またあの妹の登場!!今度はどんな旋風を巻き起こすのか?
「着いたーーー!!」
「着いたにゃーー!!」
μ's結成史上最も無駄な争いを終えた9人は、零の自宅前まで来ていた。学校を出た時はもう完全下校時刻となっていたので、時間的にはもうすぐ夕飯の時間だ。もしかしたら零がお腹を空かせている可能性もあるので、適当に夕飯の材料を買っていたら尚更遅くなってしまった。
「でもよく考えたら零は1人暮らしですし、寝ていた場合家に入れないのではないですか?」
「確かに、考えてなかったわ……」
「じゃあ零に連絡すればいいんじゃないの?にこたちが来たから開けてって」
「でも寝てるんやったら、無理に起こすのはやめといた方がええかな」
家に前まで来て頭を悩ます海未たち。何も考えず、サッサと門を開けて敷地内に踏み込む穂乃果と凛、そして何か言いたげな様子でみんなを見つめる花陽がいた。
「どうしたの花陽?キョロキョロして」
「あっ真姫ちゃん、えぇと……私、零君の家の合鍵持ってるんだけど……」
「「「「「「どうして!?」」」」」」
「わっ!!」
先へ行った穂乃果と凛以外の6人が花陽にグイッと顔を近付ける。花陽はみんなの勢いに圧倒され、一歩後ろへ引いてしまった。6人は花陽が鍵を持っているコトにも驚いたが、何より花陽がそこまで積極的になっているコトが一番に驚きだ。いつの間に零との関係が進展したのだろうか。
「たまたま、凛ちゃんの勉強会の時に貰ったんだよ。勉強してたら来たコトに気付かないかもしれないから、勝手に入ってって言われて」
「零も零でスゴイわね、自宅の合鍵を渡すなんて……」
「確かに花陽ちゃんなら渡しても安心出来るけど、なぁにこっち」
「何でにこを見るのよ」
若干の不満を垂れながらも、7人は穂乃果と凛の後を追う。既に穂乃果と凛は玄関まで到着していて、何やら周りをゴソゴソと漁っていた。
「穂乃果ちゃん、凛ちゃん、何やってるの?」
「あっ!ことりちゃんも手伝ってよ、鍵探し」
「か、鍵探し?」
「大抵家の鍵っていうのは植木鉢の下にあるもんだにゃ!!」
「そんな、勝手にダメだよ!!それに合鍵なら花陽ちゃんが持ってるよ」
「あ、忘れてたにゃ」
「えぇ~!?どうして花陽ちゃんが合鍵持ってるの!?」
「それはさっきやりました」
穂乃果への説明はさっきと同じなので以下略として、遂に9人は合鍵を使って零の家へと侵入した。合鍵、合鍵と言っていたせいか、誰もインターホンを鳴らすという基本的行為を忘れているのは内緒だ。
「お邪魔しま~す」
「暗いわね。やっぱり寝てるんじゃない?」
「にこたちが来るって伝えておいた方がよかったわね」
もう日が落ちかけているというのに、家の中は明かりが付いていない。というコトは零はずっと自分の部屋にいて、1階には降りてきていないのだろう。そこまで動けないのかと思うと、海未たちに心配が募る。
「零君の部屋に突撃!!」
「お~!!」
「ちょっと待ちなさい!!穂乃果、凛!!」
海未の言葉を無視して穂乃果と凛は2階へドタドタ音を立てて登っていき、零の部屋のドアを勢いよく開けた。本人たちに悪気がある訳ではなく、単純に零を驚かせたいからという可愛い発想である。もちろん迷惑極まりない。
「零君!!穂乃果たちが参上した、よ……」
「晩御飯の用意もしてきた、にゃ……」
そこで穂乃果と凛は硬直した。見てはいけないものがそこにはあったのだ……
~※~
「もう!!お兄ちゃん、いい加減に諦めてよ!!そんな身体じゃあ、私に抵抗するコトなんて出来ないでしょ?」
「うるせぇ!!誰が好き好んで妹と一緒に寝なきゃいけないんだ!!俺の上に股がるな!!ベッドに入ってくんな!!」
「照れちゃって~~♪こんな美少女に迫られて、ホントは嬉しいくせにぃ~~」
「自分で言うな!!自信過剰も大概にしとけ!!」
俺は突如現れた妹様に襲われ、最悪貞操を奪われかねない事態に陥っていた。しかもこの惨状を見ると、一歩間違えれば濃厚なベッドシーンと言われてもおかしくはない現場だ。
「ん?あっ、みんな来てくれたのか!!助けてくれ!!命の危機だ!!」
「チッ、邪魔者が来やがった」
