迷彩柄の公文書  camouflage archive   作:そーだぜりー

7 / 10
僕は1番他人が嫌いです。
 自分自身を大きく歪めた、そしてそれを良しとした、自分が一番憎くて嫌いでした。


 今回かなり早足です。ごめんね。


第7話 Alright

 後日談。というにはこれからのこと。

 

 それは例の作戦が終わってすぐのこと。

 諸々の後始末が終わり、人気の無い公園のベンチでタバコを吸っている時だった。

 

 

 「あら、ここに居たのね」

 

 「ん?あーアルか。任務後の一服をば」

 

 「随分美味しそうに吸うわね。タバコってそんなに美味しいものなのかしら」

 

 「まぁ、人それぞれだと思うぞ。あ、間違っても未成年のうちタバコ吸おうなんて考えんなよ」

 

 「そこまで馬鹿じゃないわよ」

 

 

 3人用のベンチの隣にアルが座る。所々ボロボロになってはいるが、まだまだ元気なようで疲れたかのような所作を見せなかった。

 

 

 「今回、アルには結構忙しい役回りを任せてしまった。申し訳ない」

 

 「い、いや、そんなこと。頭上げて!」

 

 

 今作戦、アルには重要かつ忙しい役割を任せていた。

 

 PMCビルの警戒と狙撃だ。

 

 カヨコが依頼品であるPMC内部の不正資料を漁っている間、その屋上に潜入し上から兵士が入ってこないよう監視と狙撃を任せていた。しかし、この建物、入り口が3つあり1人で全てを監視するのは厳しいと思っていた。

 

 それをアル本人が「大丈夫よ」と言ってくれたお陰でこちらの陽動兼殲滅の方に2人も人員を割けた。

 

 流石社長だ。

 時折見せるカリスマ性に、社員がついていく理由が頷ける。

 

 

 「結果的に上手くいってよかったと思うけど、まだまだ作戦としての詰めも甘かったし、なにより各々の特性を生かしきれなかった」

 

 「でも、無事に依頼も達成できたしよかったじゃない」

 

 「結局結果論として上手くいってるだけで、もっと上手に効率良く事を回せたと思う」

 

 

 上を見ればキリがない、だが見ない理由にはなりはしない。

 効率良く動き、堅固な作戦を作り、破壊力のある結果を生み出す。

 

 それが作戦指揮としてやるべき仕事であり、求められる能力。それができたないのであればそれはただの置き物以下と化す。

 

 そうならない為にも、上を見続けなければいけない。

 

 これは、義務だ。

 

 

 「とにかく、厳しい役割を押し付けてしまったお詫びに、飯かなんか奢ろうと思うんだけど、何処かいいとこ知ってるか?」

 

 「...色々思うところはあるけれど。そうね、美味しいところねぇ」

 

 

 今の俺には飯ぐらいしか奢れる財産しかないため、アルにいいところ考えてもらう。前まではウン十万までなら許容できるくらいの貯金はあったのになぁ。カナシィ...

 

 

 数分考えていると、あ、とアルが何か思い出したような挙動を見せる。

 

 

 「そうよ!そんなことより、コウジに話があるのよ!コウジのせいで忘れそうになった...」

 

 「俺のせぇて...」

 

 

 ご飯の事を考えたり(これは俺が原因)人に頭下げさせたり(これは俺が悪い)、忙しいやっちゃなぁ。(他責)

 

 アルは俺の方に向き直り、こう言った。

 

 

 「コウジ、私の会社に入らない?」

 

 

 それは予想外の一言だった。

 

 

 「え?」

 

 

 「依頼のときの動きを見てピンときたのよ。それでみんなに相談して今に至るってわけ」

 

 

 目の前の少女は今までの流れを淡々と語るが、こちらは結構動揺していた。

 

 そりゃそうだ。予想だにしなかった言葉に頭が真っ白になりながらも、単純な疑問を投げかける。

 

 

 「そ、そもそも女性だらけの職場は、こちらが気まずいというか」

 

 「大丈夫よ!すぐ慣れるわ!」

 

 「な、なんて力技...」

 

 

 力技というよりは暴論。

 

 おそらくそこまでして入れたいのだろう。しかし、女性だらけの職場で唯一人の男性社員なんて気まずいことになるのなんて目に見えている。職場が気まずいなんて生乾きのTシャッツをずっと着続けるのと一緒だ。最悪な気分になるのこの上ない。

 

 

 「...!! 御社にお金はあるのか?」

 

 「?どういう意味かしら」

 

 

 一瞬のひらめきが脳によぎった。

 

 この戦闘力53万の俺の脳は、この絶望的な状況でもしっかり働くようだ。

 

 勝ったな!!がはは!!

 

 

 「御社に男一人雇う余裕はあるのかってことだぁ!!」

 

 「それなら問題ないわ!今回の依頼でだいぶ余剰はできた。それもこれもコウジのおかげね!」

 

 

 無理でした。

 

 俺は戦闘力5の雑魚でした。

 

 そうか、今回の依頼はそんなにいい報酬だったのか。最終的に俺が俺を刺してきた感じになったな。Sorry my bat.(俺は悪くない)と言いたい今日この頃。

 

 

 「それに、コウジにも良い話だと思うわよ」

 

 「Wait what?」

 

 「今回の依頼でアルバイト辞めちゃったでしょ?そこで、私の所で働けばその分を埋められるでしょ?」

 

 

 確かにそうなんだが、なんとなく毎月しっかり払われるという信頼感がないんだよなぁ。

 

 しかし、こちらもお金が無いのは事実。だが、またよく分からないアルバイトで社畜になるのは嫌なのも事実。

 

 だけどなぁ...なんか心配なんだよなぁ...

 

 

 「入社するのにそんなに躊躇っている理由がわからないけれど...とにかく、入社決定ね!」

 

 「えぇ...?」

 

 

 かなり強引に話を進めてくるアル。

 

 そんなにも俺が欲しいか。惚れちゃうね(棒

 

 

 「こうなったら皆んなにも報告してくるわ!」

 

 

 そう言うと走っていくアル社長。

 

 お詫びの飯を考えるのも忘れているあたり、新入社員がそんなに嬉しいのだろう。

 

 

 「よくもまぁ、作戦終わりに良く走れることだ」

 

 はぁ、と重い腰を持ち上げ、タバコを取り出して火をつけてアルの走った方向に歩き出す。

 

 その煙は思いのほか美味かった。

 

 

 

 

 

 

 

 あの作戦からの便利屋入社の件から1週間。

 

 それは、あるありふれた朝だった。

 

 はずだった。

 

 

 「...なんだ、これ」

 

 

 いつも通り、顔を洗いに洗面所で顔を洗っていたら、気づいてしまった。

 

 傷の無い顔、瑞々しい張りのある皮膚、ヒゲの無い鼻や口。

 

 「わ、若返ってる...」

 

 どうしてこうなった...!?




 今回で一旦章区切りとなります。

 早足になってしまった原因としては、仕事とか仕事とか仕事が忙しくて...
 なんなんですかね、20日連勤って。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。