?』参照)
「それで?次は何を?」
「メシ作ってくれ。もう昼過ぎだし、昨日からずっとお前の堕天使の翼を調整してたから何も食ってないんだ」
「えっ?お昼ご飯を作るだけでいいんですか?」
「なに?もしかしてぇ~~もっとイイコト期待してたり?」
「そ、そんな訳ないでしょう!!キッチン借ります!!行きましょうことり!!」
「はぁ~い♪それでは少々お待ちくださいね!ご主人様♪」
あぶねぇ~……また輸血が必要になるところだった。どうしてあのメイド喫茶に行く男たちは鼻血を出さずにいられるんだ?俺はああなるから常にAB型の血が大量に必要なんだが。そうか、まだまだみんなはメイド萌え素人なんだな。真のメイド萌えは鼻血すら吹き出す。
~※~
「出来ましたよ、零」
2人が作ったのは、ことりのバイト先のメイド喫茶特製オムライスだ。見た目だけでふっくらしていて柔らかいコトが分かり、いい匂いが立ち込めてくる。ここまであそこのオムライスを再現出来るのならば、もう海未もあのメイド喫茶で働けるじゃん。接客さえ出来ればだが……
「"零"じゃない"ご主人様"だ!!はい!やり直し!!」
「お、お待たせしました!ご主人様!!」
「よし完璧だ!!」
まだ肩に力が入っているコトは、セリフを聞けばすぐ分かる。海未の緊張が解けるようになるにはかなり辛い道のりだな。
「……」
「食べないのですか?」
「メイドなら食べさせてくれるのが普通だろ?」
「な゛っ!?そ、それは……」
「これも特訓の1つだ。そうやって何でも恥ずかしがっているからライブでも緊張するんだぞ」
また海未はモジモジしてしまった。このまま彼女を眺めていてもいいんだが、それでは特訓にならない。しょうがないから大天使様にお手本を見せてもらうか。
「ことり、お願いしま~す!」
「かしこまりました!ご主人様♪」
おぉう!もうことりにご主人様って言われるだけで昇天してしまいそうだ。
ことりはスプーンでオムライスをすくい取る。スプーンに乗っかているオムライスの卵とチキンライスの比率が絶妙だ。これも日々のバイトの成果だろうな。
「ふ~、ふ~」
あぁ~~……ふーふーしてることりも可愛いなぁ~!!いつもは色々なお客さんにその笑顔を見せていることりだが、今は俺だけのメイドさん。あのミナリンスキーを独占していると思うと、とてつもない嬉しさが込み上げてくる。
「はいご主人様!あ~ん♪」
「あーん」
パクッ!
「どうですか?」
「美味しいよ!流石ことりだな!」
「ありがとうございます♪」
俺、もう死んでもいいですか?このままこの大天使様に天国へ連れて行かれそうなんですけど。と言うよりもう天国に着いている気がしなくもない。だがまだやり残したコトがある。そう、海未を立派なメイドに育て上げるコトだ!
「お次は海未ちゃんがどうぞ♪」
「ほ、本当にやるのですか……?」
「海未」
「は、はい!?」
「一回だけでいい。だから勇気を出して、一歩前へ踏み出してみようぜ」
「勇気…………はい、やります!」
「海未ちゃん!!頑張って!!」
海未の恥ずかしがって可愛いところは好きだけど、やっぱり俺は本番で緊張せずに明るい笑顔を見せる海未が一番好きだな。
海未もことりと同じくスプーンでオムライスをすくい取る。卵とチキンライスの比率は適当だが、そんなもの今はどうでもいい。
「ふ~!ふ~!」
女の子がふーふーしている顔って、どうしてこんなにも萌えるんだろう。たぶん海未やことりに魅力があるからだろうな。今日はいつもの海未と違って、彼女の愛らしい表情がたくさん見られる。こんな嬉しい一日はないぞ!
「ご、ご主人様!あ、あ~ん♪」
「あーん」
パクッ!
「ど、どうですか?」
「とっても美味しいよ!それに、ちゃんと言えたじゃないか!!頑張ったな、海未」
「は、はい!!ありがとうございます!!ご主人様!!」
なんていい笑顔なんだ……まだ完全には克服出来てないだろうけど、少しでも緊張や羞恥心に強くなってくれれば俺は嬉しい。表情もだいぶ柔らかくなった。いつもとは違って小動物みたいだな……ちょっと頭撫でてやるか。
「ふぇっ!?零、じゃなかったご主人様!?」
「悪い、突然撫でたくなった。イヤか?」
「いえっ!!むしろそのまま撫で続けて欲しいというか……」
「分かったよ」
「海未ちゃんずる~い!!ことりの頭も撫でてください!!ご主人様♪」
「いいよ」
右手で海未を、左手でことりを撫でた。2人は目を瞑ったまま気持ちよさそうにしている。本当に小動物みたいだ。メイドだったり小動物だったり忙しいな。でも、可愛かったら何でもいいや!!
「もういいか?流石に手が疲れてきた」
俺の手がそっと2人の頭から離れる。そして海未とことりは下げていた頭を上げ、俺の目を見つめてきた。俺は2人の綺麗な目に吸い込まれそうになる。
「ど、どうした?」
「「ありがとうございました!!ご主人様♪」」
ブシャーーー!!!!
「れ、零くん!?」
「忘れていました!!ことり!!輸血キッドは!?」
「もう血が残ってないよ!!どうしよう!?」
「とりあえず真姫に電話しましょう!!病院なら必ずありますから!!」
「ダメだよ零くん!!目を閉じちゃダメ!!」
「死ぬ前に一度、メイド姿の海未とことりの3人でベッドインしたかったぜ…………ガクッ」
「零くーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
我が人生に、一生の悔いなし……ガクッ!(本日3度目)
零君はメイド萌え過ぎて鼻血が出る症候群になったようです。ご冥福をお祈りします。
ということでどうだったでしょうか?
甘すぎて脳が溶けていても責任は取れません(笑)
初めはことりともう1人を誰にしようか迷っていたのですが、折角第15話でメイドの海未を登場させたので今回もメイドになってもらいました。誰がなったとしても甘い展開にはなると思います!