(((((((((し、舌打ち……)))))))))
穂乃果たちに容赦なく舌打ちした礼儀のないコイツこそ、俺の妹の神崎楓である。中学生とは思えないプロポーションで、下手したら高校生とも思えないが、お兄ちゃんが大好きという史上最大の欠点をお持ちになっている。μ'sは初めて楓と会った時、彼女に振り回されてボロボロになってしまった。アイツらの顔を見るに、頭に嫌な記憶がどんどん蘇っているんだろうな。
「いや~~μ'sの皆さん久しぶりですねぇ~~♪お兄ちゃんのお見舞いですかぁ~?でもこの通り私1人で看病できますので、是非ともお引き取り願いたのですが~~というより帰れ!!」
「か、帰れ!?」
「お兄ちゃんとイチャイチャ、いや違った、看病するために大勢いられるとうるさくなるので困るんですよぉ~」
(((((((((今絶対にイチャイチャって言った……)))))))))
「ほら、お兄ちゃんも苦しそうですし」
「お前のせいだお前の!!お前が来なかったら安静だったわ!!」
初めから楓ワールド展開で、μ'sはあっという間に崖っぷちに追い込まれる。その勢いは台風の目、いや楓自身が台風となっているかのようだ。楓は遠まわしにμ'sを追っ払おうとしているが、コイツの言いたいコトをまとめると、『私とお兄ちゃんの愛を邪魔するな帰れ』である。風邪による体力の低下で俺では楓を止められそうにないので、みんなには是非頑張って欲しい。
「楓ちゃん、零君が困ってるみたいだからここは穂乃果たちに任せて、ね」
「私はお兄ちゃんのコトを隅から隅まで知っています。なのでどんな看病をすれば体調が良くなるかぐらい理解してるんですよ」
「オイ、どんな看病する気だ……お前の想像の中で俺は無事なんだろうな」
「無事な訳ないじゃん☆」
「だろうな、聞いた俺が馬鹿だったよ……」
「穂乃果だって看病出来るもん!!」
「本当に出来るんですか?お兄ちゃんにあ~んをしたり、お兄ちゃんと一緒に着替えたり、お兄ちゃんと一緒にお風呂に入ったり、お兄ちゃんとくっついて寝たりとか」
「待て!!それ全部一緒にやらなくてもいいだろうが!!」
「そ、そそそそそそそそれは、でで出来るよ!!」
「動揺しすぎだ!!」
だから風邪を引くのはイヤなんだ!!もし風邪になった場合、決まって楓や秋葉のトンデモ看病が待ち構えている。だから自分自身の体調管理は徹底していたハズなのに、このザマだ。
「それで、楓さんはどうしてココに?確か両親と一緒に住んでるって言ってましたよね?」
「そんなの愚問ですよ。私のお兄ちゃんセンサーに反応があったんです。『愛しのお兄ちゃんが風邪で倒れちゃった!!お見舞いにレッツゴー!!』ってね」
「そ、そうですか……」
「『倒れちゃった!!』って軽いな……俺の扱い適当すぎね?」
それに海未の奴、楓の勢いに負けて諦めやがったな。もっと言い返してくれよ。そうでないと俺が明日生き残っているのかどうかも怪しいぞ。
「楓ちゃん、ことりたちにも看病させて欲しいなぁ~」
「例えミナリンスキーの頼みでも無理ですよ。メイド服でお兄ちゃんを誘惑しようとする可能性があるので」
「そ、そんなコトしないよ!!」
「そうですかぁ?じゃあ私がしようかなぁ~?」
「だ、ダメぇえええええええええええええええ!!」
「あるぇ~、何がダメなんですかぁ?もしかしてお兄ちゃんと繋がりたいとか思ってたりぃ?毎晩そんなコトを想像して寝てるんでしょ?」
「えっ、いや、その、ふ、ふぁああ……」
プシュ~
「ことりちゃんが沸騰して気絶しちゃった!?」
あのことりの甘い言葉を聞いても、楓はビクともしなかった。我が妹ながら強靭なハートをお持ちで。それにしてもコイツ、μ'sのみんなへの煽りスキルが高まっているな。もう3人も撃沈されているぞ、大丈夫か……
「次は凛たちが相手だにゃ!!」
「えぇ!?私もやるのぉ!?」
「フンッ、あなたたち如きが私に勝てるとでも?」
「お前ら何の争いしてんだよ……」
段々と俺が蚊帳の外に追いやられ、μ'sメンバーvs楓の構図が出来上がっている。一応俺のために争ってくれてるんだよな?一応役得なんだよな?
