迷彩柄の公文書 camouflage archive 作:そーだぜりー
「えぇと、まずこちらの認識に齟齬があったのは謝罪しよう」
「まぁ、そこは自分がやかましいことしてしまったんで別にいいです」
「...事情聴取の際に威圧的な態度をとってしまって申し訳なかった」
現在俺は、ヴァルキューレ警察学校の事情聴取室に居ます。
というのも、戦車破壊後気を失った後、なんか起きたらこの部屋で、椅子に縛り付けられていた。最初はSM始まっちゃたかなぁなんて思ったけれど冤罪を突きつけられるわ、カツ丼は食べさせられるわ、自白の強要やら、もう酷かった。
しっかり事情を説明するために頑張ってはいたが、それがもう多大なる時間を使ってしまって、結局5時間位かかった。チカレタ
「まぁ、あの現場でいきなり俺が割り込んだのは確かにだめですし、静止命令を無視したのも事実ですから」
「しかし冤罪で捕まえようとしたのは私だ。しかも外の世界の一般人を冤罪でなんて...」
「いやまぁ、一般人じゃな...いやプライベートだから一応パンピーか」
「とにかく、なにかしないと申し訳が立たない。なにか、困ってることことはあるか?」
いやまぁ困ってることなんて今この状況が困ってるんですけど、なんて言うことはできないねうん。
少し思案した後、二つ頼み事を思いついた。
「あの、この世界のことについて教えてもらっていいですか?」
「あ、あぁ、別にいいが。それだけでいいのか?」
「あぁ、いやあと、少しの間だけここに居座せてもらってもいいですか?」
今の俺には居場所も情報も伝手もない。なら、今この状況を最大限活用するしか無い。相手にはメリットがない以上、ダメ元の取引だ。ダメなら情報だけでも貰って出てくとしよう。
そんな俺の思考はさておき、目の前の女性は普通に返答をする。
「あぁ、そんなことなら別にいいぞ。というか、本当にそんなことだけでいいのか?」
「え、マジすか」
「そんな驚くことではないだろう」
「いや、こんな無職の男を職場に置くって、なかなか難しいだろうなって算段だったんで」
「別に難しいことではない。外の世界では難しいことなのか?」
「いやぁ、まぁ...」
当然難しい。というより、身寄りのない男を置くのはかなり、というかあまりありえないことだ。
しかし、目の前の警官はそれを快く快諾した。不用心というか、なんというか。
「ちなみに、ここまで話しといてなんですけど、お名前聞いてもいいですか?」
「あぁ、自己紹介を忘れてたな。私は尾刃カンナだ。保安局局長をやっている」
「めちゃくちゃ偉いじゃないすか」
「いや、そうでもないよ。結局は一人じゃ何もできない一人の警官だ」
謙虚だなぁ。なんて思ってしまうが、まぁ公務員はこうあるべきなんだろうな。知らんけど。
「そういえば、現場での動きを見ていたが、君は外の世界で何かしていたのか?」
「あぁ、いや、まぁ、やっていたというか、働いていたというか...」
「?」
はっきりしない文章をひり出す。正直自分の職業を言うのは恥ずかしいのだ。
周りからは本当にその職業?とか言われるのだから。
「えっと、自衛官っていう職についていました」
相川コウジ 21歳
職業 陸上自衛官 陸士長
18歳で自衛官になり、新隊員教育を修了後普通科の第○○普通科連隊に着隊。
射撃、格闘、戦闘訓練共に平凡な成績で、人間関係においてはある程度の能力はあるものの、積極的に形成しようとはしない。
というのが、俺の職歴かつこっそり事務室にあった班長の書類にあった俺の評価だった。
まぁ、平均程度にできてればいいというのが俺の処世術だったし、結局優秀にはできない自分もいたのが現状だった。
「はぁ、そんな俺がなんでこんなとこに居んだろなぁ」
ところ変わって、ヴァルキューレの物置部屋にて机の椅子に腰掛けてぼやいていた。
尾刃さんに使っていない部屋はあるかを聞いたところ、3階の角部屋が誰も使っていないことを聞き向かったところ、この色んな物がごちゃごちゃとした部屋に行き着いた。
「別に部隊にいた時は確かにこんな感じのところはあったけど、ここまでではなかったよなぁ。まぁ、生活する分には問題ないけど」
見たところ置いてあるものに一貫性が無く、まさに取り敢えず置いてある、みたいな状態だ。気持ちは分かるけどさぁ...
敷布団を貰ったので、取り敢えず空いてある床に引き、机が転がってたのでそれも設置した。なんとか文明的な生活ができそうな居住場所を確保できたが、まあ随時整理はさせて貰おう。
椅子に座るに疲れて布団に寝転がる。瞼を閉じると色々な懸念点ややりたい事が浮かんでくる。
「まずは金だな。金がないと何もできない。あとは仕事と身分。それと...」
考えればキリがない。だけど考えない理由にはならない。
難しいことができないことの理由にならないのと同じように。
今という困難を打開したいのならと理由づけをするかのように。
しかし、自分自身にする感知できないストレスというのはたまるらしく、環境が変わるというのは著しく負荷がかかるというものだ。
知らない場所に知らない間にいて、知らない間に捕まり、知らない天井の部屋で今寝ている。
なんと奇妙な状況。奇妙な今。奇妙な1日。
「...少し、寝るか」
瞼を閉じ、意識を手放した。
地獄にいた。
崩れきった建物の前には蹲り無く子供がいて、そこらの道には血肉が撒き散らされていて、空というものは曇天を示していた。
いつのまにか足元に転がっていた見知った男の首は話す。
「相川士長。私達は有意義な死を迎えたのでしょうか?」
その顔はいつもと同じ、自分と話す時と全く同じように喋りかけてきた。少しチープに見えてくる。
そんなものは知らん。自分で考えろ。と言いたくなるが、自分の口が勝手に動き出す。
「あぁ、君達の死は我が隊の戦果に、十分に寄与したと言えるだろう」
本音と建前。必要な嘘。
そうだ、俺の役割だった。
心を殺せ。指揮を保て。毅然としてろ。
「生まれてきてから得意なことだろ?」
足元から伸びる影から聞こえた。その影は異様にずっとずっと足から伸びてとても大きく見えた。
「そのまま不幸ぶってればいい。いつかその不幸がお前を覆うまで、そのまま突っ立てればいい」
「相川士長。私達の有意義な死を無駄にしないでくださいね?」
「お前はいつだってそうだ。自分が不幸なことを自覚してるくせに打開しようとしない」
「相川士長。不幸に満足しないでくださいね。現状で満足してはダメですよ!」
「だから、なにもお前はなにも持ち得ないんだ。伽藍堂でスカスカな空っぽ。その上で、不幸に甘んじてる」
「相川士長。1日は24時間あるんですから、できないことなんて無いんです」
ぐだぐだと生首と影が俺に語りかけてくる。その言葉は俺の頭の中を着実に侵食していっているようで、ネガティブな言葉が頭の中で鳴り響く。
許されたい。
楽に、なりたい。
身に降りかかる不幸な言葉達は今も止まず、赦しをここにいるはずのない神に乞う。
「楽にしてやるよ」
「見損ないましたよ相川士長」
どこからかドッというくぐもった迫撃砲の発射音が聞こえる。ひゅーという音を伴って空から弾が飛んでくる。
81mが齎す結果をその身に受ける前に、ふと、瓦礫の前の子供を見て思ってしまった。
「〜〜〜〜〜」
また、1人救えなかった。
ごめんなさい。
たぶん次のお話は明日の2100ぐらいに投稿します