迷彩柄の公文書  camouflage archive   作:そーだぜりー

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第9話 そこになければないですねー

 「1、1、1、2ー」

 

 「「「そーれ!!」」」

 

 

 学園の外柵沿いを10人位の生徒が、銃を斜めに構えながら走っていく。

 

 奇怪な掛け声を発しながら。

 

 

 「今日は!」

 

 「「「今日は!」」」

 

 「天気が」

 

 「「「天気が!!」」」

 

 「いいので」

 

 「「「いいので!!」」」

 

 「この後」

 

 「「「この後!!」」」

 

 「戦訓」

 

 「「「戦訓」」」

 

 「頑張るぞー」

 

 「「「頑張るぞー!!」」」

 

 

 この後の戦闘訓練に絶望しているだろう彼女達を尻目に、ベンチに座っている俺は次の教育の事をノート開きながら考える。

 

 

 「次は銃の操作からかなぁ。いや小さい頃からやってるって言ってたし、ぶっちゃけ要らないかもなぁ。そしたら閉所の訓練させたいけど、結局小さいところのすり合わせがなぁ」

 

 うんうん悩んでいる事数巡。前から小さい気配を感じる。

 

 

 「何を悩んでいるの?」

 

 「ん?あぁ、委員長。お疲れ様です」

 

 

 敬礼をすると、は、した俺は腕を下げる。

 

 そうだここは部隊じゃなかった。

 

 

 「...元軍属の定めというやつ?」

 

 「まぁ、そういうやつです」

 

 

 軍服っぽい服を着てる人が多いと変なスイッチが入って仕方がないな。

 今の依頼も相まって一種シナジーがあると言っても過言ではない。

 

 

 「それで何を悩んでいたのかしら」

 

 「あぁいや、明日の教育について何をしようか考えていて。閉所戦闘にしようかタクトレにしようか迷っていまして」

 

 「うちではタクトレをあまりやってなかったから、そっちにしたほうがいいかもしれないわ。あと、昨日座学でやっていたやつの資料、一部貰ってもいいかしら」

 

 「あぁ、それでしたらアウトルックで送ってあります。他にも欲しい資料があったら、言っていただけたらお送りします」

 

 「そう。ありがとう」

 

 

 ゲヘナ学園、風紀委員会の委員長。戦場の

小さな悪魔、空咲ヒナ。

 

 そんな便利屋とは敵対?しているような組織のトップと、何故こんな仕事の会話をしているのか。

 

 それは深い、ふかぁい事情があった。

 

 

 2週間前。

 

 

 「コウジ、出向してほしいの」

 

 「へ?」

 

 

 それはとある暇な日だった。

 

 いつも通りコーヒー片手に雑誌を見ていると、唐突にそんなことを社長に告げられた。

 

 そんなことを言われたら俺は、左手のコーヒーを振るわせながら社長に聞いた。

 

 

 「さ、左遷っすか...俺」

 

 「ぎゃ、逆よ!?栄転よ、え・い・て・ん!!」

 

 「足捻りました?」

 

 「それは捻転!!」

 

 「難しい話でもされました?」

 

 「それは難点!!」

 

 「メギ科の冬に赤い実をつける緑起木は?」

 

 「それは南天!!私で遊ばないで!!」

 

 

 しまった、反応が面白すぎてつい遊んでしまった。

 

 ぷんぷんと怒っている社長を横に、事情を知っているだろうカヨコが話だす。

 

 

 「出向は出向でも、栄転っていうのはあながち嘘じゃないと思うよ」

 

 

 とある書類を俺の座る椅子の前の机に置く。そこに話を聞いていたムツキも書類を覗き込む。

 

 「出向先はゲヘナ学園風紀委員会。そこで臨時の総合教官をするのが依頼内容」

 

 「ふーん。依頼金も相場の倍だし、拘束時間も8時間。しかも3食昼寝付き。いいんじゃなーい」

 

 「...これ絶対」

 

 「そう、目的はコウジよね」

 

 

 依頼内容、依頼金、そして出向先。これらからわかるのは俺の戦闘力とか諸々の調査だろう。

 こんな大きい組織がわざわざこんな貧乏会社に、しかもこんな大枚叩いて教育依頼なんて普通あり得ない。十中八九俺の調査が目的だろう。

 

 

 「多分、コウジの身辺調査をしてここにくる前の情報が出てこなかったから、直接聞き出そうって算段じゃない?」

 

 「そんな面白い過去はないんだがなぁ」

 

 「えー、私は面白いと思うけどなぁ、あの歩いてたら前の人が側溝に落ちた話とか」

 

 「わ、私は班長さんの話とか好きです。特に洗濯機の前で怒られるくだりが面白かったです」

 

 「あー、あれなぁ。あの後マジでキレられてさぁ、そっからまた、勘違いが勘違いを生んで「話を戻すわよ!」...あい」

 

 

 悲しき生き物となった俺は、閑話休題とばかりに社長の話を聞く。

 

 

 「とにかく、無理強いはしないけどできそうならこの依頼どうかしら。ついでにギヴォトスの学校は通ったことはないんでしょう?社会勉強ついでにもいいんじゃないかしら?」

 

 

 「うーん」

 

 

 本音を言うとぶっちゃけめんどい。

 しかし、これからこの世界で生きていくにあたってそういう所で働くのも、まぁアリではある。しかも身体年齢も学生の頃ぐらいだから違和感なく紛れる。

 それに、ここ数日依頼が少ない。社員ならば稼がなくてはならないのも事実か。

 

 

 「OK。俺がやるよ」

 

 

 

 そんなこんなで教官という依頼を受けた俺だが、この時の俺はこの依頼を甘く見ていた。

 

 この依頼の目的は『俺の情報』というのは間違いではなかった。

 

 そう、間違いではなかった。

 

 今回の依頼を俺はある意味深読みしすぎていた。

 

 

 

 

 それは依頼前に偵察をしに現場を見に行った時のこと。

 

 

 わーわーぎゃーぎゃー

 

 「なんじゃぁこりゃぁ」

 

 

 部隊としての動きじゃない。

 それが見ての最初の感想だった。

 

 幼稚園児の喧嘩を見ているような、一つイレギュラーを投入されるだけで一瞬で崩れるジェンガのような。見ていてそんなものを感じてしまった。

 

 

 「こりゃまじで教官で雇われているんじゃないか?」

 

 

 そんな錯覚(現実)が見えてしまうぐらいに、見ていて頭痛が痛くなる。

 そんな小並感を統率のとれていない蟻どもを見て思うと、明日からの仕事のために必要事項を隠れながらメモを取る。

 

 あぁ、これ残業代出るのかなぁ。

 

 とりあえずそれだけが気がかりだった。

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