「あの時、胸がないって言われた恨みを今ここで晴らすにゃ!!」
「どれだけ叫んでも事実は変わりませんよ。後ろの先輩にも言っておいてください」
「ちょっ!?どうしてにこが引き合いに出されるのよ!!急すぎるでしょ!?」
突然にこに飛び火。中学生に翻弄されるなよ、先輩。それは俺も一緒か。それにしても、俺がいなくてもこの話成り立つんじゃ……もう会話が看病関係なくなってきてるし。
「でも小泉さんならお兄ちゃんの看病をさせてあげてもいいですよ」
「え?どうして?」
「残念ながらあなたに胸だけは負けているので、それを使った看病ならば許可しましょう」
「ふぇ!?そ、そ、そんなコト……」
「あーあ、折角のチャンスなのに勿体無いなぁ~。お兄ちゃん喜ぶのになぁ~」
「わ、私はそんな、えっ、えぇ!?」
「かよちんが壊れた!?」
花陽はそっち方面に一切耐性がないからな。むしろ耐性がある女の子の方が少ないと思うけど。でも花陽にはずっと純粋でいてほしい。ずっと楓を見てきたから、花陽のような癒しがいないと俺まで邪な心に侵食されそうだ。
「真姫、そこの薬取ってくれ」
「これ?頭痛薬って書いてあるけど、今飲むの?」
「アイツの声が頭に響くからな……」
「ちょっと待って、さっき家に戻ってよく効く頭痛薬持ってきたから」
「すまねぇな……」
「いいわよ別に。それよりみんな心配してたんだから、早く治しなさいよね」
「ありがとう、頑張るよ」
あぁ~真姫が優しい~!!俺、今度から風邪引いたら毎回真姫に見てもらおうかな。『あの女医さんに看病してもらいたいから、ワザと怪我しました!』的な感じで。
「ちょっと何してるんですか!?私の許可なしにお兄ちゃんに触れるコトは許されませんよ!!」
「お前は俺の何なんだよ!!」
「妹だけど」
「そこは普通のツッコミなのね……」
「西木野さん、例えあなたに医学知識があったとしても、それは今関係ありませんよ」
「いや、あるだろ……」
「どういう意味よ」
「看病っていうのは心です!!お兄ちゃんに治って欲しいという気持ちが、真の看病なのです。ですがあなたは薬の力に頼っている……それではお兄ちゃんの風邪を治すコトなんて到底不可能ですよ!!」
楓はビシッと人差し指を真姫の方へ向け、意味不明な理論を並べている。何も考えずに聞けば正しいように聞こえるのが楓の超理論だが、よく考えれば支離滅裂で本題から軌道が逸れまくっている。それに俺は薬さえ貰って寝るだけで十分なんだけど。
「そんな……私が間違っていたとでも言うの……」
「アイツに乗せられんじゃねぇ!!お前は何も間違ってない!!だからその薬を俺に渡してくれ!!」
「お兄ちゃん!!頭痛なら私が原因を究明して、愛の力で治してあげる♪」
「原因はお前だ!!そもそもお前がいなかったら頭も痛くなってないし、熱も上がってこなかったわ!!」
くそぉ……楓が来てから頭に血が上ってばっかりだ。初めは看病をしてくれるコトにほんの僅かな希望を抱いていたが、もうコイツは信じない。俺が弱っているところに付け込んで、自分の好きにしたいだけなんだろう。
「熱が上がってきたってホント?」
「にこ……あぁ、アイツのせいでな」
「じゃあしっかり食べて寝てなさい。さっきキッチンを見てきたけど、何も食べてないんでしょ?作ってきてあげるわよ」
「ホントか!?」
「何でそんなに喜ぶのよ……」
「だって女の子の手料理だぞ。しかもにこが作ってくれるなんて、嬉しいに決まってるだろ!!」
「ア、アンタ風邪で頭おかしくなったんじゃないの!?し、しょうがないから豪華に振舞ってあげるわよ」
にこは顔を赤くしながらプイッとそっぽ向く。可愛すぎて俺も段々と熱くなってきたぞ。いや、そういう意味ではなくてテンションが上がってきたという意味で、やましいコトは一切ないぞ。
「ごる゛らぁああああああああああああああああああああああああああ!!だから私の目の前でラブコメ展開すんなってあの時言ったでしょう!?言いましたよね!?耳付いてないんですか!?」
