迷彩柄の公文書  camouflage archive   作:そーだぜりー

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第2章 『No bady pray for me.』
第8話 ワイトもそう思います


 それは突然のことだった。

 

 「あ、ありのまま、今、起こったことを話すぜ!おれはいつも通りコンビニバイトが終わって飯食って寝て起きたら、いつのまにか15歳の身体になっていた...な、何を言っているかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった...普通に焦ってコップを割っちまった...」

 

 「要はなんでか分からないけど若返ったってことね」

 

 

 現在、便利屋68事務所。

 取り調べを受けています。

 

 前述の通り、朝起きたら中学の時の身体になっていた訳で、とりあえずコンビニバイト先の店長に電話を掛け、一旦の服(学ラン)を用意してもらい、そのまま便利屋に直行した訳だ。

 しかし悲しいことに、最初俺が誰か分からずに不審者扱いされ、取り調べに発展し、なんとか俺がコウジであることを受け入れたと思ったら、次は何故若返ったのかを聞き出されているところである。俺が知りたいわ!!

 

 というか取り調べはお前らが受けるものだろ。

 

 

 「そうねぇ、本人が分からないならしょうがないのかもしれないわね」

 

 「黒ずくめの人たちに背後から打たれて錠剤を飲まされたとか?」

 

 「コ○ンじゃねぇか」

 

 「聖杯に願ったり?」

 

 「Fateじゃねぇか」

 

 「アレッシーの影に触れちゃった?」

 

 「ジョジョじゃねぇか。なんでセト神なんだよ。ちょっとニッチなんだよ」

 

 

 くふふ、と楽しそうに笑っているムツキ。こちらとしては弄られても楽しめるタチだが、なんで今時のJKがジョジョ読んでんだよ。びっくりだよ。ていうかせめて3部じゃなくて5部であれよ。世代がズレてんよ。

 

 ムツキに調子を狂わされながらも、とにかくこれだけは言いたいと思い席を立つ。

 

 

 「話がそれちまったけど、この姿でも普通に仕事をする分には問題無いっぽいから」

 

 「本当に?若返るって相当奇妙なことに巻き込まれてるけど、それで無事で済むわけ?」

 

 「とりあえず大丈夫としか言いようが無いんだよ。こんなの病院に行ったって分かりっこないし」

 

 

 ぶっちゃけ、若返ってみて少し嬉しかった。

 というのもこのギヴォトスにおいて、大人でましては人間の男というのは存在せず、少女やロボット、二足歩行の犬や猫しか存在しないというもので、正直場違い感は否めなかった。

 ここ数日の依頼なんてそうだ。女4人男1人という歪な編成に、依頼主から怪訝な目でみられることなんて数十回あった。

 そんな俺が理由は不明であるものの、年齢だけでも寄せられたのは少し嬉しい。

 

 

 「若返ったってことは身体能力も落ちちゃったんじゃないの?」

 

 「確かに、私たちならまだしも、コウジが若返ったなら、それ相応に動けないかも知れないわね」

 

 「あー、それね。それについては。マジで問題無し。落ちてないどころか、普段より上がってるんだよなこれが」

 

 

 これも理由は不明だが、身体能力がそこそこ上がったのだった。

 ギヴォトス人レベルとは行かずとも、それよりちょい下ぐらいにはなっていた。なんでやろな?

 

 

 「とりあえず、今まで通り仕事しても問題無しということで、今日も依頼をこなしに行こうよ」

 

 「とりあえずで済む話じゃないと思うのだけど、そうね。ハルカ、例の資料を持ってきて頂戴」

 

 「は、はい!」

 

 

 忙しなくハルカが紙の束を持ってくると、それを手に取るアルとカヨコ。それを眺めているムツキに、テーブルにあったコーヒーを啜る俺。

 

 アルは怪訝な顔で資料をめくっていくと、ペラペラとめくっていた手が途中で止まった。

 

 

 「この、オークション売買における用心棒っていうのいいんじゃないかしら」

 

 「報酬は...うん、相場よりいいかも」

 

 「依頼主も信用できそうな人だし、これにしちゃう?」

 

 「わ、わたしの準備はできてます」

 

 「そうね。相川戦術顧問、どうかしら」

 

 

 名ばかりの役職と共に渡される書類。そこには、オークション売買における用心棒と名された依頼と詳細が書かれていた。

 

 

 「...いいと思うぞ。後は、依頼主と避難経路の確認とか戦闘時の決め事とか、諸々を詰めていけば万全だな」

 

 「よし。依頼主に電話かけるわよ。みんなは各人準備をしておいて」

 

 

 そう言うと、アルが電話を掛け始めると周りは自身の火器や道具を準備し始める。俺もP220とサブのG26を点検し始める。

 

 さて、今回の依頼は上手くいくのか心配だ。

 

 

 

 

 

 「待てー!!」「逃すな!!」「オンドゥルギッタンディスカ!!」「ザョコォォォォォォォォ!!」

 

 

 「で、なんでこうなるわけ?」

 

 「知らん!!」

 

 

 オークションが終わりなんやかんやあって競り相手と喧嘩になり、銃撃戦に発展しそうなところを予定通りハルカが爆破し混乱を作ったのだが、量を間違えたのか予定よりド派手に吹っ飛ばしてしまい、競り相手全員の喧嘩を買った。

 

 結果、そいつらの用心棒達に追いかけられてるというのが現状だった。

 

 

 「依頼主はなんとか逃がせたけど、私たち2人でこの人数捌くのは無理があるんじゃない?」

 

 「そこはなんとかするんだよ!」

 

 「...じゃ、頑張ってね」

 

 「おめぇも頑張んだよ!!」

 

 

 しれっと脇道を逸れようとするカヨコを止める。逃がしはせんぞ、がはははは!!

