迷彩柄の公文書  camouflage archive   作:そーだぜりー

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 いつから目的と過程を履き違えていたのだろう。
 いつから僕は仕事のために仕事をし始めたのだろう。


第4話 だめだね〜だめよ〜だめなのよ〜

 「腹が減った」

 

 そこはとあるボロアパートの一室。

 黒の上下ジャージ姿の男が腹を鳴らしていた。

 

 「貯金口座はあと4桁。冷蔵庫には飯は無く、カップラーメンは残り3つ」

 

 給料日はあと10日待たなければいかず、廃棄の商品も全て消えてしまっているこの状況。

 

 頭に巡るのは無意味な自問自答。

 

 今月使いすぎてしまったのか?食費は抑えてたはずだ。交通費は確かに痛かったかもしれない。などなど無意義な思考が過ぎる。

 

 そんな中微かに過ぎるのはア○ムの赤い文字。

 消費者金融。

 

 「...いや、だめだ。そもこんな状況で使って返せる保証なんかない」

 

 収入が少ないのに支出を増やしたら、どうせ来月から辛くなるのは目に見えていた。結局はその場限りの気休めにしかならない。

 

 しかし、今厳しい状況なのは変わりない。

 

 「増やすか...バイト」

 

 最終手段を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はッ、はッ、はッ、はッ、はッ」

 

 た、た、た、た、た、た、

 

 1人の少女が少し煤けた服で走っていた。

 

 そこは薄暗く、天の光も少ししか通さない、パイプや配線が剥き出しで、下を見ればゴミが散乱している。そんな路地裏だ。

 

 「はッ、はッ、はッ、、はっ、、、はっ」

 

 疲れたのか、少女は少しずつスピードを落としていく。

 

 ちょうどT字路で足を止め、息を整えながら周りを見渡す。

 

 「よし、あの化け物は撒いたか」

 

 すると左手の方の道からボシュ、とくぐもった音が微かに聞こえたとほぼ同時に、脳天に強い衝撃が走る。

 

 「ゔぅ...」

 

 走ってきた少女とは対照的にか、か、か、とゆっくり短靴の音を鳴らしながら歩いて来るスーツの男の影があった。

 

 「はいお疲れー。解散解散」

 

 そう俺(コウジ)です。

 

 「な...んで、あいつらは」

 

 「ん?あぁ、そういうこと」

 

 少し間を空けて、彼女に告げる。

 

 「お前の仲間は俺が殺した」

 

 「そうか(バタン)」

 

 それを聞いた少女は気絶してしまった。

 

 夏油何某のセリフを最後まで言って欲しかった気持ちと、このバイト(任務)をしっかり終えられた安堵感で気持ちがぐちゃぐちゃだったが、まぁそれは置いといて。

 

 「しっかし、自分の意思で人を撃つことになるとはね」

 

 そんな想いを口に出し、少女の持っていたMP9のマガジンを抜きコッキングをして薬室内の弾を排莢する。

 無力化した少女の銃を地面に置き、スマホを取り出そうとすると、見覚えのある巨体がこちらに歩いてきた。

 

 「終わったか?軍人もとぎ」

 

 「終わりましたよ、雇用主さん」

 

 見たくもない雇用主のロボット顔に辟易しながら喋る相手は、カイザーPMCの職員だった。

 

 「ここら一帯の制圧は終わったな。流石は元軍人。人を殺すのには慣れてるな」

 

 「いや殺してないし。無力化してるだけだし。つーか厳密には軍人じゃないし」

 

 なんか嫌味のある言い方をする職員に言葉を返すが、淡々と事後処理をする。

 

 正直めんどくせーとか思いながら、このバイトを受けたのを後悔する。

 

 「次はB地区の巡回及び掃討だ。金額の分働いて貰うぞ」

 

 「へいへい」

 

 言われたところへ向かうために、装備の軽い点検をする。

 

 「そこの巡回が終わったら次にG地区の奴らと交代だ。遅れるなよ」

 

 マガジンを抜きそのままの手でチャンバー内の弾薬を確認する。残りの弾薬が少なかったため手で持っているマガジンをダストポーチに捨て新しいマガジンを取り出し込める。一応、サブウェポンのG26もあるが、そちらは触っていない為そのままにしておく。

 

 「分かってる」

 

 銃をホルスターに格納し、B地区に向かって前進する。

 

 そう。今回のバイトはブラックマーケットにあるカイザーコーポレーション傘下の企業が持つ重要防護施設の警備だった。

 

 金払いの良さと警備と聞いて楽そうと思ってバイトを受けたが、現在3時間働いてみて蓋を開けてみれば休憩なし、労働環境劣悪、クソ上司の三拍子。しまいには、治安維持と格好つけて近くの不良を見つけ次第ぶちのめすという悪評も納得の内容だった。

 

 「あと7時間。とりあえず耐えるか...」

 

 めんどいなぁ、なんて呟きながら頭を掻きつつブラックマーケットの路地裏を闊歩する。

 

 

 

 

 1時間経過

 「おらぁー!!死ね!!」

 「汚い言葉を吐くんじゃありません!!」

 「うがっ!! キュウ」

 「ファー!!甘い甘い!!」

 

 

 2時間経過

 「はい。TOP GAP gg」

 「クソー煽りやがって!!」

 「お前の敗因は技量(play skill)と装備(farm)が足りなかったことだ。はい、ggez」

 「ちくしょー!!」

 

 

 3時間経過

 「撃っちゃんだなぁ!!これが!!」

 「ば、バカかお前!!」

 「真面目にやってるとバカ見ちゃうよー!?」

 

 

 4時間経過

 「...なんかネタ切れてきたな」

 「うぎゃあーー」

 

 

 5時間経過

 「うわぁー!!」

 「...」

 

 

 6時間経過

 「うがぁーー!!」

 「ねみ...」

 

 

 7時間経過

 「やっと終わりか」

 

 携帯からぴぴぴぴぴ、とアラームが鳴ってやっと気がついた。

 

 髪は連戦のせいかボサボサになっており、服は無理な動きをしいたせいか所々ちゃぶけていた。それに加え眠気や疲労で意識が朦朧としていて、今にも眠気という悪魔に身を売りそうになる。

 

 「とりあえず家に帰って、風呂入って寝るか」

 

 トボトボと帰路に着く。

 

 それを見た同僚ロボが俺に一言こう言った。

 

 「明日も頼むぞー。軍人もどき」

 

 刹那。

 

 太もものホルスターに刺さっている愛銃に手が伸びる。その伸びた手には自信のプライドや純粋な怒り、衝動的な殺意が込められていた。

 

 が、そこで理性がブレーキをかける。

 

 (こんなことでヴァルキューレのみんなの厄介にはなれない)

 

 そんな意地、羞恥心のおかげか、伸びた手はグリップにはいかずポケットに入ったタバコに行き慣れた手つきで煙を吸う。

 

 いつもはしないはずの歩きタバコ。

 

 そんなことを気にしないくらい、疲れていた。

 

 

 

 数日後、俺は弾けた。

 

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