「し、知らないわよ!!」
「知らない~?顔真っ赤にして言うセリフですか、それが!!矢澤さんはアレですか!?もうお兄ちゃんとデキてるとでもいうんですか!?」
「は、はぁああああああああああああああああああ!?何よそれ!?勝手なコト言わないでよ!!」
「ほーらまた顔赤くなった!!」
「なってないわよ!!」
「なってますぅ~!!」
「ガキかお前ら……」
前もそうだったけど、楓ってにこと相性悪いのか?にこと話す時だけやけにガキっぽくなるし。逆にそうやって言い合えるというコトは相性がいいのかもしれない。そう考えれば、お互いにノリやテンションは似ているような気もする。
「まぁまぁにこっちも楓ちゃんも落ち着いて、零君困っとるよ」
「まずは零を安静にさせるのが先でしょ?私たちが争ってどうするのよ」
「希、絵里……お前ら最高だな!!」
「気持ちは察するわ……」
流石、μ'sのお姉様方は格が違う。にこと楓の戦争もなんなく終息させてしまった。そう言えば前回、楓は絵里と希に対してだけはあまり毒を吐いていなかったな。確かに俺たちの姉があんな奴だから、「優しいお姉ちゃん」という感じがする絵里と希にはしおらしくなるのも無理ないだろう。
「くそっ!!胸が大きいからって調子に乗りやがってぇ~~」
「いや、乗ってないから……」
「うわぁああああああああん!!助けてお兄ちゃん!!絢瀬さんが自分より胸が"小さい"私を馬鹿にしてくるよぉおおお!!余裕そうに私を見下してるぅうううううう!!」
「してないから!!」
「楓ちゃん、とりあえず落ち着こう。零君も頭に響くって言ってるし」
「お兄ちゃん!!イジメがこの部屋の中で行われているよ!?このまま放っておいていいの!?東條さんまで私を馬鹿にして!!胸が小さい人がどんどん淘汰されてくよ!!」
「別にイジメてないんやけど……」
その後、絵里と希の活躍により楓はようやく沈静化した。しかしコイツが残した爪痕はヒドく、気絶したことりに壊れた花陽……などなど被害はまたしても大きかった。台風そのものとなった楓には、これからも苦労させられそうだ。
~※~
「楓ちゃん、もう帰っちゃったね」
「普通に明日も学校あるしな」
そして嵐が過ぎ去り、なんとかことりと花陽も復活した。リビングには楓が作ったであろうクッキーが置いてあり、一応心配はしてくれたみたいだ。いつもはああやってふざけているが、マジメなコトになるとイマイチ素直になれないというちょっと困ったところもあるのが我が妹の特徴であり、可愛いところでもある。
「にこはもう勘弁して欲しいんだけど……」
「大丈夫、アイツが入学する頃にはお前ら卒業してるだろ」
「そう言えば楓さん、音ノ木坂に入学予定でしたっけ?これは来年も波乱万丈になりそうですね……」
むしろ今アイツの恐怖を知れてよかったんじゃないかと思う。来年突然あんな嵐が上陸したら、とてもじゃないけどμ'sの練習どころじゃない。
「アイツ、μ'sに入んのかな?」
「「「「「「え゛!?」」」」」」
俺の素朴な疑問に穂乃果たち2年生組と、真姫たち1年生組が声を揃えて驚いた。そりゃあ平和なお花畑に嵐が舞い降りたら誰でも驚くわな。
「お前らは驚かないんだな」
「だってウチらは卒業やし……」
「まぁ精々頑張るコトね。にこもそれなりに応援するから」
「あの子を手懐けるのは大変そうね」
「ちょっと絵里ちゃんたちヒドイ!!他人事だと思って!!」
「まぁ、それなりにフォローするわよ。苦労しない範囲で……」
「なにそれぇええええ!!」
楓の残した嵐の余波は、まだまだ続きそうだ……
少し嫌味ったらしい楓ですが、意外と可愛いところもあるんだよってところも見せたかったのです。今のラブライブのいないキャラを作ろうとしたら、楓のようなブッ飛んだキャラが出来ていました(笑)
実はあと2~3話程度で完結なのです。
同じペースで『非日常』も完結すると思うので、両方見ている方も片方しか読んでいない方も、是非最後までお付き合い下さい。