 そもそもの話、今回の依頼は万全の準備を敷いて臨んだはずだ。ならなぜこんな状況になっているのか、これが分からない。

 ハルカの爆破が悪かったのか?それはある。

 競り相手を怒らせてしまったのが悪いのか?それもあるだろう。

 避難経路にも仕掛けを仕掛けるべきだったか?それもあるだろう。

 しかし、今何を考えても雑念にしかならない。ならば今この状況を打破した後に考察すべきだ。

 

 

 「とりあえず!スモーク炊いて一旦お茶濁しだ」

 

 腰のグレネードポーチから取り出しピンを抜いて後ろへ軽く投げる。

 カシュー、と音を立てて大量の煙を吐き出している隙に、手前の曲がり角を曲がって進行方向を偽装する。

 

 

 「これで一旦は銃弾は飛んでこないだろ、まぁすぐ追いつかれるだろうけど」

 

 「とりあえず、この敵をどうするか考えよ?」

 

 「そうだな。て言ってもこのまま撒くのがセオリーだけど。うーん」

 

 

 問題が一つあった。

 

 このまま撒いたとして、この敵が依頼主を護衛している社長達の方に行くかもしれないということ。そうなった場合、十中八九依頼主が怪我をして報酬は支払われないだろう。

 ならばこのまま引きつけて、依頼主が安全なところまで逃げられるまで時間を稼ぐ方がいいのか。これも愚策だ。あの数で攻められたら流石にジリ貧になっていつかは捕まってしまう。

 

 どうしたものか。

 

 

 「...今の装備だとやれても対各個戦闘。結局、時間稼ごうにもすぐにジリ貧。なら、適切な距離を保ちつつ、ギリギリのラインで戦うのは?いや、相手に主導権を握られてそのまま潰されるか、見切りをつけられるか...」

 

 「ナオヤ、大丈夫?」

 

 

 考えつついつもの癖で、親指でデコッキングレバーをかちゃかちゃと遊ぶ。

 

 追いつかれないように走りつつ、思考する最中、一つの結論に至る。

 

 

 「やるか」

 

 「なにを?」

 

 「武の悪い賭けってやつだ」

 

 

 こういう時は近接格闘に限るね。

 

 そうこうしていると、後方からドタドタと足音が聞こえてくる。

 

 

 「来るぞ。合図したらこれを投げてるくれ」

 

 「...了解」

 

 

 腰のポーチに入っていたものを手渡すと、足音の方向に歩き出す。慣れているとはいえ今までにない死の気配が近くなる。

 

 怖いか?いいや、怖くない。

 

 1対多の戦闘なんて腐るほどやった。

 なら、この背中にかかる悪寒はなんだ?

 

 「...It’s not enough(まだ足りない)」

 

 あの日見た光景に比べれば、この悪寒なんてそこらの小石のようなものだ。

 

 この雑念も、この感覚も、数秒後からは邪魔になる。なら、今のうちに振り解け。

 

 数歩前の曲がり角に銃口が見える。拳銃を抜き、その主を撃つことを意識する。

 

 

 「この先を探ッ!!」

 

 胴体を2発、頭に1発撃ち込み、そのまま他の奴らを巻き込むように押し出す。その後自分の後ろにいるARのやつの右手を脇に抱え制しそのまま腹に2発撃ち込む。倒れたそいつに1発頭にぶち込み失神させる。

 

 

 「...ふぅ」

 

 「な、なんだこいつ」

 

 

 一瞬の出来事。

 その動きに場の空気が制圧される。

 

 呼吸をするように弾倉を交換する。

 

 あと一戦は行けそうだ。

 

 

 「...来いよ。先手は譲ってやる」

 

 

 その言葉で奥歯を噛み潰したような形相で相手が1人飛び出してくる。

 

 その加速に合わせて、こちらは顔面の位置に拳を置き、その拳が相手の鼻を突き刺す。そのまま相手は倒れて失神し、それを横目に目の前の3人に駆け出す。

 

 

 「く、くそ!!」

 

 

 慌てて挙銃するが遅い。そのまま銃に手を添えて制し、顔面に肘が刺さる。気絶したその身体を盾に右の射線を切り、左にいたやつは3発打ち込んで沈める。

 肉盾を相手に押し出して下敷きにした後、3発打ち込んで終わり。

 

 

 「ッ...強すぎるだろ...」

 

 「もうそろそろだな」

 

 

 手を上に掲げて合図を出す。

 後方からスモークグレネードが投擲される。

 

 

 「撤退、撤退っと」

 

 「う、撃て!!」

 

 

 適度に撃ち返しながら、煙幕の中に逃げ込む。真っ直ぐ進むと、カヨコが待っていた。合流と同時に通路を真っ直ぐ走り出す。

 

 

 「これが作戦?」

 

 「そうだ、作戦だ」

 

 「にしては強引すぎると思うんだけど」

 

 

 訝しげなカヨコに対し、俺ははぁ、とため息を吐く。

 

 

 「たまには強引なやり取りも必要だと思うんだよね俺は。大切なのは主導権。こっちがやり合うタイミングと場所を選べるかどうかだ」

 

 「なるほどね」

 

 「ようは臨機応変ってやつだ」

 

 

 そんな会話をしつつ通路の中を錯綜する。しかし、ある程度あいつらにも行き先が分かるように誘導する。

 今回は撤退戦じゃない陽動と減殺だ。

 近接戦闘を繰り返し行い続ける。相手は低練度なら近接戦中の敵には手は出せない。なぜなら友軍狙撃の危険があるから。

 

 これが俺のウルトラCな作戦。

 

 俺との戦闘力差が圧倒的でないと成り立たない、かつ、この狭い路地でないと意味をなさない強引な作戦だ。普通だったら意識外のミスによって全てが水の泡になるような無理筋じみたものだ。

 

 ものだったのだ。

 

 

 「やっぱりそうだ」

 

 「...?どうしたの?」

 

 「いや、今やり合った時に気づいたんだどさ。めっちゃ身体が軽いんだ」

 

 

 不幸中の幸い。

 

 というにはなんというか、こう、複雑な心境だが、運動性能の向上は正直嬉しい誤算だった。単純に体力が中高生の頃に戻ったのではなく、元の体力にプラスして増えた感じがする。しかもまだ上がある。もっと高いところに天井がある感じがする。

 

 おかげで連戦しても出力を落とさずに戦える。

 

 

 「次の曲がり角でまた仕掛けるぞ」

 

 「分かった」

 

 

 前よりも小さな身体で死線を駆ける。

 

 こいつらは銃弾を受けても痛いで済ませられるが、こっちは1発イイところに貰ったら終わりだ。

 そんな理不尽をねじ伏せるかのように、理屈を笑うかのように奴らを黙らせる。

 

 撃つ。

 

 投げる。

 

 殴る。

 

 蹴る。

 

 それらを合理的に組み立て、繰り返す。

 教わった、もしくは教えた理論を適時適切に繰り出す。

 

 

 

 なんやかんやで30分経過

 

 

 「なんとか片付いたね」

 

 

 暗い通路に倒れている気絶した傭兵共を見ながらカヨコは言った。

 

 「ほんとになんとかなるとは思わなかった」

 

 「まぁ、戦闘中に臨機応変に立ち回ってくれたカヨコさんのおかげで楽に掃討できたよ。まじ助かったわ」

 

 「いや主に体張ってたのはコウジの方だし。それに、あんなヤケクソみたいな作戦コウジじゃないとできないよ」

 

 「ヤケクソて...」

 

 

 確かにヤケクソ気味ではあったけども...

 

 そんな会話をしていると、ポケットのスマホからブーブーと振動を感じる。

 多分社長からだろうなと思い伺うと、思った通り社長からだった。

 

 

 『コウジ!?無事!?」

 

 「あぁ、無事も無事。元気ピンピンですよ」

 

 

 はぁー、と安堵の溜息を通話越しから感じると、落ち着いたのか冷静な声色で社長は伝える。

 

 

 『依頼主は無事に離脱できたわ。そちらも落ち着いたら事務所に帰ってきていいわよ」

 

 「りょーかい。こっからだったら10分で戦闘地域は離脱できる。離脱したらまた連絡する」

 

 『OK。何かあったら随時連絡して頂戴。じゃあまた事務所でね』

 

 

 ブツ、と電話が切れる。

 

 社長もある程度状況対処できるようになってきたな。若いからか吸収力があって大いに助かる。分隊長程度なら軽くこなせるぐらいには、指揮能力がついてかな。

 

 1週間とちょい経っただけだが、成長著しい社長を遠い目で逡巡していると、カヨコが話しかけてくる。

 

 

 「誰からって、まぁ社長からだろうけど」

 

 「ん?あぁ、社長達も離脱完了だってさ」

 

 「それはよかった。私たちも帰ろう」

 

 「そうしますかね」

 

 

 仄暗い通路を後にする。

 背中には傭兵達の呻き声を感じながら、今日も怪我なく依頼をこなせた事に俺も安堵する。

 

 とりあえず、ハルカには爆弾の取り扱いを教えよう。

 

 そんなことを考えつつ歩を進めた。

 

 

 数日後

 

 

 「コウジ、頼みがあるの」

 

 「なんすか」

 

 「出向してほしいの」

 

 「へ?」

 

 

 次回

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